その誰にも読めない心を覗いてみたい ~超絶可愛い読心少女である私こと、色葉ココネには伝えたい秘密がある~ 作:猫色箱
「やっほ~! 心音、元気?」
「カナミさん。この通り、元気ピンピンです!」
病室のベッドで心音は上体を少し起こし、薄い病衣の袖から腕をひょいと突き出す。
今日も心音のお見舞いだ。
心音が教室で自分のお腹を刺して運ばれてから、もう一週間。
あれ、一週間だっけ?
心音が元気なら何でもいいや!
「臓器に傷もなく処置が早かったので、感染の心配もないそうです。おかげで早めに退院できそうです。これもカナミさんの冷静な判断のおかげですね」
「そんなことないよ! 私、助けを呼んだだけだし」
「何を言うのですか。助けてと言うことはとっても価値のあることなのです。感情を誰かに伝えることは尊いことです。それを感じるだけでハッピーな気持ちになれます」
「へぇ~。じゃあ、そろそろ心音は何で入院することになったか教えてくれるのかな?」
な~んて。私は全部ぜ~んぶ知っているのだ。物知りさんなのだ。
だけど、理由を聞かないのは怪しいからね。私が読心少女だってバレちゃう!
だから、心音が目覚めてすぐにも、あの日何があったのか確認しているのだ。えっへん。
「おっ、鋭いところを突きますね。……マジックの練習です、と周りには伝えていますが、カナミさんには本当を話すべきでしょう」
「うんうん」
「でも、前にも言った通り、学校に復帰できるまでは待ってほしいのです」
「え~。しょうがないなぁ~」
いくらでも待つよ! だって、私も心音には退院してほしいからね。
病院には、余計な心が多すぎる。
せっかく心音の心を覗く方法がわかったんだもん。
誰もいないところで、二人きりのところで、心音の心を視たいんだ!
「でもなんで学校? 何かあるの?」
「いくつか確認したいことがあるのです。それが終わったら全てお話ししましょう」
「確認? よくわからないけど待ってる!」
何のことだろう? ……あっ、九条さんのことかな!
すっかり、九条さんのこと忘れてたよ。いけない。いけない。
明日、私も九条さんに会いに行こうっと!
「ありがとうございます。ただ、復帰は一か月後くらいになりそうです。体の回復だけでなく、今回はカウンセリングも必要らしいです」
今回は? ……前にも入院したことあるのかな?
だったら、お見舞いしたかったな~。
■
「九条さん、お喋りしよ!」
「……はぁ?」
次の日。学校の廊下で九条さんに声をかけた。
へぇ~。心音によって砕かれた九条さんの心の瞳は傷が絶えないけど、元の形を取り戻していた。
でも、それと一緒に私だけの秘密のスキマも消えちゃったね。
もう九条さんにはナイショで読心能力が使えないね。
もう一度、コッソリとスキマを開けちゃおうかな~。
ダメだよね。すでに九条さんは立派な読心少女だもん。もしかしたら抵抗されちゃうかも。ちぇ~。
じゃあ、お話で聞くしかないね。
そう思って、九条さんに心音が倒れた日のこと、どう思っているか聞いてみたんだ!
なかなか話してくれなかったけど、ズイズイ問い詰めたら何て行ったと思う?
「だから、色葉が可愛かったからイジワルしたんだよ!」
「えぇ……」
びっくり。九条さんの口からそんな言葉! ついに素直になったんだね!
心音の可愛さを認めるなんて!
でも、イジワルか~。なんだかしっくりこないな~。
あっ、もしかして心音が九条さんの心を書き換えたのかな。
じゃあ、お喋りしても何もわからないね。
私は手をひらひら振って笑った。
「そっか。わかったよ! バイバイ、また明日!」
九条さんは「はぁ?」と首を傾げたけど、気にしない。私にはもっとワクワクする予定があるから。
■
それから毎日、心音のお見舞いに行って、家にも遊びに行って……気づけばあっという間に時は過ぎた。
そして今日。心音が学校に復活する日!
リビングの机で登校準備を整える。
「えへへ。ねぇママ! 聞いて! やっと心音の心を覗ける日だよ!」
「カナミ、アイしてるよ」
ママが後ろから抱きしめてくれる。柔らかくて温かくて、とろけそう。
でも、とろけてる場合じゃない。心音を迎えに行かなきゃ!
そしてね。学校帰りに誰もいない二人きりの場所で、心音の心を覗かせてもらうんだ。宝石みたいに透き通って輝いているに違いない。ワクワクが止まらない!
忘れ物がないか最終チェック。
ナイフを一本、スクールバッグに詰める。
これで刺して心音がバタンキューってなったら、心の瞳が眠くなるんだよね。
ヒビが入って、スキマもできる。あの日のこと、ちゃんと覚えているよ!
あとは、これも一緒に持っていこうっと!
心音にプレゼントでもらった『なんでもお願いを叶える券』。
あぁ~、見るだけで胸がポカポカする。
宝物だから、大切に大切に、制服の内ポケットにしまっておこう。
よし! 完璧だ。
これから心音を迎えに行って、一緒に学校に行こう!
「ママ、行ってきます!!!」
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