今までに、俺に気持ちをぶつけてきてくれた人は二人居た。
一人はソニアさん、もう一人はルチア。そのときのことは今でも覚えている。
どちらもその胸に秘めた想いを、まっすぐ伝えてくれた。
そんな経験をしたおかげだろうか。さっきリーフが言った言葉からは、どこか熱を感じなかった。
「──
「へ……?」
押し倒してきたリーフの手を掴み、拒絶するように押し退ける。
「ち、違うって、何が……?」
「……ごめん。悪いけど、俺はリーフのその気持ちには向き合えない」
「ど、どうして……? わ、わたっ……私、何かシバリくんに嫌われるようなこと、しちゃった、かな……?」
身体を震わせ、泣きそうになりながら言うリーフに対し、俺はあの二人とリーフの明確な違いを口にした。
「──だってリーフ、
「──────ぇ」
リーフは大きく目を見開き、か細い声を出した。
しかしすぐに元の状態へと戻り、声を震わせながら口を開く。
「な、何言ってるのシバリくん? 私はシバリくんのこと、ほんとに、ほんとに好きで……」
「きっと、嘘は言ってないと思う。だけど、それはリーフが思い違いをしてるだけだ」
「そ、そんなわけない! だって私、シバリくんが見ていてくれれば、それだけで満たされるんだから!」
「俺さえ見ていれば……か」
それは違うだろ。だって、そんなことを言ってしまったら──。
「……俺がリーフを見続けていれば、それだけで満足ってことか?」
「そう! だから私は、シバリくんのことが──!」
「じゃあ、リーフが今まで頑張ってきたのはどうなるんだ?」
「………………へ?」
俺の言葉に、リーフの動きが止まる。
「グリーン達を……自分を見てくれてる人達を信じられるようになるために、今まで頑張ってきたんだろ?」
「それなのに、俺が見てくれれば満足だなんて、そんなのおかしいじゃないか」
「それ、は……」
上体を起こし、俺とリーフが正面から向き合う形になる。
「単純に俺を好きになっただけなら、『俺が見てくれればそれで良い』なんて、そんな気持ちにはならないはずだ」
「それに最近、焦ってたよな? もしかして、途中から『皆を信じるため』じゃなくて、『俺に見続けてもらうため』に頑張るようになってたんじゃないか?」
「そんな、こと…………」
言葉とは裏腹に、リーフの言葉が徐々に途切れていく。
この状況なら、ナツメさんが教えてくれなかったのも納得だ。適性を教えてもらっても、それを『俺に見てもらうために頑張る』のでは意味がないのだから。
「思い出してほしいんだ、リーフが頑張り始めた理由を」
あの日、リーフが頑張ることを決めたときのことを俺は覚えている。
『決めた! 私頑張る! 胸を張って2人の前に立てるように! 周りの声なんて、気にならなくなっちゃえるように!』
「リーフが頑張り始めたのは、俺に見てもらうためなんかじゃないだろう!?」
どうにか思い直してほしくて、自然と言葉にも力が入ってしまった。
俺の気持ちが伝わったのかはわからない。だが、リーフはどこか自嘲気味に俯いた。
「……そっか」
そしてどこか納得したように呟くと、そのまま口を開いた。
「……私ね」
「しばらく成果が出なくて、どこか気が滅入ってたんだ。こんな私が、あの頃みたいに戻れるのかなって」
「あんまり情けないところばっかり見せてたら、シバリくんにも愛想尽かされちゃうかも……なんて、少し不安に思ってた」
「そんなときだったかな、シバリくんがエリカちゃんと楽しそうに話してるところを見たの」
「何故か目が離せなかった。今思えば、きっと取られちゃうと感じたんだと思う。私のこと、シバリくんに見てもらえなくなっちゃうかもって」
「だからかな。もしシバリくんに見てもらえなくなったら、私どうなっちゃうんだろって、怖くなった。そしたら、なんか焦っちゃって……」
「取られる前に取らなきゃって、そしたらずっと見てもらえるって……」
「……シバリくんの言う通りかも。私きっと、見てくれる人を失いたくなかっただけなんだ」
リーフの中で、ようやく今の状況の整理が付いたらしい。どこか依存に近い感情を、恋情だと勘違いしてしまった。そういうことなんだろう。
「……ごめんな。ずっと近くに居たのに、何も気が付けなかった」
「シバリくんは悪くないよ。私がただ、情けなかっただけで……」
「リーフ……」
「……ダメだなぁ、私。真剣に向き合ってくれてるシバリくんに、迷惑かけてばっかりで……」
彼女の瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちる。
俺が自分から関わったんだから、迷惑だなんて思うわけがない。
でも、それを言ったところでむしろ気を遣わせたと感じて、更に自分が嫌になってしまうかもしれない。
だったら俺が言うべきことは何か。何を伝えるべきか。
その答えはもう、俺の中に出ていた。
「……前にも言ったかもしれないけど、俺は今旅してるんだ。そのうちカントーからも居なくなる。……ずっとリーフを見ていることは、出来ないんだ」
「…………うん」
