幼馴染にフラれたので旅に出ることにした   作:イグアナ

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難産じゃった。


120話

 ベッドに寝かされたシバリの前で、リーフは医師の診断を聞いていた。

 

 倒れた原因は過労。限界を超えたことに気付かず無理をしていたのではないかというのが、医師の見解だった。

 

 安静にしていれば徐々に快復するだろうから、しばらくは入院などではなく研究所(ご自宅)で様子見するということで問題なし。もし何かあれば連絡を……とのことで、医師は一旦引き上げていったのだが──。

 

「……私のせいだ」

「リーフ……」

「きっと、私のためにたくさん無理して、それで倒れちゃったんだよ。……私、全然気づけなかった。自分のことしか考えられてなくて……」

「お主だけのせいではない。ワシもシバリ君を毎日のように見ておったのに、まったく気づけんかった……」

 

 決して、2人が悪いわけではない。

 

 片や論文という分野での才能を見出され、今度こそ前に進めると意気込んだ少女。

 

 片や自分の子供のように思っていた若者がようやく論文に手を出してくれるということで舞い上がり、論文作成に積極的に協力していた博士。

 

 こんなことがあっては視野が狭まって当然だ。シバリ本人が疲れを見せないように振る舞っていたこともあり、この状況で彼の疲れに気がつくのは難しかったと言わざるを得ない。

 

 しかし、だからと言って本人が責任を感じないかと言えば話は別になる。

 

 リーフは自分のせいで無理をして倒れたと責任を感じており、オーキドもまた、大人として若者の体調管理に気を配るべきだったと反省している。

 

 しかし、オーキドは大人だからこそ、シバリのことばかり気にしてはいられない状況だということを理解している。

 

 何故なら、刻一刻とあの時間が近づいているのだから。

 

「その、シバリ君のことが心配なのも、責任を感じるのもわかる。しかし、しかしじゃ。このままじゃと、論文発表会に間に合わ──」

「……行けないよ」

「リーフ、じゃが……」

「行けないよ!!!!」

 

 瞳から涙を落としながら、リーフはオーキドの言葉を拒絶する。

 

「私のせいで倒れちゃったんだよ!? シバリくんのおかげでここまで来れたのに、このまま放って行くことなんて出来ないよ!!」

「き、気持ちはわかる。しかし──」

「それとも博士は私が論文の発表さえ出来ればそれでいいの!? 目的さえ果たせれば、シバリくんのことなんて──!」

「そういうわけではない!! 良いかリーフ! こういうときこそ冷静に考えるんじゃ! 周りが見えなくなっては何も出来んぞ!!」

「っ……ごめん、なさい」

 

 オーキドがシバリをどうでも良いなんて思うわけがないというのは、リーフが一番よくわかっていた。オーキドはただ、今この状況で考えるべきことを大人として発言してくれただけだ。

 

 それを理解出来ているはずなのに、思ってもいないことを口にしてしまった彼女は、乾いた笑いをしながらそっとシバリに触れた。

 

「あ、あはは……。やっぱり私、キミが見てくれてないと何もできないんだなぁ……」

 

「……ごめんね、シバリくん。この日のために頑張ってきたけど、結局、私は──」

 

シバリ!!!!!!

 

「ぬおっ!?」

 

 勢い良く部屋の扉が開き、グリーンが部屋の中に入ってきた。それと同時に、驚いたオーキド博士が変な声を出して飛び上がった。

 

「おいじいさん! シバリが倒れたってホントか!?」

「だ、誰かと思えばグリーンか……。シバリ君が倒れたのは本当じゃが、原因は過労じゃ。安静にしておれば問題ないと診断を受けて、今はそこで寝ておるよ」

「……はぁ、そうか。チッ、やっぱ寝てなかったかアイツ……休めっつったのによ……

 

 グリーンはぼそりと呟くと、シバリの寝ているベッドへと目を向けた。

 

 そして、横に居るリーフに気がついた。

 

「お前……」

「……あ」

「待て!!!」

 

 目線をそらして逃げようとするリーフの手を、グリーンは強く掴んで捕まえた。

 

「おい、なんでお前がここに居るんだよ」

「え……? あ、そ、そうだよね……私のせいで倒れたんだから、そんな私なんかがシバリくんを心配するなんて──」

「アホか、そうじゃねぇよ。()()()()()()()()()()()()って聞いたんだよ」

「へ……?」

 

 グリーンの言葉に、リーフは一瞬意味がわからなくなった。だって、そんな事を言うということは、つまり──。

 

「今日は論文を発表するんだろ? こんなとこで油売ってる暇あんのかよ?」

「な、なんで、知って……?」

「そこで寝てるバカから聞いたんだよ。ったく、散々休めっつったのによ……」

「……そっか」

 

 彼の口ぶりから、グリーンはシバリの体調に気がついていたのだということを、リーフは理解した。

 

 自分の方がシバリとは長く過ごしていたはずなのに、グリーンだけが気づけていたという事実に、彼女は自身の不甲斐なさを痛感した。

 

「……やっぱり、ダメなんだよ。私は」

「あん?」

「論文を発表する資格なんて、私には無かったんだよ。一人じゃ論文を書き始めることすら出来ない、シバリくんの体調にも気づけない。……迷惑ばっかりかけて、一人じゃ何にも出来ない」

 

 諦めたような、それでいて自虐的な表情で、リーフは言葉を続ける。

 

「こんな私が今日論文を発表しに行ったところで、きっと──」

おい

 

 どこかイラついたような表情で、グリーンは彼女の言葉に口を挟んだ。

 

