スティルインラブの第3人格   作:スティルいいよね

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ネタが尽きてました。


パフェのスティルさん

 ある休日。特に予定もなかったわたし達はショッピングモールでウインドウショッピングをしていたのですが。

 

「……こっちだわ」

(どうしたのですか、理性の私。そちらはレストランが立ち並んでいますが)

(もうすぐお昼時ねぇ)

 

 突如として理性の私が進路を変えました。先程まで服を見ていたのに、何かに導かれるようにレストランのフロアへ。目移りせず、迷うことなくフロアを進んでいきます。

 

 これは、アレですね。

 

(いつ見ても素晴らしいですね、理性の私のこれは)

(あら、ワタシタチもできるじゃなァい? 勿論、アナタも)

(それはそうですね)

「こっち……こっちに間違いなく……」

 

 実は理性の私にはある一つの特技があります。トレーナーさんを思うがあまり身に着けたと言っても過言ではない、凄い特技が。

 人混みをかき分けてすいすい進む。進んだ先にいたのは。

 

「う~ん……困ったなぁ」

「何かお困りですか? トレーナーさん」

「あ、スティル。奇遇だねこんなところで」

 

 トレーナーさんです。あるお店の前で立ち止まっていた彼の下へ、理性の私は一直線で駆けつけました。

 

 これが理性の私の特技。トレーナーさんの場所を探し当てることができるというものです。学園内に留まらず、ショッピングモールや別の地域だろうが探し当てることができます。なんと素晴らしい特技なのでしょうか。

 これはわたし達も同様のことが可能。なんなら県を跨ごうが大体の場所を当てることができますよ。なんというか、ここにいるっていうのが分かるんですよね。運命の赤い糸で結ばれているのかもしれません。

 ちなみにこの特技、トレーナーさんも持っています。彼曰く、わたしを探し当てるのは得意だから、とのことらしいです。それに、この特技を披露するのは初めてではありません。なので、トレーナーさんも特に驚くことなく受け入れています。

 

 視線をトレーナーさんへ。彼は苦笑いを浮かべながら、カフェの前で立ち止まっていました。展示されているメニューに注目していたらしいですが、はてさて。

 

(なにかを頼もうとしていたみたいですね。さて、何を頼もうと……!)

(あら、あらあラアらアラ!)

 

 メニューに視線を向けた瞬間、わたしとワタシのテンションは有頂天に。理性の私も頬を染めてメニューをガン見していました。

 

「と、トレーナーさん、これは……っ」

「その、スティルが好きそうなデザートだなって思って。今度また来ようかな、って思ってたんだけど」

「あぅ……」

 

 そこにあったメニューは大きなパフェ。理性の私好みの、とても甘そうなパフェでした。美味しいに違いありません。

 ですが、そんなことはどうでもいい。そう言わんばかりに主張する文字。そのパフェに書かれていた文字は1つ、【カップル限定】。

 そう、このパフェはカップル限定メニューだったのです。成程、理性の私が顔を赤くするのも納得のメニュー。トレーナーさんも、これは言い出しづらかったでしょう。

 

「か、カップル……かっぷる……」

「ごめんスティル! なんか、変な空気にさせちゃって!?」

(押しなさい私! ここは押すのよ! ここで押さないで、アナタはいつ押すのかしら!)

(ノーブレーキで突っ走りなさい私。覚悟を決めて、このパフェをトレーナーさんと一緒に食すのです)

 

 そんなの我々には関係ありません。わたしも本能のワタシも、カップル限定メニューという言葉に大変惹かれております。これは是非とも、トレーナーさんと一緒に食べなければなりません。

 

 そのためにはまず、理性の私を説得する必要があるでしょう。ま、陥落も時間の問題ですが。

 

(良いんですか? あんなに美味しそうなパフェを食べれるだけでなく、トレーナーさんと一緒に食べれるんですよ? これは千載一遇のチャンス、ここを逃したら次はいつ来るか)

「それは……そうだけど……」

(なにを躊躇しているのかしらァ? なら、ワタシが食べてもいいわよね?)

「う、うぅ……!」

 

 甘いものというだけでも蠱惑的なのに、トレーナーさんとカップルに見られる。これはもうわたし達にとってアドしかありません。このパフェを食べることは当然と言うべき代物。躊躇する方がおかしいでしょう。

 それに、理性の私が食べなくてもいい。なぜなら、本能のワタシがいるのだから。

 

(運命の人とアーンしたり、隣の席に座って甘えたり。あァ、なんて魅力的なのかしらぁ)

「そ、そんなのダメ……! わ、私だって……!」

(でもォ、アナタはトレーナーさんと食べたくないんでしょう? はしたない、ふしだら……なら、ワタシが食べてもいいじゃなァい!)

