2026/3/9 一部文章変更・追加
第一話 出会いと不良達の襲撃(運び屋を添えて)
先生がキヴォトスに来て一ヶ月が過ぎた。先生は予想以上の仕事量に多忙を極め、呻き声を上げながらリン達、生徒会から頼まれた仕事に取り組んでいた。
地獄のような仕事量を捌き切ってから数日後、通常業務が一段落して先生がコーヒーを飲んでいると、
『先生、ちょっといいですか?』
「どうしたの?」
『はい、生徒からの助けを求める手紙の中に不穏な手紙が届いています。一度読んでいただけますか?』
「いいよ。さぁて、どれどれ?」
手紙の内容はアビドス高等学校からの救援要請だった。内容は地域の暴力組織による攻撃で弾薬等の物資が不足しているため助けが必要とのこと。
「確かアビドスって前はトリニティーに並ぶマンモス校だったかなり大きい自治区よね?」
『はい!街のど真ん中で道に迷って遭難する人がいるぐらいだそうです。にわかには信じられませんね、さすがにちょっとした誇張だと思いますが……。でも、暴力組織による攻撃なんてただ事ではないです。何かあったのでしょうか?』
「この手紙だけじゃ分からないけど、逼迫しているのは確かね。すぐにアビドスに行こう!」
『さすが、大人の行動力!かしこまりました!すぐに出発しましょう!』
先生は手紙を読んで即決すると、リュックの中身(一日分の水と携帯食料等)と
~二日後~
先生は遭難していた。地図を頼りにアビドスへ訪れたものの、砂漠化の影響でビルが砂に埋もれている場所があったりで目印になるような建物が見つからなかった。コンパスは持参しておらず(地図を見れば問題ないと思ったため)、なんとか太陽の進む方角から方位を導き出して道を進んでいた。
しかし、水と食料が底をついて昼と夜の寒暖差と歩き続けたことによる体力の消耗で地面に倒れてしまう。空腹と喉の渇きでしばらく動けずにいると、先生の後ろから自転車に乗った少女がやってくる。
「大丈夫?」
「み、水……」
隣で自転車を止めた灰色の髪に獣耳を生やした少女が先生に尋ねる。先生は手を伸ばしながら掠れた声で答える。少女は肩に掛けたバックを漁ってペットボトルを取り出すと、自転車から降りて先生に差し出す。
「はい、エナジードリンク。ランディング用なんだけど、お腹の足しにはなると思う。コップは、」
少女がペットボトルを手渡してコップを渡そうとするが、先生は辛抱たまらず、キャップを開けて口を付けてゴクゴクと飲み始める。
「あっ、それ……」
「プハーーッ!生き返ったぁッ!………ふぅ、あ、ごめん。全部飲んじゃった」
「ううん、気にしないで。所であなたはなんで倒れてたの?」
少女に聞かれて先生は、ここに来た理由とここまでの道のりを少女に話す。少女もそれを聞いて納得し、自身がアビドス高校の生徒であることを話して、一緒にアビドス高校に向かうことになった。先生がシロコの肩を借りながらアビドス高校に向かう間、それぞれ自己紹介をしてたわいもない世間話をしていると、アビドス高校が見えてくる。
校門の前まで来ると、反対から別の人影が近付いてくる。少女、砂狼シロコにとっては初めて、先生にとっては数日ぶりに会う人物だった。
「運び屋、なにしてるの?」
