クリスマスの余韻が城を包み込んでいようが、デルフィーニには関係がなかった。祭りには後始末が付き物である。つまり、クリスマスの翌日、首席および監督生たちは召集された。もちろん、デルフィーニは熱っぽい身体を引きずるようにして馳せ参じた。なんで私が監督生? と思いはしているし、こんなに虚弱では学業に支障をきたし、卒業できないのではないかと心配だった。時機が悪すぎる。監督生に就任したばかり。三校対抗試合に伴う客人のおもてなし任務。おまけに普通魔法試験が控えている。六年生は監督生二年目で、慣れている。そして重要な試験が控えているわけでもない。七年生は監督生たちの指揮をとる。ひとまず指示を与え、なにかあれば飛んでいけばよいだけである。高等魔法試験が控える身だが、監督生――実働部隊でない分、勉強に集中できる。よって、今年監督生になった五年生は不慣れかつ、例年より仕事が増えており……損な役回りであった。
朦朧としながら薔薇園の後片づけをして――なんとロジャーとロングボトムが助っ人に来てくれた――設営だけで十分助かったのにと言ったが、彼らは「片づけまで完了してこその助っ人」と言って譲らなかった。
ロジャーは「フラーが素敵な庭園だって誉めてくれた」と笑顔全開であった。しかし、一秒後に悪鬼のごとき形相になった。「スネイプ、薔薇の茂みを吹き飛ばす」事件は庭園班の怒りを買っていた。たかが茂み一つ、されど一つである。ロジャーの場合は、フラーとの逢瀬を邪魔された腹立ちもあるに違いない。セドリックはロジャーに同調し「あれはどうかと思う」と力強く頷いていた。デルフィーニはあらぬほうに眼を逸らし、昨夜の衝動的な行動を忘れようと務めた。どうかしていたのだ。正気ではなかったのだ。唇を奪うなんて。
怒りと非難、羞恥と動揺が渦巻くデルフィーニたちとは違い、ロングボトムは大変悲しそうだった。アーチや壁に蔓薔薇を這わせたり、植えた薔薇たちの世話を主にしたのはロングボトムである。悲しみも深いに違いない。ロングボトムだってスネイプに怒る権利はあるのに――と、デルフィーニは彼に哀れみを覚えた。己を過小評価する嫌いがあるのは家庭環境によるものか――ロングボトムの大奥様は女傑と言われている――単なる性質か、とまで考えた。そうして庭園を眺め、思いついた。無事な茂みに向かい、杖を振る。薔薇が一輪二輪……花束ができるほど飛んできて、宙に浮かんだ。再び杖を振れば、棘がぱらぱらと落ちる。ポケットからリボンを取り出す――いくつかリボンや髪紐を入れておくのが癖であった――使っていないものがあった。
己のもとへやってきた薔薇の花束を、デルフィーニはロングボトムに差し出した。
「叱られてばかりで、あまり誉められていないんじゃないの?」
せっかく貢献活動をしたのだから、手紙と一緒に送ってあげなさいよ。
昨年、レイブンクロー対グリフィンドール戦の後、シリウスがホグワーツに二度目の侵入を果たした。ひとりの生徒が落とした合言葉のメモが原因だったらしい。本当はシリウスがグレンジャーの猫を使って、メモを盗ませたらしいが。シリウスは「まさかアリスとフランスの息子に不利益が……」と落ち込んでいた。結果としてロングボトムは祖母に吠えメールを送りつけられたとか。シリウスが悪いのか、合言葉をしょっちゅう変えるガドガン卿が悪いのか……合言葉だけで認証し、シリウスを通した咎で、ガドガン卿はグリフィンドールの門番を馘首された、と聞いている。元はといえばグリフィンドールの門番――太った貴婦人というらしい――を傷つけはしなかったものの、怯えさせたのシリウスである。よっ てシリウスのせいでもあるのだ。
