幼馴染にフラれたので旅に出ることにした   作:イグアナ

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カントー編最終章、そんなに長くないのですぐ終わりそうな雰囲気があります。


123話

「……とまぁ、こんな感じでね」

「なんというか……社長さんはよっぽどサカキさんのことを慕っているんですね……」

 

 でも、今はそれが悪いほうに作用してしまっている。社長さんの中にあるサカキさんの像を、現実のサカキさんに押し付けてしまっているわけだ。

 

「私は社長を止めたい。心の中のサカキ様から解放されて、自分のために生きてもらいたい。誰からも望まれていないことを、望まれていると信じ続けるだなんて……そんなの、虚しすぎるじゃないか」

「……そう、ですね」

「だから、君に協力をお願いしたい」

「……へ?」

 

 協力? 俺に……?

 

「難しいことじゃないんだ。実は近日中にサカキ様と一緒に社長を説得しに行こうと考えてるんだけど、シバリ君にもその場に立ち会ってほしい」

「へっ!? ……え、えっと、俺なんかで良いんですか……?」

「他でもない君が良いんだ」

 

 そう言って、アインさんは俺に向かって頭を下げた。

 

「情けない話だとは思ってる。けれど、社長を呪縛から解放するためにも、フェイを変えてくれた君の力を貸してほしい」

 

 ……正直、俺なんかが役に立てるかはわからない。けれど、今を変えたいと思うアインさんに、俺は協力したいと思った。

 

 だから──。

 

「……わかりました。俺で良ければ一緒に行きます」

「本当かい!? 言質! 言質取ったからね!! いやぁ、言ってみるもんだなぁ!!」

「おい」

 

 なんだその変わり身。さっきまでの真剣な雰囲気どこいった。

 

「ごめんごめん、まさかこんな即答でOKを貰えるとは思っていなくてね。つい嬉しくなってしまって……」

「なんかもう既に後悔してるんですけど……」

「そうかい? でも言質は取ったからね。録音済みだよ」

「何さりげなく録音してんですか」

「これが大人のやり方さ」

 

 汚いな。さすが大人きたない。

 

 

 


 

 

 

 アインさんのお願いを承諾した後、あれよあれよと話が進んでいき、あっという間に社長さんを説得する日を迎えてしまった。

 

 待ち合わせ場所に着くと、見覚えのある強面な黒スーツのおじさんが立っていた。

 

「ふむ、アインが同行させたい者が居るというから誰かと思えば……君だったか」

「お、お久しぶりです……」

 

 サカキさんとはそう遠くないうちにまた会う気がするとは思っていたが、まさかこんな再会になるとは思っていなかった。

 

「確かに君なら適任だろう。大人はどうにも頭が固くて敵わんのでな。その若さ、期待させてもらうとしよう」

「……なんか、プレッシャーかけてきてません?」

「ふっ、普通に言っても聞かぬような頑固者に話をつけに行くのだ。緊張で変な事をしてしまうくらい型破りな方が、丁度良いというものだろう?」

「……えっと、つまり?」

「わざとだ」

「ですよねこんちくしょう!!」

 

 この人やっぱり悪い人なんじゃないか? ホントに改心してる?

 

「だが、期待しているというのは本当だ。君の言葉は誰かを変える力がある。先日の論文もそうだろう?」

「……えっ?」

「共著者に君の名があった。となれば、塞ぎ込んでいた彼女を立ち直らせたのは君だとしか考えられん」

「どうして、リーフのことを……?」

「……()()()()()()()()。ただ、それだけのことだ」

「? それって、どういう──」

お待たせしましたー!!!

 

 声のした方をを見ると、アインさんがこちらに向かって走ってきていた。

 

「ほう、言い出しっぺが一番遅れての到着とはな。いつから重役出勤が出来るほど偉くなったのだ?」

「そ、そんなんじゃないですって! というかお二人が早すぎるんです! まだ集合時刻の10分以上前ですよ!?」

「だから何だ」

「だから何だ!?」

 

 パワハラかな? ……まあ、サカキさんも本気で言ってるわけじゃなさそうだし、軽い冗談を言い合ってるような感じなんだろうな。

 

 ……良かった。アインさんとサカキさんの関係が心配だったが、思った以上に良好みたいだ。

 

「しかし、まさか彼を連れてくるとはな。紹介して正解だったというわけか」

「……紹介?」

「あぁ、実はシバリ君のことはサカキ様から聞いたんだ。『ヤマブキにシバリという名の面白い少年が居るぞ』って」

「なるほど、だから……」

 

 ふと、アインさんと初めて会ったときのことを思い出す。

 

『失礼ですが、お名前は……?』

『シ、シバリです』

『そうか、貴方が……。面白い人物が居ると聞いて暇潰しのつもりでやってきましたが、想像以上でした! まさか、私が営業したときは眉ひとつ動かさなかったナツメさんに、あのような表情をさせる人がいたとは!』

 

 あのときは、まるで誰かから俺のことを聞いたかのような口ぶりをしていた。

 

 あれはサカキさんから俺のことを聞いてたってことだったのか……。

 