「ん?先生か。今は、アビドス地区のマッピングをしてるところだ。隣の子は?」
「この子は、ここの学校に通ってる生徒の砂狼シロコさん。シロコさん、彼の名前はクーリエ。連邦捜査部シャーレの臨時教官をしている人だよ」
「あと、先生みたいに『運び屋』とも呼ばれてる。まぁ、部活の外部コーチみたいな者だ。よろしく」
「うん、よろしく。クーリエさんも私の学校に用があったりするの?」
「いや、別に用はないが……何かあるのか?」
先生は運び屋にアビドスからの手紙の内容を伝えると、運び屋は同行を申し出て先生はそれを受けた。先生と運び屋はシロコに付いて行き、アビドス高校の廃校対策委員会の部室に案内された。部室には三人の生徒が話し合っていた。
「おはよう、みんな」
「おはようございます、シロコ…先……輩?」
部室に入って目の前にいた黒髪の獣耳を生やした少女が、シロコの後ろに付いて入ってくる二人に気付いて驚きの表情を浮かべる。
「ちょッ、後ろの二人だれ!」
「わぁ~。シロコちゃん、この人達拉致して来たんですか~☆」
「違う、ここに用事があるみたいだから連れてきた」
「用事、ですか?」
驚きの声に続いて物騒な言葉が出るが、一番奥でノートパソコンを開いている赤い眼鏡を掛けた子が疑問符を浮かべる。先生はワイシャツの胸ポケットに入れていた身分証を見せる。
「私は連邦捜査部シャーレの先生。それで隣のこの人は」
「シャーレで臨時教官をしているクーリエだ、『運び屋』とも呼ばれている。よろしく」
「よ、よろしくお願いします!私はアビドス高校一年の奥空アヤネです!」
「お、同じく一年の黒見セリカよ」
「アビドス高校二年の十六夜ノノミと申します☆」
三人はそれぞれ自己紹介すると、赤い眼鏡を掛けた少女、奥空アヤネが立ち上がって先生の前まで来る。
「あの!手紙、見てくれたんですか!!」
「そう!アヤネさんの手紙を見て来たの。あと、これも渡しにね」
そう言って先生はリュックからタブレットを取り出して、少し画面を操作するとアヤネに手渡す。手渡されたアヤネが画面を見ると、『物品譲渡証明書』と文字が書かれており、その下に譲渡する四種類の弾薬の名前と備品セットが書かれていた。
「これにサインしてくれれば、今日か明日には弾薬と備品が届くはずだよ」
「ありがとうございます!もう弾薬が残り少なくて次に攻撃を受けたら、もう持ち堪えられないところでした」
目尻に涙を浮かべるアヤネはサインすると、タブレットを先生に返す。そのタイミングで運び屋が質問する。
「暴力組織から攻撃を受けていると先生から話は聞いたが、どんな奴らなんだ?」
「はい!暴力組織の名は“カタカタヘルメット団”。ヘルメットを被った不良集団です!」
「不良?この学校の?」
「いえ、おそらく他校の不良生徒が集まって結成した不良集団です。ここ数日、以前にも増して攻撃の頻度が上がってて……。あ!ホシノ先輩にも物資補給の事を伝えないとですね」
「じゃあ、私が起こしに行ってくる。多分、いつものとこで寝てるはずだから」
そう言ってセリカは部室を出ていく。
「他にも生徒さんがいるの?」
「はい、この廃校対策委員会の委員長で三年の小鳥遊ホシノ先輩です」
先生の問いにアヤネが答えたと同時だった。
ダダダダダダダダダダッ!
