スティルインラブの第3人格   作:スティルいいよね

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スティルインラブの小説が順調に増えて嬉しい限り。


確認するスティルさん

 今日はお出かけの日。とある目的のために、わたしは早くから出かけていました。

 

「は~い、それでは今から整理券をお配りしま~す!」

「つ、ついにきましたね……!」

(えぇ。待ちに待ったスイーツバイキングの日。持ち帰りもOKの人気店なので、心配でしたが、この位置なら問題はないでしょう)

 

 その目的とは、スイーツバイキングに並ぶことです。いつも長蛇の列ができるほどの人気店なので、日が完全に上りきる前から並ぶことを決意。見事、前の方をキープすることに成功しました。

 甘いお菓子に目がない私。それだけではありません。

 

(一度食べればわたしが完コピできますので。できる限り多くの種類を食べましょう私)

(ワタシはこのストロベリーケーキが食べたいわぁ。スポンジまで赤くなっているなんて……とぉっても興味がそそられるもの)

「楽しみに待っていたから……いろんなものを食べましょう……!」

 

 太り気味については知りません。スイーツバイキングに余計なことなんて持ち込む必要ないんですよ。

 

 さてさて、順番に整理券が配布されていき、私の番がやってきますが。

 

「それではどうぞー! どうぞー!」

「……あ、あれ? わ、私の分……」

 

 なんと、店員さんにスルーされてしまいました。おっと、これは失念していましたね。理性の私は影が薄いんでした。

 時には目の前まで近づかないと認知されないほどに影が薄い私。元々内向的かつ、自己主張するタイプでもないことから、周りから認識されづらいことがあるようで。こういうことがままありました。自動ドアにすら認識されづらいのはどういうことかと思いますけど。

 

 ただ、自分が飛ばされたことが分かった私は、大きな声で店員さんを呼び止めます。

 

「あ、あのッ!!」

「え? あ、あぁ!? も、申し訳ございません! お客様の順番を飛ばしてしまいました!」

「い、いえ。大丈夫です、いつものことなので……」

 

 声を出して呼び止める。いいですね、その調子で自己主張していきましょう。

 

「せっかくのスイーツバイキングなのに、入れないなんて悲しいから。絶対に、気づいてもらわないと……!」

(食い意地ねぇ)

「そ、そうじゃないわ! だって、楽しみたいじゃない!」

 

 無事に整理券を貰えましたし、後は順番が来るのを待つだけですね。楽しみです、スイーツバイキング。

 

 

 時間までは別の場所で暇を潰し、整理券に記された時間が近づいたらお店の前へ。無事、スムーズに案内されました。

 

「わぁ……!」

(ほう、これは凄いですね。さすがは大人気と名高いスイーツ店です)

 

 煌びやかな装飾に、白く輝くテーブル。まるでおとぎ話の世界に飛び込んでしまったかのような景色に、私も感嘆の息を漏らしていました。これは凄い。スイーツバイキングとは思えない景色です。テーブルも何円ぐらいするのか。

 

(席に着きましょう私。時間が惜しいですから)

「そうね……少しでも多くのスイーツを食べないと……!」

 

 主目的を忘れないように。スイーツバイキングには時間制限があるので、時間の限り食べていかないと。

 

 席に着いて、注文も済ませて、ケーキが届いて。いざ実食、なわけですが。

 

「あぁ……美味しい……」

 

 ゆっくりと、大切に味わう私。そのペースは大変遅く、蝶すら止まりそうなほどゆっくりとしたスピードでした。およそ時間制限付きの食事をしているとは思えないほどの遅さ、この場にカルストンライトオさんがいたら遅いと口にすること間違いなしでしょう。

 

(さっさと食べなさいな私。1つのスイーツに10分近くかけるつもり?)

