転生した兄弟姉妹、透き通る世界に転移する   作:五式荒鷲 

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本当に三話分の文字量になっちゃった……

2026/3/4 一部文章変更・追加、誤字脱字修正


プロローグ………ぐらい自重しろ!(後編)

 M60を構えながら進む運び屋は、すぐに不良達の銃火が浴びせられるが、X-01パワーアーマーの装甲が全てを弾く。当たった弾丸の内、数発は発射元に跳ね返って不良生徒数人が“運悪く”気絶してしまう。

 

 ドドドドドドドドドドッ!

 

 お返しとばかりに運び屋はM60を連射して不良達を薙ぎ倒していく。

 

「不良共ぉ!この程度かぁ!」

 

 高らかに笑いながら進む様に、運び屋に攻撃する不良達の一部がヤケクソになりながら銃を撃つ。しかし、迫り来る鋼鉄の巨体に恐れを抱いて、一人、また一人と逃げていく。

 

「う、うぁぁぁ!」

 

「馬鹿!逃げるな!」

 

 一人の不良が銃を捨てて逃げる。それを他の不良が怒鳴るが、徐々に不良達は引き留める不良の意を介さず逃げ惑う。

 

『一度、恐怖感情が伝播すれば、それを収拾することは難しい』

 

 無線越しに独り言のように後方からスコープを通して見ているスタルカーは呟く。運び屋は銃だけでなく、裏拳を放って吹っ飛ばす様を見れば不良達が恐慌に陥るのも無理はなかった。

 

 ドドドドドドドドッカチンッ!

 

「!!再装填(リロード)ッ!」

 

 運び屋が叫ぶと、後ろに付いていたLH-1、2が背っ負っていた盾、防弾シールド(製作者:運び屋)を展開して運び屋の左右から弾丸を浴びながら前に進んで運び屋の前に出る。その二人の後ろにAS-2、3がそれぞれ付いて、横から前方にいる不良達に銃撃を浴びせる。また、後方にいるスタルカー達や先生指揮下の生徒達が援護射撃を行う。

 

完了(コンプリー)ッ!」

 

 運び屋がそう言うと、LH-1、2が盾を持ちながら左右にズレて空いた隙間から運び屋が前に出る。そして、AS-2、3とLH-1、2はまた同じように運び屋の後ろを付いていく。そして、運び屋達はシャーレのオフィスビル目前までやってきた。

 

「クッソ!戦車だ!巡航戦車で蹴散らせぇ!」

 

 不良の一人が後ろに向かって叫ぶと、左側の建物の角から巡航戦車が出てくる。

 

「菱形の砲塔に車体前面に機銃砲塔、主砲の大きさからしてクルセーダーIIあたりか?」

 

 運び屋は前方にいる巡航戦車を見て、戦車の名称と武装の見当をつける。クルセーダーは曲がり角を少し曲がって止まり、運び屋に砲塔を向けて主砲を発射する。

 

ズドンッッ!

 

 発射された40㎜砲弾は運び屋には当たらず、あらぬ方向に飛んでビルに直撃する。

 

「ヘッタクソだなぁ。砲手は素人か?」

 

 再び撃ち終わったM60を背負いながら運び屋は言う。すると、クルセーダーの砲塔の天板の一部が開いて中から煙と一緒に不良が出てくる。

 

「逆流した発砲煙に我慢できず出てきたってとこか。AS-2、3とLH-1、2は先生指揮下の生徒達と連携して前進しろ」

 

「ボスは?」

 

「戦車を対処する」

 

 AS-2の問いに運び屋が答えると、クルセーダーへ走っていく。天板の上で噎せていた不良が顔を上げると、運び屋が近付いてきているのに気付く。

 

「うぇッ!う、撃て撃てッ!!」

 

 不良の命令でクルセーダーは車体前方の機銃砲塔のベサ機銃から7.92mm弾の弾幕が放たれる。しかし、運び屋のパワーアーマーに当然の如く弾かれ、再装填が完了した主砲が再び砲弾を発射する。砲弾は走り迫る運び屋の右肩を掠ってまたビルに当たる。クルセーダーが砲弾を再装填しようとした時、目の前に運び屋が到着する。

 

「ふんっ!」

 

 クルセーダーの目の前に来た運び屋は、車体を両手で掴んで持ち上げる。

 

「おっと、うぁッ!」

 

 天板にいた不良は、車体が傾いた影響で車外に放り出される。運び屋はお構いなしにそのまま上に持ち上げていき、

 

