閃乱カグラ 小さな先生と忍学生たち   作:ダーク・リベリオン

21 / 21
猫とひと時

とある日、基地内の廊下を長門は歩いていた

 

 

手には授業のための参考書を抱えながら

 

 

長門「さて、次回の授業はどんな風にいきましょうか?」

 

 

生徒たちのためになるようなカリキュラムを作らないとといろんな考えを巡らせていた

 

 

長門「…おや?」

 

 

するとそんな中、長門の足がピタリと止まる

 

 

その視線の先には何か話し込んでいる二人組が

 

 

長門「あれは…日影さんと忌夢さん?」

 

 

前方に見える二人組の正体は日影と忌夢だった

 

 

何やら様子からして日影に忌夢が詰め寄っている感じだった

 

 

穏やかではないなと感じた長門は状況を確認するべく2人の元に歩み寄っていく

 

 

長門「こんにちは日影さん、忌夢さん」

 

 

日影「おや?先生やないか?」

 

 

忌夢「げっ、間の悪い時に…」

 

 

声をかけてみると長門に気づいた日影が挨拶を返し、一方の忌夢の方はバツの悪そうな顔をする

 

 

長門「どうしたんですか2人とも、なんだか揉めているようでしたが?」

 

 

日影「あぁ、それはな」

 

 

忌夢「べっ、別に揉めてないかないぞ!?ボクらはただそのなんて言うか!?」

 

 

質問に答えようとする日影の言葉を遮るように忌夢が割って入るもその様子は明らかに挙動不審だった

 

 

長門「なんですか忌夢さん、さっきから怪しいですよ?」

 

 

忌夢「ぼ、ボクは別に怪しくなんかないさ!?ただ日影が!?」

 

 

反論をし、日影がどうだと説明をしようとした時だった

 

 

???「にゃ〜♪」

 

 

長門「…っ?」

 

 

忌夢「っ!?」

 

 

突如として鳴き声が聞こえる

 

 

しかもそれはすぐ側からだった

 

 

一瞬の沈黙が流れると日影が長門の方に振り返る

 

 

猫「にゃ〜」

 

 

その手には一匹の猫が抱えられていた

 

 

長門「猫…ですか?」

 

 

日影「せや、猫や」

 

 

忌夢「あちゃー…」

 

 

抱えられた猫に驚く長門と平然としながら見せる日影、それとは対照的に頭を抱える忌夢と言う奇妙な構図ができていた

 

 

長門「どうしたんですかこの子?」

 

 

日影「いやな、わしがぶらり散歩しとったら偶然この子を見つけたもんでな、ほっとけんと思うて連れてきたんやけど」

 

 

忌夢「…それを見つけたボクが止めようとしてたんだ。猫を連れてきたなんて知られたらお前や月光とか閃光とかがうるさいと思ってさ」

 

 

何故猫を持っているのかを問うと日影が拾ったことを説明し、それに続くように観念した様子で忌夢がそれを見つけて言い争いに発展してしまったのだと伝える

 

 

長門「なるほど。そう言うことだったんですね?」

 

 

日影「先生、この子どないしたらええと思う?」

 

 

猫の処遇について日影が長門に尋ねる

 

 

長門「うーん、そうですね。教師の立場からしたら猫を基地に持って帰ることには異議ありですが」

 

 

忌夢「やっぱりそうなるよな。だそうだぞ日影、どうするつもりだよ?」

 

 

事情は分かったものの、立場的にも容易に許可を出せるわけもなく渋い顔を浮かべる

 

 

それを見て忌夢も思った通りだなと感じながら日影に声をかける

 

 

日影「…先生、ダメなんか?」

 

 

長門「えっ?」

 

 

日影「この子、どうにか面倒見ることはできひんか?」

 

 

猫「にゃ〜?」

 

 

すると日影は縋るような目で長門に問う

 

 

長門「うっ…」

 

 

普段の彼女からは見ないようなうるっとした目を見せ、猫の面倒を見させて欲しいと頼み込んでくる

 

 

猫の方もそれを知ったか知らずかは定かではないものの、日影同様に目をうるうるさせ、長門の良心に訴えかけてきていた

 

 

