幼馴染にフラれたので旅に出ることにした   作:イグアナ

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なんかちょっと長くなっちゃいました。



104話

 メガシンカの研究に協力し始めて2週間ほど経った。

 

 今のところは特に研究に躓いている様子も無く、順調といった感じだった。

 

「……そういえば、グリーンくんって元気?」

「へ? ……まあ、元気そうだけど」

「そっか! 誰かのために頑張れちゃう人だから、ちょっと心配なの」

「へぇ……」

 

 だったら自分で本人に聞けば良いのに、とは思ったものの、言わないことにした。

 

「ふーっ、お疲れ様! 今日はこの辺りで切り上げよっか!」

「了解。じゃあ明日も──」

「ホウ」

「え? どうしたのムクホーク?」

「『明日は脱走するからジュカインで研究してくれ』だってさ」

「だから脱走って何!?」

 

 なんかコイツら、研究に協力している間はメガシンカ出来る奴を最低1体は残して脱走するとかいう謎協定を組んでいるらしく、残る奴は日替わりで交代しているらしい。なんだそりゃ。

 

 いや、リーフに迷惑をかけないようにしてくれてるのは凄いありがたいんだけどさ。どうしてその気遣いを少しでも良いから俺に向けてくれないんだ……。

 

「と、とりあえずムクホークは明日居ないんだね! それならムクホークの言う通り、ジュカインに協力してもらおっかな!」

「ホー!」

「ちなみになんでそんな頻繁に脱走してるんだ?」

ホ〜ホホホ〜ウ

「諦め悪すぎだろお前」

 

 コンテストの練習のために脱走してたのかよ。

 

 そう言えばシンオウでも練習してたっけお前。ついに隠さなくなってんじゃねぇか。

 

「ホホホホウ」

「えっ?」

「俺じゃ話にならんから、リーフに感想を聞きたいんだってさ」

「感想って……今の"ハイパーボイス"のこと?」

ホォ!?

 

 ムクホークが目ん玉見開いてバタンとぶっ倒れた。いや、そりゃそうだろお前……。

 

「ど、どうしたのムクホーク!? た、確かにまだ完璧じゃなかったかもだけど、とっても立派なハイパーボイスだったよ!?」

「ウホ」*1

「ウホて」

 

 リーフの言葉がトドメになって、ムクホークは変な声を出して気絶した。ご臨終です。

 

「凄いな……ムクホークにこんな的確なトドメを刺すなんて……」

「トドメって何!? そ、そんなつもりじゃ──!」

「ジュカァ……」

「……へ?」

 

 声のしたほうを見ると、脱走から帰ってきたと思われるジュカインが少し離れた位置でリーフのことを見ていた。

 

 話の流れを聞かずに目の前の光景だけ見れば、リーフの一言でムクホークがノックアウトされたようにしか見えないだろう。

 

 それはつまり、ジュカインからすれば──。

 

「ジュ、ジュカァ……」

「ま、待って! 距離を取らないでジュカイン! 誤解! 誤解なの!」

「ジュカ……」

「『命だけは……』みたいな顔しないで! そんなことしないから! 私そんなんじゃないからぁ!」

 

 グルグルした目になってジュカインを追いかけるリーフを横目に、俺はムクホークへと目を向けた。

 

 ……こういう場合にも、"げんきのかけら"って効くのかな?

 

 

───────────────────────

 

「よ、シバリ」

「おまたせ、グリーン」

 

 ジュカインの誤解をどうにかしてリーフと別れた後、俺はグリーンに呼ばれて研究所から少し離れた場所に来ていた。

 

「で、研究の調子はどうなんだ?」

「順調だと思う。今日はムクホークにトドメ刺してたし」

「何があったんだよ」

 

 理由を話すと、グリーンはケラケラと笑い始めた。ちなみに"げんきのかけら"は効いた。

 

 起きるとき『ボォ゙エ゙!?』とか言ってたから変な効き方してそうな気はするけど。

 

