「クソ美味い……」
「黙って食べてくれる……?」
トウコさんとベンチに座り、俺は涙を噛み締めながらヒウンアイスを食べていた。
これが俺の求めていたモノ……。うめぇ、うめぇよぉ……。
「……泣くほどなの?」
「俺、これ食べるために旅に出たとこあるんですよ……」
「あ、そ……。それと、敬語やめてくれない? 元々そういう喋り方ならいいけど、多分そういうんじゃないでしょ?」
「なら遠慮なく」
とりあえずタメ口の許可を貰えたので、俺はヒウンアイスを食べ終えてお礼を言った。
「ありがとう。めちゃくちゃ美味かった」
「だからいいって。あたしはよく食べてるから、あんたみたいな観光客が食べるのが優先でしょ」
「あぁ、言ってなかったな。シバリだ」
「え?」
「俺の名前。自己紹介してなかったと思ってさ」
「シバリ……? その名前、どっかで……」
トウコは少し考え込むようにすると、思い出したのか顔を上げた。
「ああ、確かフウロの彼氏がそんな名前だったっけ?」
「違うが!? どこ情報だそれ!?」
「いや、前にフキヨセジムに行ったときに、フウロがシバリってやつのことめちゃくちゃ話してきたんだよね。あれってアンタのことでしょ?」
「それは多分俺だけど、彼氏ではないが!?」
「……ほんと?
フウロも苦労するわね……などどトウコは呟くが、俺は一つ疑問を持った。
「あれ?てことはトウコはフウロさんと知り合いなのか。 ジムには何しに行ったんだ?」
「……ちょっとね。あんまり大きな声では言えないことなんだけど」
トウコは俺の耳元に口を近づけると、こそりと呟いた。
「
「!?」
「……名前くらい聞いたことあるでしょ? そこに行ったの」
「そ、そんな……」
自然保護区。自然保護区だなんて、そんな──。
「──かっこいい」
「は?」
「名前の響きがさ、なんか良くないか? 特別な場所って感じがする!」
「……そう? あんまりわからないけど。──ま、特別な場所なのは確かね」
「やっぱりかー。いいなぁ、俺もそういうところ行ってみたいかも」
俺がそう言うと、トウコは少し視線を厳しくした。
「……連れてかないわよ?」
「いや、それはそうだろ。部外者が許可なく入るのはまずいって」
「…………。あんたと話してると、ちょっと調子狂うわ……」
呆れたように言うと、トウコは頭を抱え始めてしまった。
「……そうだ。あたしもあんたに聞きたいことがあるの」
「聞きたいこと……?」
「そう。あんた、
「何したって……?」
「……あたしも本人から聞いたわけではないけど、何があったのかは知ってる。……あんたでしょ? 解決したの」
「いや、俺はリハビリに付き合っただけで……」
「……リハビリ?」
「そうそう。
──電気ショック君大作戦だ」
「……は?」
───────────────────────
「あはっ! あはははははははははっ!! ありえない! どんな発想してんのよあんたっ!」
全て説明し終えた後、先程までのクールな雰囲気はどこへやら、トウコは腹を抱えて大爆笑していた。
「ちょっ……! これでも大真面目に考えたんだぞ!? 実際解決したし!」
「それにしたってあんたっ! 電気ショックって……あははっ! 冗談でしょう!? 」
「嘘じゃないから! ほらこれ、消えかかってるけど電気ショックで出来た痣!」
「やめっ、やめてっ!あはははっ! 疑ってるわけじゃ……ふふっ、 おっかしー!」
涙出てきちゃったなどと言って、トウコは指で目の端を擦った。
「──ふふっ、なるほど。あんた、バカなのね」
「俺、バカなのか……?」
「ええバカよ。でも、そうね。あんたみたいなバカ、嫌いじゃないわ」
「……そりゃどーも」
「拗ねないでよ。……フウロのこと、ありがとね」
そう言ってトウコは俺の頭をポンと撫でると、そのままベンチから立ち上がった。
「よし、決めた」
「……決めた?」
「ええ。あんた、さっきお礼がどうとか言ってたでしょ?」
「言ったけど……え、もしかして……?」
「
「……いいのか?」
「……それ、お礼する側が言うことなの……?」
