――PM:シノビマスターズ室内演習所――
今日もまた長門は授業のために生徒たちを室内演習所に集めていた
長門「皆さん揃ってますね?」
クリップボードを片手に今回の授業を行う生徒たちに点呼のために声をかける
彼の目の前には今回の授業のために集まった生徒たちがいた
右から柳生、叢、両備、そして焔と雅緋の計5人が今回の授業に呼ばれたのだ
しかしその内の柳生たち3人はともかく、焔と雅緋に関しては以前のこともあってか少しムスッとしていた
長門「…では今日の授業を始めさせていただきますね」
2人の表情に気づきつつ、全員が揃っていることを確認した長門が授業を始めることを告げる
柳生「それで、今日はオレたちを集めて何をしようって言うんだ?」
そんな中、柳生が自分たちが何の授業を受けるのかを問う
長門「はい、今日は皆さんに”集中力”を高めてもらおうと思いましてね」
柳・焔・叢・雅・両「「「「「集中力?」」」」」
すると長門はその問いに対して集中力をあげる授業を行うと答えた
今回の授業内容を長門が皆に告げてから数分後…
長門「皆さん、頑張ってくださいね」
柳・焔・叢・雅・両「「「「「――っ!?」」」」」ググググッ
現在、5人は長門の言う集中力を高める授業の真っ最中だった
その内容というのがまたどれも個性的なものだった
生卵を両手の箸に一つずつ、頭に一つ乗せながら片足立ちのキープ、子供用の三輪車に同じく片足立ちで編み物
不安定な足場に乗せられた板の上で1人卓球の弾をラリー、吊るされた状態で椅子を手に掴む
最後に逆立ちでいくつもの物を乗せた板を両足で支える
どれもこれも集中しないと失敗してしまいそうなものばかりだった
長門「そうです。その調子ですよみなさん」
踏ん張りを見せている皆に長門がエールを送る
柳生「…こ、これは、なかなかにきついな?」
そんな中、頭と両手に持った箸で生卵を落とさぬようにしている柳生が辛さを口にする
長門「いい調子ですよ柳生さん…でも、目の前のことに気を取られていてはいけませんよ?」
柳生「えっ?」
必死にバランスを保とうとしている柳生に声援を送ると同時に長門が意味深な言葉を囁く
するとその直後、長門が柳生の乗っているボールを蹴り飛ばす
柳生「うっうわっ!?」
足場がなくなった瞬間、柳生がバランスを崩し、転倒する
尻餅をついて倒れる柳生、その横には落ちて割れた卵の残骸が落ちていた
柳生「き、貴様なにをする!?」
長門「油断大敵ですよ柳生さん」
柳生「ぐうっ」
文句を言おうとする柳生に油断してはいけないと忠告の言葉を長門は告げるのだった
両備「まったく、柳生ったら情けないわね」
柳生「なっなんだと!?」
するとその様子を見ていた両備が失敗してしまった柳生のことを笑う
柳生「だったらそう言うお前はどうなんだ?」
両備「ふん、あんたと一緒にしないでよ…こ、こんなの、両備にとっては!?どうってことないわよ!?」
三輪車の上に片足で立ち、編み物をしながら両備は柳生に自分はへっちゃらだと余裕を見せて答える
長門「…両備さん」
両備「なっ、なによ?」
その時、徐に長門が両備に声をかける
長門「…つるぺったん」
両備「なっ!?ちょっと誰がつるぺったんですっ…きゃあっ!?」
雅緋「両備!?」
するとここで長門がぼそり一声呟くとそれに反応した両備が言い返そうとして集中力を切らし、転倒してしまった
長門「ダメですよ両備さん。この程度で取り乱していては真の意味で集中しているとは言えませんよ?」
両備「いっ、今のあんたが!?」
気にしていることを言うから集中力が乱れてしまったのだと両備が主張する
