これで勝ちだぁ!!
「逃げられた……のか?」
「そうね。今頃ヤマブキシティのどっかに居るんじゃないの?」
言いながら、ラズは俺の方へと近づいてくる。
「で、ケガとかしてないでしょうね? 痛いところとかあったらすぐ言いなさい」
「なんか急に母親みたいなこと言うじゃん」
「どういう意味よ」
「あだっ!?」
ジト目のラズに軽くチョップされた。こんなやり取り、随分と久しぶりだな……。なんだろう、今のラズは……。
「……なんというか、落ち着いた……のか?」
「へ?」
「いや、上手く言えないんだけどさ……ラズの態度が柔らかくなったというか、話しやすくなったというか……」
「……まあ、前の私が話しづらかった自覚はあるけど……」
チラリと後ろのキルネアさんを見ながら、ラズは言いにくそうに言葉を続ける。
「……キルネアさんのおかげよ。前の自分よりは大分マシになれたんじゃないかしら」
「ラズちゃんがそんなことを言ってくれるなんて……! よしよし……」
「あ゙ーーーッ!! だから言いたくなかったのよこんなこと!!」
撫でてくるキルネアさんに対して鬱陶しそうな顔をしているラズだったが、なんというか、どこか満更でもなさそうな雰囲気を感じる。
……ちょっと安心した。今のラズなら一人になるなんてことはきっとないだろう。どこにいっても上手くやっていけそうな気がする。
「……ん?」
手持ちの誰かのボールが少し動いた気がしたその瞬間、俺とラズの間に挟まるような形でシャンデラがボールから飛び出してきた。
「シャン!」
「うぉっ!? 急にどうした!?」
シャンデラは俺の方には顔を向けず、ラズの方へと視線を向けていた。
「……そうよね、特に貴方には辛い思いをさせてしまったわ。本当にごめんなさい」
「…………」
「きっと、顔も見たくないわよね。大丈夫、もうすぐ帰るから──」
「シャン」
「……えっ?」
ふるふると首を振って、シャンデラはラズの言葉を否定した。
「シャン! シャンシャン!」
「あ、あの……ごめんなさい。貴方が何を言ってるのか、私── 」
「『ありがとう』……だってさ」
「──へ?」
「シャン!」
俺の言葉に頷いたシャンデラは、炎でサムズアップの形を象った。……いや、マジでどうなってんだよそれ。
「……怒って、ないの……?」
「シャンシャン」
「何をしたのか知らないけど、『もう気にしてない』って言ってるぞ」
「シャンデラ……」
ラズの瞳に一瞬涙が浮かんだが、すぐにその涙を腕で拭った。
「ありがとう。……優しいのね。ずっと戦ってたはずなのに、初めて貴方達の事を知れた気がする」
「そ、その……良ければ、今度ゆっくりお話しない? 私、もっと貴方達の事が知りたいの」
「シャン!!」
嬉しそうにシャンデラが頷いた。
そう言えば、確かに俺のポケモン達とラズはあんまり交流したことがなかったかもしれないな。というか、それを言うなら俺もラズのポケモン達と少し話してみたいかもしれない。
ところで……。
「なあ、ラズはシャンデラに何したんだ? シャンデラが怒るって相当なことだと思うんだけど……」
「あぁ、それは──」
「シャアァァァァァァァァァァ!!!!!!!」
ラズの言葉を掻き消すようにシャンデラが騒ぎ出した。いきなりどうしたお前。
「……ふふっ、シバリに知られるのは恥ずかしいみたい」
「待って!? 何したんだ!? シャンデラに何したんだよ!?」
「それは──」
「シャアァァァァァァァァァァ!!!!!」
「……ごめんね。ダメみたい」
「な、なんでだよ……。めちゃくちゃ気になるんだけど……」
でもシャンデラがそこまで嫌がるなら仕方ない。諦めるか……。
「……そうだ。どうせなら皆も久々にラズと顔合わせとくか?」
シャンデラ以外の手持ちに声をかけると、全員がボールを揺らして反応した。……よし、じゃあ全員出すか。
「皆出てこい!」
「スワッ」
「ジュカ」
「パル」
「ゴロッ」
「──」
「なんか一匹おかしくなかった?」
「……気の所為じゃないか?」
しまった。ムクホークの自認がスワンナのままなの忘れてた。
「……まぁいいわ。久しぶり、ムクホーク」
「……」
「……ムクホーク?」
「……」
つーんとした表情のムクホークに、ラズはしょんぼりと表情を暗くした。
「そ、そうよね……。嫌われてて当然よね……。シャンデラに許してもらえたからって調子に乗ってたみたい……」
「あ〜……いや、そういうことじゃなくて……」
「……?」
ラズを落ち込ませるくらいなら、正直に伝えるしかない……か。
「実はさ、今俺のムクホークって自認がスワンナだから、スワンナって呼んでやらないと返事しないんだ」
「何よそのポリコレムクホーク!?」
「ホォ!?!!!!!!!?」
あまりの言われようにムクホークが白目を剥いてぶっ倒れた。
えぇ……。めっちゃ効いてるじゃん……。
「ンホォ!?!!!!!!!?」
離れたところでコピームクホークが絶叫したのが聞こえた。……心に受けたショックが同期したんだろうな……。
「強いショックを受けたようだし、次に起きたときには元通りになっていると思うわよ」
「ホントですかキルネアさん!? ありがとうラズ!!」
「へっ!? ……私、何かした……?」
自覚も無しにあの鋭さが出せるのか。やっぱりまだ片鱗あるかも。
「何はともあれ、冗談で済むうちに解決して良かったわ。世の中には、本当に
「ヒェッ……」
もしムクホークが本当に自分のことをスワンナだと思い込んでしまったら、俺は泣いてしまうかもしれない。もしかして今ラズと出会えなかったらムクホークの自認は割とピンチだったのか……?