「うぉぉりゃぁぁぁぁッ!!!」

 

 勢いそのままにクルセーダーを放り投げ、ひっくり返す。そして、唖然としているクルセイダーから落ちた不良に走って近付いてく。

 

「く、来るなぁぁッ!」

 

 不良はホルスターからM1911A1を取り出して乱射するが、パワーアーマーの装甲に全て弾かれる。そして、

 

「オラァァッ!」

 

「グェェッ」

 

 目の前に来た運び屋にボティーブローを食らって不良生徒は吹っ飛ぶ。運び屋はそのまま近くにいる不良生徒達を次々に殴り蹴り飛ばしていく。

 

 

 

「やってんなぁ」

 

 後方にいるスタルカーはそう呟きながら、運び屋の暴れっぷりをスコープ越しに眺める。運び屋は調子に乗ってアッパーのインパクトと同時に飛び上がって昇○拳モドキを繰り出していた。

 

「よし、LH-4、AS-4と一緒に一番前のビルに進め。こちらもLH-3と前に進む」

 

『ラジャーッ!』

 

『Yes,Sir』

 

 近場に敵がおらず、無線で指示を出して返答を聞いたスタルカーは、SV-98を背負って走り出すと屋上から向かい側のビルの屋上に飛ぶ。LH-3も同じようにスタルカーに続いて飛んでくる。

 

 次のビルも同じように飛ぶが、その先のビルは今いるビルよりも高いため飛び移れない。

 

「リーダー、あれ」

 

 LH-3の指差した場所に非常用階段があった。スタルカーは位置を変えて非常階段に飛び移り、LH-3に手を伸ばして飛んできたLH-3を掴んで非常階段に引き上げると階段を上っていく。

 

 屋上に着くと、シャーレのオフィスビルがある方の屋上の端までいき、地上の現状を目視で確認する。地上では運び屋が尚も不良共を殴り飛ばし、蹴り飛ばしていた。他の生徒は、運び屋の攻撃を運良く躱した不良共を倒している。

 

「思ったより不良共が残ってるな。ワカモが脅したりしたか?」

 

「リーダー!二時方向、敵戦車2!」

 

 LH-3の言葉を聞いて右を向けば、二両のクルセーダーが増援で向かってきていた。

 

「不味いな……。LH-4、AS-4、そっちで対処できるか?」

 

 スタルカーは無線で右側のビルの屋上にいる二人に確認を取る。

 

『ワイは無理や!』

 

『わ、私は可能です』

 

「AS-4、本当か?」

 

『はい!』

 

「分かった!なら、二両の履帯かエンジンを狙撃して動きを止めてくれ」

 

『Yes,Sir!』

 

 AS-4は手にしているPTRS-1941を地上を走っているクルセーダーに銃口を向ける。スコープを覗いて履帯に狙いを定め、軽く息を吸って吐くと、引き金を引く。

 

ドンッ!

 

 放たれた14.5×114㎜徹甲弾が先頭のクルセーダーの左前輪(誘導輪)に命中し、履帯の金具を千切り飛ばして前輪を破壊する。その拍子に切れた履帯の影響で、先頭のクルセーダーは車体を少し左回転させてLH-4、AS-4のいるビルの中央あたりに停止する。二両目は突然のことで対処できず、先頭のクルセーダーの側面に突っ込んで停止する。

 

「Nice Shot!AS-4、次は砲塔天板の中央後部を撃ち抜け。そこが弱点だ!」

 

『Yes,Sir!』

 

 AS-4はスタルカーの指示に従う前に二両目のクルセイダーのエンジンに二発撃ち込んでエンジンを破壊すると、指示通りに砲塔天板の中央後部を狙い撃つ。寸分狂わず狙い通りに命中するも特に変化はない。

 

「そのまま、同じ場所を撃て!」

 

 指示に従ってAS-4はもう一度撃ち込む。放たれた二発目の弾丸が、一発目で穴が開いたいくつかの砲弾の薬莢の一つに入って金属同士が接触し、火花が散る。薬莢内の火薬に火花が散って火が付いて燃える。

 

 燃え広がった火薬の火が穴から吹き出し、他の穴が開いた薬莢に燃え移る。そして、比較的小さい穴の開いた薬莢にも火が燃え移り、内部の火薬が急速に燃える。

 

ゴーーーーーッドゴォォォンッッ!

