メイプルが転スラの世界に異世界トリップしてしまった!? 作:蘭生愛
翌朝、サリーは目を覚ました。
まだ薄暗い森の中、冷たい朝露が頬を撫でる。
「…よし、今日こそ。」
決意を込めて小さく呟き、木の上から見えた街を目指して歩き出す。
途中、森を抜ける道には魔物の気配があったが、慎重に身を隠しながら進むことで、なんとか危険を避けられた。
胸の奥にはずっと、メイプルのことしかない。
(無事でいて…お願いだから。)
やがて森を抜けると、視界に大きな街の門が現れた。
人々の声、荷馬車の音、焼きたてのパンの匂い。
その全てが、サリーにとっては異世界に来て初めての「人の営み」だった。
「…街だ。」
思わず呟き、胸が熱くなる。
でも感傷に浸っている暇はない。目指すのはただ一つ。
サリーは街に入り、広場や大通りを行き交う人々を目で追った。
そして――
「あっ……。」
広場のベンチで談笑している一人の少女を見つけた。
淡い光に包まれたような存在感、どこか呑気な雰囲気。
それは、探し続けた大切な親友の姿。
「メイプル……!」
気づいた瞬間、サリーの瞳に涙が滲む。
堪えようとしても溢れ出す。
人目なんて気にならなかった。
「メイプル――ッ!!」
叫びながら駆け出す。
メイプルもこちらに気づき、驚いた顔をしたあと、ぱぁっと花が咲いたように笑った。
「サリー!」
次の瞬間、二人は勢いよく抱き合う。
「よかった…よかった…!ほんとに無事で…!」
サリーは声を震わせ、メイプルの肩に顔を埋める。
「えへへ…サリーも無事でよかったぁ!」
メイプルはいつも通りの調子で笑いながら、サリーを強く抱きしめ返した。
涙と笑顔が混じった、再会のひととき。
その場にいたリムルは少し呆気に取られつつも、優しい眼差しで二人を見守っていた。
涙ぐんだまま抱き合った二人。少し落ち着いたところで、メイプルが隣にいた人物を思い出したように振り返った。
「そうだ!紹介するね。この人はリムルっていうんだ!」
「…リムル?」
サリーは、メイプルの横に立つ水色髪の人物を見た。
人間のようでいて、どこか人ならざる雰囲気もある。けれど不思議と安心感を覚える存在だった。
「はじめまして。オレはリムル=テンペスト。……まぁ見ての通り人間じゃないけどさ。」
リムルは少し照れたように笑うと、声を落として言葉を続けた。
「実はオレ、もともとは日本人だったんだ。」
「えっ……!?」
サリーは驚いて目を見開く。
メイプルも横で「えへへ、びっくりだよね!」と相変わらずの調子だ。
「メイプルと同じで、オレも異世界に来ちゃったクチでね。だから日本のこと、多少は分かるんだ。」
「……そうなんですね。」
緊張が少しだけ和らいでいくのをサリーは感じた。
この人も、同じ“日本から来た仲間”なのだと思うと、言葉が自然に出てきた。
「とにかく、まずは腹ごしらえだ。長旅だったろ?今日はオレが奢るよ。」
リムルはそう言って、街の賑わう通りへと案内してくれた。