その誰にも読めない心を覗いてみたい ~超絶可愛い読心少女である私こと、色葉ココネには伝えたい秘密がある~   作:猫色箱

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第15話 美少女名探偵である私こと、色葉ココネはカナミさんの秘密に手を伸ばすのです

 美少女名探偵である私こと、色葉ココネはカナミさんの秘密に手を伸ばすのです。

 

「私は心が読める読心少女なのです。――――カナミさんとお揃いですね」

「私もココネのこと何でもわかるよ! お揃いだね!」

「もちろん。でも、私の場合は誰の心も読み放題です。そして、その力を持つ読心少女は、私と九条さん以外にもう一人いました」

 

 カナミさんのキラキラした瞳と視線が交差します。

 

「一つ目のヒントは、九条さんの心に操られたような歪みがあったこと。上手く隠していましたが、私には誤魔化せません」

 

 ピンと指を立てて説明を続けます。

 これは九条さんの心の瞳を壊して覗いたときに見えたもの。三年前、私も心を操りましたが、こんな痕跡は残しませんでした。

 

「ただし、読心能力に目覚めたことで心の構造が変わった可能性もある。だから、この時点では断定できません」

「はいはい、ココネ先生! 心って何ですか? 何の話かわかりません!」

 

 カナミさんが手を挙げました。

 それでは、ビシッと答えて差し上げましょう。

 

「いい質問です。では、優等生のカナミさんには読心少女になりきってもらいましょう」

「う~んと?」

「読心少女には、人の心を読む力と、操る力があります。その力を、九条さんは一ヶ月ほど前に手に入れたのです」

「……ココネ、秘密の話、誤魔化そうとしてる?」

「いいえ。さぁ、なりきってください。あなたは読心少女になった九条さんです。そして私は生まれながらの読心少女です」

「しょ~がないな~。はい! ココネ先生、わかりました!」

「えらい子です。満点を差し上げましょう」

 

 仕切り直して、今度は指を二本立てます。

 

「二つ目のヒント。それは――九条さんが能力に目覚めてから、私に出会わなかったことです。偶然かもしれませんが、そこに怪しさを感じていました」

「え~と、確か一ヶ月前に目覚めたんだよね? それって、ココネがちょうど寝込んで休んでた時期と重なってるよね?」

「はい、さすがカナミさん。飲み込みが早いです。たしかに私はその頃休んでいました。ですが、登校を再開した日にも出会わなかったのは違和感があります」

「はいはい! それはクラスが違うからじゃない? 九条さんとは教室も離れてるし、不思議じゃないと思います!」

「その通りです。でも、都合が良すぎる点もありました。最たる例は、カナミさんの誕生日。男の子が急に教室へ入ってきたあのときです」

 

 私は九条さんの記憶をすべて覗いています。

 何を思い、どう動いたのか、すべて把握しているのです。

 

「あのとき、九条さんもコッソリ教室を覗いていました。なぜでしょうか?」

「それは見られたくなかったからじゃないかな?」

「いいえ。九条さんには、認識を遮断して姿を隠す能力もありました。それを使えば覗く必要すらないのです」

「あっ、ズルい! 先生! そんな能力、聞いてないです!」

「今、目覚めました。これからは認識を操って姿を隠すことも可能とします」

「インチキだ~」

「私は反則的な可愛さなので問題ありません。そして、そんな私の認識を操ることはできません。なので、私から姿を隠すのは理解できます。私が読心少女と知っていればですが」

 

 カナミさんはこめかみに指を当て、「う~ん」と考え込む。

 

「しかも、感覚共有で男の子の視点を借りれば済む話。それなのに、わざわざ自分の目で直接、私の可愛い姿を見に来たのですよ。普通なら姿を消して特等席から眺めるはずです。つまり、無意識に隠れるのが正解だと知っていたのです。もしかすると、九条さんも心を操られていたのではないでしょうか?」

 

 私が九条さんの心の瞳にバックドアを作ったように、その中にある心にアクセスできれば、読心少女でも操ることができます。

 いいえ。そもそも、読心少女が二人いる可能性に気づいたからこそ、試しました。

 

「そうなると、また読心能力者の調査は最初からやり直しです」

「はえ~」

 

 そう振り出しに戻りました。調査は始めからです。

 

「そうなると、最も怪しい人から探っていくのが効率的でしょう。私の大親友カナミさんからですね」

「えぇ~。私ずっと疑われてたの!」

「はい。出会ったときからずっと疑っていました。ただし、読心少女じゃないことの証明は難しいのです」

 

 まったく、面白くない仮説です。

 カナミさんの心が視えない謎は、そんな単純な答えで片づいてほしくない。もっと想像を超えてほしいのです。

 

「ですが、読心少女であることの証明はできます」

「…………それって、あれだよね。心を読めないとおかしいぞって場面を見つければいいってこと?」

「正解です。花丸満点を差し上げましょう。ついでに私の似顔絵もセットにするのです」

「やったね!」

「というわけで、私はある仕掛けを用意しました」

 

