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最初に気付いたのは、そよ風が吹いている事だった。ざぁ……と、草花が音を立てて靡き、風と共に頬に擦れた。
息を吸い込めば、爽やかな花の香りがして、都市内では味わえない新鮮な空気で肺が満たされる。
瞼を開けると、少し白っぽい青空と小さな雲が見えた。ゆっくりと身を起こすと、花で埋め尽くされた平原が何処までも続いていく景色が目に映る。
絶景だが、シャノンにとっては見慣れた風景だった。
「んん……」
シャノンは唸りながら、指先でこめかみを揉んだ。
(ここに来たってことは……俺は寝たのか)
最後の記憶は、ホルハイヤに言われるがままに炎を出し、アイスを燃やしていた所で終わっている。
覚えている限りだと、実験は日を跨いだ深夜二時まで続けられた。日頃から夜の九時には寝ているせいか、途中で寝落ちしてしまったようだ。
だが、身体には眠気や気怠さは残ってなく、支障なく頭も回る。
「──起きたか」
背後から、重厚な響きのある呼びかけ。
シャノンが振り向くと、幼児が手慰みに書いた様な姿の──竜?がいた。声に反して、竜は表情をニコニコと笑顔で固定している。シャノンは(⌒▽⌒)な感じの竜の顔を見つめ、晴れやかな笑みを浮かべた。
「相変わらず……良い姿だな!」
「嫌味か貴様ァ!!」
開口一番、竜は怒鳴った。ごうっ!と、竜を中心に風が吹き荒れ、花弁を空に巻き上げる。しかし、迫力に反し、表情は(⌒▽⌒)のままである。
竜は表情を変えないシャノンを前に、わなわなと己の両前脚を見つめる。長さは左右非対称であり、右前脚は爪が二個少ない。翼の形もガタガタで、左にはそもそも生えてすらいない。尻尾もやたらとひょろ長く、紐の様になっている。
「この珍妙で惰弱な姿の何処を見て、そんな感想が出てくる!?幼竜にすら威厳で劣るぞ!!」
「全てに決まってんだろ?逆に、その姿の何が気に入らないってんだ」
「逆に言うが、不満の無い所があるとでも?この爪では獲物を引き裂けぬし、牙の無い顎門では敵の喉を食い破る事も出来ぬ。威容を示す翼は片方欠け、勇壮を誇る角は串の様に細い。尾の貧相さといったら、乞食の腕の様ではないか!威厳ある誇り高き竜の姿とは、何も似つかぬわ!」
「つまりそれ以外は完璧。オールオッケー、と……」
「楽観的思想の化身か貴様はっ!?」
竜は叫んだ後も、ぐちぐちと不満を垂れ流し続ける。
やれ、頭に生えている花は何だ。鱗の向きがバラバラだ。この表情では自慢の瞳を見せられない。
シャノンは打ち切るように「はぁ」と溜め息を付いた。
「お前、文句ばっか言わずにそろそろ慣れろよな。もう俺たちが出会って四年……お前がそうなって四年だぞ?」
シャノンは言いつつも、目を細めた。この竜と会ってから、随分と時が経った。
出会いも再会も印象強く、明確に覚えている。四年前、シャノンがスラムでお手伝いをしていた日だ。炎を使いすぎたせいで疲れたのか、速やかに入眠出来た。
目覚めた最初は延々と続く花畑に目を奪われ、後ろを向けば見上げる様な巨竜がいた。紅玉の様な瞳を向けてきていた時の衝撃を、シャノンは今でも鮮明に覚えている。
元は、白亜の巨竜であった。穢れなき純白の鱗に包まれた体躯は、光を反射してしらじらと輝いていた。本竜が語った通りの、角も翼も尾も立派で威厳のある姿に、シャノンは圧倒された。
『貴様……炎を使ったな?』
牙を剥き、獰猛に笑う巨竜の姿に、シャノンは逃げる様に
シャノンは朝食を食べながら、当時三歳の妹達に、不思議な夢の事を話した。見渡す限り広がる花畑と、そこにおっかない竜がいたのだと。すると、ラフシニーは食後にクレヨンで竜を描いてくれた。