長門「……はぁ、わかった。分かりましたよ。仕方ないですね、そこまでされちゃったら返してきなさいなんて言えないじゃないですか」

 

 

日影「ほんなら?」

 

 

長門「はい、今回は特別に許可してあげますよ」

 

 

日影「おぉ、流石先生やな?おおきに」

 

 

とうとう折れた長門が特例として猫の面倒を見ることを許可した

 

 

忌夢「(凄いじゃないか日影、先生から許可をもぎ取るなんてさ)」ボソ

 

 

日影「(こういう時は困った顔で涙を浮かばせたら先生なら簡単に落ちてくれるって春花さんが言ってたんや)」

 

 

忌夢「(……そ、そうか)」

 

 

見事長門を落とした日影にそのコツを問うとそれが春花から教わったことだと知り、呆れつつも妙な説得力があるなと感心もしてしまっていた

 

 

忌夢「…相変わらず甘いなお前は〜?」

 

 

長門「揶揄わないでください」

 

 

情に絆されて許可を出した長門をニヤッとした顔を見せながら忌夢が人差し指をツンツンと突いてくる

 

 

長門「ただし、あくまでも黙認すると言う意味でですからお世話すると言うなら絶対に月光さんや閃光さんに見つからないようにこっそりとやってくださいね?月光さんならともかく閃光さんに見つかった日にはボクがどやされてしまいますからね」

 

 

猫を連れてきたことがバレれば月光は多少の温情をくれるだろうが、閃光に至ってはこのことを黙認したことをとやかく言われてしまうのは目に見えていた

 

 

日影「わかってる。ちゃんとバレないように面倒を見たるわ」

 

 

猫「にゃ〜」

 

 

忌夢「本当にお前がまともに面倒見られるのか?今一想像つかないぞ?…仕方ない、ここはボクも力を貸してやるよ。乗り掛かった船だしな」

 

 

日影「ほんまか?忌夢さんおおきに」

 

 

当初は止めさせるつもりだったが、事態がここまできてはと観念したように助け舟を出すが如く忌夢も協力に名乗りをあげた

 

 

長門「助かりますよ忌夢さん、であればその間にボクはこの子の飼い主について調べてみます」

 

 

忌夢「あぁ、頼んだぞ」

 

 

日影「…そう言うことや、それまでよろしゅうな?」

 

 

猫「にゃ〜♪」

 

 

内密と言う非公認の状態ではあるものの、許可を貰ったことで3人の秘密が出来上がったのだった

 

 

 

 

そうして長門、日影、忌夢と猫との生活が幕を開けた

 

 

猫は思ったよりも人懐っこく、すぐに3人と仲良くなった

 

 

猫「みゃ〜♪」

 

 

長門「あっ、こらダメですよ?今資料作成中なんですから」

 

 

猫「にゃ〜♪」

 

 

長門「…まったく、しょうがない子ですね?」

 

 

時には仕事中にも関わらず長門の膝の上で横になったり

 

 

日影「どうや?美味いか?」

 

 

猫「むくむく…むくむく……みゃ〜♪」

 

 

日影「…そうか」

 

 

与えられたご飯を食べて幸せそうな鳴き声を日影に聞かせたり

 

 

猫「ぺろぺろ…ぺろぺろ」

 

 

忌夢「こ、こらやめろって、くすぐったいじゃないか」

 

 

猫「みゃ〜♪」

 

 

甘えたような仕草で忌夢の手をぺろぺろと舐めていたりと3人と猫は数日間の間に楽しいひと時を過ごしていた

 

 

 

 

そうして猫との生活をしていたとある日のことだった

 

 

忌夢「えっ?この子の飼い主が見つかったって?」

 

 

長門「はい、ついさっきようやく見つけました。この子の特徴に合致している捜索願いを」

 

 

探した甲斐もあり、猫の飼い主と思われる情報を得たことを日影と忌夢に打ち明ける

 

 

忌夢「やったなお前、飼い主の元に帰れるみたいだぞ?」

 

 

これで安心だと忌夢が猫に語りかけた

 

 

日影「…せやったら、もうこの子とはお別れなんやな」

 

 

長・忌「「……っ」」

 

 