「で、でも……美味しいからっ」

(持ち帰りできるとはいえ、今のペースだとさすがにまずいですよ)

 

 食べるペースに個人差があるとはいえ、私の食べる速さはあまりにも遅く。このままでは今テーブルを埋め尽くしているケーキだけで終わってしまいますね。

 

 それだけではありません。

 

「あれ? 誰もいないのにスイーツだけ……全く、食べ残しはダメだと注意書きにも」

「いますので大丈夫です!」

「へ? あ、も、申し訳ございません!」

 

 スタッフの方が私達のテーブルにあるスイーツを何度も片付けようとし、その度に私が大声で止めるので、食べる手は一向に進まず。これはアレですね。

 

(気づかなかったわたしにも責任がありますが、私と時間制限付きのバイキングは致命的に合いませんね)

「う、うぅ……ごめんなさい、調和のわたし……せっかく、貴方がおススメしてくれたのに……」

(あぁ、どうか泣かないでください理性の私。これはわたしの落ち度、あなたが悲しむ必要はどこにもないのですから)

 

 もっと違うやつ、それこそ時間制限のないスイーツバイキングにすればよかったですね。存在するのか分かりませんけど。

 

 いや、待てよ? もっと良い方法があったではありませんか。これは本当に失念していました。我ながらなんでこの方法が思いつかなかったのでしょう。

 

(そもそもトレーナーさんと来ればよかったじゃありませんか。我ながら失敗です)

「と、トレーナーさんと!?」

(それは良い提案ねぇ、調和のわたし。あの人がいれば私の食べるペースの遅さをカバーしつつ、今よりもぉっと極上のスイーツを味わえるのだから!)

「だ、ダメ……そんなの、ダメ!」

 

 何がダメなのか。理性の私は顔を真っ赤にして反論しています。その反論もまた、とても可愛らしいもの。

 

「トレーナーさんとデートだなんて……こ、心の準備が!」

(いいじゃありませんか。何事も経験、経験に勝るものはなし。デートの1回や2回、減るものじゃありませんよ)

(そうよ。あの方は断らないもの。あぁ、むしろ喜んできてくれそうねぇ?)

「そ、そんなこと……」

 

 トレーナーさんはお優しい方。わたし達のお願いならば、絶対に来てくれるでしょう。

 

「け、けど! トレーナーさんはいつも忙しそうだもの……邪魔したら、その」

(気持ちは分かりますよ私。確かに、邪魔をしたらいけませんものね)

「そ、そうよ。だから、邪魔にならないようにしないと……」

(温いわねぇ、私。いつかトレーナーさんがワタシタチ以外に目を向けてもいいのかしら?)

 

 わたし達以外に目を向ける。そう本能が口にした瞬間、理性の私の目が鋭くなりました。

 沸き立つ感情は怒り、恐れ、嫉妬。トレーナーが取られることを想像してか、私は激情に身を任せそうになっています。

 

「私以外に、優しさを向けられる……? そんな、そんなの……!」

 

 これはよろしくありません。さて、落ち着かせましょうか。

 

(どうか落ち着いて、私。ワタシも、あまり意地悪を言わないで)

「許せるはずが……わ、わたし?」

(事実を言ったまで。このままじゃ、他の子に取られてしまうもの。そうなる前に、ワタシタチで貪り喰らう……それが最適解ではなくて?)

 

 主張を強める本能のワタシを宥め、正気を失おうとしている私へと語りかけます。

 確かに、わたし達以外に優しい目を向けられるのはよろしくありません。ですが、全てにおいて問題なし。我に秘策あり。

 

(あの方は言ってくれたではありませんか。わたしがどこに行っても見つけてくれると。これはもう告白も同然ではないでしょうか?)

「そ、それは……そうだけど……この話と何の関係が?」

(気づきませんか? あの方の目にはわたし達が最優先に映る。どれだけ他の子へ視線を移そうが、彼の心の中心には私がいる)

 

 トレーナーもトレーナーで脳を焼かれていらっしゃいますからね。なんの問題もないわけです。

 

(むしろ優越感に浸れるのではないですか? どれだけアプローチをかけられても、彼の一番は私……それが変わることは未来永劫ないのです)

「そ、そう言われれば……そんな気が」

(えぇ、えぇ。それでいいのです私。なにも問題はありません。なんなら、今から確かめに行きましょうか)

「え? 確かめにって」

 

 とぼけている、というよりは本当に分からない私。確かめるなら手っ取り早い方法があります。

 

(もうケーキバイキングの時間は終わり。残ったものは箱詰めしてもらって、トレーナーさんにお土産と称して渡しに行きましょう)

「……そ、それは」

(我慢する必要はないわ私。それに、食べながらも思っていたのでしょう? どこか味気ない……って)