少し呆れたように言ったトウコだが、『まあ、あんたらしいか』と呟いて、
「……いいのよ。なんだか警戒するだけ馬鹿馬鹿しくなっちゃったし」
「警戒……?」
「……なんでもないわ。ほら、立ちなさい」
トウコは俺の手を取ると、そのままグイッと持ち上げて俺をベンチから立たせた。
「改めて、
「こちらこそよろしく。……ただのトレーナー、ね」
「何か言った?」
「いや別に」
それヒカリとシロナさんのときにもあったんだよなぁ……。まあ、トウコがそう言うならそういうことにしておくけども。
「……ところでさ」
「何よ」
「そのサングラス……何?」
「これ? ……こんなでも、あると
「……そういうもんか」
「ええ、そういうもんよ。ほら、さっさと行くわよ!」
「ちょっ……!」
手を引っ張られて、俺はトウコに連れ出された。
ちなみに──。
「おい、ここで見たって話だよな?」
「ああ。……どこに行っちゃったんだ……」
「──
──後ろからちょろっと聞こえてきた話は、聞こえなかったことにしておく。
───────────────────────
「やっぱり来たね。チャレンジャー」
「……出しなさい。あんたのポケモン」
「そんなに焦らなくても良いじゃないか。ここはこの地方の頂点なんだよ?」
「関係ないわ。……無駄話してる場合じゃないの」
「……やれやれ」
チャンピオンであるアイゼンは、目の前の
(これは……
圧倒的。戦う前からして、勝てるビジョンが浮かばなかった。
(やれやれ……。魔王に立ち向かう村人ってこんな気分なのかな。僕、一応チャンピオンなんだけど)
とはいえ、アイゼンもただで負けてやるつもりもない。チャンピオンとしてのプライドとして、情報のあるドドゲザンやギャラドスくらいはなんとか突破するつもりだ。
「意地を見せようか。ハッサム!」
「出なさい、ドーブル」
ラズが場に出したポケモンを見て、アイゼンは驚きを見せた。
「……ドーブル? 先鋒はドドゲザンと聞いていたけど」
「タネの割れてるポケモンなんて対処出来て当たり前でしょ? チャンピオンなら、初見のポケモンくらい見切ってみせなさいよ」
「無茶を言うね……」
この時点で、チャンピオンの計画は少し崩れていた。
(ドドゲザンのふいうちをハッサムでなんとか凌いで、返しの"きしかいせい"で倒す。……なんて、考えてたのになぁ)
この作戦であれば、恐らくドドゲザンは突破出来ていただろう。
だが、ラズが出したのはドーブル。このポケモンのセオリーとして共通しているのは、
(間違いなく普通のドーブルじゃない。だけど、ドーブル自体の身体能力はハッサムには遥か及ばない。それなら──)
アイゼンはハッサムに視線を向け、ハッサムもその意図を理解して小さく頷いた。
「両者、よろしいですね。──試合、開始!」
「ハッサム、バレットパンチ!!」
「ハサッ!!」
元々想定していたこともあり、ハッサムが凄まじいスピードでドーブルに迫る。
だが、ラズは焦る様子もなくドーブルに指示を出した。
「ドーブル──
「!?」
アイゼンが驚くと同時、ハッサムがドーブルに激突した。その衝撃で砂埃が舞い、場の様子が見えなくなる。
(スケッチ……? 確かにドーブルを象徴する技ではあるけど、今……?)
バレットパンチをスケッチしたところで、ドーブルのバレットパンチなどたかが知れている。
なら、あのドーブルは、何を──。
「──いやいや」
砂埃が徐々に晴れ、場の様子が鮮明になっていく。
「──それは……」
そして、そこにあったものとは──
「──
ハッサムのバレットパンチを受け止める、
・ドーブル
相手のポケモンをスケッチする。
初手のスケッチに全てを懸けているので、バカクソ早い。
シングルバトルってなんだっけ(シバリ談)
ちなみにちゃっかりしんぴのまもりを使ってるので、デバフ技のフレンドリーファイアは絶対に発生しない。
場にコピーポケモンを出しているときは常に技を使い続けている状態であるため、ドーブルへの負担は大きく、例えば変身でダブルハッサムをやるとかみたいなことは出来ない。
あと2体以上のコピーポケモンを場に維持するのも無理。