その誰にも読めない心を覗いてみたい ~超絶可愛い読心少女である私こと、色葉ココネには伝えたい秘密がある~   作:猫色箱

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第27話 はじまりの読心少女⑫

「やっほ~! 心音、元気?」

「カナミさん。この通り、元気ピンピンです!」

 

 病室のベッドで心音は上体を少し起こし、薄い病衣の袖から腕をひょいと突き出す。

 

 今日も心音のお見舞いだ。

 

 心音が教室で自分のお腹を刺して運ばれてから、もう一週間。

 あれ、一週間だっけ?

 

 

 心音が元気なら何でもいいや!

 

 

「臓器に傷もなく処置が早かったので、感染の心配もないそうです。おかげで早めに退院できそうです。これもカナミさんの冷静な判断のおかげですね」

「そんなことないよ! 私、助けを呼んだだけだし」

「何を言うのですか。助けてと言うことはとっても価値のあることなのです。感情を誰かに伝えることは尊いことです。それを感じるだけでハッピーな気持ちになれます」

「へぇ~。じゃあ、そろそろ心音は何で入院することになったか教えてくれるのかな?」

 

 な~んて。私は全部ぜ~んぶ知っているのだ。物知りさんなのだ。

 だけど、理由を聞かないのは怪しいからね。私が読心少女だってバレちゃう!

 

 だから、心音が目覚めてすぐにも、あの日何があったのか確認しているのだ。えっへん。

 

「おっ、鋭いところを突きますね。……マジックの練習です、と周りには伝えていますが、カナミさんには本当を話すべきでしょう」

「うんうん」

「でも、前にも言った通り、学校に復帰できるまでは待ってほしいのです」

「え~。しょうがないなぁ~」

 

 いくらでも待つよ! だって、私も心音には退院してほしいからね。

 病院には、余計な心が多すぎる。

 

 せっかく心音の心を覗く方法がわかったんだもん。

 誰もいないところで、二人きりのところで、心音の心を視たいんだ!

 

「でもなんで学校? 何かあるの?」

「いくつか確認したいことがあるのです。それが終わったら全てお話ししましょう」

「確認? よくわからないけど待ってる!」

 

 何のことだろう? ……あっ、九条さんのことかな!

 すっかり、九条さんのこと忘れてたよ。いけない。いけない。

 

 明日、私も九条さんに会いに行こうっと!

 

「ありがとうございます。ただ、復帰は一か月後くらいになりそうです。体の回復だけでなく、今回はカウンセリングも必要らしいです」

 

 今回は? ……前にも入院したことあるのかな?

 だったら、お見舞いしたかったな~。

 

 

 

 ■

 

 

 

「九条さん、お喋りしよ!」

「……はぁ?」

 

 次の日。学校の廊下で九条さんに声をかけた。

 

 へぇ~。心音によって砕かれた九条さんの心の瞳は傷が絶えないけど、元の形を取り戻していた。

 

 でも、それと一緒に私だけの秘密のスキマも消えちゃったね。

 もう九条さんにはナイショで読心能力が使えないね。

 

 もう一度、コッソリとスキマを開けちゃおうかな~。

 ダメだよね。すでに九条さんは立派な読心少女だもん。もしかしたら抵抗されちゃうかも。ちぇ~。

 

 じゃあ、お話で聞くしかないね。

 

 そう思って、九条さんに心音が倒れた日のこと、どう思っているか聞いてみたんだ!

 なかなか話してくれなかったけど、ズイズイ問い詰めたら何て行ったと思う?

 

「だから、色葉が可愛かったからイジワルしたんだよ!」

「えぇ……」

 

 びっくり。九条さんの口からそんな言葉! ついに素直になったんだね!

 心音の可愛さを認めるなんて!

 

 でも、イジワルか~。なんだかしっくりこないな~。

 あっ、もしかして心音が九条さんの心を書き換えたのかな。

 

 じゃあ、お喋りしても何もわからないね。

 

 私は手をひらひら振って笑った。

 

「そっか。わかったよ! バイバイ、また明日!」

 

 九条さんは「はぁ?」と首を傾げたけど、気にしない。私にはもっとワクワクする予定があるから。

 

 

 

 ■

 

 

 

 それから毎日、心音のお見舞いに行って、家にも遊びに行って……気づけばあっという間に時は過ぎた。

 そして今日。心音が学校に復活する日!

 

 リビングの机で登校準備を整える。

 

「えへへ。ねぇママ! 聞いて! やっと心音の心を覗ける日だよ!」

「カナミ、アイしてるよ」

 

 ママが後ろから抱きしめてくれる。柔らかくて温かくて、とろけそう。

 

 でも、とろけてる場合じゃない。心音を迎えに行かなきゃ!

 

 そしてね。学校帰りに誰もいない二人きりの場所で、心音の心を覗かせてもらうんだ。宝石みたいに透き通って輝いているに違いない。ワクワクが止まらない!

 

 

 

 

 忘れ物がないか最終チェック。

 ナイフを一本、スクールバッグに詰める。

 

 

 

 これで刺して心音がバタンキューってなったら、心の瞳が眠くなるんだよね。

 ヒビが入って、スキマもできる。あの日のこと、ちゃんと覚えているよ!

 

 あとは、これも一緒に持っていこうっと!

 心音にプレゼントでもらった『なんでもお願いを叶える券』。

 

 あぁ~、見るだけで胸がポカポカする。

 宝物だから、大切に大切に、制服の内ポケットにしまっておこう。

 

 よし! 完璧だ。

 これから心音を迎えに行って、一緒に学校に行こう!

 

「ママ、行ってきます!!!」




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