このことは薄々リーフもわかっていたんだろう。それがより一層焦りを加速させていたのかもしれない。
でも、俺はただ『ずっと見ていることは出来ない』ことを伝えたいわけじゃない。
「でも、俺が見ていなくても大丈夫だって思えるまでは、カントーを出るつもりはないんだ」
「え……?」
「リーフが行動の理由を誰かに依存しなくなるまで、自分の足で立てるようになるまでは、俺はずっとここに居る」
「……どう、して?」
見捨てられても仕方ない。そう思っていたからこそ出た疑問だろう。
きっとリーフは、俺に依存しかけながらも、俺のことを100%信じているわけじゃない。
でもそれは当然の話だ。幼馴染の二人のことですら信じられなくなってしまったのに、出会ったばかりの俺を信じ切るだなんて、そんなことあるわけがない。
だから、リーフの視点では俺が見続けてくれる理由がわからない。自分の為だと言われても、信じ切れない。
であれば──。
「だって、このまま出ていったらリーフのことが気になって、旅どころじゃないからさ」
「だから、これは俺のエゴなんだ。俺がこの先安心して旅を続けられるように、後腐れなくこの地方から出ていけるように」
「究極的に言えば、
自分への厚意は信じられなくても、俺が俺自身のためにやっていると言えば、きっとリーフも納得してくれるだろう。
なんて、そう思っていたのだが──。
「……ふ、ふふ……」
「……へ?」
「あはっ……あははっ!」
急にリーフが笑い出した。……笑われるようなことは言ってないつもりなんだが……?
「なんというか……
「なっ……なんのことだ?」
「確かに嘘じゃないのかもしれないけど、シバリくんは自分のために動くタイプじゃないもん。今の言い方もきっと、私のため……なんだよね?」
「ぐぅ……」
で、でも、実際このままリーフを放っておけないっていう俺の気持ちは嘘じゃないんだけども……。
「……ごめんね。見ていてほしいなんて言いながら、シバリくんのこと、全然信じられてなかった」
「リーフ……」
「シバリくんは私から目が離せないほど私のことを好きでいてくれたのに……」
「それは流石に自己肯定感上がりすぎ」
「えへ、冗談」
冗談にしては盛りすぎだろ。
「……でも、極端に言えばこういうことだよね。シバリくんを信じてたら、目を離されるなんて思わなければ、こんなことはしなかったと思う」
「だから、
「……そっか」
真っ直ぐな目でそんな事が言えるなら、もう大丈夫だろう。きっと、道を踏み外したりはしないはずだ
「だからね、シバリくん」
「──もう少しだけ、見ていてくれる?」
憑き物が落ちたような表情で言ったリーフの言葉を、俺が否定する理由はなかった。
「頼む! ウチの劇団に正式にスカウトさせてほしい!」
「シャ、シャン!?」
「頼むよぉぉぉぉぉぉぉ!! たった数日でお客さんの心を掴み取ったキミは、もう欠かせないメンバーなんだ!」
「シャア!?」
ムクホークが気になって途中からサーカスに着いて行き始めたシャンデラだったが、流れで参加した結果、誰よりも引き止められるようになってしまった。
悪意がある相手なら力で振り払えるものの、目の前で懇願してくる男からはそういった感情は伝わってこず、無下にも出来ないため、シャンデラは困ったような表情をしていた。
「キミがいればまだ見ぬ境地に到達出来る! 一緒にサーカスの歴史を変えていきたいんだ!!」
「シャアァァァァァァァァァン!!」
助けを求めるようなシャンデラの声が響き渡るが、その声に応えるものは誰も居なかった。
ゴローニャはファンサで爆発しまくってるし、ケッキングは会場の片付けをしているし、何より目の前でシャンデラと劇団員のやりとりを見ていたムクホークは──。
「ホォッ! ホォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
自分よりもシャンデラが評価されていることをガチで悔しがって、地にひれ伏して翼で地面をドンドンと叩いていた。
その瞳からは、キラリと光るものが落ちていたとか、いなかったとか。
最後まで真面目な話でした(目逸らし)
・シバリ
リーフの現状を依存だと看破し、なんとかメンタルケアに成功。ソニアとルチアとの経験が活きた回でした。
・リーフ
依存を恋情と勘違いして少し(?)暴走した。
結果としてはシバリのおかげで立ち直り、今度こそ頑張ることを決めた。
・シャンデラ
なんとか断り切った。
・ムクホーク
漢 泣 き
まだ出てない地方で好きなところ(参考にするかも:パート2)
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ジョウト地方
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カロス地方
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アローラ地方
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パルデア地方