その誰にも読めない心を覗いてみたい ~超絶可愛い読心少女である私こと、色葉ココネには伝えたい秘密がある~ 作:猫色箱
第1話 超絶可愛い女子中学生である私こと、色葉ココネには誰も知らない秘密がある
超絶可愛い女子中学生である私こと、
それは私が読心少女であることです。
天才美少女である私には、生まれながらにして人の心を感じ取る能力がありました。実はそれだけの力ではないですが、読心能力って呼ぶのがわかりやすいのです。
そんなわけで、私は面白そうな心の声を追いかけて放課後の校舎裏へやってきました。
「ねえ見て、マジで泣いてるじゃん」
「へぇ、謝れば許されると思ってるわけ?」
そこでは、二人の女子生徒が泣きながら謝る女の子を前に嗤っていました。その後ろで、じっと様子を見ている女子生徒が一人。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
涙声で謝罪を繰り返す女の子。……ふむふむ。これはいじめ現場というやつでしょうか。初めて出会いました。
(ほんと情けない、見てるだけでムカつく)
(こいつの声、マジで耳障り。ホントになんなの)
女子生徒から刺すような心の声が響いてきます。あぁ、いいですねぇ。怒りと軽蔑が混じった感情の音色は、耳をくすぐるノイズみたいで……たまらなく心地いい! 最高です!
そう! 私は心を読むことが大好きなのです! あの不可思議で、世界一ユニークな心の形! ひとつひとつに音色があって、いつも違う音を奏でる。この魅力の虜にならないなんてありえません!
「お前。何見てんだよ?」
おっと。私が皆さんの心を堪能していると、私の視線に後ろで見ていた女子生徒が気が付いたようです。私を冷たい視線で見つめています。なるほど。私のプリティなミニマムボディの虜になってしまったようです。
無理もありません。腰のあたりまでふわりと流れる雪みたいに真っ白な髪。そして儚くて幻想的な見た目には、誰もがナデナデしたくなってしまうのです。反則級の可愛さです。私にメロメロになってしまうのは仕方がないことです。
(こいつは……何だ……?)
それに加えて、私を観察する冷静な感情と敵意、対抗心を感じます。
あぁ、そんな感情を私に向けないでください。嬉しくてたまりません!
この世には喜び、悲しみ、幸せ、恐怖、驚き、怒りなど、様々な心の音で溢れています。そのどれもが個性的で美しく素晴らしい音を奏でるのです。
そんな素晴らしい心の旋律が、私に向けて奏でられているのですよ!
なんとサービス精神に溢れているのでしょうか!
おっと、心を味わってばかりではいけませんね。
「ごめんなさい。皆さんの魅力に思わず見惚れていました。もちろん邪魔をするつもりはないので、どうぞ続けてください」
私は笑顔を浮かべて、皆さんに近づきます。
(……誰だよ? 空気読めよ……ってか何。めっちゃ可愛い)
(子供……? でも、うちの制服着てるな?)
泣いていた女の子も、嗤っていた二人も、そして後ろで黙っていたクールな女子生徒も、皆の注目が私に向けられます。三つの心が生み出すハーモニーは、何とも心地が良いものです。
「……それなら、何で近づいてくるわけ?」
「それは、とっても面白いものを見つけたからですね。もっと近くで確認してみたいと思いまして」
「確認……? なに? 状況を確認して誰かに言いふらそうってこと?」
「いえ、そんなつもりはないので安心してください。九条さん」
「……お前、私のこと知っていたのかよ」
いえ。今、初めて九条さんのことを知りました。全ては読心能力によるものです。
目の前のクールビューティーな彼女は
「私は色葉ココネです。これから仲良くしましょう」
挨拶の握手として、私の小さな手を差し出すと――
パシンッ!