柳生「おやおや?たかが胸のことで取り乱すとは…お前のほうこそたるんでるんじゃないのか?」
さっきの腹いせと言わんばかりに柳生が両備に言い返す
両備「なによ!所詮持つやつに持たざる者の気持ちなんてわかんないわよ!」
柳生「あぁ、わからないね。この貧乳」
両備「ムキー!?」
反論しようとするもさらにコンプレックスをえぐるような言葉を吐かれ、取っ組み合いの喧嘩に発展してしまった
長門「こらこら、喧嘩はいけませんよ2人とも!」
それを見ていい止めようとする長門だったが、全く止まる気配がなかった
長門「やれやれ…」
言っても無駄と判断した長門はしばらく好きにさせて他の生徒たちを見ることにした
長門「叢さん。どうですか調子は?」
叢「うむ。問題ない、我にはこの程度造作も無い」
宙吊り状態で椅子を抱えている叢がこの程度のことは問題ないと豪語する
長門「なるほど、さすがですね…ですが」
叢「おっおいなにを…っ!?」
だかその直後、長門は叢の顔から面を取ってしまう
叢「ひっ、ひゃぁああっ!?な、ななな、何をするんですか///!?」
お面を外されたことにより、彼女本来の姿が顕になってしまった
長門「何ってお面を外したんですよ」
叢「ど、どどど、どうしてそんなことを!?そそそそ、それよりも早くお面を返してください////!?」
顔を真っ赤に赤らめ、カタカタと震えながら必死に叢が懇願する
長門「ダメです」
叢「そ、そんなこと言わないでお面を返して///!?」
懇願するも受け入れてもらえず、叢は手に持っていた椅子を落としてしまってもなりふり構わず、返還を要求する
長門「これも修行の一つです。この面はしばらく預かります。授業が終わったら返しますからそれまでそのままでいるように」
叢「そそそそ、そんな〜///!?」
抗議も虚しく、叢は長門によってお面を没収されてしまうのだった
長門「調子の方はいかがですか?焔さん?」
焔「はっ、はん!調子がどうだった?そんなもの見ればわかるだろう!?」
次に長門は不安定な足場でピンポン玉を両手のラケットでラリーする焔に声をかける
ぐるぐると揺れる足場で必死にラリーしている焔はとても辛そうだった
長門「辛かったらやめてもいいですからね?」
焔「だっ、誰がやめるか!?こんなことで諦めるようなわたしじゃないぜ!?」
きついなら終わらせてもいいと言う長門の言葉に反発して焔はさらにやる気を見せる
長門「そうですか…では、もっと頑張ってくださいね!」
焔「うおぅ!?ちょ、お前なにしやがっ!?うっ、うわぁっ!?」
するとその直後、長門がさらに回転を加えたことで焔は吐き気を覚え、バランスを崩して倒れてしまった
焔「ひっ、卑怯だぞ!?うっ、うぷっ!?」
長門「臨機応変に対処しないと集中はできませんよ」
悪態をつこうにも吐き気に襲われて悶える焔に長門はそれではダメなのだと教えを告げるのだった
そうして長門は最後に雅緋の元にやってきた
長門「雅緋さん、どうですか?」
雅緋「こ、この程度で根を上げるような私ではない!?」
逆立ちした状態で両足の上の板の上に乗っている重量級のものを雅緋は必死に支えていた
雅緋「ぐうううっ…っ!?」
必死に両足で支えていた雅緋だったが、直後にさっきとは違う表情を浮かべ、さらには体が小刻みに震え始める
雅緋「あっ、足が…足が攣…ぐぅっ!?」
張り切り過ぎたことが災いし、足が攣ってしまった雅緋は体制を維持できず、倒れ込んでしまう
そうして倒れたことで支えを失った積み上げていた物たちが雅緋に向かって落ちてくる
長門「――っ!!」バッ!
