幼馴染にフラれたので旅に出ることにした   作:イグアナ

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なーんでこんな時間まで書いてんですかね


17話

めーちゃくちゃ楽しかった!!

「うるさっ。はしゃぎすぎよあんた」

 

 とは言いつつも、トウコの表情は明るかった。

 

 2人はジェットコースター以外にも様々なアトラクションを楽しみ、夕方まで遊園地を満喫した。

 

 ちなみに観覧車には乗らなかった。謎のやまおとこがずっと観覧車の前で居座っていて、シバリが寒気を感じたからだ。

 

「これが遊園地か……。また来たいな」

「……何? また一緒に来ようってこと?」

「ん? トウコさえ良ければ是非!」

「……あーはいはい。あたしの負けよ」

 

 しっしっと追い払うようにトウコは言って、シバリは不思議そうに首を傾げた。

 

「負け?」

「なんでもないわよ。気にしないで」

「そっか。じゃあまた来るってことで!」

「そうね。また──────」

 

 

「──見つけましたよ!! トウコさん!!」

 

 大きな声で呼ばれ2人が後ろを振り向くと、数人の大人が2人の方へと駆け寄ってきていた。

 

(あの人達って、ヒウンシティでトウコさんを探してた……?)

 

 そんな風にシバリが思い出していると、トウコは諦めたように溜め息を吐いた。

 

「ここまで、ね」

「へ?」

「ありがと。いい気分転換になったわ」

「気分転換って──」

「また会うことがあればここに来ましょ。……もう会うことなんてないかもしれないけど」

 

 トウコはそう言うと、駆け寄ってきた大人たちの方に視線を向けた。

 

「こんなところに居たんですか! 困りますよ!」

「雑誌の取材やら撮影やら、色々止まってるんですよ!?」

「……ごめん。もう逃げないから」

「いやー! よかった! 一時はどうなることかと!」

「ささ、早く戻りましょう! 無事で良かった!」

 

 そう伝え、トウコはシバリの方へ振り返る。

 

「そういうことだから。もう帰らないと」

「……トウコ、あのさ」

「何? 時間ないから、何かあるならさっさと──」

「なんでそんな嫌そうな顔してるんだ? ……嫌ならさ、嫌って言っていいんだぞ」

「……は?」

「ちょっ、君!!」

 

 驚いた様子のトウコを押しのけるように、大人の1人が2人の間に挟まってきた。

 

「変なことを言うのは止めてくれるかな!? そもそもね、彼女は君なんかが一緒に居ていい存在じゃないんだよ!」

「と、言いますと?」

「知らないとでも言うつもりかい!? だって彼女は──」

「ちょ、それは、やめっ──」

 

 言葉を静止しようと手を伸ばしたトウコだったが、大人は勢いのまま言葉を続けた。

 

「イッシュの英雄!! そして、チャンピオンの経歴も持つレジェンドなんだぞ!!」

 

「──あ」

 

 最後まで発せられた言葉を聞いて、トウコは力なく伸ばした手を下ろした。

 

(シバリには、知られたくなかったのに……!)

 

 ここで何も知らずに別れられれば綺麗な思い出で終われていたというのに。そんなトウコの願いは、儚く散ってしまった。

 

(皆そう。さっきまで仲良く話してたのに、チャンピオンだって知ると、『畏れ多い』とか、『私なんかが』とか言って、離れていく)

 

(シバリがそうなるところなんて、見たくなかったのに──)

 

「……レジェンド、ですか?」

「ああそうさ! それでいてクールで気高い、それがトウコさんだ!! 孤高の英雄とも名高くて、メディアからもひっぱりだこ──」

 

 

「──()()()()()()()()()()()

 

「……へ?」

 

 シバリの言葉に、俯いていたトウコは顔を上げる。

 

「とは言っても、知ったのは今日ですけどね。一緒に街を歩いてたら偶然雑誌の表紙に居るのを見かけたんで、他にもないか探したんですよ。──よっぽどトウコは人気なんですね」

「そ、そうだ! 彼女は人気なんだ! だからこんなところで、油売ってる暇なんて──」

 

 

「その上で言います。()()()()()()()()?」

「……は?」

 