「初めて会ったときは、まさかフェイとも関係があるとは思っていなかったけどね。……今日は期待しているよ、シバリ君」

「……アインさんまでプレッシャーかけないでくださいよ」

「ごめん何の話だい?」

 

 首を傾げるアインさんを見て、サカキさんは人の悪そうな顔で笑ったのだった。

 

 

 


 

 

 

「社長、今日こそお話を聞いてもらいます」

 

 社長室に入るや否や、アインさんは社長さんに詰め寄った。

 

 突然のことに社長さんは一瞬戸惑うも、すぐに冷静な表情に戻って口を開いた。

 

「少し待ってよアイン君。今日サカキ様をお呼びするなんて僕は聞いてない。それに、部外者まで居るじゃないか。ちゃんと事前に連絡してくれないと困るよ」

「それに関しては申し訳ありません。けれど、事前に連絡しなかったことには理由があります。それに──」

 

 アインさんは俺の方に一瞬視線を向けると、すぐに視線を戻した。

 

「彼は部外者ではありません。私の友を正しい道を戻してくれた恩人であり、私が変わろうと思ったキッカケなのです」

 

「私は今日、自分への戒めを込めて彼にここまで着いてきてもらいました。だから、何を言われても逃げないし、引かないし、諦めません」

 

「……頑固になったねぇ、君も」

 

「頑固なのは君もだろう。ヨイチ」

 

 割って入る形で、サカキさんが口を挟んだ。

 

 ヨイチというのは、恐らく社長さんの名前だろう。

 

「サカキ様……申し訳ございません。ご期待に応えることが出来ず……」

「何度も言っているが、そうではない。私のためにその重荷を背負う必要はないと言っているのだ」

「いえいえ! この程度、サカキ様のためならば何の重荷にもなりません!」

「……ヨイチ。どうして君はそう──」

「──社長」

 

 サカキさんが苦虫を噛み潰したような表情をすると同時にアインさんが一歩前に出た。

 

「──ごめんなさい」

「ごふっ!?」

 

 謝罪と同時に、アインさんは社長の顔面をぶん殴った。

 

「アインさん!?」

「アイン!? 君は何を──!」

「……はは、殴った方だっていうのに拳が痛いな……。まさかこの手で恩人を殴ることになるだなんて思わなかった……」

 

 どこか悲しそうな表情で震える自分の拳を見たアインさんは、そのまま社長さんに近づき、襟を掴んだ。

 

「正気に戻ってくださいよ社長! いつまで()()()()()()()してんですか!!」

 

()達の言ってることの意味、ホントはわかってんでしょう!? こんなこと続けても、いつか認めなきゃならない日が来るんです!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()!! ロケット団はもう……終わったんだ」

 

「いい加減、目ぇ覚ましてくださいよ。ヨイチさん……」

 

「……アイン、君……」

 

 何か、思うことがあったのだろうか。力なく襟から手を離したアインさんに対し、社長さんは何も言い返さなかった。

 

「……アインの言う通りだ。悪いがヨイチ、君の望む私はもうどこにも居ない。いくら待ち続けたとて、それが実ることはない」

「……サカキ、様……」

「何、私が居なくなったとて独りになるわけではあるまい。目の前に、忠実な部下が居るではないか」

「……っ」

「君が私を慕ってくれていたように、君にもまた、同じように慕ってくれる部下が居る。そのことを忘れてはいかん」

 

 改めて、社長さんがアインさんに目を向ける。

 

「……そう、か。僕はずっと、バカなことをしていたらしい」

「社長……」

「ありがとう、アイン君。君のような部下を持って、僕は幸せ者だ」

 

 ……これ、別に俺は要らなかったんじゃないか?

 

 俺が居なくとも、アインさんの気持ちはきっと社長さんに伝わっていたはずだ。

 

 良かった。これできっと、二人も前を向いて進んでいけるはずだ。

 

「本当にありがとう。こんな僕を諦めないでくれて。そして──」

 

 

 

「──()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 瞬間、バチッという音が鳴ると同時に、アインさんが社長さんに向けて力なく倒れた。

 

「……アイン、さん?」

 

 遅れて、何かスタンガンのようなものでアインさんが気絶させられたのだということを理解した。

 

 言葉も出せずに呆けていると、サカキさんが社長さんの方へと歩み寄った。

 

「……少し、実行に移すのが遅いのではないか?」

「申し訳ございません。何しろ、失敗が許されない状況でしたので……」

「……は?」

 

 社長さんの行動にサカキさんは動揺しないどころか、まるで想定通りだと言わんばかりの表情をしていた。

 

「どういう、ことですか……? 一体、何を……」

「何を……か。 ()()()()()()()()()。ならば、やることは決まっているだろう?」

 

 堂々として、それでいて悪人らしい悪い笑みを浮かべながら、サカキさんは答えを口にした。

 

「"わるだくみ"だ」




終わるとは言ってない。

まだ出てない地方で好きなところ(参考にするかも:パート2)

  • ジョウト地方
  • カロス地方
  • アローラ地方
  • パルデア地方
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