その誰にも読めない心を覗いてみたい ~超絶可愛い読心少女である私こと、色葉ココネには伝えたい秘密がある~   作:猫色箱

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第3話 誰よりも保健室が似合う儚げな美少女である私こと、色葉ココネは保健室のベッドで休憩中です

 翌日の午前。

 誰よりも保健室が似合う儚げな美少女である私こと、色葉ココネは保健室のベッドで休憩中です。

 

 もっとも今日は具合が悪いわけではなく、ただの仮病です。

 保健室のヘビーユーザーたる私にかかれば、授業を抜け出すなんて朝飯前。

 

 目的はもちろん――読心能力者の捜索です!

 

 昨日、男の子の記憶もコッソリ確認しましたが、手掛かりは見つかっていません。

 放課後だったので帰宅していた人も多く、改めて仕切り直しが必要でした。今日こそ本格調査のスタートです。

 

 まずは読心少女である私自身の特徴からヒントを探しましょう。

 

 一番の特徴。それは、自分自身の心は視えず読めないということです。

 そういうものかとも思っていましたが、もしかすると――それこそが読心能力者に共通する性質ではないでしょうか?

 

 そう考えると浮かぶのは、やっぱりカナミさんの顔。

 

 この仮説は出会ってすぐ思いついていたので、カナミさんに直接確認したこともありますが「なにそれ」と否定されましたし、この三年間で心を操られた人を視たこともありません。

 

 もっとも、私だって読心能力を隠していますから、カナミさんも同じように隠しているのかもしれません。そうならば、読心能力がないと説明できないような状況に追い込むしかないですね……。

 

 ……とはいえ。私はカナミさんに読心少女であってほしくないのです。だって、心が読めない理由が、そんな単純な答えで終わってしまうのは面白くない。私の想像を超えるような、もっと素敵で不可解な秘密であってほしいのです。

 

 だからこそ、今回の調査は大切です。

 これを突き止めれば、カナミさんの謎が能力以外の理由だと証明できるかもしれません。

 

 一歩その秘密に近づける。

 これはチャンスです。ふふふ、やる気が湧いてきます。

 

 

 

 さて、それでは調査開始といきましょう。

 

 私はベッドを囲むカーテンを抜け、静かな保健室を後にしました。そして同じ階にある職員室の前まで行き、ドアをコンコン。

 

「失礼します」

 

 ガラガラと扉を開けると、数人の先生たち。

 けれど――誰一人、私に気づきません。

 

 堂々と教頭先生の空きデスクに腰掛け、パソコンを操作。

 でも――誰一人として私を気に留めません。

 

 普通ならば止められてしまうでしょう。

 ですが、ここでも読心能力が大活躍しているのです。

 

 

 

 この使い方を名付けるのであれば「認識遮断」!

 

 人は心に届いた情報で世界を認識します。

「見えた!」と思うのも「聞こえた!」と思うのも、全て心がそう感じ取ったからです。

 

 たとえば見間違いとか聞き間違い。

 本当は存在しないものでも「ある!」って心が感じれば、そのように世界が視えるのです。

 

 認識遮断とは、そうした心に伝わる情報の一部を遮断し、対象を認識させなくする技。

 不思議なことに、心は欠けた情報を勝手に補ってしまいます。

 

 私の姿や行動を認識遮断しているので、ある人には「誰も椅子に座っていないように」、またある人には「椅子が少し動いただけ」に見えているでしょう。

 

 とっても便利な能力です。さすがは私の読心能力と褒めちぎりまくりです。そして何よりも良いところは、心を変形させなくても使えるところ!

 

 例えるならば、心を操るのはパソコンに不正ログインしてデータ改造するようなもの。

 一方で認識遮断は、ダウンロード中の特定ファイルをブロックするだけ。

 

 データそのものには触れないから、心は純度100%の天然物のままです。

 能力を使っても、安心して心を愛でることができるのです! あぁ、なんて素晴らしいのでしょうか!

 

 ちなみに、昨日の出来事に対しても実はコッソリと認識遮断を使っていました。

 男の子の行動は、カナミさんを除いて誰にも気づかれていないのです。なんて気遣いのできる女なのでしょうか。

 

 

 

 ――と、そんなことを考えている間にお目当てのデータを発見しました。

 職員名簿や出入り業者リスト、生徒情報など、学校関係者一覧です。

 

 もちろん、事前に教頭先生の心を読んで、パスワードも保管場所も把握済みだったので、見つかるのは当然ですね。

 

 それでは失礼して……スマートフォンで写真をパシャパシャ。私の高校はスマートフォンの持込は自由なので、こういう時は便利です。

 

 ……んー、思ったよりも量は多いですが、印刷すると履歴が残ってしまいます。

 私がいないところで履歴が見つかると、さすがの読心能力でも何もできないので、ここは我慢して撮影ですね。

 

 ……ふぅ。撮影完了です!

