その誰にも読めない心を覗いてみたい ~超絶可愛い読心少女である私こと、色葉ココネには伝えたい秘密がある~ 作:猫色箱
第14話 不死身の美少女である私こと、色葉ココネはいつも通りカナミさんと一緒に登校しているのでした
「ふっふっふ、ついに私は帰ってきましたよ!」
「ふっふっふ、ついにココネを連れて帰ってきたよ!」
校門の前で足を止め、私は腕を組んでニンマリ顔で校舎を見上げました。
隣ではカナミさんも、同じように腕を組んで見上げています。お揃いです。
そうです。完全復活なのです。
不死身の美少女である私こと、色葉ココネはいつも通りカナミさんと一緒に登校しているのでした。
「そして、全ての謎を解き明かすときが来ました!」
「そうだ。全ての謎を……謎?」
「はい。カナミさん、放課後に時間をもらってもいいですか? あの日に何があったのかを全てお話ししましょう」
■
私のお腹にナイフを突き刺して倒れた後のことです。
いや~、危なかったです。
大丈夫だと思っていましたが、この病院のカーテンに映える繊細ボディーには、どうやらちょっと刺激が強すぎたようでした。
次に目を開けたとき――腕には点滴の管。
ベッドの隣では、お母さんが泣きながら私の名前を呼んでいました。
お医者さんいわく「軽度の出血性ショックで一時的に意識を失っていた」とのこと。
救急搬送後、簡単な止血、縫合、点滴をぶっ刺してベッドにポイッだったようです。
ですが、すべて予定通りです。
あの時、このパーフェクト頭脳が、瞬時に「どこを刺せば比較的安全かつ派手に見えるか」を弾き出したのです。
普段から、人体の勉強をしていた成果ですね。まさか自分の体で実地研修をするとは思いませんでしたが。
土壇場でやり遂げた私は、ほんと、恐ろしい女です。
目を覚ますとお母さんが泣きながら謝ってきました。
でも、ずっと謝られても困ります。お母さんのせいではないのですから。
なので、心を戻すときに、ちょちょいっと余計なものも手を加えておきました。
もう大丈夫でしょう。
それにしても、お母さんの心を弄ることになるなんて。なんてこった。
とはいえ、これでお母さんの件は一見落着です。
……が、私の方は、そこからが本番でした。
色んなところからカウンセリング、もとい調査が入りました。
なぜ、あんな行動を取ったのか。
悩みがあったのか、いじめられていたのか、カウンセリング続きです。
この読心少女である私が受けるとは…………なんて素晴らしい体験でしょうか!
私の心を慎重に探るかのようにジロジロと観察されてしまいました。
おぉ、新体験。体が熱くなります。
結局、マジックのつもりが失敗したという無茶な一点張りで押し通しました。
最終的にそれで片づきましたが、要注意観察行きです。
……少し嘘です。
実は読心能力で一部の人の心を操って、都合よく話を進めてもらいました。
あの日、私は一人きりの教室で倒れて、偶然見かけた誰かが通報しただけ。そうなりました。
……この私が天然物の心を破壊するなんて。なんてこった。
ですが、そのままではお母さんへの責任追求は免れないでしょう。
私は、大切なモノのためであれば、心を操ることに迷わないと決めています。
入院中に誕生日を迎えたり、いつものように体調が悪くてグェーとなったり、いろんなゴタゴタがありました。
けれど、一か月ほどで登校までこぎつけました。これぞ、不死身の女です。
そして今、またいつも通りカナミさんと一緒に登校。ついに登校が認められたのです。
廊下を歩けば、好奇の視線が突き刺さる。
あぁ~~~、なんて心地よい感情でしょう。今の私はミステリアスな女として大注目です。
昼休み、なぜか誰もいなくなった教室で倒れていた。謎の怪奇現象。学校の七不思議ってやつですね。
あぁ、何て楽しいのでしょう!