「しっかし、オーキドのじいさんも難儀なもんだよな。本来ならもう帰ってきてるはずなのに、アクシデントだかなんだかでまだ帰ってこれないみたいだし」

「だよな。俺もすぐ戻ってくると思ってたから、ちょっと驚いてる」

 

 なんでも、別地方に出張したは良いものの、天候が悪くて帰りの飛行機や船が出なかったり、その間にまた新しい予定が入ったりで、全然帰宅の目処が立たないとのことだ。

 

 とんでもない有名人だもんなぁ。マサラタウンの外にいるってことなら、この機会にアポを取ってお会いしたいって人は多いのかもしれない。

 

 ちなみにリーフによると、連絡をくれるたびにオーキド博士の声がくたびれた物になっているとのことで、ちょっと心配だ。

 

「……そういえば、さ」

「ん?」

「その、リーフは元気か?」

「え? うん、元気だと思うぞ」

「そっか。……いや、深い意味はないんだ」

 

 んー、なんだろう。なんというか、会う度に同じようなことを聞いてくるんだよな。

 

 何度も聞かれると流石に気になってくる。そろそろ俺からも聞いてみて良いんじゃないだろうか。

 

「……えっと、二人の間に何かあったのか? 前に最近は付き合いが悪いとか言ってたけど……」

「……まぁ、こんなんで『何もない』って言う方が無理あるよな」

 

 グリーンは溜め息をつくと、観念したかのように話し始めた。

 

「前にも言ったかもしれないけど、レッドとリーフとは昔からの友人……幼馴染ってやつなんだ」

 

「いっつも三人で色んなことして、笑い合ってた。……たまにやりすぎてオーキドのじいさんに大目玉食らったこともあったけど、それも今となっちゃ良い思い出だ」

 

「……でも、レッドがチャンピオンになって少し経った頃から、SNSに()()()()()()()がされるようになったんだ」

 

 グリーンが見せてくれた端末の画面を見ると、そこにはリーフに対する誹謗中傷の数々が映し出されていた。

 

 色んなコメントがされていたが、どれも要約すれば『レッドやグリーンに彼女はふさわしくない』といった内容だった。

 

「これって……」

「妬みとか、そういう類だろうな。自分で言うのもアレだけど、オレって結構有名人だし、レッドなんて言うまでもねぇ。……でも、リーフは……」

「……どうして、こんなことを?」

「多分、気に食わないんだろ。俺達にとっては大事な幼馴染でも、知らねぇ奴からすればただ擦り寄ってきてる奴にしか見えねぇわけだ」

「だ、だからって──!」

 

 言いかけて、俺は口を噤んだ。

 

 ネットの誹謗中傷に対する文句をグリーンに言っても何にもならないし、きっとグリーンも同じ気持ちのはずだ。

 

 そんな俺の内心を察してか、グリーンは少し優しく笑った。

 

「……ありがとな。俺も、こんなことはおかしいって思ってんだ」

「グリーン……」

「リーフには気にすんなって言ったんだけど、やっぱりこうもたくさん人の悪意に触れちまうと、そうもいかないみたいでよ。リーフは少しずつ俺達から距離を離し始めたんだ」

「そっか。それで……」

 

 初めて会ったとき、リーフがグリーンを見てすぐにその場から消えたのは、そういう理由があったのか。

 

「おまけに、レッドもレッドでさ。『自分が近くに居るせいでリーフが悲しむ』とか言ってよ、マサラタウンを出ていくとかぬかしやがった」

 

「そんなの絶対間違ってる。だからオレは、どうにかレッドを引き留めようとしたんだ。だけど……」

 

「……オレは、アイツを止められなかった」

 

 ぎゅっと拳を握るグリーンを見て、きっと色々合ったのだろうということが予想出来た。

 

「レッドが出ていって、リーフは『やっぱり自分なんかと一緒に見られたくなかったんだ』って思っちまったみたいで、更に距離を取り始めた。レッドがそんなこと思うはずがないって、何度も言ったんだけどさ……」

 

「だからまずはレッドを連れ戻すのが最優先だと思って、定期的に会いに行ってるんだ。オレが勝ったらマサラタウンに戻ってこいって、一方的に条件を押しつけてまでバトルしてさ」