 時間が掛かってしまいましたが、これにて準備万端。

 

 さて。ここからはお楽しみタイムです。階段を上がって教室に移動しましょう。

 ふふふ……楽しみすぎて待ちきれません。

 

 

 

 ■

 

 

 

(音無さん、めっちゃ可愛いよなぁ。付き合いたいな。もし付き合えたら、むふふ……)

 

 あぁ、ピンク色の妄想! くぅ~! ネットリとネチネチ絡みつくような感情がたまりません!

 

 授業中の教室。私は通路をゆっくり歩きながら、机に座る皆さんの心をひとつずつ味わっていきます。

 

 もちろん認識遮断を使っていますので、私に気付く人は誰一人いません。

 

(裏門の鍵開けてくれないかな。学校外に出た球拾いに行くのに、わざわざ正門に回れってありえないだろ)

 

 部活に燃える熱い心と、愚痴に溢れたグズグズとした感情! あぁ、二つの織りなすハーモニーは最高ですね!

 

(放送室の機器、早く直してくれないかな。全校指定のボタン壊れてるから、昼休みの放送は音楽を流しっぱにして、各階のボタン押して回らないといけないんだっけ……)

 

 おぉ、これは放送手順の確認ですか! カチカチと規律正しい心の響きに、私の気持ちもカチカチと高鳴ります! もっとカチカチをください!

 

 

 

 ん~~~最高です! こんな贅沢をしていてよいのでしょうか!

 

 ……いえ、これは仕方ありません。読心能力者を探すため。しょうがないことです。

 

 昨日、男の子を使って私に悪戯を仕掛けてきた時点で、能力者は少なくとも私の存在を知っている人物だとわかりました。

 

 もちろん私は超絶可愛いので皆さんの視線を奪っていますが……基本的には家と学校の往復生活。容疑者はある程度絞れるはずです。

 しかも、男の子を利用していたのなら、学校に関わりのある人物の可能性が高いでしょう。

 

 だからこそ、さきほど職員室で手に入れた「学校関係者一覧」と照らし合わせながら、一人ひとりの心を確認しているのです。

 

 もし、そこにいるのに心が視えない人や不自然な特徴のある人を見つければ、その人こそ能力者だと特定できます。

 

 

 

 あぁ、それにしても最高です!

 

 読心能力にはオン・オフの切り替えがありません。そのため、常に皆さんの心を感じています。

 でも普段は、あえて一つひとつの心に集中しないようにしています。だって、そんなに早く楽しんでしまったらもったいないじゃないですか!

 

 本当はじっくり、ネットリ、心を味わいたい。だから今まで我慢、我慢、我慢してきたのですが……読心能力者を探すためなら仕方ありませんよね!

 

 ふふふ……。まずは全校生徒と先生を全部チェックしてしまいましょう。

 

 あぁ、本当に贅沢すぎます!

 残りの教室を回るのが楽しみで、楽しみで仕方がありません!

 

 

 

 ■

 

 

 

 チーン。

 

 エレベーターが一階に到着し、ドアが開きました。入ってきた先生とすれ違うように廊下へ出ます。

 

 この校内エレベーターは学生の利用が禁止されていて、学生には存在すら意識されていません。

 でも、認識遮断を使えば問題なし。誰にもバレずに使うことができます。

 

 行きは階段を使いましたが、さすがに疲れてしまいました。

 私の虚弱さと体力のなさという儚げでプリティーな魅力が発揮されてしまいましたね。

 

 さて、保健室に帰って休むとしましょう。

 

 

 

 ……それにしても濃密な時間でした。あぁ、また皆さんの心を楽しみたい。

 …………いえいえ。そうではないです。これは捜索です、読心能力者の捜索なのです。

 

 結局、有力候補は見つかりませんでした。本日不在の学校関係者なのか、それとも欠席者の中か……追加調査が必要ですね。

 

 まずは仕切り直し。保健室のベッドで休憩です。

 

 職員室の前を横切り、そのまま保健室へと戻ります。

 元いたベッドを隠すカーテンを開けると――

 

「あっ、ココネ! どこ行ってたの! ずっと待ってたんだよ!」

 

 そこには、ベッドに腰掛けるカナミさん。

 私の読心能力でも唯一読めない、そして最も読心能力者に近い親友が待っていました。




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