そのうち元に戻ります
「論文……?」
オーキド博士の言葉に、俺は思わず聞き返した。
だって、それって確か──。
『あ、でもオーキド博士にはデータ採取が上手いって褒められたことがあるよ!』
『データ採取か……。なら、例えば集めたデータを使って論文とか書くのは?』
『あ〜……それは、ちょっと……』
『?』
『なんというか、
『なるほど』
……リーフが一番最初に否定したことじゃなかったか……?
チラリとリーフの方を見ると、彼女も少し驚いたような表情をしていた。
そうして、恐る恐るといった感じで、リーフがオーキド博士に問いかける。
「ほ、ほんとに、私に論文が書けるんですか……?」
「そうじゃが……何か気になることでもあるのかの?」
「だ、だって……オーキド博士、前に机に置き忘れた私の論文を読んで、溜息をつきながら『ダメだ』って呟いてましたよね……?」
「……む? もしや見ておったのか?」
「ご、ごめんなさい……。でも、あれって論文の内容がダメってことじゃ……?」
「いや、全然違うんじゃが」
「えっ」
そうして、オーキド博士は当時のことを語り始めた。
「ふむ……こんなものかのぉ」
オンライン用のポケモン講座動画を撮り終えたオーキドは、椅子に座って一息ついていた。
「いやぁ、最近は色々と新しくなってきて着いていくのがやっとじゃわい。かつては対面での受講が当たり前だったというのに、今ではオンラインで出来るのじゃから、便利な世の中になったもんじゃ」
少し感慨深い気持ちになりながらコーヒーを一口飲むと、ふと机に置いてある書類の束が目に入った。
「む? あれは……」
表紙と思われる一番上の紙に書いてあったタイトルは、数日前に自らが世間に発表した研究テーマとほぼ同一のものだった。
気になって中身を見てみると、それは自分とは異なる切り口で書かれた論文であり、その独特な内容にオーキドの目が釘付けになっていく。
(淡々と事実を書いていくワシと違って、この論文には味がある! 少々アラがあったり、根拠の甘い箇所はあるが、ちょちょっと直せば、素晴らしい論文になること間違いなしじゃ!)
(……もしや、これをリーフが……?)
論文を持つ手が震えるのを感じる。自らの属するこの界隈は年を重ねた者が多く、この界隈に先はあるのかと、オーキドは少し心配していた。
しかし、今ここに次世代を担う若き芽が育っているのを垣間見て、自分の心配など杞憂だったのだと、オーキドは感激した。
(ただでさえデータ採取が上手いリーフが、論文方面にも才があるとなれば、これを放っておくのは界隈への損失! こうしてはおれん、早速リーフにこの論文についてのアドバイスを──!!)
ここまで考えて、オーキドは立ち止まった。
(いや、待つんじゃ。これは恐らくリーフが置き忘れたモノ。つまり、ワシに見せることを想定しておらんはずじゃ)
(つまりリーフからすれば、『世間に出してもいない論文を勝手に読まれた挙句、頼んでもいないのにダメ出しされた』と感じるのではないか……?)
(もしそれで論文へのモチベーションに影響が出るなんてことがあれば、それこそ界隈への損失……! ワシのワガママでそんなことがあってはならん……!)
(しかし、少し直すだけでこの論文は素晴らしいモノになるんじゃ! ぐぅ……1人の研究者として、その完成された論文を読みたいという気持ちはある! しかし……!)