 

 ハッチが一斉に開いて火柱が上がり、その直後に砲弾の誘爆によって二つの砲塔が宙を舞う。乗っていた不良達も真っ黒になりながら車外に吹き飛ばされた。先頭のクルセイダーの乗員は爆発音に驚いて全員、戦車を捨てて逃げていった。

 

「よくやった、AS-4。帰ったらビールを奢る」

 

『ホ、ホントですか!』

 

『AS-4!お前まだ懲りてないのか!スタルカーも奢るな!』

 

「ウクライナビールでいいか?」

 

『はい!』

 

『おめーら、なぁッ!』

 

 無線で堂々と未成年に酒を飲ませようとするスタルカーと酒を飲んだことがある未成年(AS-4)。運び屋は戦いながらその会話に割り込む。

 

「それより、大体の不良共は掃討できたが、ワカモが見当たらない。もう既にシャーレのビルに侵入したかもしれん」

 

『分かった、取り敢えず地上部隊はこのままシャーレのビルの防衛を行う。そっちは引き続き偵察と援護を頼む』

 

「了解」

 

 

 

 スタルカーと無線を終えた運び屋は疎らとなった不良達を四人と先生指揮下の生徒に任せ、先生の元に向かう。先生の元に着くと、地面に座って戦闘の余波で軽傷を負った先生の右腕にチナツが包帯を巻いて治療していた。

 

「大丈夫か、先生?」

 

「爆発時の破片が掠っただけです。それより、戦況は?」

 

「不良達は撤退し始めてる。寄せ集めだった事と、戦車と言う優位性(アドバンテージ)を失って士気が低下したからかと」

 

 運び屋の報告を聞いて先生は包帯が巻き終わってから立ち上がると、シャーレのビルの方を見て確認する。

 

「ただ、不良共を指揮していたはずの矯正局を脱走した生徒が見当たりません。恐らくシャーレのビル内部に侵入した可能性が高い」

 

「情報ありがとうございます。運び屋さんはこの後は?」

 

「シャーレのビルの防衛を行います。不良共が再度襲撃を仕掛けるかもしれないので」

 

「分かりました。あ、サオリさんはお返ししますね。十分戦ってくれましたから」

 

「了解。サオリにそう言って頂いたと伝えておきます」

 

 その後、先生はサオリを抜いた指揮下の生徒と共にシャーレのビルに入っていった。運び屋は戻ってきたAS-1、錠前 サオリに先生の指揮能力について尋ねた。

 

「適切なタイミングで的確な指示をされていたのでとても戦いやすかったです。ボスが先行して暴れている間、ボスの邪魔にならないように、かつ倒し漏らした不良達を優先的に倒すよう指示を出していました」

 

「先生の指揮に不備は無かったか?」

 

「ありません。強いて言えば、ボスや私達のようにパワーアーマーやボディーアーマーといった防具を付けていないにも関わらず、私達のいる戦闘中の前線に来ようとしてたこと位です」

 

「先生はパットン派か……。分かった、一先ず休め」

 

「ハッ!」

 

 サオリは敬礼してLH-1、2と共に休んでいるAS-2、3の元に向かう。運び屋はM60の再装填を終わらせると無線でスタルカーと連絡を取り、シャーレのビルの入り口付近に簡易的な防衛陣地を築くことを話し、戦闘の際に破壊された乗用車や瓦礫で簡易遮蔽物を設置する。

 

 また、乗り捨てられた一両のクルセイダー(履帯破損)を運んで遮蔽物の後ろに設置し、砲台として再利用する。クルセイダーには乗車経験のあるLH-1(砲手)とLH-2(装填手)が乗り込んで襲撃に備える。簡易陣地が完成すると、運び屋も遮蔽物にM60を持って休憩を終えたAS-1、2、3と共に歩哨に付いた。

 

 

~数時間後~

 

 不良達の再襲撃は起こらなかった。日が沈みかけの夕暮れ時になってやっと先生が一緒に入った生徒とリンと共にシャーレのビルから出てくる。手には建物に入る前に持っていなかったタブレットを持っている。

 

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻せたので、もう問題ありません」

 

「運び屋さんとスタルカーさん、それにアリウス分校とロナーヘルメット団の生徒達もありがとうございました」

 

 そう言って先生は運び屋達に頭を下げる。

 

「いえ、ちゃんと報酬をいただければ問題ありません」

 

「あ!それで、その、報酬なんですが……」

 

「ああ、その件でこちらから提案がある」

 

「提案?」

 

「そう。内容は、シャーレにアリウス分校生徒全員を所属させてほしい」

 

 それを聞いて先生とリンは顔を見合わせる。運び屋は話を続ける。

 