 私はスマートフォンを取り出し、ぷらぷらと揺らしてみせました。

 

「こちらには、記憶に新しい私のハデハデな見せ場が丸ごと残っているのです!」

「ハデハデ……?」

「私のピカピカのお腹をザクッと刺したときの動画です。私が意識を失ってからの映像が映っています」

 

 ポチポチと動画を探す。

 九条さんが認識遮断の対策をしたように、映像は真実を映します。

 

「九条さんに私のスマートフォンで撮影をお願いしていました」

「……へぇ。じゃあ、ココネが倒れてから私がアタフタしてるのを見て楽しんでたんだ?」

 

 意地の悪い顔を見せます。

 おっと、藪蛇だったかもしれません。

 

「いいえ、感激していました。助けてくれてありがとうございます。……でも、大事なのはここです」

 

 私は画面を、でーんと突き出した。

 

「カナミさんが助けを呼んだとき、手にしていたスマートフォンは九条さんのものでしたね?」

「うん。私スマホ持ってないし。だから借りただけだよ。変かな?」

「いえ、おかしくはないです。ですが、このスマートフォンで電話をかけると一つ変なことが起きます。――声が機械音声に変わるのです」

 

 九条さんとの通話はすべて変換されていました。

 バックグラウンドでアプリを動かしておけば、すべての通話をライブで機械音声に変換してくれるそうです。

 

「なのに、私が倒れた通報は『女の子』からもらったらしいです。これはなぜでしょうか?」

 

 もちろん心の変形があればすぐに見抜けるので、これは真実です。

 

「……九条さんがアプリを切ったんじゃない?」

「直前まで私と通話し、慌てて逃げる場面ですよ? それに九条さんの記憶を覗いても――彼女は電源を切った直後、ナイフを構えていました。アプリはそのまま動いていたはずです」

 

 普通なら記憶を覗いたと言っても、証拠としては成立しません。

 けれど、これは誰のためでもない。私自身のための証明なのでありです。

 

「機械音声を解除するには、スマートフォンを操作する必要があります。けれど九条さんは一度、電源を切っていました。ということはパスワードを解除しないとアプリは止められません。では、どうやってロックを解除できたのでしょうか?」

 

 九条さんの記憶にも、パスワード入力の場面が残っていました。

 緊急通報ならロックがかかっていても可能ですが、アプリ停止まではできません。

 

「そして最後に通報の場面です。映像では、カナミさんは最後まで耳から電話を離していませんでした。カナミさんは機械音声に変換されることは知らないはずです。もし気づくとしたら、通話相手に指摘されてからでしょう」

「…………」

「つまり、『電話をかける前から機械音声になる』ことを知っていて、パスワードを解除してアプリを止めたということ。しかも、それを九条さんから聞いていないのは映像で確認済みです。この理由を読心能力以外で説明できますか?」

 

 カナミさんのピカピカの目をまっすぐ見つめる。

 

 どうか、読心少女以外の理由であってほしい。もっと、想像を超える何かであってほしい。……でも、最初のヒントがここで効いてくる。九条さんの心に残っていた歪み。

 

 

 

「きっと、私を一刻も早く助けたかった。いたずら電話と思われないようにした。私の大親友であったこと、それがカナミさんの失敗です」

 

 静寂が、教室を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あちゃ~、やっぱりダメそうだな~。そうだよ大正解! うん、そうだよ! 私もね、生まれたときから心が読めるんだ。ココネと一緒だよ!」

 

 いつもと変わらないニコニコ笑顔。

 

「……そうですか」

「でもさ、あのときそこまで考えてたの?」

「はい。確実に九条さんのスマートフォンが私の手に渡るよう、『私の端末で動画を撮るように』と心を操作しました。他の生徒から借りられないよう、教室の外に追い出したのもそのためです。もっとも、仕掛け自体は試しの一つに過ぎません。上手くいかなくても構いませんでした」

「はえ~、さすがココネ! でもでも、ココネ体張りすぎだよ! ビックリ仰天! もし私が助けなかったらどうするつもりだったの?」

「その心配は必要ありますか?」

 

 カナミさんは何があっても私を助けてくれる。

 それは誰よりも、私が一番よく知っています。

 

「でも、九条さんを操っていたとしたら、ココネを危ない目に遭わせようとしてたことになるよね?」

「カナミさんは、何度も私を守ってくれました。もし本気で危険に晒すつもりなら、チャンスはいくらでもあったはずです」

「ココネを騙すつもりだったかもしれないよ。ほら、自作自演ってやつ?」

「そうかもしれません。それでも、私は信じているのですよ」

 

 結果として、私はここに立っています。それが答えです。

 

