スティルインラブの第3人格   作:スティルいいよね

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アルヴさんも好きなんだ……増えて。誰か書いてくださいお願いします(土下座)


アルヴさんとスティルさん

 今日はトレーニングがてらロードワーク。トレセン学園を出て、規則正しいリズムで走っています。別に太ったとかそういうわけではありません。やっぱり普段から走らないとですからね。

 

 季節の風を感じながら走る道中。河川敷を走っていると、見知った人影を見つけました。

 

「アレは……アルヴ、さん?」

(あらぁ、本当ね)

 

 橋の下の方、しゃがみ込んで何かしているウマ娘。藍色の髪に凛とした雰囲気の彼女。わたし達とティアラ三冠を競い合った最大のライバル、アドマイヤグルーヴさんですね。どうも、橋の下でなにかしているみたいですが、あいにくとここからじゃ見えません。

 

 ただ、別に珍しいものでもないでしょう。彼女の性格なら、ここにはトレーニングに来たと考えられます。深く詮索するようなことでもありません。トレーニングの休憩中とか、たまたま休んでいた場面に出くわしただけとか、いろいろと理由は考えられます。

 それだけなら不思議に思う必要はないのですが。

 

「……なんでしょう。他にも、誰かいるような?」

(誰か、というにはかなり小さい気がしますね。わざわざしゃがみ込んでいるくらいですし)

 

 わずかに見える表情は、仏頂面でいることが多いアルヴさんにしては珍しい、柔らかい微笑み。癒されているような、慈しむような顔を浮かべていました。遠めなのではっきりと見えているわけではありませんが、普段の彼女の冷たい雰囲気もありません。

 

 これはなにかある。休憩ってだけではない何かが。

 

「……ちょっと、声をかけてみましょうか」

(悪くないと思いますよ。知らない仲でもありませんし)

(あの子の愛はどれほど成長したのかしら。ここで味見してみるのも一興だと思わなァい?)

「お、思いません。そうと決まれば……あ、アルヴさーん」

 

 アルヴさんを呼ぶ私。もっとも、その声はかなり小さいです。か細い声でアルヴさんの名前を呼びますが、案の定気づいていないようです。

 

 どんどんと近づいていく私。もう少しで手が届きそうな位置まで歩いてきた、その時。

 

「ッ! だ、誰ッ!?」

「ひゃあああぁぁぁ!?」

 

 突然、アルヴさんがこちらに振り向きました。何度も呼び掛けていた私は虚を突かれ、びっくりして尻もちをついてしまいます。ちょっと痛い。

 

 アルヴさんと視線が交錯する。彼女の目から感じるのは戸惑いと、焦り? なにか焦っているのでしょうか?

 

「……スティル、さん?」

「は、はいっ。ど、どうしたんですか? アルヴさん。貴方が驚くなんて、珍しい」

「どうしてここにって、こっちのセリフ。なんで貴方が、ここに」

 

 いるの、と聞く前に。わたし達の耳に入ってきたのは鳴き声。その声は。

 

「キャンキャン!」

「あ、出てきちゃダメっ!」

「……子犬、ですか?」

 

 なんとも可愛らしい子犬のものでした。少し不格好な木のお家から出てきた子犬は、アルヴさんへ嬉しそうに飛びつき、その顔をペロペロと舐めていました。

 飛びつかれたアルヴさんは嬉しそうに顔を綻ばせています。氷のように冷たい普段の表情からは信じられない、慈愛に満ちた微笑み。ついでに、わたし達のこと忘れてそうな顔です。

 

「きゃっ、こら。ご飯はもうあげたでしょ? 今日はおしまいよ」

「クゥーン、クゥーン」

「そ、そんな可愛い目をしても、ダメ。もうおしまい……ハッ!?」

 

 あ、わたし達のことを思い出したみたいですね。バっとこちらを振り向いて、冷や汗をだらだらと流しています。

 理性の私は、困ったような顔。どんな顔をすればいいのか分からないみたいです。

 

「えっと、その……た、楽しそう、ですね?」

「~~~ッ!」

(あぁ、良いわ! これもまた一つの愛、愛、愛ッ! また麗しく成長したみたいねェ、アルヴさぁん!)