 

 ここぞとばかりに攻め立てる本能。理性の私は縋るようにわたしを見てきますが、首を横に振ります。

 

(ここで躊躇するということは、理性の私はなにかダメなことがあるということ。ですが、トレーナーさんとカップル限定メニューを食べないのは、あまりにも惜しい)

「ちょ、調和のわたし?」

(ならば仕方ありません。ここはワタシの言う通り、ワタシが食べるということで)

「だ、ダメッッ!」

 

 味方にならないことを悟ったか、理性の私は大きな声を出しました。周りの客は何事かとこちらを見ますが、すぐに興味を失いました。理性の私のステルス能力は凄いですね。

 

 震える拳、勇気を出そうと一歩踏み出す。トレーナーさんの目を向いて、胸に手を当てながら。

 

「そ、その、トレーナーさん!」

「どう、したのかな? スティル。調和や本能との話し合いは終わったの?」

 

 時間が経ってしまったというのに、優しいトレーナーさんはなにも気にしてないとばかりに微笑んでくれます。やはり、素敵なお方ですね。

 ともかく、理性の私は1つ深呼吸をして。

 

「い、い、い……一緒、に! このパフェを食べましょうッ!」

 

 勇気を振り絞って、カップル限定パフェを食べようと口にしました。瞬間、わたしとワタシはハイタッチ、大事なことを成し遂げたとばかりにハイタッチを交わします。

 

 トレーナーさんは目を白黒させて困惑していますね。恥ずかしがると思っていた理性の私、それが勇気を出して食べようと言ってきたのだから、当然とも言うべきでしょうか。

 

「本当に良いのかい? スティル。この……か、カップル限定パフェを食べることになっても」

 

 これを食べるということは、トレーナーさんとカップルに見られるということ。我々からしたら何の問題ですか案件ですが、理性の私の性格をよく知るからこそ、トレーナーさんは確認を取っています。

 

 まだ顔を赤くしている理性の私。小さく、けれども確かに、トレーナーさんの言葉に頷きます。

 言葉にせずとも言いたいことは伝わった。トレーナーは理性の私の覚悟を受け取って。

 

「なら、行こうか。一緒にこのカップル限定パフェを食べよう」

「っ、は、はいっ!」

 

 手を差し出され、彼の手を掴んで。私はカフェへと入っていきました。成し遂げました。

 

 

 お店へと案内され、店員に注文。

 

「すみません、この……か、カップル限定パフェを1つ」

「申し訳ございません。この商品は1人では」

「あの、ここにいます……」

「え? あ、も、申し訳ありません! か、カップル限定パフェを1つですね! かしこまりました~!」

 

 最初わたし達の存在に気づいていなかった店員さん。声を上げることで存在を認知したのか、慌てた様子で厨房へと入っていきました。相変わらず凄いステルス能力ですね、理性の私は。

 

 状況を整理しましょう。テーブルにはお冷しかなく、カチコチの私と同じくカチコチのトレーナーさん。どちらも緊張しているのがよく分かります。

 無言、圧倒的無言の空間。気まずい、というよりは本当にこれでよかったのか、みたいな空気。勢いで来たけど大丈夫だろうか、みたいな空気が流れていますね。

 

(それもまた当然。偽装とはいえ今わたし達はカップル、緊張しないわけがありません)

(そうかしらァ? ワタシはすっごく熱くなっているのだけれど)

(それはあなたとわたしだけですよ。理性の私も、トレーナーさんも初心ですから)

 

 初々しいカップルを見ているみたいでこれはこれで好きですよわたしは。これはパフェが来た時が楽しみです、いろんな意味で。

 

(理性の私は気づいていないようですし。パフェが楽しみですね)

「え? な、何のこと? なにが楽しみなの? わたし」

(いえ、このカップル限定パフェ、実は1つやらなきゃいけないことがあるんですよ。それは来てからのお楽しみです)

 

 困惑した様子の私をよそに、パフェが来る時を待ち続ける。のらりくらりと質問を躱し、時が熟すのを待ちました。

 

 そして、時が来る。

 

「お待たせしました~。こちら、カップル限定パフェとなりま~す」

「あぁ……、なんて素晴らしい……!」

 

 パフェが来て恍惚とした表情を浮かべる私。ちょっと本能が混じっている気がしますが、まぁいいでしょう。本題はここからです。

 店員さんはニコニコ笑顔。まるでわたしの表情をそのまま映し出したかのような、素敵な笑みです。

 さっそく手を付けようとする理性の私。制止するように、店員さんが口を挟みます。

 

「それでは、カップルの証明として……お2人で食べさせ合いっこをお願いできますか?」

「……え?」

 

 凍り付く空気。やっぱり気づいていなかった理性の私と、気づいていたけど口に出せなかった、顔を赤くしているトレーナーさん。2人の様子を見て、店員さんはさらに笑みを深めている。

 

