幼馴染にフラれたので旅に出ることにした   作:イグアナ

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キリの良いとこで止めようとしたら文字数が半分くらいになってしまった……。

申し訳ない。


10話

「ということでフウロさん。お話しした通り、本日からシバリさんに荷物持ち業務についてもらいます」

「よろしくお願いします」

 

 交渉の結果、あのときの条件で雇ってもらえることになった。

 

 その代わり変なことをしたらすぐに摘み出すと口を酸っぱくして言われている。

 

 大丈夫かな俺。ナチュラルに変なことをして追い出される可能性があるんだけど。

 

「……あ、う、うん……。よ、よろしくね? それで、その、さ、早速なんだけど──

 

 

──ちょ、ちょっと離れすぎじゃない?」

 

「へ?」

 

 壁に張り付くくらいに後ろに引いて距離を取っていたのだが、やり過ぎだったろうか。

 

「あんまり近寄りたくないかなぁって思いまして」

「そ、その、気遣いはね、嬉しいんだけど。離れすぎてても、その……」

「リハビリにならない。ですか?」

「……う、うん」

 

 フウロさんにもリハビリの旨は伝えている。つまり、フウロさん側も頑張ろうとしてくれているわけだ。でも……。

 

「だからって最初から無理するのもアレかと思いまして。まだ始まったばかりですし、それならとりあえず俺が居ることに慣れてもらうことから始めようかなと」

「そ、それにしたって……」

「あ、大丈夫ですよ。出来るだけ視界に入るようにはしておくので。背後に居たら離れてても不安でしょうから」

「そういう問題、なのかな……?」

 

 

────────────────────────

 

 

 変な人だ。というのがフウロから見たシバリの印象だった。

 

(なんだろう。きっと悪意はないんだろうけど、でもやっぱり、男の人が、怖い……)

 

 これだけ離れているというのに、フウロの身体は若干震えていた。

 

(リハビリ、頑張ろうって思ったのに。こんなんじゃ、私──)

 

「──よし! じゃあ面接官(セツ)さん、アレお願いします!」

「……シバリさん、ほんとにやるんですか?」

「やりますよ! じゃないと意味ないですし!」

「では……フウロさん。こちらを見てください」

「……え?」

 

 セツはカバンから輪っかのようなものを5つ取り出すと、それをシバリの首、手足首にそれぞれ装着していった。

 

「ゔ……ちょっと違和感ありますねこれ……」

「万一にも外れないようにちょっと強めに締めてますからね」

「あ、あの……?」

 

 『一体何を』と、フウロがセツに尋ねようとすると、セツはボタンのようなものをフウロに手渡した。

 

「えっと、これは……?」

「フウロさん、押してみてください」

「え? あっ、えっと、うん……」

 

 フウロがシバリに言われた通りボタンを押すと──。

 

「あだだだだだだだだだだだ!?!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!! ヤバイこれほんとヤバイシャレにならないたたたたたたたたたたた!?!!!」

「え、えぇっ!?」

 

 驚いてフウロがボタンを床に落とすと、シバリの悲鳴も収まった。

 

「……と、というわけで……。はい、いつでも"電気ショック君"です」

「物騒!!」

「これを毎朝、出勤時に私が彼に装着してから、彼にジムへの入館証を渡します」

「ちなみに帰りは入館証とこれ外すのが交換です。あとこれは付けるときにロックナンバー決めるやつなんで、セツさん以外には取り外せません」

「ちゃんと管理されてる!」

「フウロさんはそのボタン常備しててください。あと監視役のジムトレーナーさんにも渡しておくので、俺がなんか変なことしたらボタン押して処してください」

「え、えぇ〜……?」

 

 若干引いた様子のフウロだったが、それよりもセツは、この光景に驚いていた。

 

(フウロさんが……引いてるとは言え、男の人と普通に……)

 

 恐らくこれは一過性のもので、すぐにフウロは元の状態に戻ってしまうだろう。でも、一瞬でも普通に話せているという事実が、セツの心に期待を抱かせた。

 

(もしかしたら、ほんとに治せるかもしれない)

 

 セツが思い返すのはシバリが面接に受けに来た日のこと。

 

 あのときシバリは事情も知らなかったにも関わらず、フウロに怖がられていることを自ら悟り、落ち着いた優しい口調になったと同時に、一歩下がったのである。

 

 あのような場面、他の男性相手のときはすぐに過呼吸になって倒れていたというのに、シバリのときはそうならなかった。

 

(このタイミングでシバリさんが来てくれたのは不幸中の幸いだったかも。これならきっと、フウロさんも──)

 

 

「そしてもうひとつ考えてきました。じゃん!」

「は?」

「えっ?」

 

 シバリが突然、カバンから金髪のカツラを取り出した。

 

(あの、シバリさん。私それ聞いてないんですけど。なんですかその無駄にフサフサなカツラ)

 

 嫌な予感がしながらセツが見守っていると、シバリは得意気に説明し始めた。

 

「見た目が男性なのも怖いかなと思って、女装用のカツラを用意しました! アローラダグトリオを参考に作られたやつです!」

「あ、道理で……」

「フサフサなわけですね……」

「はい。これを付けることで更に恐怖感を減らそうと思ったんですが──

 

 

──予定を変更してアローラムクホークを生成します」

ホァ!?

 

 シバリの隣にいたムクホークがすごい勢いで振り向いた。

 

「ホ、ホォ!?」

「バカ暴れるなムクホーク! なんか電気ショック君で思った以上に変人っぽく思われてそうだから、これ以上変な認識を持たれるわけにはいかないんだよ!!」

「ホ、ホアッ、ホァーーーーーー!!」

「大丈夫だから。俺とお前はいつでも仲間だ。だからほら、一緒に堕ちよう(変人認定されよう)

「ホッ、ホホッホァァァァァァァァァァァァァ!?

 

 

(……やっぱりダメかもしれない)

 

 セツは一瞬でも期待してしまった自分が恥ずかしくなった。

 

 変なことしたらすぐに追い出すと何度も言い聞かせたとは思えない蛮行に、セツは溜め息をつかずにはいられなかった。

 

 だが……

 

「──あはっ、変な人」

 

 小さくではあるが、久しく笑ったフウロを見て、もう少し彼に任せてみようと。思ってみたのだった。




・セツさん
面接官なのでセツさん。単純なネーミングしてんね。

・電気ショック君装着シバリ
フキヨセジムではこれがデフォ

・アローラムクホーク
フキヨセジムを出禁にされた
ムクホークなら入ってヨシ
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