完成した絵を見せるラフシニーに『こんなの?』と聞かれ、シャノンは『そっくりそのままだな!』と答えた。妹がこれをもってして竜とすると言うのなら、オリジムシですら明日から竜である。
『貴様ァァアアア!!!いったい何をしてくれたのだァ!!!』
次に再会した時は、巨竜は『こんなの』になっていた。
それ以来、シャノンと竜は夢で会う度に同じ問答を繰り返し、陳腐な言い争いを続けている。
竜も文句を言いはしても、このやり取りを少し楽しんでいるのだろう。毎回教養とウェットに富んだ、バリエーション豊かな罵倒を浴びせてくれる。
「慣れる慣れないではないぞ、この屈辱は……」
竜は溜め息を吐いた。尻尾も垂れさせ、前脚を楽な位置に置いている。
「飽きないな、お前も」
「貴様こそ、飽きずに毎度毎度煽りよるわ」
竜はグルル…と喉を鳴らした。シャノンは胡座を組んで楽な姿勢を取った。
「……それで?此度は随分と燃やした様だな?様々な物が
竜はずいと、シャノンに顔を近づけた。表情はそのままだが、おそらく笑みを浮かべているのだろう。
竜は昔から、炎で何かを燃やす事に執着している。
曰く、炎は竜そのものであり、彼の爪牙、翼、尾なのだとか。竜の炎は宝物庫への鍵でもあるらしく、燃やした物を好きな様に納める事が出来る。
シャノンは炎で多くの物を燃やした日は、決まって夢で竜と会っていた。なんでも、宝物庫に宝が納められる程に、竜と炎は力を増すらしく、呼応して意識が引っ張られるそうだ。
「唐突な実験が長引いてなぁ……あと、鈍器とか爆発物とかも燃やしたし」
「鈍器に爆発物……これか」
竜が少しだけ空を伺うと、突然空中に二つの物体が現れた。二つの物体は、差し出されるようにシャノンの眼前に落ちる。
シャノンは見覚えのある物体──【ほっかほっかDAY】と【ヴィクトリア全史】に顔を顰めた。
「出さなくていいって、こんな物。しまってくれ」
「我もいらぬわ、こんな物。自分で始末しろ」
竜は本当に要らなさそうに言った。
「えー」
「『えー』ではない。この空間は宝物庫だ。物置きではないのだぞ?」
「……メンチカツとかは仕舞ってもいいのに?」
「あれは宝に相応しいが、この二つは明確にゴミではないか」
「炎で燃やして欲しいのか、燃やして欲しくないのか、どっちなんだよ……」
「ゴミは要らん。それだけだ」
シャノンは困り顔で二つのゴミを見つめ、ゆっくりと【ヴィクトリア全史】を拾い上げた。
「……本は俺が燃えるゴミに出す。爆発物の方はどのゴミがいいか分からんから、そっちで何とかしてくれ」
「爆発物ゴミのカテゴリーはないのか?」
「ねぇよそんなの」
「世界は広く、貴様は無知で世間知らず。いったい爆発物ゴミのカテゴリーがないと、どうして言い切れようか?」
「ちょっとあるかもって思わせるの止めてくれる?」
相変わらずお喋り好きな竜だと、シャノンは思った。
「今日は他に……金銀宝石も燃やしておるな。これは宝として認めよう。他の武器や工芸品もゴミと言う程ではない故、保存を許そう。何だ、最近は随分とゴミが少なくなったな?」
「お前があれこれ言うから、先生が気に入りそうなのを選んでくれてンの」
おかげさまで、最近は『私が貴方にした投資……忘れないでね?』と実験の度に耳元で囁かれている。大体バックハグ付きなので、ただのご褒美である。
「ふん、それは殊勝な事だな……先生とやらに伝えておけ。貴様が望む段階へと到達するにはまだ時が掛かる故、更に炎へと宝を焚べよ、とな」
「よく分からんが、わかった」
シャノンは竜の尊大な宣言に、こくりと頷いた。