 

「……でも、手も足も出ねぇんだ。もしかすると、オレが勝手にアイツのライバルを自称してるだけで、アイツはオレのことなんて、もう何とも思ってなかったりしてな……」

 

「ははっ……。オレ、アイツらが苦しんでるのに何もしてやれないんだ。リーフを元気にさせることも出来ねぇ、レッドを連れ戻すことも出来ねぇ。はっ、オレの方こそ、二人にふさわしくな──」

 

「──そんなことない」

 

 俺はグリーンの言葉を途中で遮った。

 

 自分の口でそんな悲しいことを、グリーンに言わせたくなかったから。

 

「シバリ……。でも、オレは……」

「リーフからもさ、よく聞かれるんだ。『グリーンは元気?』って」

「……リーフが?」

「ああ。元気だって言うと、リーフは安心したように笑うんだ。『誰かのために頑張れる人だから心配』って言ってたけど、それって自分のためにグリーンが頑張ってくれてることに気がついてるからなんだと思う。きっと、それはリーフの心の支えになってるはずだ」

「リーフの、支えに……?」

 

 グリーンの言葉に、俺はコクリと頷く。

 

「それに、前にバトルしたときにグリーンのポケモン達からまっすぐな気持ちを感じたんだ。今思えば、レッドさんを連れ戻すために真剣にポケモン達と向き合ったグリーンの気持ちに、ポケモン達が応えてくれてたんだと思う」

 

「会ってすぐの俺がそう感じたんだ。きっと、何度も相対したレッドさんはもっとその気持ちを感じ取ってるはず」

 

「何とも思われてないなんて、そんなこと絶対ない。グリーンの気持ちは、きっと二人に伝わってるはずだ」

 

 なんせ、ラズのポケモンを見ただけで俺のことを把握してきたような人だ。グリーンのポケモン達を見れば、自分に向けられた気持ちなんてすぐに理解出来るだろう。

 

 そんな相手に対して何とも思わないなんて、無理な話なんじゃないだろうか。

 

「……ははっ。励ますためにテキトー言ってるんじゃなくて、本気でそう思ってるんだな、お前」

「当たり前だろ。自慢じゃないけど、嘘はそんなに得意じゃないんだ」

「そういう意味じゃねぇけど……ふはっ、そっか……」

 

 堪えきれないと言った様子で吹き出すと、グリーンは安堵したような表情で呟いた。

 

オレ、アイツらの力になれてたんだな……

 

 もしかすると、何も変わらないように見えた現状が、グリーンの心を少しずつ蝕んでいったのかもしれない。

 

 いつ限界が来てもおかしくなかった。そう考えると、手遅れになる前にグリーンと知り合うことができて本当に良かったと思う。

 

 それに、ここまで話を聞いた以上、俺もこの状況を解決するために協力させてもらうつもりだ。

 

 とはいえ、SNSに書き込まれるコメントをどうにかするのは難しいだろう。出来るのなら、とっくにグリーンやレッドさんがやっているはずだ。

 

 でも、SNSのコメントをどうにかするのがゴールじゃない。

 

 極端な話、SNSにどんなコメントが書かれていたとしても、リーフがそれを気にしなくなれば良いわけだ。要は、何らかの方法で自分に自信を持ってもらえば良い。

 

 いっちょやったりますか。名付けて、『自己肯定感爆上げ大作戦』──!

*1
断末魔




・グリーン
結構悩んでたが、今回の件で心が少し軽くなった。

・レッド
リーフには理由も告げずに出て行った人。
『本当のことを言うとリーフが気にするかもしれないから』という理由から何も言わずに去ったが、それが逆に『私が嫌だから出て行ったんだ……』と思われる原因になる。

・リーフ
数々の誹謗中傷を目にし、自信や自己肯定感がお亡くなりになっている。

・オーキド博士
帰れんぞ
何故か全然
帰れんぞ

※クソ俳句

まだ出てない地方で好きなところ(参考にするかも:パート2)

  • ジョウト地方
  • カロス地方
  • アローラ地方
  • パルデア地方
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