だが、その直前、長門が雅緋を抱き抱え、彼女の危機を救った
長門「大丈夫ですか雅緋さん?」
雅緋「あっ、あぁ…だいじょお…ぶっ///!?」
長門「ど、どうしました?」
瞑っていた目を開けて口を開こうとした雅緋だったが、その途中で驚いた顔を見せて声を止めてしまう
何事かと長門も心配そうな顔を浮かべていた
雅緋「お、おま…おまえ、なにをしているんだ///!?」
長門「えっ?」
今、雅緋は長門にお姫様だっこの状態で抱き抱えられていた
雅緋「こ、ここ、こんな///!?」
長門「…なんだかよくわかりませんが、雅緋さんに怪我がなくてよかったですよ」
雅緋「///っ!?」
自分の置かれている状況に右往左往している雅緋に長門が無事で嬉しいと爽やかな笑みを浮かべる
その顔を見て雅緋は一瞬、時が止まったかのように固まってしまっていた
長門「あっ、あの…雅緋さん?」
雅緋「なっ、なんでもない!?それよりも早く降ろせ///!?」
長門「わ、わかりました」
降ろすようにとじたばた暴れる雅緋を長門はゆっくりと降ろした
雅緋「まったくもう……っ?」
ようやく降ろされた雅緋が服装を整えているといつのまにか隣に焔が
焔「むふふふふ〜ん♪」
雅緋「ほっ焔、なんだその顔は!?やめろ、そんな目で私を見るな!?」
茶化すかのようなニヤケ顔を見せる焔に雅緋は必死に弁解しようとするのだった
そうして一通り授業を終えた後、5人は再び始まる前と同じように横一列に並んでいた
唯一違いがあるなら柳生、焔、両備に関しては疲れが顔に出ており、叢は素顔を顔で隠し、雅緋は先のことがあってか長門を直視できず視線を逸らしていた
長門「皆さんいいところまではいけましたけどあと少しでしたね」
両備「そ、それはあんたが途中で邪魔するからよ!?」
焔「そうだそうだ。あれさえなかったら私たちは」
途中まで上手く行っていたのに横槍をされたから失敗したのだと両備と焔が抗議する
長門「あの程度で乱れるようではまだまだダメということですよ」
しかし長門は冷静に2人にそう告げる
柳生「なら先生、そこまで言うならオレ達に手本を見せてくれないか?」
叢「わ、わわわ、我は早くお面を返してほしいです///!?」
するとここで柳生が手本を見せてほしいと願い出て、それに被せるように叢がお面を返せとせがんでくる
長門「ふむ、確かに柳生さんの言うことも一理ありますね、いいでしょうわかりました」
手本を見せてほしいという柳生の申し出を承諾し、長門は実行することにした
そうして長門は皆に手本を見せることになったが、その光景を目にした彼女たちは目を疑った
長門「ほっ、ほっ、ほっ♪」
彼女たちの目に映ったのは自分たちが苦労した訓練をいとも容易くこなしていく長門の姿
さらには自分たちがされた妨害をされているにも関わらず、集中力を乱す素振りはこれっぽっちも見せなかった
柳生「す、すごい」
両備「何なのよこいつのこのポテンシャル、化け物じみてるじゃないの?」
次々と修行をこなしていく長門の並外れた技術に皆度肝を抜かされていた
やがて最後の修行を長門が披露する
行っているのは叢もやっていた逆さ吊り状態で椅子を待つやつだった
長門「皆さん、いかがでしょうか?集中力の大切さをご理解していただけましたか?」
叢「はっ、はいわかりました!十分にわかりましたからお面を返して///!?」
長門「うわっ、叢さん!?」
皆に集中力についてを説明している中、羞恥心に耐えかねた叢が何度目かの妨害をしてきた
長門「またですか、今話しの途中ですよ!?」
叢「わかってます!わかってますけど、我はどうしてもお面を返して欲しいんです////!?」
話しを遮ってでもお面を取り返そうと叢が襲いかかる
しかし、それを長門は逆さ吊りで且つ椅子を持っているにも関わらず
まるで振り子のように体をくねらせ、さらには持っている椅子を巧みに使って叢の襲撃を阻んでいく
焔「すっ、すげぇ…」
柳生「あの状態で叢を圧倒している」
目の前で繰り広げられる長門と叢の接戦に見ていた一同は息を呑んでいた
叢「うぇーん!?いい加減に捕まってください!そしてお面を返してください///!?」
長門「そう言って捕まるほど、ボクは甘くないですよーだ!」
お面を取り返そうとなりふり構わずに突っ込んでいく叢を長門は躱していた
柳生「せっ、先生まずいぞ止まれ!?」
長門「えっ?」
するとその時、柳生が注意を促すように声をかけてきた
何事かと思いながら長門が自分が飛んで行こうとしている方向に目を向ける
視線の先にはなんと焔が立っていた
焔「ほ、焔さん!?」
事態に気づいた長門だったが、既に揺れ動いた縄の勢いは止められなく、焔のほうも突然のことで動転しているのか突っ立ったままだった
ぶつかるまであと寸前にまで迫った時、長門は瞬時に持っていた椅子を落とすと焔との間に手をかざす
ダシン!