シリウスの二度目の侵入時、デルフィーニは寝込んでいた。なので伝聞と、後にシリウス本人から聞いただけなのだけど。まとめるとロングボトムはとんだとばっちりを受けた。ホグズミード禁止令まで出たようで――それはもう解除されているようだが――ロングボトムを不憫に思ったのである。彼が厳しい祖母に育てられ、頭を押さえつけられるような成長過程を経たのは、闇の陣営もといベラトリックスのせいであるし。
「……いいの?」
ロングボトムが、蚊の鳴くような声で訊いてくる。いいもなにも、とデルフィーニは肩をすくめた。
「どうせ撤去するんだもの」
切ってしまってそこここに飾ってもいいが、そんな気力はない。ご自由にお持ち帰りください、としてもいいが……面倒だ。無駄なもめ事が起こる気がするし、遊び半分で茂みを吹き飛ばしたり、アーチを壊すものが出てこないとも限らない。
「あと、あなたのところのコリンなんとかなら、庭園の写真くらい撮っているでしょう」
グリフィンドールの監督生と首席が「撮影係」として、会場に引きずり込んだ、らしい。マグル生まれのコリン少年は三年生なのだがパーティへの参加を許されたのだ。彼は生き生きと会場を飛び回り、人々を撮り、庭園を撮り……『妖女シスターズ』も撮り、と活躍していた。
代表選手も餌食になった。ロジャーとフラーは乗りに乗っていた。デルフィーニはセドリックを盾にしようとしたが、彼に引きずり出された。ポッターはいまいち乗り気ではなく、パートナーのグリフィンドール生に足を踏まれていた。グレンジャーとクラムは硬直していた。チョウ……と彼女のパートナー、クラムのお友達はにやにやしながら代表選手を見ていた。
これは余談であるが、図書館でなにやらもじもじしているクラムをチョウが見つけ「声だけでもかけてみたら?」と何の気なしに言い、クラムがグレンジャーにパートナーの申し込みをして、成立。クラムはチョウに深く感謝して「もしパートナーが決まっていないなら」とチョウに友達を紹介した、という流れらしい。
あまりにめまぐるしかったクリスマスを思い返し、デルフィーニは遠い眼をした。考え事で忙しく、ロングボトムが眼を輝かせ「レディ・ブラックはいいひとだ」と呟いたのに気づかなかった。
祭りの後始末まで終え、デルフィーニは案の定寝込んだ。医務室に世話になっているうちに、神は賽子を転がしていた。ころころころ。
ネビルは花束を寮に持ち帰り、梱包をどうしようと悩んだ。まさかふくろうにそのまま運ばせるわけにはいかないし、袋に詰めても同じである。花束を持って立ち尽くすネビルを、目ざとく双子が見つけた。「へい、どこのかわいこちゃんにあげるんだい?」とからかった。ネビルは「あげるんじゃなくてもらったんだ」と小さな声で言った。が、そんなものでは双子は引き下がらないとネビルは知っていた。なので「レディ・ブラックにもらったんだ」と白状し、経緯を説明した。しまった、庭園から薔薇を抜いてパートナーにやればよかった、と双子は天を仰いだ。しかしそれはロジャーの得意分野であると思い直し、レディ・ブラックこと彼らの友人の思いやりの深さよ……とちょっと感動した。
どう梱包しようか考えているんだ、とネビルは双子に相談した。というか、こぼした。箱詰めだろうと双子は答えた。悪戯グッズの試作品や、材料を入れた「がらくた箱」を彼らは持っていたが、それでは駄目であろう。だってネビルの「ばあちゃん」への贈り物だし。