だが、次の日影の一言に長門も忌夢も固まってしまう

 

 

少なからず一緒にいた楽しい数日、それを思い返すと別れと言う言葉がグサリと胸に突き刺さる

 

 

長門「ひ、日影さん…」

 

 

忌夢「日影…」

 

 

日影「…ほな行こか2人とも、この子を返しに」

 

 

沈みかけていた場の空気に声を上げたのは日影だった

 

 

どこか決心したように猫をぎゅっと抱きしめ、この子を飼い主に返すと告げていた

 

 

忌夢「…あっ、あぁ、そうだな」

 

 

長門「では行きましょう」

 

 

彼女の言葉に刺激され2人も気持ちが変わらないうちに行動に出ることにした

 

 

 

 

 

 

 

猫「みゃ〜」

 

 

女の子「よかった。よかったよみーちゃん」

 

 

猫「みゃ〜♪」

 

 

あれからすぐに長門たちは飼い主に連絡を取り、引き渡しに出向いた

 

 

やってきた飼い主は行方不明になっていた猫が帰ってきてくれたことに安心と不安が拭えたことで涙を流して喜んでいた

 

 

父親「ありがとうございました。おかげで助かりました」

 

 

女の子「お姉ちゃんたち、ありがとう!バイバーイ!」

 

 

飼い主の女の子の父親が深々と頭を下げ

 

 

父親と共に女の子は別れとお礼の言葉を告げて帰って行った

 

 

残されたのは日影たち3人だけとなった

 

 

日影「……」

 

 

忌夢「日影?」

 

 

無言のまま立ち尽くす日影を見かねた忌夢が声をかけようとする

 

 

日影「ほな行こか2人とも」

 

 

忌夢「えっ?」

 

 

話しを振ろうとした最中、振り返りざまに忌夢の横を通りすぎる日影はなんのことないと言った顔を見せていた

 

 

いむ「おっ、お前悲しくはないのか?寂しくはないのか?」

 

 

その彼女の態度に忌夢は信じられないと言ったように尋ねる

 

 

日影「そんなもんないで、言ったやろ?"わしには感情がない"って」

 

 

しかし日影はその質問に自分は感情がないから問題ないと豪語し、それを聞いて忌夢はさらに焦っていた

 

 

長門「……はい日影さんこれっ」

 

 

するとその時、長門が懐からハンカチを取り出し、日影に渡そうとする

 

 

日影「なんや先生、急に?」

 

 

長門「いいから使ってください。"その目から出てる涙を拭くために"」

 

 

日影「……えっ?」

 

 

一瞬、長門が何を言っているのかわからないと言った顔を浮かべながら恐る恐る右目の側に手を当てる

 

 

そうして触れてみるとその手からは濡れていると言う感覚が伝わり

 

 

眼前に持ってくると確かにその手には雫が付いていた

 

 

日影「な、なんでや?なんで、わし感情がないはずなんに?」

 

 

自分でも気づかなかったことに日影は狼狽えていた

 

 

忌夢「まったく、強がってるなよな?どう取り繕ってもやっぱりお前の心が言ってるんだよ。あの子と別れて寂しいんだって」

 

 

日影「……そう、なんやろうか?」

 

 

先ほどとは違い、くすっと笑みをこぼしたまま呆れたものを見るようにして忌夢が指摘する

 

 

彼女の言葉に日影は少し戸惑いながらもその言葉について想いを馳せていた

 

 

長門「さて、ではそろそろ帰りましょうか」

 

 

忌夢「そうだな。帰ったらお疲れ様会でもするか、なぁ日影?」

 

 

日影「…まぁ、ええで」

 

 

寂しがっているであろう日影のことを思って忌夢がお疲れ様会を提案する

 

 

その提案にいつもは無愛想な日影もどこらしか嬉しそうに口角を上げていたのだった

 

 

 

 

 

 

 

※ 余談だがその後、基地に帰ってきた長門たちを待っていたのは

 どう言う訳か猫を隠していることを知っていた月光と閃光であり

 日影と忌夢は反省文を書かされる羽目となり、それを黙認した

 長門の方にはキツイ厳罰が下されたと言うのはまた別の話し…

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。