「連邦捜査部シャーレは今日、始動したばかりだ。先生以外に人はいない現状、先生の護衛や先生の指示で動かせる即応部隊は必須だと俺は思う。生徒達の力量は今回の騒動で証明できたしね」

 

「……まるで今回のシャーレのオフィスビル占拠を初めから知っていたみたいですね」

 

「さぁ?何のことでしょうか」

 

 睨みつけるリンに運び屋はあっけらかんと答える。

 

「ま、受けなければ金銭で払ってもらいます。どうしますか、先s「受けます!」おおぅ、即答」

 

「先生!素性が知れない方の提案をすぐに受けるのは早計では!」

 

「大丈夫だよ、リンちゃん。それに運び屋さん、あなたは私にアリウス分校の後ろ盾になってほしいからこんな提案をしたんでしょう?」

 

 先生の問いに運び屋は、頭を掻きながら答える。

 

「まぁ、それもありますが、あなたは誰かが手助けしないと過労でぶっ倒れそうなので」

 

「あっははは、何言ってるんですか」

 

「未来の話だよ(ガチトーン)」

 

 ガチ目に答えた運び屋に、先生は冗談だと思って笑う。そんな中、警戒を終えてビルから降りてきたスタルカー達がやってくる。

 

「運び屋、何の話してるんだ?」

 

「先生の過労について」

 

「今すぐ休め(ガチトーン)」

 

 スタルカーの言葉に先生はさらに爆笑する。

 

「ああ、面白い」

 

「「どこが?(半ギレ)」」

 

「はぁ、分かった、分かりました。ちゃんとみんなを頼ります、これでいいですか」

 

「「オー、ケイ!」」

 

 運び屋とスタルカーのステレオ返答に、先生は再び爆笑する。先生、どこが面白いの?(生徒並感)

 

「それじゃ、正式な手続きはまた今度と言うことで」

 

「ええ、また今度」

 

「それでは」

 

 そうして、運び屋とスタルカー達は帰路につく。

 

 

 

 

 その後、先生は指揮下の四人とリンを帰らせると、一人でシャーレの部室の隣にある個室のベットの端に座る。

 

「やっと、一日が終わった」

 

 先生は、今日一日に起こった出来事を振り返って呟く。

 

 目が覚めたら見知らぬ場所にいて、天使の輪の様な物を浮かべている少女達に会って、不良に占拠された部室を取り返しに行って、戦闘になって巻き込まれて、どこからともなく現れた妙な二人組と部下の生徒達との共闘、そしてシャーレの奪還とアロナとの出会い。

 

 濃密な一日を過ごした中で、先生が一番印象に残ったのは運び屋だった。何故か運び屋に関しては初めて会った気がしなかったのだ。

 

「彼とは……どこかで、会ったことがある?」

 

 しかし、先生に運び屋と以前に会った記憶はない。それ以前に、自分がどこで生まれ育ち、どこで生活していたのか、家族や友人はいたのか、自分の今までの人生の記憶がない。唯一思い出せるのが“黙示録(Apocalypse)”と言う単語。

 

「“私”は………誰?」

 

 そう言うと先生はおもむろに腹部へ手を伸ばす。スーツを捲ればベルトの間にピストルが挟まっている。シャーレ奪還の際に倒された不良が手にしていたものを護身用に拝借していたのだ。

 

 それを手に取ると個室の机に座って卓上ランプを付ける。ピストルからマガジンを抜いてスライドを引き、薬室から弾を取り出す。

 

 そして、先生はスライドの切り欠きをスライドストップの突起に合わせるように引き、スライドストップの反対側のピンの突起を押し込んでスライドストップを外す。次にスライドをフレームから分離し、スライドのリコイルスプリングプラグを軽く押し込んでバレルブッシングを少し回し、リコイルスプリングプラグとリコイルスプリングを取り出す。バレルブッシングを回し外してバレルからリコイルスプリングガードを外し、スライドからバレルを取り出す。

 

 今度は逆の手順で組み立てる。十秒も掛からずに終えてスライドを何度か引いてスムーズに動くのを確認し、マガジンに薬室から抜いた弾を込めてM1911A1に装填する。トリガーを引いてハンマーを上げると机の上に置く。

 

「できた、通常分解。………なんで、できたんだろう?」

 

 先生は無意識にできたM1911A1の分解、組立に困惑する。しかし、その理由が分かる訳がなく、諦めてベットに仰向けになって眠りについた。




次回はプロローグ後の閑話です
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