箱ねえ……と双子が言ったとき、ちょうどハリーが通りがかった。箱? と彼は訊いた。すべては「セドリックの助言に従い監督生用の風呂へ行くべきか否か問題」から眼を逸らすためであった。ハリーからすればセドリックはあまりにも出来過ぎている。代表選手として比べられることもしょっちゅうで、ハリーは彼のことが少し苦手であった。そんな彼からの助言を聞く必要があるのか、あまり考えたくなかったのである。
セドリックの助言問題もとい二月二十四日問題を考えなくて済むのなら、なんだってよかった。ハリー……と、ロン、ハーマイオニーは双子とネビルからかくかくしかじかで事情を聞いた。
ロンが言った。「君、綺麗な箱があるじゃないか。ほら、シリウスが君に贈って……くれた……」と。仲間のうち二人はとてもよい仕上がりになったのに、己だけは野暮ったく古くさい衣装を纏わざるを得なかった、心の傷は癒えていなかった。親友の心の傷の深さを察したハリーは、そっと話を引き継いだ。「僕の衣装箱を使えばいいよ」と。衣装箱は花束を入れるには大きすぎたが、ハーマイオニーの手によって、ちょうどよい大きさになった。そして少しでも長く保つように魔法がかけられた花束は箱に納められた。双子の手によって緩衝材も詰められ、ネビルに話を持ちかけられたコリンは、喜んで写真を提供した。夜闇のなか、幻想的に浮かび上がる薔薇園の写真。それに、正装を纏ったネビルの写真も。
クリスマスの余韻もあり、談話室の一角はちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。ハーマイオニーが提供した包み紙とリボンによって、それは立派な贈り物ができた。ネビルはほっと息を吐き、少しだけ眉を寄せた。喜んでくれるだろうか、と。
ハリーが「君のおばあさんはやっぱりなにかの剥製のほうが好きかな?」とからかった。ネビルは首を振る。脳裏に過ぎるのは「立派な魔法使いになれるように」と贈ってきたクリスマスプレゼントのことだった。闇の魔術に対する防衛術に関係する本がたくさん。考え、ネビルは返した。「僕が監督生にでもなったら喜びそうだけどね。アルジー大おじさんに鰓昆布を贈られて喜ぶような孫じゃなくて」と。「それ、なんだい」とロンが食いついた。ネビルは「ムーディに『地中海の水生魔法植物とその特性』を借りて――」と掻い摘んで説明した。鰓昆布は水中で呼吸ができるようになる優れ物だよ。泳げるようにもなる、と。ちなみにハーマイオニーはネビルの贈り物が濡れたりしたら大変、と防水呪文をかけていて、聞いていなかった。
約二ヶ月後。
卵の謎を解き明かしたはいいけれど、完全に行き詰まったハリーに救いの手がもたらされることとなる。
試合前日、夜の図書館。ロンとハーマイオニーを呼びに来たネビルの顔を、ハリーはじっと見た。親友二人が図書館を出て行ってもハリーは首を傾げていた。ネビルが訝しんでもおかまいなしであった。考えること五秒。ハリーは天を仰いだ。少々芝居がかった仕草は、彼が知る由もないがジェームズ・ポッターによく似ていた。
意を決して、ハリーは頼んだ。
「もう君しかいないんだ」
鰓昆布をくれないか、と。ネビルは快く鰓昆布を渡した。ほぼすべて、バーテミウス・クラウチ・ジュニアの計画通りであった。
本棚を貫き、彼らを透視していたジュニアは、安堵のあまり眼を閉じた。ポッターめ、なぜ課題に取りかかるのがこんなに遅い。水中での呼吸確保と素早く泳げること。この二点を満たすものを念のために仕込んでおいてよかった……。
泡頭呪文は四年生では習わない。しかも、分類が防毒その他にあたるのだ。魔法薬学でよく使うことになる呪文である。水中での呼吸に絞ると見つけられない。仮にポッターが上級生に助けを求め、泡頭呪文を知ったとしても……どうやら泳げないようだし。まさかポッターがカナヅチなせいで我が君復活計画が破綻しかけるとは……。優勝杯計画を破棄し、迷路で攫ってどうにかするしかなくなるところであった。あまりにも危険だ。ポッターは極めて厳重に守られているのだから。