次の瞬間、ぶつかり合う音が響く
両備「だ、大丈夫、2人もと!?」
心配した両備が声をかける
だが、声をかけても返事がない
どうしたのだろうと恐る恐る視線を向けてみるとその光景に驚く
長門「……っ!!」
焔「……っ!?」
ぶつかる音こそしたものの、長門が咄嗟に焔の肩を掴んだことにより衝突と言う最悪の事態は回避された
長門「……ふぅ、助かりました」
間一髪で危機を脱し、長門が安堵の表情を浮かべる
焔「あっ、危なっかしいぞ」
長門「あはは…すみません」
直後、そんな長門に対し、冷や汗を流していた焔が物申していた
最悪の危機が回避され、皆も胸を撫で下ろしていた
叢「先生、お面を返してー///!?あっ、きゃあっ!?」コテッ!ドン!
長門「ふぇっ?」
焔「なっ!?」
しかしその直後、お面を取り返すことを諦めてなかった叢が後ろから迫り来たが
気が動転していたために足を滑らせ、それにより長門の背中を押した
ちゅっ♪
刹那、場はまるで時が止まったかのように沈黙する
そんな中、皆が一斉に視線を向ける先には叢の衝突によって背中を押された長門の唇が焔のおでこに接触している光景だった
長門「…っ////!?」
我に帰った長門がすぐさま再度、焔の肩を掴み、距離を開ける
焔「あ、あの…焔さん?」
恐る恐る長門が焔に声をかけてみる
焔「……あっ、あぁぁ……ふぁあああっ///!?」
柳・叢・雅・両「「「「――っ!?」」」」
長門「わー!?ほ、焔さん落ち着いて!?」
おでこに接吻された焔は完全な錯乱状態に陥ってしまい、無差別に暴れ始めてしまう
柳・叢・雅・両「「「「ひゃあああっ!?」」」」
荒れ狂う焔に他の皆もたまらず逃げ惑う
長門「ほ、焔さん正気に戻ってください!?お願いだからー!?」
焔「うああああ///!?」
悲痛な叫びも虚しく、それからというものこの騒動は焔が落ち着くまで続いたのだった
???「そうですか。どうやらうまくやれているようですね?」
月光「はい。先輩たちや他の生徒たちからも評価を受けているようです」
閃光「まあ、その分やらかしも多々見えるみたいだかな?」
暗いとある部屋にて月光と閃光が誰かと会話を交わしていた
???「であれば、そろそろ頃合いでしょうね……月光、閃光」
月・閃「「はい!」」
彼女はぼそりと何か一言つぶやくと2人の名を呼ぶ
その声に2人も反応し、返事をする
???「先生に伝えてください。近々お会いしたいと言っていた…と」
月光「かしこまりました」
閃光「必ずや」
指示を受けた2人はそれに従う意を示し、部屋を後にした
???「会う日を待っておりますよ先生」
2人が出て行った後、1人残った彼女は窓の外を眺めて呟くのだった