TS転生憑依闇堕ち(無自覚)精霊姫様は原作を知らない 作:むーちゃん
評価感想お気に入りありがとうございます(錯乱)
「今日は曇りですけど……」
……ふっ。
拙者、ガチ焦りテンパリング精霊姫(笑)一般成人男性と申す者である。
たった一言で拙者を瀕死に追い込むなんて、なかなか見下げた野郎じゃないか、ええ?
うん。
いやーム〇カ大佐になった時はどうなることかと思ったけど、何はともあれ一件落着!
ナイスバディ闇の大精霊さんは
俺もさっきまでピクリとも身体動かなかったけど、なんかヤバそうなやつに触れられた時に魔力的なパワーが流れ込んできて
うーん、全方ヨシ!! (現場猫)
ほな、俺はこれで! あとは若い皆様でごゆっくり!
「本当に……姫様……なのですか?」
……ッスゥ──、っすねえ……。あのー、まあ、そのー、ね?
クロちゃん!! マイベストフレンド!! 助けて!! さっきなんかヤバそうなやつべちゃっでした時みたいに助けて!!
『…………(フルフル)』
うあああ薄情者おおおおお!!
◇◇◇◇
──貴女は本当に姫様なのですか?
勇者が思わず漏らしてしまった問に、黒く染まった女は答えない。
あの輝く太陽のような笑みも。
そばに居るだけで蕩けてしまいそうな優しさも。
目が合うだけで手を振り返してくれるようなあの純真さも。
今の女からは全く感じられない。
こんにちは、と場違いなほど平坦な挨拶をしてから、彼女は何をするでもなくただ立っていた。
まるでこちらの出方を窺っているかのように。
ただ無表情で、問を発した勇者を見つめ返しているのみだった。
「いや姫なわけないでしょ!!?」
カレンは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐(カレン目線)の姫を除かねばならぬと決意した。
「死んだ目! 呪いまみれの身体! さっき闇の精霊王に思いっきり触られてた!」
スリーアウトである。きっと姫の中身はチェンジされているに違いない。
「闇の精霊王が乗っ取ってるに決まってるわ……!」
つまり合法的にぶちころ対象となる。
原作の流れからかなり乖離している気もするが、ここで姫を排除すればカレンの一人勝ちなのだ。
ここで仕留める──!
「サラマンダー!」
『はぁ〜い』
「カレン待て! まだそうと決まった訳では──!」
「【緋の粉】最大出力よ!」
【緋の粉】は特定座標に爆発を起こす、小回りの効くお気に入りの技だ。
原作ではただの単体中火力攻撃技だったが、生まれてから磨きに磨き続けた技術により、体内からの爆発という防ぎようのない対人戦における必殺技へと昇華させた。
そして最大出力ともなれば、不死身でない限り確実にバラバラに仕留められる。
さあ、ここで邪魔者を排除し、勇者との薔薇色人生を始めるのだ──
「
不意に平坦な声が響いた。
『はぁ〜い』
「──は?」
と思ったら、契約している精霊が動きを止めた。
サラマンダーが、指示を、無視した?
いや、
「サラ、マンダー?」
『お姫様が言うことは絶対ですよぉ〜』
カレンはその言葉の意味を咀嚼し。
(
そしてあまりの脅威に愕然とした。
それは精霊姫を精霊姫たらしめる、この精霊の世界にあってはならない、世界に愛された力。
しかし重要なのはそこではない。
(闇の精霊と契約しておきながら、精霊姫の権能が無効化されていない?)
カレンの知る原作の流れはこうだ。
『突如現れた闇の精霊王の分体。その魔の手にかかった精霊姫は、闇の精霊王の受肉体として契約を果たしてしまいました。
しかし精霊姫と闇の精霊王、二つの相反する力は互いに干渉し合いその本領を発揮することはなかったのです。
それでも圧倒的な力を見せつけるソレの前に、勇者たちと精霊は立ち向かいます。
全ては人々を守るため、心優しい姫に人々を傷付けさせないために。
そうして戦い続けるうち、姫の身体は限界を迎え、さらさらと砂のように崩れていきました。
勇者たちは彼女を助けようとしましたが為す術なく、姫は最後に感謝と微笑みを残して消えてしまったのでした……』
的な。
しかし今はどうだ。
姫に暴走している様子はない。
だが何の補助もなく立ち上がっていることから、闇の精霊の呪いも克服、あるいは契約精霊の力(恐らく闇の精霊)を借りていることになる。
そして先程闇の精霊王と思わしき存在(なんか潰れてたけど)と接触している。
──闇の精霊王と完璧な契約を交わした?