 シバリの言葉に、大人の言葉が詰まった。

 

「他に見かけた雑誌も同じでしたよ。やれ孤高の英雄だとか、やれクールービューティーだとか。

 

……違います。()()()()()()()()()()()()

「何言ってるんだ!? 彼女の実力は本物だ! 疑うってのか!?」

「実力を疑ってるわけじゃないです。ただ──」

 

 シバリは今日一日、なんなら半日にも満たない時間しかトウコと共に行動はしなかったが、それでも確信していることがある。

 

「トウコは、知らない人を助けられるような優しい心を持っていて、笑顔の絶えない女の子でした。

 

孤高? クール? ……どこがだよ。そんなの、あんたらの理想でしかないだろ」

 

(……シバリ)

 

 トウコには、勝負に本気になるあまりつい顔が険しくなってしまうという癖があった。

 

 それは恥ずかしい癖ではあったものの、特に問題なく過ごせていた。

 

 ……が、彼女がメディアに映るようになると話が変わってきた。

 

『……クール、ビューティー?』

『ええ。バトルの時のあの凛々しいお顔、そして、バトルが終わったら無言で立ち去るあの姿が実にクールだと話題になっています!』

『や、あれは癖だし、すぐ消えるのだって、険しい顔してたのが恥ずかしいからで──』

『まあまあそう言わず! 我々もご協力いたしますので!』

『ちょ、協力って──!?』

 

 そして、いつの間にかトウコにはペタペタと偽りの仮面が付けられていった。喋り方や雰囲気も、いつの間にかイメージの方に寄っていってしまった。

 

 結果、今世間はクールな彼女を求めるようになった。断じて、年頃の元気な熱血少女などではない。

 

「か、仮にそうだとしても、それが世間の望みだろう!? 英雄なら……チャンピオンなら! 世間の期待に応えるべきだ! それこそが、彼女の責務であり、喜び──!」

「……そういうことするから、トウコは逃げたんですよ」

「は……?」

 

 訳がわからないと言った様子の大人に、シバリははっきりと言い放った。

 

「自分を殺し続ける環境が、()()()()()()()()()()()()!?」

「っ……!」

「貴方達、大人だろ!? 子供が自分らしく居れる場所くらい、作ってくれよ!!」

「……ゔっ」

 

 バツの悪そうな表情になって大人がたじろいだ隙に、シバリはトウコの手を取った。

 

「えっ?」

「逃げるぞ!」

「はっ!?」

 

 大人達が止めるのも間に合わず、シバリはトウコの手を引いて走り出した。

 

「ちょっ……!? 逃げるって、どこに!?」

「決めてない!」

「バカなの!?」

「バカだよ!! でも、行きたいとこは決まってる!!」

「はぁ!? どこよ!?」

「トウコが、()()()()()()()()()()()!」

 

 その言葉に、トウコは一瞬呆然として……自然と、笑みを浮かべた。

 

「……あんた、ほんとバカね」

「だからバカだよ!」

「ええ。……でも、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう言って、トウコはシバリに問いかける。

 

「あんた、確かムクホーク持ってるって言ってたわよね!?」

「居るけど!!」

「じゃあ出して! どうせ"そらをとぶ"くらい覚えてるでしょ!? 2人で乗って逃げるわよ!!」

「よしわかった! 出てこいムクホーク!」

「ホー!」

 

 話を聞いていたのか、ムクホークは出てきた瞬間に2人が背中に乗りやすいような体勢をとった。

 

「ムクホーク。一応聞くけど、2人同時でいけるか?」

「ホ〜?」

「『どうせやらなきゃいけないんだろ』って? ……まあ、そうだな。ぶっちゃけ拒否権はない」

「ホァ〜……」

 

 溜め息を吐きながらも、ムクホークはシバリとトウコを乗せてしっかりと空を飛び始めた。

 

「で、行き先は?」

「はっ、決まってるでしょ……? こういうときは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

「よーしムクホーク! そういうことで頼む!!」

ホァ!?