我が君の娘――デルフィーニ・ブラックと違って。
バーテミウス・クラウチ・ジュニアがハリーを抜かりなく監視しているのと同時刻、デルフィーニは銀色の猫に呼び出され、二月の寒さに身を震わせながら、マクゴナガルの室に向かった。なにかをやらかしていて――覚えはないけれど――呼び出しの上減点だったらたまらない、とデルフィーニは憂鬱になった。ただでさえ体調を崩しがちで、一月のホグズミードだって行けなかったのに。最近まったくいいことがない。ロングボトムからお礼にと写真をもらったが……あれはよいことに数えていいのだろうか。コリンなんとかが撮った、デルフィーニとセドリックが踊っている写真。それにツーショット写真。
よく撮れていたが……と思い、首を振る。まるで恋人同士のようではないか。いや、そうなのだけど。
じわじわと顔が熱くなる。狼が鼻を鳴らし、早く行こうよとばかりに先を行く。ようやっとマクゴナガルの室にたどり着き。
――デルフィーニは魔法の眠りに就き、湖底に沈むこととなる
翌朝、代表選手たちは怒り狂っていた。第二の課題の会場、湖にて「大切なもの」が「人質」だと知らされたからである。ものと人じゃあ違うだろう。四人の代表選手の心は一つだった。ふざけるな、である。
殊にフラー・デラクールとセドリック・ディゴリーは怒髪天を衝いていた。単純に、にんじんをぶら下げたつもりだったダンブルドアはいささか――かなり、計算が狂ったと思った。フラーは可愛い妹が人質に、しかも湖底に! と気も狂わんばかりであった。競技だの課題だの優勝だのは吹き飛んでいた。セドリックは優れた点が多くある恋人――そう恋人――が、か弱いことを知っていた。嫌というほどわかっていた。ダンスパーティの準備その他で疲労し、医務室に世話になるくらいには身体が弱いのだと。寒さが苦手で、一月のホグズミード行きも駄目だったことを。
つまり、二月の寒い時期に湖底に沈めていい女ではないのだ。
開始の笛が鳴ったとたん、フラーとセドリックは動き始めた。フラーは泡頭呪文を行使し、素早く湖に潜った。セドリックは傍らの
そうして、水魔に命じた。
「行け」
冷え冷えとした主の声に、蒲の穂のたてがみ持つ馬の姿をしたそれは、ぶるりと身を震わせ――速やかに命に従った。
どこからか現れた大量の
ハリーには悪魔ことバーテミウス・クラウチ・ジュニアの加護があることなどセドリックはもちろん知らないし、ハリー以外の代表選手を妨害しようと、ジュニアがあれこれ仕掛けていたことも知らない。鰓昆布の効果に感心すればよいのか、悔しがればよいのか。が、セドリックは己のちっぽけな矜持を湖に沈めた。優先すべきは人質の救出。セドリックに幸運をもたらしてくれた、いるか座の君を湖底から地上へと戻すことだ。
常のセドリックなら、これはあくまでも課題、競技であるのだと思い出しただろう。人質の身になにか起こるわけがないと。
が、セドリックは平静を欠いていた。石像に縛り付けられ、ぐったりとしている恋人の戒めを素早く解き――慎重に、慎重に行使した切断呪文は頑丈な水草だけを見事に斬ってのけた――水魔に恋人を乗せ、片腕を彼女の腰に回しつつ、片手で手綱を操った。
帰路も妨害があったが、怒れるセドリックと主人に怯える水魔の蹄によって蹴散らされた。
結果、制限時間を一分超過したもの、最初の帰還者となった。歓声も、一番目に帰ってきたというルード・バグマンの叫びも、セドリックは聞いていなかった。