「初々しいカップルさんですね~。付き合いたてですか?」

「あ、あ~……はい。そんなところです」

(いけずな人。こォんなにも長い付き合いだというのに)

 

 本能のワタシの言葉すら聞こえていない理性の私。プルプルと震える、スプーンを持った手。固まったまま動きません。

 

 なんとか口を開いた理性の私から出てくる言葉は、困惑。

 

「あ……え……き、聞いてない……」

「あれ? でも書いていますよ? このメニューを頼んだお客様には、カップルの証明のためにあーんをしてもらいますって」

 

 メニューを出して指を指す店員さん。そこにはきちんと、【ただし、カップルの方々には食べさせ合いっこをしてもらいます】と、しっかりと注意書きされていました。

 文字を読み終わった理性の私。先程までよりもさらに赤く染まり、お湯が沸いたポットのように興奮しています。

 

「あ……あぅ……そ、その……トレーナー、さんっ」

「ごめん、スティル。ちょっと言い出しづらくて」

 

 初々しいですね~。これが見たかったんですよわたしは。理性の私が幸せになりつつ、トレーナーさんとさらに親密になれるこの瞬間。ここがわたしの楽園でしたか。

 

(今更、ここまで来て戸惑う必要もないでしょう。覚悟を決めなさい私)

 

 それでも、中々踏ん切りがつかない理性の私。やはり恥ずかしさが勝っているのか、中々動こうとしません。じれったいですね。

 トレーナーさんの方も、どうやら躊躇しているご様子。店員さんは不可解な目を向けており、偽装カップルがバレるのも時間の問題。いざとなれば、本能のワタシを解き放つしかないのでしょうか。

 

 そう考えた矢先のことでした。

 

(ワタシが奪ってしまおうかしらァ! だぁって、理性の私はお堅いんだものォ!)

「ッ!」

 

 我慢できずに動こうとしたワタシ。万事休すか、と思われましたが。

 

「スティル!」

「ひゃいっ!?」

 

 トレーナーさんから名前を呼ばれ、どうにか理性の私が堪えます。代わることなく、トレーナーさんへと向き直る。

 

 依然として顔が赤いトレーナーさん。けれども、その右手にはスプーンが握られていて。

 

「僕が誘ったんだから、僕からやらないとね。ほら、スティル。あ、アーン……」

 

 アーンしてきました。おや、おやおや、おやおやおや。

 

(あァ、運命の人手ずから食べさせてくれるなんて……ッ!)

(行きなさい理性の私! この機会を逃すわけにはいきません! それとも、わたしが食べてもいいんですか!?)

「ッそれは、ダメ!」

 

 差し出されるスプーン。理性の私は、顔を真っ赤にしながらもテーブルに身を乗り出して。

 

「あ、あ~ん……っ、んむっ」

 

 トレーナーさんに、アーンしてもらいました。本能のワタシと一緒に、この日二度目のハイタッチ。

 

「はーい、彼氏さんの方はオーケーでーす……チっ」

 

 なんでか店員さんに舌打ちされましたが、ともかくとしてこちら側。後はあなただけですよ、理性の私。

 と、思っていましたが。トレーナーさんからアーンされて完全に吹っ切れたか、パフェのクリームをスプーンで掬うと、すぐさまトレーナーさんの方へと差し出し。

 

「と、トレーナーさん……あ、あーん……」

 

 アーンしました。アーンしました。大事なことなので2回言いました。

 トレーナーさんは赤面しつつも、理性の私が差し出したパフェを一口。これにて、お互いにアーンしあったわけです。

 

「はーい、お2人ともオーケーでーす。では、ごゆっくりとお楽しみくださいませ~……なんでこんなリア充企画を。店長め」

 

 お題をクリアしたわけなので、店員さんも満足して退席しました。不満の声はきっとアレです。触れないでおきましょう。

 

 

 問題の2人は、顔を赤くして俯いてばかり。今更ながらにアーンしたことを恥ずかしがっているようです。

 

「……その、食べようか、スティル」

「は、はい……あの、トレーナー、さん」

 

 もじもじして、上目遣いでトレーナーさんを見つめる理性の私。いったい何を言うつもりなのか。

 

「どうしたのかな? スティル」

「その……はしたないのを承知でお願いします。も、もう一度だけ……あ、アーンしても、よろしいでしょうか……?」

 

 ほう、ほうほうほう。これはこれは。

 

 トレーナーさんの反応。これはもう決まっています。

 

「スティルの頼みなら、喜んで。その、無理はしなくていいからね」

「あ、ありがとうございますッ!」

 

 花の咲いたような笑顔。この日何度目か分からない、ワタシとのハイタッチ。なんて素敵な休日なのでしょうか。わたしは、素晴らしい休日を過ごすことができました。




調和のわたしと本能のワタシ大喜び。フロア熱狂状態!
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