外から銃声が鳴ったと同時に部室の窓ガラスが無数の銃弾により割れていく。運び屋はすぐに先生に抱き着いて、背中を窓ガラスの方へ向けて先生が怪我しないようにする。
「これが暴力組織からの攻撃か!」
「ん、本当にしつこい」
「先生は窓から離れててくれ!」
先生を離すと運び屋はレッグホルスターからレンジャー・セコイアを抜いて、部室の窓側の壁に行って外からの攻撃から身を隠し、銃撃が収まってから壁から顔を出して窓の向こうにいるヘルメットを被った不良生徒を確認する。
「
運び屋が敵数と武装している武器の種類を伝えると、セリカがピンク髪の生徒、小鳥遊ホシノを連れてやってくる。
「先輩!寝ぼけてないで準備して!」
「もぉ~~、これじゃあおちおち昼寝もできないじゃないかぁ~」
うへぇ~と言いながらガンラックからショットガンを手に取ると、ホシノは弾薬箱から残り少なくなったショットシェルを手に取ってショットガンに装填していく。
『アビドス高校の諸君、今度こそお前らの校舎を占拠させてもらうぜぇ!』
外からヘルメット団のリーダーらしき赤いジャージの少女がメガホン片手に叫ぶ。運び屋は不良生徒達を観察して、妙に装備が整いすぎていることに疑問に思う。
「先生は隠れてて」
そう言うと、シロコは窓から飛び降りて不良生徒達に攻撃を仕掛ける。
「私達も校庭に急ぎましょう」
「その前に聞きたいことがある。屋上の鍵は開いてるか?」
「え、開いてるけど」
運び屋の問いにセリカが答える。それを聞いた運び屋はレンジャー・セコイアをレッグホルスターに戻して背中にモシン・ナガンを出現させると、手に取ってボルトを引いて弾が込められているのを確認する。
「俺は屋上から狙撃支援を行う。君達はいつも通りに戦ってくれ」
そう言って運び屋は部室を出ていく。ホシノ達は色々聞きたい事(突然背中にライフルが出現した事など)があったが、取り敢えず迎撃のため校庭に向かった。
ポツンと取り残された先生は、タブレットを見てアロナを呼ぶ。
『どうしました、先生?』
「アロナ、いつでもバリア張れるよう準備してて」
そう言ってショルダーホルスターからガバメントを取り出し、マガジンを抜いて装弾されているのを確認する。マガジンを装填してスライドを少し引いて薬室に弾が装填されているのを確認し、スライドから手を放してハーフコックしたハンマーを下げる。
「私も出る。防御は任せるよ」
『わ、分かりました!でも、無理しないでくださいね!』
「うん、分かってる」
そう言って先生も校庭に向かった。
運び屋は屋上に着くと、モシン・ナガンを屋上の手すりに乗せてPUスコープを覗いて敵の配置を確かめる。
(正面に四割(八人)、左右に一割(二人)ずつ、後方にリーダー合わせて四割(八人)。数に物を言わせた戦術か)
運び屋は敵が包囲殲滅を狙った戦術行動を取っていると推測する。正面にヘイトを集め、左右から攻めていくシンプルな戦術。正面に気を取られれば左右から攻撃され、それに対応しようとすれば正面からの攻撃を受ける。敵は正面の誰かが倒れても後方からすぐに対応できるようにしている。
それに加え、校庭全体に多種多様な障害物が並べられており、それを敵(不良生徒)味方(アビドス)どちらも利用できるようになっている。一、二回ならまだアビドス高校に地の利があるが、十回以上も攻撃されていれば逆に敵に有効利用されるのも無理はない。
「ウヒャヒャヒャヒャッ!あいつら、全然連携取れないでやんの!」
「弾薬を切らしているとの情報も本当のようだな!」
不良生徒達の言葉を聞いてスコープから目を離して下を見れば同じ場所にシロコとノノミが倒れており、そこにホシノが盾を持って駆けつける。不良生徒の銃弾を盾で受けてシロコとノノミの撤退を助けるが不良の一人が盾に向かって手榴弾を投げる。
(ここだな)
運び屋は再度、スコープを覗いて右側から攻めてくる二人のうち、手榴弾を投げた不良生徒の隣で狙いを定めている一人に照準を合わせる。狙いは頭部へ。
ドガァンッ!
手榴弾の爆発と同時に引き金を引く。
ダァンッ!