「……調子に乗るなよ」
手を弾かれてしまいました。九条レイさんが鋭い視線で私を見下ろしています。照れ屋さんですね。私のキュートなボディーに触りたくて仕方ないのに素直になれないのです。
(少し、わからせてやるか)
強い対抗心。九条さんが私を突き飛ばそうとするのがわかりました。九条さんの手が振り下ろされ、私の肩に触れます。
私の華奢な体を見くびってはいけません。その力で押されたら吹き飛んでしまうことでしょう。だから――
「……っ」
短い息を飲む気配。見上げる私と、見下ろす九条さん。
肩に触れた九条さんの腕は止まり、力が加わることはありません。
――すでに心の変形を終えていたからです。
私の読心能力は心を読むだけのものではありません。心に触れて自由自在に形を曲げ、歪め、組み替えることができるのです。
いつだって人を動かすのは心。その心を変えてしまえば、その行動を操ることなんて簡単なことです。
「ごめんなさい。やっぱり皆さんの邪魔をしてしまったみたいです。謝らせてください」
「……気が変わった。帰るわ。あとは勝手にやって」
九条さんは肩に置いた手を離すと、私の横を通り抜けていきました。
「えっ……? 急にどうしたの!」
「ちょっと待ってよ!」
残された二人も一瞬目を見合わせると、慌てて九条の背を追いかけていきます。これで校舎裏には、私と泣いていた女の子の二人だけになりました。
はぁ……。
それにしても、何ともったいないことをしてしまったのでしょうか。
心はとってもとっても愛おしいもの。そして、それは何の手も加えられていない、天然の純度100%のものこそが至高です。そのままの形を愛して愛でるのが、世界一の悦びなのです!
だからこそ、私が形を歪めてしまった時点で、その輝きがだだ下がりです。
しかし、自身を守るためであれば、それよりも大切なモノのためであれば、心を操ることに迷わないと決めています。私が許すのはお触りまで。その先はNGです。
……ですが。あぁ、残念です。本当の本当に残念です。
なんとか元に戻らないでしょうか……。
……よし、気持ちを切り替えましょう! 悲しんでいても仕方ありません! 楽しんでいきましょう!
そうです。そもそも私は面白そうなものを見に来たのでした!
「怪我はないですか?」
「……な……、んで……?」
校舎裏に取り残された女の子に声をかけると、弱々しい声が返ってきました。長い前髪に隠された可愛い目がチラリと覗きます。
涙の跡が視えます。ですがパッと見た感じだと怪我はないようです。うんうん。健康なのはいいことです。
「ぜひ、このハンカチを使ってください。私のハンカチは女の子の涙を集めるためにあるのです」
「あ……、ありが……、とう…………」
「いえ、気にしないでください。私は面白そうなものを見に来ただけで、成り行きってやつですから」
ハンカチを手渡しながら、ここに来た理由を思い出します。それは、まるでそこに四人いるかのように振る舞う三人の少女の心に気付いたからです。
私の読心能力は、心を感知するソナーのようなものです。能力の範囲内にいる人の心は、ずっと私に居場所も考えも筒抜けなのです。
そこで、ピコン! っと私の心センサーが捉えたのです。三人分の心しか感じないのに、そこには確かにもう一人いるかのような振る舞いをしているじゃないですか。
とても興味深い現象です! それを調べに来たというわけなのですが……。
「あ、あの……その、えっと……」
「おっと、自己紹介がまだでしたね。私の名前は色葉ココネと言います。あなたのお名前を聞かせてもらえませんか?」
「あ……おと、
「カナミさんですね! よろしくお願いします!」
両手でカナミさんの手を包み込むように握りました。
「早速ですがカナミさん。私はカナミさんのことが大好きになってしまいました!」
「…………え?」
あぁ、こんなことは生まれて初めてです。
「……ふふふ」
思わず笑いがこぼれてしまいます。
だって、カナミさんには――心がないのです。
心がないと言うのは正しくないかもしれません。ですが、心が視えない、聴こえない、全く感じ取れないのです。
初めてです。私の読心能力が通じない人がいるなんて。
本当に心がないのでしょうか。もしくは心を隠しているのでしょうか。
ワクワクがドキドキが止まりません!
私の中にある好奇心を抑えきれるわけないじゃないですか!
あぁ、カナミさん。あなたの心には一体どんな秘密があるのでしょうか。
もし心があるとすれば、それは視たことも聴いたこともない最高の心に違いないのです!
視たいです! 聴きたいです! 知りたいです!
だから。絶対に。必ず。心の秘密を暴いてみせましょう!
「この出会いは運命です! ですから、私と心の友になりましょう! いえ、なってみせます! 絶対にカナミさんの心を振り向かせてみせます!」
読心少女である私にも隠された。
その誰にも読めない心を覗いてみたいのです。
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