竜は、ホルハイヤが炎に望んでいる事を知っている様だ。シャノンには全容が全く掴めないが、今までの竜とホルハイヤの態度からして、炎で宝を燃やして宝物庫に納める先に、ホルハイヤが求めるものがあるらしい。
竜はシャノンの返事に満足げな雰囲気を出すと、突如としてアイスを召喚した。ストロベリーフレイバーである。
「最後に納められたのは、このアイスだが……これは我が食しても良いか?」
「え、だめだめ。俺が別に買ってくるから待ってくれ」
「だが、恐らく別のアイスになるだろう?我はこれを食したい」
シャノンは苦笑する。竜は誰に似たのか、ずいぶんグルメなのだ。
「それ、ここに入った物体の時間経過を測る為の物らしいから、せめて来週まで待ってくれ」
「我は今直ぐ食したい」
「くいいじどらごんめ」
「ばかどらごんに言われたくないわ」
竜はふんと鼻を鳴らし、アイスに顔を近づけていく。シャノンは手を振って制止した。
「あ、おい!食うなって!」
「──ここでの時間の流れは停止している。現実と同期させる事も出来るが、基本的に状態は保存され、魂と意識のみが時間を認識する。故にアイスは何時迄も溶けぬし、メンチカツもほっかほっかだ。これで検証は不要だな?」
「ええ……」
急な新情報である。
竜は言うや否や、アイスを一口でペロリと食べた。シャノンは呆れた様な声を漏らし、竜を半眼で睨んだ。
「お前さぁ、普段は何も教えてくれないのに、こういう時だけは教えるのな?」
「愚か者め。情報は渋る物であり、ひけらかす物ではない。此度は我が言わずとも勘付かれそうであった故、アイスを食すために教えた迄だ」
「欲望に忠実過ぎんだろ」
「竜とはそういうものだ……無論、貴様もな」
シャノンは眉を顰める。竜が時折り語る、竜の哲学がシャノンは苦手だった。
「俺は違いますぅー」
「いいや、違わぬとも……貴様も竜だ。何処までも根深く、譲れぬ願望が必ずある。異常なまでに執着し、欲し求める物がある筈だ」
ふと、メンチカツが思い浮かんだ。
「……メンチカツ?」
「誤魔化すでない……今は貴様と我の二人きりだ、日常で口に出すのが憚る願望でも、自由に吐き出して良いのだぞ」
一応、誤魔化したつもりは無かったのだが。
シャノンは顎に手を当てて考え込む。欲しい物は特に無い。彼女もいつかは欲しいが今はいい。お小遣いを増やして欲しいと思った事はあるが、最近は仲の良いおじさん達がくれるから必要ない。
別に要らないを、何度も何度も繰り返し、残ったのは単純な事だった。
「……家族と親友。仲の良い人達とずっと一緒にいられたら、それで良いかな」
シャノンが漠然とした欲望を口にすると、竜はぐいと顔を近づけた。
「ほう、それで間違いないな?」
「ああ、ささやかで拍子抜けしたかもしれないけど」
「……ささやか?拍子抜け?いやいや、随分と困難な欲望を口にしたと驚いておるよ」
シャノンは竜の言葉に、首を傾げた。
「困難?こんな願いが?」
「ああ。困難で、何処までも奥深いな……よいか?貴様の欲望の大きさを決めるのは、貴様ではない。環境や出来事であり、畢竟、運命だ。その瞬間が来るまで、大きさ何て物は計り知れん」
竜は愉快そうに続ける。
「何より人間関係は移ろいやすく、壊れやすい。相手にも欲望が存在し、自由に活動された場合は、環境や出来事による不確定要素は計り知れないものになる。しかも、貴様の欲望は『ずっと』だろう?テラの大地で容易に吐いてよい言葉ではないな……何と欲深な事よ」
「ずっとの何処が欲深いんだよ。確かに世界は厳しい所があるけど、普通でいて一般的な願いだろうが」
シャノンは不機嫌そうに尻尾を揺らす。こういう時の竜は、自分とまるで違う規格の存在の様に思えて嫌いだった。