眼を覚ましたデルフィーニが水魔から転がり落ちないようにしっかりと支え、セドリックは水魔を駆った。軽やかに湖面を蹴り、水魔は跳躍する。二月の空の下、飛沫が鈍く光を弾いた。
岸辺で待ち受けていたマダム・ポンフリーは、セドリックに負けず劣らず怒り狂っていた。彼女は生徒を危険に晒すことを嫌っていた。二月に湖で競技など正気の沙汰ではないと、お怒りであった。彼女は鞭のように杖をしならせ、セドリックとデルフィーニを乾かし、毛布をぽんと放った。
「お行きなさい」
元気爆発薬は飲ませてはなりません、とマダム・ポンフリーに命じられた。それを主のいない医務室への入室許可と受け取ったセドリックは、競技そっちのけで水魔を駆った。双子が指笛を吹いていることも、ロジャーが「……僕はあいつを敵に回したくない」としみじみと言っているのも、チョウが「二月の湖……デルフィー、大丈夫かしら。大丈夫じゃないわよね」と呟いているのに気づかなかった。
バーテミウス・クラウチ・ジュニアが、マッド・アイの仮面の下で冷や汗を流していることももちろん気づかなかった。あれだけ妨害したのに……とよろめき、危ういところで体勢を立て直した彼を、騎馬の後を追う闇毛の狼が冷ややかに振り返った。狼はあざ笑うように鳴き、ご愁傷様と尻尾を振った。
正面玄関、石段を駆け上がり、水魔を降りたセドリックは、問答無用でデルフィーニを下ろした。乾かされ、毛布に包まれているとはいえ、その細い身体は、氷のように冷たかった。やや乱暴に、肩に担ぐようにする。デルフィーニが呻いたが無視し、さっさと医務室に向かった。空いている寝台に優しく横たえる――ことはせず、転がした。
「ねえ、セド」
掠れた声がする。セドリックは黙殺した。頭がどうにかなりそうであった。
「私は、」
無視。靴も靴下も脱がせ、放り投げる。デルフィーニが固まった。
「ローブを脱がせてさしあげようか」
それとも自分で脱ぐか。
問いかけつつ、彼女を起こす。デルフィーニは言葉を失っている。聞くだけ無駄だった、とセドリックは彼女のローブを脱がせ、寝台脇に置かれていた椅子にかけた。
寝台にデルフィーニを押し戻し、毛布を掛け、布団も掛け、もつれた黒髪を梳いてやりたいという強烈な衝動を押し殺し、彼女の額に手を当てる。まだまだ冷たい。そして、しばらくしたら熱が出るだろう。
「君になんて仕打ちを」
いくらダンブルドアでも……。まさか闇討ちして、人質を確保したんじゃないだろうな。吐き捨てたセドリックは、か細い声に眼を見開いた。
「呼び出されて、説明を受けて……私は承諾したの」
「なにを」
馬鹿みたいな問いであった。
「人質になるのを」
「二月の湖だぞ。いや、夏でも駄目だろう。特に君は」
ふざけているのか、とデルフィーニを睨む。恋人はふいっと顔を横に向けた。セドリックではなく壁を見つめた。そうして震える声で言った。
「――私のためなら」
あなた、本気を出すじゃない。
まさしく心臓のど真ん中を射抜かれ、セドリックは硬直した。全力を出したが。それはもう必死だったが。いやでも、恋人の身を危険にさらしてまで栄冠がほしいわけでは――。空白の一秒間に怒濤のように過ぎった思考。結局、処理しきれずに目眩がした。
寿命が縮む。この女にかかればまったく冷静でいられない。優等生の仮面はひび割れだらけ、崩壊寸前である。理性なんて脆いものだ。
「デルフィー」
こっちを向いて、と呼びかける。恋人が身じろぎ――眼を瞬いた。セドリックは再び彼女の半身を起こし、囁いた。
「あんな殺し文句を言われたら」
ひとたまりもない。
そうして、これ以上、恋人が危険な矢を放てないように、小さな唇を封じた。