 

 できる限りの笑顔を作ってアルヴさんに言葉をかける私。アルヴさんの顔は羞恥で真っ赤に染まっています。ものすごく赤いですね。まるでイチゴみたいです。

 

 口ごもるアルヴさん。向こうからの反応がないのでどうしたものかオロオロしている私。アルヴさんの成長に喜んでいるワタシと、なんとなく静観しているわたし。口出しできることもないですし。

 木枯らしが吹いたような音がした後、アルヴさんは。

 

「わ、忘れてッッッ!! 今見たものは、全部忘れなさいッッ!!」

 

 今まで聞いたことがない、隣町まで聞こえそうなほどの声量で、わたし達に釘を刺しました。

 

 

 アルヴさんが落ち着いたのは10分ほど経った後。荒げていた呼吸を整え、ふぅ、とため息を吐いた後にわたし達を睨みつける。

 

「……なんで貴方がここにいるの? そして、なんで私に声をかけたの?」

「えっと、その……ロードワークの途中で、偶然。アルヴさんが優しい顔をしてたから、ついつい気になってしまって……」

「よりにもよって、貴方に見つかってしまうなんて……!」

 

 一生の不覚、とでも言いたげな顔。先程からコロコロと表情が変わっています。それほど焦っているのでしょう。普段はほとんど変わらない鉄面皮ですし。もしくはわたしに心を開いてくれているのかもしれません。

 

 もはや隠すことはできないと悟ったのか、アルヴさんは事の経緯を説明してくれました。

 

「……始まりは、2ヶ月ほど前だったわ。橋の下に捨てられているこの子を見つけたの」

「キャンキャン!」

 

 元気に鳴く子犬。視線を木のお家へと向けると、近くには【拾ってください】と書かれた紙が貼りつけられた段ボールがありました。

 つまりこの子は捨て犬。心無い人によって捨てられた、愛を与えられなかった子というべき存在。

 

「その日は貴方と同じように、私もロードワークをしていたわ。本当なら気にしないつもりだったのだけれど……」

「無視、できなかったんですね」

 

 恥ずかしいのか視線を逸らすアルヴさん。普段の表情から誤解されがちですけど、アルヴさんの根は優しいですからね。捨て犬を見捨てることができず、ここで育てようとしているのが良い証拠です。

 

「最初は、ここまではしないつもりだった。飼い主になってくれる人を見つけて、すぐにお別れするつもりだった。だけど」

「……見つからなかったんですか?」

 

 私の言葉に黙って頷く。世の中薄情な人だらけのようです。ペットを飼うのには相当な覚悟がいるので、仕方ないかもしれませんが。

 

「そのままズルズルと、なし崩し的に面倒を見て……気づいたら私に懐いちゃって。それに、彼にもバレてしまって」

「彼……あ、アルヴさんのトレーナーさんですね」

「そうよ。正直、終わったって思った。ロードワークをしていると思っていたら、子犬に現を抜かしていたんだもの。幻滅されると思った」

 

 でも、と弾んだ声を響かせるアルヴさん。嬉しそうな顔をしています。

 

「飼い主が見つからないなら、俺達で面倒を見ようって言ってくれたの。学園では飼えないから、橋の下で飼うことになって。あの人ったら、張り切ってあの子のお家まで作って」

「まぁ、なんて素敵なお話……!」

 

 あのお家はアルヴさんのトレーナーさん作でしたか。雨風は十分凌げますし、中には毛布もあるので、冬場もあったかく過ごせることでしょう。

 それだけではありませんね。近くには子犬が遊ぶ用のボールが置いてあります。一匹でも寂しくないように、ということかもしれません。

 

 嬉しそうに話してくれるアルヴさん。嬉しいニュースはこれだけじゃありません。

 

「それからはローテーションでこの子のお世話をしているの。今はあの人が理事長に直談判してて、もうすぐ許可が下りるって喜んでたわ」

「直談判……というのは?」

「学園でこの子を飼えないか? ってお願い。理事長としても、寂しい思いをさせたくないから大賛成らしくて。いろんな手続きがあるから、ここまで時間がかかっちゃったけど」

 

 なんと、学園でこの子を飼えるようになったらしいです。凄く嬉しいことですね。

 この話に感じるのは、愛。アルヴさんの子犬に対する愛情に、そんなアルヴさんの思いを尊重したいトレーナーの愛。なんと素晴らしいことでしょうか。

 

(あぁ、あァ! なんて美しい愛なのッ! ふフ、フフふ、ワタシも昂ってきちゃう……!)

