その誰にも読めない心を覗いてみたい ~超絶可愛い読心少女である私こと、色葉ココネには伝えたい秘密がある~   作:猫色箱

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最終話

「なるほど、やっぱり私たちは同じ病院で生まれていたんですね! やはり、運命のソウルシスターでしたか!」

 

 

 病院のベッドの上。私の隣に座る親友に話しかけると、困った顔で「そうかな?」と言います。

 どうやら私が長い間お昼寝していたあいだも、毎日お見舞いに来てくれていたようです。

 

 ふふふ。可愛い私の寝顔を毎日見たい気持ち、わかりますよ。

 

 私が目覚めてからはみんな、大忙しです。

 

 お医者さんは「これは奇跡だ」と何度もつぶやきながら、検査に検査を重ねました。

 

「始めは死体が運ばれてきたのかと思ったが……。どんな仕組みなのか解剖して調べてみたい……」とマッドサイエンティスト的なことも考えていたのは見逃せません。

 

 あぁ、そんな気持ちを抱かれるとは、なんてスリルで甘美なのでしょうか。

 

 今は、私のこれからについて、お母さんと別室で話し合っているようです。

 二人が私を想ってくれている気持ちが、ビシビシと伝わってきて最高です。

 

 みんなが一番気にしているのは、後遺症らしいです。

 ずっとお昼寝していたので、筋肉はもうボケっとしていてリハビリが必要でしょう。

 

 それに加えて、無理に立ち上がったときに感じた違和感はそのまま残っているのですから当然ですね。

 右腕、左足には感覚がなくて動かない。右目も見えない。他にも色々と壊れちゃったままです。

 

 でも、生きているだけヨシとしましょう。

 それに、それ以上に大きなものを得られたのですから!

 

 

 私の心の瞳が視える。ふふふ……。ふふふ……。笑みが止まりません。

 それに、心を操れば──ほら! 動かないはずの右腕が動く!

 

 今だって、コッソリ声を出すサポートをしています。

 

 そう。心が体を動かすのです!

 いやぁ、素晴らしい。なんと素晴らしいのでしょう!

 

 ちょっと頑張った甲斐がありましたね。

 私は読心少女として成長して、新たな読心ステージへと登り詰めたのです。

 多少の不便など、些細なことにすぎません。

 

 この動かないはずの体が動く事実をいつみんなに伝えましょうか。

 今度は本当に解剖台行きのモルモットにされてしまうかもしれませんね。

 

 ちなみに、この事実をカナミさんだけにお見せしたら、泣きながら喜んでくれました。

 ついに、読心能力の素晴らしさを分かち合うことができましたね!

 

 あぁ、この最高の力について語りたいことは尽きません。

 私が目覚めてから少し落ち着いた今、病室には偶然、私とカナミさんの二人きり。

 

 

 

 ならば、カナミさんには読心能力の秘密について、答え合わせをさせてもらいましょう。

 

 

 

 

 

 

 私は、なぜ生きているのでしょうか?

 それは今の話ではありません。私が生まれたときからの話です。

 

 

 

 

 

 私の体は弱く、一度はお母さんのお腹の中で死んだとも言われました。

 けれど奇跡的に息を吹き返し、この世に生まれ落ちたのです。

 

 それは、私のミラクルボディーがなせる技だと思っていましたが、実は読心能力のおかげではないでしょうか。

 今回そうしたように、無意識に自分自身を読み、心を操って体を動かしていたのではないでしょうか。

 

 どの病院でも、私が元気でいられる理由はわからないまま原因不明とされました。

 けれど本当の答えは、誰も知らない読心能力にあったのではないでしょうか。

 

 カナミさんの記憶を見て知ったことですが、九条さんの場合、眠ると心の瞳も一緒に眠っていました。

 一方で私の心の瞳は、いつだってパッチリと開いていたのです。

 

 なぜか?

 

 それは「眠らない」のではなく、「眠ることができなかった」のではないでしょうか。

 常に自分の心を読み続け、動かし続けなければ死んでしまうから。

 

 時々、急に体調を崩すのは、読み続けたことによる疲労のせいかもしれません。

 ずっと続ければ、誰だって疲れてしまいますからね。

 

 

 

 思い返せば、九条さんとの決戦の前日。私はひどく体調を崩し、あれは長期コースだと思っていました。

 

 でも、あのとき、『明日は絶対学校に行く!』と強く念じたように思います。

 一日でそこまで体調を取り戻せたこと、学校に到着して倒れてしまったことは、学校に行けるように無意識に読心能力を動かしたからじゃないでしょうか。

 

 

 そう──私が元気でいるために、心の瞳は常に開いていたのです。

 だからこそ、ナイフで瀕死になったあの時だけ、生命の危機に引きずられて瞳もウトウトと眠ってしまったのではないでしょうか。

 

 

 他にも、九条さんは私の読心能力の使い方を視て「化け物」と評しました。

 才能だけじゃない。数多くの心を操り続けないと辿り着けない領域だと言っていましたね。

 

 比較対象がいなかったから気づけなかったのですが、カナミさんと比べても私は一歩飛び抜けていたのです。

 

 けれど私は、天然物の心が好きなので、そんな経験は多くありません。

 

 さすが私です。天才です!