しばらく悩んで、オーキドは溜息をついて論文を机に置いた。
(残念じゃが、今アドバイスするのは──)
「──ダメじゃな」
「──という、あらましなんじゃが……」
「「…………」」
え、えーっと……? つまり、リーフはオーキド博士の言葉で自分に論文を書く才が無いと勘違いしてたけど、オーキド博士はまったくそんなことは思ってなくて、むしろ……。
「リーフが次に論文を書くのはいつなのか、そしてワシに見せてくれるのはいつになるのか、それはもう心待ちにしておったのじゃが……。もしや、あの呟きが誤解の種に……?」
首を傾げてそう言ったオーキド博士の肩を、リーフはがっしりと掴んだ。
「そういうことなら遠慮せず言ってくださいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「ぬぉぉぉぉぉぉ!?!!!!? なんじゃ!? 肩を揺らすのはやめるんじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「勘違いしちゃったじゃないですか! まあ私が悪いんですけど! 私が一人で思い違いしてたんですけど!!」
「お、落ち着けリーフ! ワシはお前のことを想って──!」
ぐわんぐわんと揺すぶられているオーキド博士を見ながら、俺はひとつ納得いったことがあった。
昨日、少し疑問に思ったことがある。それは、オーキド博士とは普通に関わっていたのに、どうして俺に依存するようなことになってしまったのかということだ。
だが、コレでなんとなくわかった。きっとリーフは今回判明した勘違いのせいで、オーキド博士からは期待されていないと思ってしまったのだろう。それがリーフの孤独感を更に後押しすることに繋がった。
でも、実際はそんなことはなかった。むしろ、オーキド博士は誰よりもリーフに期待していたのかもしれない。
「……だったら、やる事は決まったな」
「へ?」
リーフがオーキド博士の肩を揺らすのをやめてこちらを見る。
「書くのが楽しいって言ってたし、丁度良いじゃん。論文、やってみようぜ」
「……うん!」
嬉しそうに頷いたリーフを見て、オーキド博士もどこか嬉しそうな表情になった。
「おおっ! ついに書いてくれるのかリーフ! それなら、丁度良いテーマがあるぞ!」
「良いテーマ?」
「うむ」
リーフの言葉に頷くと、オーキド博士はとある方向に視線を向けた。
その視線の先にあったのは、オーキド博士が不在の間に俺達が集めたデータを記録した資料だった。
「セルフメガシンカの研究、データの採取はほとんど終わっとるんじゃろ?」
「なら、あとは書くだけ……じゃな?」
その言葉の意味を理解したリーフが、遠慮がちに口を開く。
「……い、いいんですか? 興味を持ってたのはオーキド博士なのに……」
「何を言う。ワシの興味があるテーマを、期待する若者が書き上げてくれるんじゃ。これ以上の贅沢はない」
そう言って、オーキド博士はリーフの肩を手を置いた。
「世に出すのが不安なら、その前にワシが添削しよう。何、伊達に長年博士なんぞやっとらん、体裁を整えることなんぞ朝飯前じゃ」
「だからリーフ、お前にセルフメガシンカについての論文作成をお願いしたい。……頼まれてくれるかの?」
「…………はい!」
元気よく返事したリーフを見て、オーキド博士は嬉しそうに笑みを浮かべたのだった。
……ちなみにムクホークが『先を越された……』みたいな表情でリーフを見ていたのは、見なかったことにしておく。
「…………ふふ」
ヤマブキシティのジムにて、ナツメは一人笑みを浮かべていた。
(そろそろあの子の根本について解決した頃かしら? そしたらいよいよ、もう一度私のところに聞きに来るはずよね……)
(前回は少し取り乱したけど、今回は完璧に対応してみせるわ。最初からあの子が来るとわかっていれば、動揺なんてしないもの)
そんな風に考え、シバリ達を待ち続けるナツメだったが、待てども待てども、彼等がヤマブキシティジムを訪ねてくる気配が感じられなかった。
(どういうこと……? そろそろ来ていてもおかしくないはずなのに……)
携帯を見ても、彼からの連絡は来ていない。
だが、来るはずなのだ。今日の何処かで彼等が来るところを、彼女は予知したのだから。
しかし、結局シバリ達が今日ヤマブキシティジムを訪れることはなく、唯一訪ねてきたのは『どうしてもスカウトしたいポケモンが居るんです……』と悩みを相談しに来たサーカス劇団員だけだった。
・リーフ
ついに得意なことが判明。最初に切り捨てた論文だった。
初めからオーキド博士に聞けば解決だったのだが、怖くて話題に出せなかった。
・オーキド博士
胃痛薬は必要ないし、期待している若者が論文を書いてくれる。人生の絶頂に居る人。
このまま幸せにカントー編を終えることが出来るのか……?
・ナツメ
待ち続けた結果サーカス劇団員しか来なくて泣いた。
話を聞く限りどう考えてもシバリのシャンデラに熱を上げていることに気が付き、やんわりスカウトは無理だと伝えた。
・ケッキング
このあと少し力仕事をした。消火に成功してニッコリ。
・ムクホーク
ケッキングに近くの水場(21ばんすいどう)に投げ捨てられた。命に別条はない。なんなら少し泳いで楽しんでた。
まだ出てない地方で好きなところ(参考にするかも:パート2)
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ジョウト地方
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カロス地方
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アローラ地方
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パルデア地方