そんな風に内心震えていると、キルネアさんが窓の外を見てポツリと呟いた。
「……さて、そろそろね」
「そろそろ……?」
「えぇ。ただであの人を逃がすわけには行かないもの」
ニコニコと笑うキルネアさんを見て、どこか寒気を感じた。な、何を企んでるんだ……?
「えっと……何をするおつもりで……?」
恐る恐る尋ねてみると、キルネアさんは語り始めた。
「……かつて、ロケット団は壊滅寸前まで追い込まれたわ。
「例え
「そんな人物が、貴方に恩を返すと言った。貴方に手を出す者が居たら絶対に許さない。とも」
「……す、すみません。えっと、何の話ですか……?」
「決まってるじゃない」
「──ここに彼を呼んだのは、貴方だという話よ」
サカキは人の目を隠れながら、ヤマブキシティからの脱出を目指していた。
やけに警備員の数が多く配置されており、恐らくキルネアの手によるものだろうと結論付けたサカキは、慎重かつ迅速に移動を続けていた。
(連発できぬというのも考えものだな)
本当ならばミュウツーに再度指示を出してヤマブキシティの外に脱出したいところではあったのだが、簡単な命令しか出来ないのに加えて、命令の使用にはクールタイムも存在する。
奥の手がないこともないが、それはミュウツーの制御を失うに等しい行為であるため、サカキは出来るだけその手を使いたくはなかった。
(……だが、元々は自分の脚で全て成し遂げてきたのだ。この程度のことを乗り越えられずして、ロケット団の頭領など名乗れまい)
慣れた動きで警備の目を掻い潜り、サカキはどんどんと出口へと近づいていく。
(もう少しだ。もう少しで────)
出口が目の前に見えた。サカキがそう思った瞬間だった。
(──────は)
出口の方から一人の若者が歩いてくる。その若者の特徴的は、肩に乗せたピカチュウに、サカキの脳裏に焼きついた、
(はは……ははははははははっ!! やってくれたなキルネアめ!! これが……これが貴様の狙いか!! )
ゆっくりと、しかし確実に。あの日見たときよりも冷たい目をした若者が、サカキの元へと近づいていく。
その若者の名はレッド。恩に報いるためシロガネ山を飛び出した、史上最強のポケモントレーナーである。
か、勝ちだぁ……(震え声)
・シバリ
大分柔くなったラズにびっくり。
キルネアさん色々とありがとう。
・ラズ
シャンデラを怒らせたこともずっと気にしていた。今回の件で仲直りして、精神的な重荷とひとつお別れした。
・キルネア
ただで逃がすわけないでしょ(黒い笑み)
・シャンデラ
シバリを助けてくれたことに加え、シバリのために変わってくれたのだということを感じ取って、自分からも歩み寄りたいと思った。
イッシュのときラズにブチギレたことはシバリに知られると恥ずかしいのでナイショ。
・ムクホーク
この件以来自認スワンナになることはなくなった。
・コピームクホーク
本体のショックを同期したことで自認スワンナになることはなくなった。
・サカキ
目の前に絶望が現れた!
・レッド
(くろいまなざし)
まだ出てない地方で好きなところ(参考にするかも:パート2)
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ジョウト地方
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カロス地方
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アローラ地方
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パルデア地方