「普通であれ一般的であれ、それは欲望の成就の難しさを表す尺度ではない。少なくとも、貴様にとっては困難な願いだと我は思うがな」
シャノンは角と尻尾に竜の視線を感じ、居心地悪そうに尻尾を背中の後ろで丸めた。
「俺の欲望を、お前が測ってんじゃねーよ。俺に分からないなら、お前にも分からないはずだ。何より、既に俺には絶対に離れない存在がいる。これから増えない保証はないだろ」
「ほう、既に離れない存在がいると?それは妹かな?それとも親友かな?だが、あの者らもいずれは「違う」……では、何だというのだ」
竜は言葉を遮られ、怪訝そうにたずねる。
シャノンは、ゆっくりと竜を指差した。
「──お前」
「……は?」
竜が呆けた様な声を出す。そんな声は初めて聞いた。また一つ、竜の事を知れた。
シャノンは牙を剥く様に笑う。紅い瞳の瞳孔は縦に割れ、かつて見た竜の瞳と同じ様になる。
「お前は俺のものだ。いつか言ってたろ?一生の付き合いになるって……じゃあ、お前は俺から永遠に離れず、俺だけを見て、触れて、思う事になる。俺だけの──」
そこで、シャノンは口をつぐんだ。
(今、俺は何て言っていた?何て言おうとした?)
自分が言おうとした事に、鳥肌が立つ。
これは、普通や一般的と言うには歪んでいる。
「──クァハハハハハハハハ!」
竜は突然、身を起こして高らかな笑い声を上げた。
シャノンは突然の竜の笑い声に、びくりと体を身体を震わせた。
「……なんだよ」
「いやいや、何とも愛い事を言うと思うたのよ……ああ、我は永久に貴様とあろうとも。死ですらも、我らを分つ事は無い」
竜はご機嫌に翼をぱたぱたと羽ばたかせた。まるで子供扱いだ。
シャノンは恥ずかしさを上手く表に出せず、結局はむすっとした表情で押し黙った。
竜はそのシャノンの様子に笑みを漏らす。
「ククク……どれ、同じ竜のよしみだ。笑わせて貰った礼に、貴様の欲望成就の為、特別に知恵を授けてやろう」
竜は再びシャノンに顔を近づけた。先程と比べて、声音が随分と柔らかくなっていた。
シャノンは胡座の膝に頬杖をつき、ジトリと竜を見つめた。
「良いか?シャノン。人が絡む欲望というのは、支配によって完成される。家族であれ友人であれ誰であれ、欲望の成就ではなく継続こそが肝要だ……人はしばしば、成就の瞬間を絶対視するが、維持出来ねば再び渇くだけだ。その点でいうと、貴様が言った『ずっと』は一理あるだろう。例えば、伴侶を得たい者が伴侶を得たとしよう。だが、後にその相手と離別した場合は、真に欲望を果たしたと言えるだろうか?答えは否だ。伴侶を得た後の幸福こそが、欲望の本分。維持を失敗し、失った後に『ああ、幸せになれると思ったのに』とか『このままでいれると思ったのに』と失意に暮れるのが、欲望の行き着く先な筈がない」
正直言って、既に頭が混乱してきた。
シャノンは、竜はばかどらごんに適した言葉を学ぶべきだと思った。
「人という意思を持った生命は、支配せねば完全には己の欲望通りに動きはせぬ。側に置くにしても、離すにしても、常に主権を握らねば思ったように人は動かぬ。そして、人の支配者たらんとするならば、最も適しているのは──王だ。王冠こそが、竜の欲望に耐え切れる。貴様は王を目指すのだ、シャノン・ダブリン」
竜は厳かに締め括った。まるで神託を与えている様だと、シャノンは苦笑した。
だが、おおよその言いたい事は掴めた。
「話が飛躍しすぎだっての……俺は皆んなと一緒にいたいと言ってるんだ。王になりたいとは思ってない」
「一緒にいる為に支配しろと言っている。少なくとも、貴様の欲望を万全に叶えるには、力の使い方と支配の術を学ばなくてはならん」