(落ち着いてください、ワタシ。美しい愛なのは認めますけど、走るのはNGですよ)

(あァ、火照りが収まらない……! 今すぐにでも走りたァい!)

 

 落ち着いてくださいねワタシ。本当に。

 

 話しているアルヴさんの表情も、とても優しいものでした。本当に、心の底から良かったと思っている表情。アルヴさんの優しさを感じます。アルヴさんのことを勘違いしている子達も、この表情を見たらすぐに理解するでしょう。本人は絶対に見せなさそうですけど。

 アルヴさんも随分と変わりました。前は愛なんて必要ない、愛なんて不純物と言っていたのに。今ではこうして、愛を育めている。

 

「本当に彼ったら、いつもお節介を焼いて。私の領域に踏み込んできて、こっちの気なんて知りもしないで」

(あら、あらあらアラ! もっと甘美なお話を聞かせてくれるノっ!?)

(見てください。3割増しで笑顔になりましたよワタシ。これは凄いですね)

「アルヴさん、嬉しそう……」

 

 流れが変わりましたね。アルヴさんが彼女のトレーナーについて語ってくれます。子犬への愛からトレーナーへの愛へ。これは自然な流れ、異論は認めません。

 わたし達は止めることなく聞いていました。だって気になりますからね。普段だったら絶対に聞けませんし。

 

「この子のお家を作っている時も、凄く楽しそうにしていたの。こういうの初めてだから楽しい! ってはしゃいで」

(もっト、モット聞かせてチョウダイ! アナタの愛を、アナタタチの愛を教エテェ!)

「そ、それで、それで……! どうなったんでしょうか……!?」

「でも彼、あまりこういうの得意じゃないから。どうしても不格好になってしまって。カッコいいお家じゃないって凹んでいたわ」

 

 子犬を撫で、楽しそうに語るアルヴさん。

 

「最後にはこの子が気に入ってくれたから。だから出来栄えなんて関係ないわ。それに、私も彼の手伝いをしているうちに、なんだかかぞ……ッ!?」

 

 あ、気づきましたねコレ。自分が何を口走っているのか、何を語っていたのか。その全てに気づいたようです。

 

「~~~ッ!」

「そ、それで、アルヴさん。続きは、続きはないのでしょうか……!」

 

 少しずつ、下から上に赤くなっていくアルヴさんの顔。顔だけではなく、首に手のあたりも真っ赤になっているように錯覚するほどのアルヴさん。それほどの恥ずかしさを、アルヴさんは耐えている。

 

「あ、あ、う、うぅ……~~ッ!」

(あらあら、どうしたのかしら? アナタの甘美な物語をもっとキカセテ! ワタシを、昂らせテェ!)

「わ、わ……」

 

 大きく息を吸うアルヴさん。反射的に私は耳をぺたんと伏せました。

 

「忘れてッッッ!! 絶ッッッ対に忘れてッッ! 今から貴方の記憶を消すからッッ!」

「あ、止めて……! そんなに乱暴しないでください……ッ!」

「うるさいうるさい! 忘れなさいッッ!」

 

 私の頭を掴んでぐわんぐわん揺らしてきます。気持ち悪くなってきますね。できれば止めていただきたいところ。

 

 

 羞恥の感情に飲まれるアルヴさん。ですが、大変素晴らしい愛の話を聞けました。

 

(彼女もマタ、運命の人との愛を育んでイル……! 次、タタカウ時がタノシミだわァ!)

(えぇ、こちらの本能を揺さぶるような走りをしてくれるでしょう。その時は頼みましたよ、ワタシ)

(当然よ! こんな、こんな愛……ワタシもゼンリョクで応えなくちゃア!)

「そ、それよりも助けて本能のワタシに調和のわたし……! アルヴさん、全然止めてくれない……!」

「忘れなさぁぁぁいッッッ!!」

 

 河川敷での話は大変実りのあるものになりました。楽しかったですね、ロードワーク。




育成ウマ娘としての実装をお待ちしております。
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