放たれた弾丸は不良生徒の頭部へ命中し、頭部が弾かれて軽く吹き飛び、そのまま倒れて動かなくなる。その隣にいたもう一人の不良生徒が動揺しているうちに、その不良生徒の頭部を撃つと着弾を確認せずに身を隠すため、運び屋は後ろに飛んで仰向けに倒れる。
「
そう言ってボルト引き、空薬莢を排出してボルトを押し戻し、次弾を薬室に送り込んだ。
先生は校舎の出口に着くと、目の前の障害物にアビドス高校の五人が背中をつけて座っていた。出会った時と打って変わって体のあちこちに傷ができていた。
「みんな、大丈夫!」
「先生!なんで」
「君達が戦ってるのに何もせずにいられるわけ」
そこまで言うと、先生の視界の左端に不良生徒の姿を捉える。すぐに手の持ったガバメントを不良生徒に向けて
ダンダンダンッ!
「グェッ!」
頭部に3発の45口径弾を食らった不良生徒はその場で倒れる。その後ろにいたもう一人の不良生徒は遮蔽物へ身を隠そうとするが、運び屋の狙撃により身を隠そうとした不良生徒は先に倒れた不良生徒の上に覆いかぶさるように倒れる。
「アヤネ、セリカは左を警戒!」
「は、はい!」
「りょ、了解!」
「シロコは右を警戒!」
「ん!了解!」
先生は運び屋の援護に心の中で感謝しつつもすぐにシロコ達に指示を出す。雰囲気が変わった先生に気圧されながらアヤネとセリカは先生の指示に返答する。シロコは意気揚々に返事をする。
「ホシノ、ノノミ、弾はどれくらい残ってる?」
「……私は銃に8発、予備は5発だよ~」
「私はあと5、6秒で撃ち切りです」
「了解、他の三人は?」
「私はマガジンに15発、予備のマガジンは二つです」
「私は30発でさっきリロードしたので最後」
「私もシロコ先輩と同じで30発、予備は一つです」
それを聞いて先生は弾が思った以上に少ないことに頭を抱えそうになるが、すぐに言葉を放つ。
「会って早々で悪いけど、今から私が指揮を執ります!セリカは左、シロコは右から敵の側面に回って。もし、不良がいれば倒して余裕があらば不良から手榴弾を奪って頂戴。うまく使えば不良達を一網打尽にできる!」
「「了解!」」
「ノノミは二人が行ったら正面に三秒だけ撃って不良達に弾を浴びせて。撃ち終わったらホシノはノノミの前に立って盾で弾を受けながら前進して。ホシノの後ろには私とノノミの順で付いてく」
「「「「「え?」」」」」
先生の発言に五人は驚愕する。
「先生は外から来た人だから一発でも当たったらマズいんでしょ!」
「そうです!危険すぎます!」
「おじさんもやめといたほうがいいと思うよ?」
セリカ、アヤネ、ホシノに止められるが、先生の覚悟は変わらない。
「危険は十分承知してる。それにこういうのはもう経験してるし、それに屋上からの支援もある。乗るか反るか、どうする?」
不敵に笑う先生に五人はそれぞれ返答する。
「私は乗る。やってみよう」
「分かりました。そこまで言うなら、乗ります!」
「私も、乗ります!」
「~~~ッ、あぁ、もう!いいわ、乗った!」
「うへぇ~、責任重大だなぁ。いいよ、乗ったげる」
五人全員の了承を得る。先生は頷いて答える。
「よし!不良達に目に物見せてやろう!行くぞ!」
「「「「「おう!」」」」」
こうして先生指揮の下、反攻作戦が始まった。
一話で終わらんかった。
あ、ちなみに先生は女です。
兄弟姉妹の現在
長男
→アビドスで狙撃支援中(スタルカーから貰ったライフルと“特殊弾”の実践試験も兼ねる)。
次男
→ロナーヘルメット団本部に戦車が来たとの連絡を受けてシャーレから本部に移動中。
長女
→ルノーFT-17(13.2mm機銃型)でロナーヘルメット団戦力と(意図せず)睨み合い中。
次女
→不良集団に破壊された建物の修復が終わって、新たに豆腐建築を量産中。