……放課後のイベントに目を瞑れば、ですが。
登校時にカナミさんへ伝えた通り、今日はついに読心能力の秘密を打ち明ける時。
散々無茶をお願いしたあの日の出来事を、カナミさんは秘密にしてくれました。聞きたいことは山ほどあったでしょうに、ぐっと堪えて、私が完全復活するのを待ってくれたのです。気遣いの塊ですね。
だから今度は私の番です。お返しとして本心オープンのお話を約束しましょう
ですが、その前に片づける用事があります。
私が完全復活するまで読心能力のことを語らなかった理由です。
それは――――
「九条さん、お久しぶりです!」
「げぇ……」
そう、目的はこれ。九条さんの様子を確かめるために、昼休み、カナミさんの隣を抜け出して一人でやって来たのです。
(よくもまあ、平気で顔を出せるもんだな……)
うんうん。このように心が読めるということは問題ないですね。
実は、意識を失う直前に九条さんの心へ三つの仕込みをしていました。
一つ目は、心の瞳にバックドアを作ること。
心の瞳の外郭を壊したとき、ついでに秘密の抜け道を作っておいたのです。
心は体と同じで自然に回復したり形が変わったりしますが、その際に私だけが出入りできる裏口が残るようにしておきました。
(クッソ、思い出すだけで恥ずかしい……)
二つ目は、読心能力の封印です。
九条さんの心を変形させて、持続的に読心能力を認識できなくしたのです。
九条さんは今も読心能力を持ったままですが、その情報を心が受け取ることができません。
認識遮断と同じ原理です。遮断された情報は勝手に心が補完して、本人には読心能力が全くないように感じています。
心は自由であるのが一番。読心能力は私たちの特権で、自由に使うべきです。
とはいえ、私が復活するまでは使えないよう封じました。
私がいない間に読心能力で好き勝手されるのは、面倒ですからね。
しかし、私が完全復活した今では心配ご無用。あとで事情を説明したうえで、能力はお返しします。
まぁ、心は移ろうもの。私が返さなくても、何かのキッカケで認識できるようになることもありえますからね。
三つ目は、読心能力に関する記憶の改変です。
九条さんの中では、読心能力を抜きに私たちと揉めて、そのあとに仲直りした。そんな青春のメモリーに書き変わっています。
ちなみに最近の記憶を覗いてみると……
「九条さん、この前のアレ、なんだったか説明してくれるかな?」
「いや、あれは何かの間違いだ。……忘れてくれ」
「できないよ! さすがにアレは忘れられないよ!」
ずいずいと詰めるカナミさんの姿が視えます。そして――
「だから、色葉が可愛かったからイジワルしたんだよ!」
「えぇ……。そっか。わかったよ! バイバイ。また明日!」
ポカーン顔のカナミさんは珍しいです。速攻で立ち去ってますね。
キッチリ、記憶の改変もオーケーです。
初めての試みもありましたが全部成功。やっぱり私は天才です。またもや進化を遂げてしまいました。
今回の件は、読心少女の心を学ぶ、とってもとっても良い経験になりました。
だから、これで九条さんの件は終わりです。
私は皆さんの心を守れればそれでいい。穏便に終わるのが一番です。
さて、最後は能力を返す約束だけしておきましょう。
「今日は九条さんにお願いがあって来ました!」
「……なんだよ」
「今日の放課後、ずっと私を待ってもらってもいいですか?」
「はぁ? なんで、そんな時間まで待たないといけないわけ?」
「そうですね。教室の窓から外を見ながら待っていてください。2人だけの教室で、九条さんに告白したいことがあるのです」
「ん……? はぁ!?」
「では、お願いしますね。サヨナラです」
これで、カナミさんとの秘密タイムのあとに、九条さんとのお話コース。さすが私、モテモテすぎます。
何やら色々と妄想を始めた九条さんから離れて、廊下の片隅へ。
イヤホンを耳につけて、秘密の動画を再生します。
カナミさんがいない間に、もう一度だけおさらいです。
内容は――私がナイフを振り下ろして倒れた、あの場面。
あらかじめ九条さんには、私のスマートフォンでのビデオ通話を切り、代わりに動画を撮影するようお願いしておきました。
動画は「九条さん、スマホ貸して」というカナミさんの声の少し前から始まります。
そして映っていたのは――。
スマホを片手に駆け寄り、私の隣に膝をついて電話をかけるカナミさん。
もう片方の手でハンカチを傷口に押さえながら、耳から電話を一度も離さず、冷静に救助を呼んでいます。
後で心の声を聴いて、通報したのは女の子だと知りましたが、きっとこの場面でしょう。なんて落ち着いた対応。
やっぱりカナミさんは一味違います。ありがとうございます。
そして私は完全に気を失っていました。
この状態で学校中への認識遮断を維持していたとは。
やっぱり無意識下で読心能力を使っていたのですね。ふふふ、私はまた一段ステップアップしてしまったようです。タダでは転ばない女。それが私。
動画は、カナミさんが電話を切って、しばらくしたところで動画が終わっています。
ちなみにこの後、どこかのタイミングでカナミさんが私のスマートフォンを回収して、コッソリ返してくれました。
……大変なときに動画を回していたのは、どこかで謝らないといけないですね。
■
そして、放課後がやってきました。
気乗りしないイベントの到来。けれど、すべてを明かす責任が私にはあります。
「カナミさん、さて秘密を話す前に、まずはたくさんお喋りしましょう!」
「……もしかして、まだ誤魔化そうとしてる?」
帰り支度を終えたカナミさんの席に近づくと、じーっと見られます。
「いえいえ、そんなつもりはありません。ただ、私は雰囲気を大切にする女です。秋の夕暮れ、二人だけの教室、秘密の共有、カナミさんのために最高のシチュエーションを用意したいのですよ」
「なにそれ?」
「そうですね。まずは思い出語りからしましょうか。あれは2年前のことです――――」
あっという間に時間が過ぎ、気づけば教室には私とカナミさんだけ。
夕暮れの光が教室を照らし、吹奏楽の音やグラウンドの声が遠くに響いています。
「それで、そろそろいいんじゃないかな?」
「……う~ん、そうですね」
この後のイベントを考えなければ、本当に楽しい時間でした。
誰もいなくなった机の間を少しだけ歩き、そこで振り返ります。
「それでは改めて――私こと、色葉ココネのとっておき。誰も知らない秘密を伝えましょう」
「うんうん」
本当につまらないことです。
けれど、答え合わせをする日がやってきました。
「私は心が読める読心少女なのです。――――カナミさんとお揃いですね」
心が読めない秘密。その答え合わせを始めましょう。
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