 

 ハッと、何かに気づく私。トレーナーがいないから、いつものお菓子もどこか寂しいという感情を抱えていたのでしょう。透けて見えますよ、その気持ち。

 

 そうと決まれば善は急げ。超特急で向かいましょう。

 

「あ、でも……まだ時間があるからこのケーキだけ……」

(……まぁ、せっかくですから。無駄にするのも良くないですし)

(食い意地)

「違います! もったいないからです!」

 

 どうでもいいから食べますよ私。

 

 

 

 

 

 

 スイーツバイキングから帰ってきた後、トレーナー室へと直行した私。最後の最後までごねていましたが。

 

(気持ちを確かめなくていいのかしらァ? なら、ワタシが食べてしまおうかしら?)

「だ、ダメ……! 絶対に、ダメ!」

 

 本能が暴れる素振りを見せて陥落。無事トレーナー室へと着きました。

 

「し、失礼します……トレーナーさん……」

「あれ、スティル? 今日はトレーニング休みだから、お出かけするって聞いてたけど」

「そ、その……私のお話を、聞いてくださいますか? お土産も、ございますので」

 

 最初こそ不思議そうな顔をしていたトレーナーさんですが、私のお願いを二つ返事で了承。大変好ましいですね。

 

 そして、私の口から事の経緯を一から説明。率直に、私についてどう思っているか。加えて、他の子について。

 

「その、私が口出しすることではないとは分かっているんです。私だけを担当するわけにはいかない、いつかは他の子も見ないといけない……だけど、同時に、不安が押し寄せてしまって」

「……君のことが、おろそかになるんじゃないかって?」

 

 無言で頷く私。さぁ、ここからです。トレーナーさんはどんな反応をしてくれるのか。気になりますよ。

 

 固唾を飲んで見守る私。トレーナーさんの口から出てきた言葉は。

 

「大丈夫だよ、スティル」

「……えっ?」

「担当が増えても、僕の中心にいるのはいつだって君だ。これは絶対に変わることがないって、君に誓うよ」

 

 あらあらあらあら。これはこれは、大変情熱的な言葉をいただきましたよ。

 

(あァ、やっぱりアナタは運命の人ッ!! どんな時でもワタシタチを最優先に考えている、素晴らしいお方ァ!)

(やはり、思った通りの言葉をくれましたか。それでこそわたし達のトレーナーさん)

 

 トレーナーからの愛の言葉。加えて微笑み。理性の私は顔を赤くしてトレーナーさんを見ています。そりゃそうなりますよね。嬉しさで天元突破しますよこんなの。

 

「あ、あ、あの、トレーナー、さん……」

「なにかな、スティル」

 

 恥ずかしさで俯き、それでも理性の私は。

 

「あ、安心するためにも……あ、頭を、撫でてもらえないでしょうか?」

「頭を、かい?」

「ぶ、不躾なお願いだとは思っています! それでも、貴方の手の温もりで感じる、安らぎが欲しいから……!」

 

 いい、いいですよ。その調子でどんどんワガママを言うんです私。トレーナーさんを釘付けにしましょう。

 

 トレーナーさんの反応は、好感触。一切の迷いがない早さで、私の要望に応えてくれました。

 

「それくらいでスティルが安心できるなら、良いよ。それじゃあ、こっちにおいで」

「は、はいっ!」

 

 立ち上がり、トレーナーの隣へと腰を掛ける私。トレーナーさんの大きな手が、スティルインラブの頭を優しく撫でました。

 

「大丈夫だよ、スティル」

「……あぁ」

 

 大変満足のいく時間。本能のワタシと一緒にハイタッチをし、固い握手を交わしてこの勝利を喜びました。なお、この後バイキングのスイーツを一緒に食べました。

 

「あの、でも、スティル。あんまりスイーツを食べるのは、その」

「ッ!? ち、違うんです! これは調和のわたしが仕組んだ罠なんです!」

(待ってください。了承したのはあなたでしょう)

(あっはハはハハはハ! アナタもワタシと同じになったわねェ!)

 

 スイーツバイキングの件はわたしに責任転嫁されましたが。あながち間違いじゃないんですけど、どこか納得できませんね。




もっと増えて(強欲)
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