「そっか。で、ココネは私が読心能力者だってわかって、どうするの?」

「どうもしません。ただ、お願いするだけなのです」

「お願い?」

「はい。私は皆さんの心が大好きです。ですから、心を歪めないで欲しいのです」

「ココネなら九条さんと同じように、私の心を操ればいいんじゃない?」

「いいえ、カナミさんの心は読むことはできないので、それはできません」

 

 そう。未だに、カナミさんの心だけは視えない。

 そこは、とっても気になっています。ですが、きっと読心能力の延長線上にある力なのでしょう。

 

 正直に言えば、カナミさんが読心少女だとわかって非常にガッカリしています。

 ミステリーもので初めに思いついた初歩的なトリックが答えだったと知らされたような失望感。

 

 でもまあ、その答えに読心能力の新たな使い方がオマケでついているのでヨシとしましょう。

 それに、ここまでの道中、カナミさんとの日々はとっても楽しいものでした。

 

「へぇ~、そうなんだ。でもさ、それって危なくない?」

「何がですか?」

「ココネは私の心を操れないんだよね。二人きりになっていいのかな?」

「問題ありません。だってカナミさんですよ。私は危機管理もバッチリです!」

「本当に、そう思ってる?」

「もちろんです」

「えへへ。そっか。もう誰かの心を操ることはしないから心配しなくていいよ!」

「本当ですか?」

「ホントのホント! だって、もう必要ないもん! ……あっ、でも急にやめる気がなくなってきちゃったかも。あ~、誰かやる気を出させてくれないかな~?」

 

 カナミさんはチラチラとこちらを見ながら、ニヤけている。

 

 これは、可愛いおねだりですね。

 ここまでされたら、私も黙ってはいられません。

 

 特別大サービスです。人肌脱いで差し上げましょう。

 

「もちろん、タダでとは言いません。私のお願いを聞いてくれたら、カナミさんのお願いも何でも一つ叶えます!」

「んん~~やったぁ~~~!!! 急にやる気出てきた! じゃあさ、じゃあさ! お願いしてもいい!!!」

 

 カナミさんは嬉しそうに弾んでいます。

 

「もちろんです。何でも言ってください」

「それじゃあ……まずは目を瞑ってくれる?」

 

 まずは……?

 どさくさに紛れていくつもお願いしようとするとはやりますね。

 

 いいでしょう。これも特別オプションです。

 

「はい。もちろんです」

 

 私は目を閉じました。

 ゴソゴソと何か音が聞こえます。

 

「ねぇ、ココネは、なんで私と友達になってくれたの?」

「それはカナミさんが魅力的だったからですよ」

「でも、私なんかよりも魅力的な人って沢山いるよ?」

「そうですか? カナミさんも十分魅力的だと思いますが……、そうですね。始まりは心が読めなかったことですかね」

「心が読めなかったこと?」

 

 足音が近づいてきます。

 

「はい。ずっと、カナミさんの心が読めなくて。その謎を知りたかった。それが始まりです」

「そうなんだ。それじゃあ、私の心目当てだったこと?」

「まぁ、そうとも言えるかもしれないですね。ずっとずっと、心を読めない謎を追っていました」

 

 今日は本心オープンで話すと決めています。

 

「ん」

 

 カナミさんの手が頬に触れました。布擦れの音、私の身長に合わせてしゃがんだのでしょう。

 

「ねぇココネ。その謎が読心能力だってわかって……どう思った?」

「正直に言えば、期待外れでした。でも、その過程でカナミさんの魅力をたくさん知れました。だから結果オーライです」

「本当に、そう思ってる?」

「もちろんです。カナミさんが読心少女であろうと大切な親友に変わりません」

「そっか……。そうだといいな。だからね……」

 

 片手が背中に回り、ぐっと引き寄せられる。

 ハグでしょうか。なんと情熱的なことでしょう。自然と私の胸も熱くなります。

 

「ココネ大好きだよ」

 

 また、私の可愛さがカナミさんを狂わせてしまったのでしょうか。

 なんと、罪な女。いつか刺されてしまうかもしれませんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ん? それにしては、胸が熱すぎませんか?

 

 というよりも、私はこの熱さを、――――痛みに覚えがありました。

 

 ゆっくりと目を開ける。

 

 

 

 

 

 視界の隙間に映ったのは――私の胸に深々と突き刺さったナイフだった。

 

 

 

 

「あ、れ――?」

 

 熱が一瞬で鋭い痛みに変わる。

 これは――

 

「……ッ!」

 

 ズルリと、ナイフが引き抜かれた。

 制服がドロドロと赤に染まり、床にカランと刃が転がる音が響く。

 

 目の前がチカチカと……、地面がグラグラと……、音が聞こえなくなっていきます。

 でも、これは……、前回とは比べ物にならなくて……。

 

 

 目の前が真っ暗に……。

 ギュッと、私を包み込むカナミさんの感触だけが伝わって……。

 

 ……でも、それも……遠くなって…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を閉じ――――




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