「それ、いつまで続くんだ? さっきからずっと、やらない言い訳をしてるようにしか思えねぇんだが?」

「ち、ちがっ……そんなんじゃ……」

逃げてんじゃねぇ!!!!」

 

 オーキドですら滅多に聞いたことのない、グリーンの怒鳴り声が部屋に響き渡った。

 

「ここでちんたらシバリが起きるのを待ってることがコイツの望んだことか!? それでコイツが喜ぶのか!?」

 

「自分のせいでリーフが論文を発表出来なかったなんて知ったらシバリがどう思うか……コイツと一緒にいたならわかるだろ!? 」

 

「このままコイツが起きるまで待つってのは、ぶっ倒れるまで頑張ったコイツの頑張りをゼロにするってことだぞ!? それでいいのか!?」

 

「一時期お前がシバリに依存しかけてたのは知ってる。でも、そうならないように頑張ろうって、二人で決めたんだろ!?」

 

「なら今こそ踏ん張り時じゃねぇのかよ!? 倒れたことに責任感じてんなら、倒れるだけの価値があったって見せてやれよ!!」

 

「前を向こうってシバリと話したときのこと、もう忘れちまったのか!?」

 

「……シバリくんと、話した、こと……?」

 

 グリーンの言葉に、あの日シバリと話したことがリーフの脳裏をよぎる。

 

(そうだ。見ていてくれるって、言ってた。私が大丈夫になるまで、ずっと……)

 

(そうじゃなきゃ、心配で旅に出れないって……)

 

 チラリと、リーフはシバリへ目線を向ける。

 

(ここで逃げても、シバリくんは私と一緒に居てくれる)

 

(どんなに情けない私でも、シバリくんは見ていてくれる……)

 

(……()()()()()()()()()?)

 

 シバリがずっと見ていてくれればそれで良いと、一時期リーフは本気でそう思っていた。

 

 けれど、今は──。

 

「……ありがとう。グリーンくん」

「は? なんで礼なんか……」

「私、怖かったんだと思う。シバリくんの見ていないところで、たくさんの人の目に触れて論文を発表することが」

 

 『でも』と、リーフは続ける。

 

「シバリくんはね、私が前を向けるって信じてくれたの。いつか自分が見てなくても大丈夫になるって、自分の脚で立てるようになるはずだって」

 

「そんなシバリくんの信じる私を、裏切りたくない。逃げ出す弱い私を、もうシバリくんに見せたくない」

 

「だから、もう逃げない! シバリくんが目を覚ましたとき、胸を張って『もう大丈夫』って言える私になりたい!!」

 

「……はっ、そうかよ」

 

 顔色の変わったリーフを見て、グリーンはぶっきらぼうながらも笑みを浮かべた。

 

 二人を見てオロオロしていたオーキドもホッと安堵の息をついたが、時計を見てすぐにハッとした表情になった。

 

「いかんいかんいかん! リーフが頑張ると決めたは良いが、もう時間ギリギリじゃ! このまま普通に向かっても間に合わんかもしれんぞ!?」

「えっ!? そんなっ、どうしたら……!」

「……はぁ」

 

 慌てふためく二人を見て、グリーンは溜め息をついた。

 

「おいリーフ。お前シバリから聞いてねぇのか?」

「へ?」

「オレのピジョット、シバリのムクホークに負けねぇくらいの速度で飛ぶんだぜ?」

 

 そう言うとニヤリと笑って、グリーンはボールからピジョットを出した。

 

()()()()()()()。今なら無料(タダ)にしといてやるが……乗ってくか?」

「──────ッ! うんっ!!」

「ならさっさと準備しろ。外で待ってっから」

「わかった! ありがとうっ!!」

 

 バタバタと準備を始めるリーフをよそに、オーキドはグリーンに尋ねた。

 

「……ワシも乗れるかの?」

「定員オーバーに決まってんだろ」

「ぐぬぬ……ワシはどうしたらいいんじゃ……」

「正規の交通手段で後から来りゃいいだろ……」

「そうじゃグリーン! まずはリーフを送り届けたあと、その次はワシを迎えに来るというのはどうじゃ!」

ピジョ!?

「ふむ、任せろと言っておるようじゃぞ!」

「無理があるだろその解釈は」

「ここで一句。飛べ*1

「せめて五・七・五の形式は守れよ」

「飛ぶのじゃぞ ワシを抱えて 飛ぶのじゃぞ」

「やかましいわ」

 

 二人が部屋を出ていき、しばらくすると、リーフが一人で部屋に戻ってきた。

 

 彼女はシバリの前まで来ると、寝顔を覗き込んだ。

 

「……行ってくるね。キミが見ていないのはちょっと怖いけど、もうシバリくんが見てなくても大丈夫だよって言えるよう、頑張るから」

 

「……だから、今はゆっくり休んでてね、シバリくん」

 

 そう言い残して、リーフは外へと駆け出した。

*1
字足らず




・シバリ
寝てる間に全部終わった人

・リーフ
グリーンのおかげでなんとな立ち直り論文発表会へGO! ギリ間に合ったらしい。

・グリーン
リーフを叱咤激励して立ち直らせた。本日のMVP。
グリーンが主人公の二次書きたいくらいには好き。(何の話)

・オーキド博士
定員オーバーで置いてかれた

・ピジョット
研究所─会場間をシャトルランさせられるピジョットは存在しなかった。良かったネ!

まだ出てない地方で好きなところ(参考にするかも:パート2)

  • ジョウト地方
  • カロス地方
  • アローラ地方
  • パルデア地方
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