メイプルが転スラの世界に異世界トリップしてしまった!?   作:蘭生愛

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5話2(サリー視点)

「この辺の焼き串、めっちゃ美味いっすよ!」

無邪気に笑うゴブタに苦笑していたその時だった。

 

「……ゴブタ。」

 

低く落ち着いた声が背後から響く。

振り返ると、背筋の伸びた白髪の剣士――威圧感をまとった人物が立っていた。

 

「ひ、ひぃっ……ハ、ハクロウさん!」

ゴブタの顔から一気に血の気が引く。

 

「またサボっているな。来い、今日の訓練は昨日より厳しくするぞ。」

「ま、待ってください!今オレ、サリーさんと――!」

 

ゴブタは必死に抵抗しようとするが、すでに腕を掴まれている。

このままでは強制連行は避けられない。

 

思わず、私は声をかけていた。

「えっと……その、ゴブタさんをそんなに急に引っ張っていかなくても……!」

 

ハクロウの瞳がこちらに向けられる。

一瞬で背筋が凍るような気配を感じた。

でも、不思議と怖いというより、鋭く見透かされているような感覚だった。

 

「ふむ……お前は?」

「サリーといいます。……その、メイプルの友達です。」

 

名前を名乗ると、ハクロウは腕を組み、しばし私をじっと観察した。

「……目がいいな。焦りながらも視線が揺れぬ。剣の素質がある。」

 

「え、えぇっ!?」

ゴブタが絶望的な顔で叫ぶ。

「ハクロウさん!弟子にするならオレじゃなくてサリーさんにしてくださいよぉ!!」

 

「何を言っとるんじゃ。……だが、確かにサリーには伸びしろが見える。」

ハクロウの口元がわずかに笑みを描いた。

 

ゴブタは地面に崩れ落ちる。

「はぁぁぁ……オレ、助かったけど……サリーさん……すんません……。」

 

私は苦笑しつつも、ハクロウの真剣な眼差しに背筋を伸ばした。

(まさか、ゴブタを助けるつもりが……私が狙われるなんて。)

 

 

そして今、サリーはハクロウと手合わせをしていた。

森の薄暗い空間。ハクロウの連撃が襲いかかる。AGI特化の身体はすでに限界ギリギリの速度で動いている。しかしサリーの目は、単なる速度だけではなく、頭の中の膨大なデータベースを呼び覚ます。

 

(……ここまで来たら、全部思い出す……!)

 

幼いころから積み重ねてきたVRMMOでの戦闘経験。無数の敵の攻撃パターン、間合い、タイミング。空中の軌道、連撃のコンボ、罠の配置――すべてが脳内に鮮明に蘇る。身体が勝手に動き、攻撃を避ける。

 

バッ、バッ、バッ……! ハクロウの竹刀は光のように速いが、サリーの動きはそれを上回る。右に跳び、左に転がり、時にはその場でくるりと回転。攻撃が迫る度に脳が計算を重ね、身体は最適な回避動作を瞬時に選択する。

 

――今までのすべての経験が、ここに活きる。

 

AGI特化の速さは、集中状態の土台に過ぎない。真の強さは、この集中力にある。サリーは攻撃を一切受けず、まるで時間がスローモーションになったかのように敵の動きを完璧に読み切る。

 

「……なんと……!」

 

ハクロウの声が思わず漏れる。どんな連撃も、どんな予想外の攻撃も、サリーには避けられる。まるでゲームの中で培った経験を現実に引き出したかのようだ。

 

サリーは微笑む。額に汗は滲むが、心は完全に静か。どんな攻撃も、どんな相手も、この集中力の前ではただの“動く障害物”に過ぎなかった。

 

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