「あのな、お前の理論が正しいとしても、俺が王になれるわけないだろ。アドバイスをくれるってんなら、極論じゃなくて現実的なものにしてくれ」
例えば、大人になった後も同じ様に仲良く出来るコツとかだ。
だが、竜はふるふると首を振った。
「真に極論かな?確かに王になった後は苦労するだろうが、王になる道は開けている様に思えるがな……普段から呼ばれているではないか。なぁ、【陛下】」
「あれは子供の頃のごっこ遊びの延長だぞ?それを真に受けてるようじゃ、竜の知恵とやらも形無しだな」
「貴様が望めば、ごっこではなくなるさ……」
竜は悟る様に言うと、シャノンに近づけていた顔を戻した。
「……もう、時間だ」
「もうか?今日は随分と……」
シャノンは言いかけて、ふと、誰かに身体が揺すられている感覚がした。こんな事は初めてだ。
竜はふんと鼻を鳴らした。
「次は、もう少し静かな場所で寝付いて来い──ではな、早く逢いたくば、炎でより多くの宝を焚べるがいい」
竜が言った途端、視界が、世界から色が失われていく。
その中で、竜だけが変わらず存在感を示していた。
(今日はここまでか……)
シャノンは目を瞑る。願わくば、次はもっと楽しい話題で話をしたいものだ。
「──人の欲望と、竜の欲望は違う」
意識が遠のく中、竜の声が鼓膜を震わせる。
「楽しみなものだ……人間としての薄皮が剥がれ、貴様の剥き出しの欲望が見える時がな」
その言葉を最後に、意識は闇へと沈み──
「──兄様っ!」
次に目を覚ますと、鼻先が触れる程の近さにエブラナの顔があった。
「……エブラナ?」
「ああ、エブラナだ。兄様が世界一愛している妹だ」
シャノンが名を呼ぶと、エブラナは顔を退かした。エブラナはシャノンの上に馬乗りに乗っていた。
「……兄様、今日は随分と寝起きが悪いな?」
エブラナは不満そうに首を傾げた。シャノンは目をしぱしぱと瞬かせる。
はて、何かしてしまっただろうか?
(ん?まて、エブラナ?)
少し視線を動かすと、見慣れた自室が目に映る。
おかしい。確か、ホルハイヤの家で実験中に寝落ちした筈だ。
不思議そうなシャノンに、エブラナはますます不機嫌そうになった。
「兄様……もしかして、がっかりしているのか?」
「……へ?」
何のことだろう。むしろ嬉しいくらいだが。
「──あの、おっぱいがおおきいえっちなおねえさんではなくてがっかりしてるかきいてるんだっ!」
エブラナは叫び、シャノンの襟を掴むと、再び至近距離に顔を近づけた。
シャノンは目を白黒させる。妹に言われる様な言葉では無い。
「──昨日、私は兄様に抱っこされるべく、部屋で待っていた。だが、兄様はいつまでも帰って来なかった」
「……あ」
シャノンは声を漏らす。そうだ、抱っこして寝る約束をしていたのだ。
「仕方なく兄様が脱ぎ捨てていた服と共に寝ていると……窓から、眠った兄様を背負ったえっちなおねえさんが来たではないか!しかも、しかも……!」
エブラナは、ずびしっ!とシャノンの頬を指で突いた。
「兄様にはえっちなキスマークが付いていた……!私を放って、あの女と楽しんでいたんだろう!?」
「──誤解だ!」
シャノンは叫んだ。確かにエブラナに見せる用に付けて貰ったが、先生とは全く関係ない。
確かにえっちなおねえさんだが、なんかえっちなだけの人なのだ。
「誤解なわけあるかーっ!!」
しかし、みにどらごんは気炎を吐き、怒り狂った。
──最終的に、一週間は毎日抱っこしながら寝る事と、お風呂に入る事で手を打った。なお、後にずるい!とごねたラフシニーにより、期間は二週間まで伸び、順番交代でする事になるのであった。