 ……と言いたいところですが、今日は謙虚にいきましょう。退きどころも知っているレディーですから。

 

 

 結局のところ、九条さんの考察は正しかったのではないでしょうか。

 

 ただし、私が誰かを操り続けたのではなく──限界ギリギリで常に自分自身を操り続けていたからこそ、天性のセンスが磨き抜かれていたのでしょう。

 

 その証明が、カナミさんに刺され死の淵から立ち上がったあの瞬間です。

 いくら私が天才だからといって、あの土壇場で、体の隅から隅まで、失敗なく動かすのは至難の業です。

 

 もちろん、私の最高級の頭脳が成功させたと言えばそれで話は終わりです。

 ですが、ずっと無意識にやってきたことだったから成功したのではないでしょうか。

 

 

 証拠はありません。けれど振り返れば、そうとしか思えない出来事がいくつもあります。

 だからこそ私は、生きてこられた。

 

 ──読心能力のおかげで。

 

 私は「読心少女」だから、今ここにいるのです。

 

 

 

 

 

 

 さて、これまでを踏まえて、次の疑問です。

 私とカナミさんが出会ったのは、本当に偶然だったのでしょうか。

 

 

 

 

 

 本やインターネットで探しても、私たちと同じ読心能力者は見つかりません。

 もちろん隠れているだけもありえますが、稀少な存在であることには間違いありません。

 

 そんな力を持つ者同士が、同じ学校で出会う。

 それはどれほどの偶然でしょうか。

 

 九条さんは、カナミさんによって読心能力に目覚めました。

 では、私は本当に「生まれつきの読心少女」だったのでしょうか。

 

 

 カナミさんは九条さんに力を授けたとき、過去に経験したことがあるかのように手が動いたと感じていました。

 

 あれは単なる感覚ではなく、実際に過去に経験があったのではないでしょうか。

 そう。私に読心能力をくれたのはカナミさんだったのではないでしょうか。

 

 

 

 ずっと気になっていることがあります。

 それは、お互いを見たときの心の瞳の「視え方の違い」です。

 

 通常、誰もが次の段階に進むまで、自分の心の瞳は視えません。これは共通のルールです。

 それに加えて、なぜか私たちは「カナミさんの心の瞳」だけ視ることができなかった。

 

 ──カナミさんは、出会った当初から私の心の瞳を視ていたというのに。

 

 

 

 カナミさんは九条さんに読心能力を目覚めさせるため文字通り、自身の心の瞳を半分にして分け与えていました。

 

 ずっと前に、人が左右の脳半球をそれぞれ別の身体に移植したら、両方が「自分だ」と感じる同一性について考えたことがあります。

 

 それと同じように──半分に分け与えられた心の瞳は、目覚めたときに目の前にいた同じ形をした瞳を「自分のもの」と勘違いした。

 

 逆に、与える側であるカナミさんは「これから分け与える」と認識していました。

 だからこそ、その錯覚が起こらず、私たち双方の瞳を視ることができたのでしょう。

 

 

 それを証明するのが、私がカナミさんの心の瞳を視れるようになったことです。

 

 あの絶体絶命の中で、私の読心能力が覚醒して自身の心を認識できるようになりました。

 そう、「自身の心」なのです。なのに、なぜカナミさんの心の瞳も視れるようになったのでしょうか。

 

 ──それは、私がそれを「自分のもの」と勘違いしていたから。

 

 

 

 他にも疑わしいことがあります。

 それは、読心能力に関する名づけセンスが、読心少女全員で一致していることです。

 

 読心能力。心の瞳。瞳の手。認識遮断。感覚共有。

 これらの呼び方がぴたりと同じなのは、単なる偶然でしょうか。

 

「感性の伝播」──カナミさんが発見した、心をおすそ分けしたときに価値観が混じり合う現象。

 もしかすると、私たちの名づけセンスもカナミさんから受け継がれていたのではないでしょうか。

 

 振り返ると、まだまだ思い当たることがいくつもあります。

 

 

 

 

 さて──ここまで考えると、私はいつ読心能力を身につけたのでしょう。

 

 

 

 

 

 私とカナミさんの誕生日は一週間違い。

 そして今日、改めて確認したところ、私たちは本当に同じ病院で生まれていました。

 

 ならば、お母さんのお腹にいるときにそこで偶然出会い、力尽きそうな私にカナミさんが力を授けてくれたのではないでしょうか。

 

 だからこそ、二人の読心少女は近くで生まれ、同じ学校で巡り合った。

 私たちが出会ったのは偶然ではない。

 

 私が元気に生まれ、楽しく過ごし、今ここに座っている。

 そのすべてに理由がある。

 

 ──カナミさんがいてくれたから、私はここにいるのではないでしょうか。

 

 

 

 ハッキリとした答えは出ないのかもしれません。

 それでも、その秘密の答え合わせをしましょう。そして、たくさん話したいことがあるのです。

 

 まずは何から話しましょうか。

 

 

「カナミさん。そうですね――――――」

 

 

 

 

 

 ――――――生まれてきてくれて、ありがとう。

 

 

 

 

 

 最終話

「超絶可愛い読心少女である私こと、色葉ココネには伝えたい秘密がある」

 

 




これにて完結となります。

ここまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。
皆さまのおかげで、最後まで楽しく投稿を続けることができました!

今後も「面白い!」と思っていただけるような作品をお届けしたいと思っています。
次作についてはまだ考え中で、本作とジャンルが変わるかもしれませんが、また応援していただけると嬉しいです!

お気に入り小説/ユーザー・感想・評価などをいただけますと、次作への大きな励みになりますので、是非ともよろしくお願いします!!!

それでは、改めてありがとうございました。
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