であるならこれは世界の危機だ。
精霊姫の力と闇の精霊王の力を同時に振るう存在なんて、この世の誰も敵わない。
もはや原作知識も役に立たない。ひとまず、仲間たちとこの場を離れなければ──
「そうだぞカレン、何を言ってるんだ」
「グラッド?」
「姫様が言うならそうなのです。待ってるのが正解なのです」
「プリステラ……?」
いや違う。精霊相手に、どころじゃない。
彼女が放つ言葉は、勇者の仲間ですら支配下に置いている。
闇の精霊王との契約の影響? 確かに【魅惑の美声】なる状態異常技を扱う敵も原作には存在したが、まさかこんなところで姫も……!
「はあはあ姫様……お姿が変わられても麗しい……」
「……」
コイツは元々こんなだった。
「何なのよ……」
まずい。まずすぎる。
グラッドとプリステラは敵の術中。
勇者は役たたず。
育て上げた相棒も言うことを聞かない。
逃げようにも、
ガラス玉のような、何の感情も宿らない無機質な赤い瞳。
それに見つめられるだけで、カレンは生きた心地がしなかった。
「姫様! 我らと共に帰りましょう!」
そしてコイツは信じられない馬鹿だ。
「王も、城の皆も……もちろん僕も、姫様の帰りを待ち望んでいるのです」
「……」
「帰りましょう、姫様。さあ、この手を取って」
カッコつけてどさくさに紛れて姫に触ろうとするな。
手をワキワキさせるな。触るなら隣にいる幼馴染を触れ。
「……
しかし信じられないことに、姫のフリをした化け物はまともな返答を返してきた。
話が通じる?
ならばこの場はこのまま穏やかに、戦いにならずに切り抜けられるかもしれない。
「
「────」
頼むぞ幼馴染、変な気は起こさずそのまま誘導しろ。いくらでも姫触っていいから。その分後で自分も触ってくれれば。
「──なるほど」
その一瞬を切り取れば、まるで絵画のような美しい場面だった。
呪われし美姫の手を取り、麗しの勇者が変わらぬ忠誠を誓うように跪いている。
姫が何故か生きているという最悪の事態に目を瞑れ……つむ……目を逸らせば、仲間の誰一人欠けることなくこの場を切り抜けることができる。
だから、だから幼馴染。
頼むから余計なことしないで。
「どうやら貴女は──姫様ではないようだ」
瞬間、勇者に預けていた姫の手が、腕が宙を舞う。
目にも止まらない速度で光の剣を振るった勇者は、肩口から腕を斬られたにも関わらず無反応の化け物の首筋に刃を添えた。
「答えろ、偽物。姫様はどこにいる」
いやぁぁぁあああっ馬鹿ああああああああ!
勇者は怒り狂っていた。
誰よりも敬愛する姫を穢した敵への怒り。
姫を守れなかった己への怒り。
そして何より──姫と瓜二つの面で、姫のフリをする不敬者への怒りで。
「……
「愚かな。姫様は誰よりも名を大切にするお方」
目を閉じた彼の脳裏に甘い記憶が流れていく。
──アーサー様、鍛錬の後は身体を休めることも大切ですよ。こちらでお茶にいたしましょう? ──
──お怪我はありませんか? アーサー様──
──わたくしは国のため、民のために存在しているのです。その護るべき者たちのみに戦ごとを任せるなど、精霊姫の名が泣くのですよ、アーサー様──
──共に戦いましょう、アーサー──
そして目を開き、眼前の女を見て思うことはただ一つ。
「あの方が僕を名で呼ばず、
今すぐにでも首を斬り落とせる。この愚か者をこの世から一片も残さず消し飛ばせる。
その自信が彼にはあるが、まだ聞かねばならないことがある。
「もう一度聞く、姫様はどこだッ!!」
「
勇者とその幼馴染は、その言葉が誰から発せられたものなのか、一瞬理解できなかった。
「
あまりにも悪辣。
あまりにも冒涜的。
「
あの善性の権化である姫の顔をした化け物の口から放たれる、信じられないほどの心無い言葉は。
「
容易く勇者の理性の紐を引きちぎった。
相次ぐBAD COMMUNICATION
〇『精霊姫』の権能
・あらゆる精霊と友好的な関係を築ける
・莫大な魔力
・大精霊未満の精霊への最上位指示権限
etc…
〇【魅惑の美声】feat.精霊姫
・効果:発動者に対し害意を持たないユニット(敵味方問わず)へ対し、発した命令を強制的に遵守させる。
・害意の例:カレン(姫をぶち殺〇〇〇)、アーサー(姫をぶち犯〇〇〇)