 

 またもや無茶振りを振られながらも、ムクホークは夕日に向かって飛んでいく。

 

「……ところでシバリ」

「ん?」

「あんた、ほんとにフウロの彼氏じゃないのよね?」

「だからそう言ってるだろ……」

「そ。……なら、遠慮しないわ」

「ちょっ……!?」

 

 後ろから、トウコはシバリをぎゅっと抱き締めた。

 

「あの……トウコ?」

「こうでもしないと落ちるかもしれないでしょ? 念の為よ、念の為」

「……まあ、それもそうか」

「ええ」

 

 納得したシバリを見て、トウコはもう少しだけ抱き締める力を強める。

 

(……あ〜あ。あたし、こんなにチョロかったんだ。シバリとはまだ会って半日くらいのくせに。……惚れっぽいのかな、あたし)

 

 ふと、少し前のシバリの発言を思い出す。

 

『どんな理由でもトウコと一緒にいるのは変わらないしさ。なら、聞くも聞かないも同じことだと思わないか?』

 

(……でも、あんたが『一緒にいる』って言ったんだからね。ここまでやったんだから、責任取ってもらうわよ)

 

「ふふっ」

「……どうかした?」

「別に? あんたも面倒な女に目を付けられたんだなって思っただけ」

「……えっと、どういうこと?」

「あははっ! 大丈夫大丈夫、トウコさんに任せときなさい!」

「何を!?」

 

 そんな風に話しながら、2人して空を飛んでいく。

 

 ムクホークの体力が限界を迎えるまであともうしばらく、2人の空の旅は続いたのだった。

 

─────────────────────────

 

『いやぁ、驚きですね! トウコさんのあんな元気な姿が見られるなんて!』

『本当の素はどうやらこちらのようですね。以前の方が好きだったという方もいらっしゃるようですが、私は今のトウコさんの方が好きですね!』

『なにより、今のほうが親しみやすそうですな! もしかしたら、ファンの皆さんも楽しくお話出来るかも!』

 

 俺はポケモンセンターのフードコードで朝食を食べながら、テレビで流れているニュース番組に目を向けた。

 

 ……よかった。世間もすぐ受け入れてくれたみたいだな。

 

 あのあと2日間くらい逃亡を続けたのだが、あえなく御用となった。

 

 そのとき俺だけがバチクソに怒られたのがマジで納得いかない。でも──。

 

『──君の、言う通りだ。私達はトウコさんのことを何も考えられて居なかった』

『待遇の改善を約束するよ。トウコさんが自分らしく居られるように。そして、本来のトウコさんが世間に受け入れられるように』

 

 最後はそんな風に話してくれて、今となってはちゃんと動いてくれたようだ。

 

「──さて、行くか」

 

─────────────────────

 

 

「売り切れです」

「またですか!?」

 

 ヒウンアイスを買いに来たのだが、またしても売り切れていた。

 

 結構早めに来たのに……。美味しいからまた食べたかったけど、また今度かなぁ……。

 

「何、またやってんの?」

「へっ?」

 

 振り向くと、そこには呆れた顔をしたトウコが居た。

 

「ちょっ! もしかしてまた逃げ──!」

「違う違う。今日は普通の休み。トウコさんの合法休日よ」

「ほっ……。ならいいか」

 

 俺が安堵していると、トウコは少し悪い笑みを浮かべてこちらに語りかけてきた。

 

「……ところでなんだけど」

 

 トウコはいつかのように俺の方にヒウンアイスを差し出し、ニヤリとしながら問いかけてくる。

 

「どう? 余った分だけど、欲しい?」

「……条件は?」

「決まってんでしょ。──今日一日、あたしに付き合いなさい」

「ノッた!」

 

 即答し、俺はトウコからヒウンアイスを受け取った。

 

「またジェットコースターとか乗りたいな俺」

「また乗るの!? ……いいけど、今日は観覧車とかも乗るからね」

「ゔっ……あの"やまおとこさん"さえ居なければね」

「流石に今日も居るわけないでしょ? ……居ないわよね?」

 

 そんなことを話しながら、俺達は歩き出した。

 

 ──イッシュの英雄は、今日も自分らしく過ごしている。




・シバリ
大人の基準がシロナだったので、自分たちの都合で子供(トウコ)の自己を潰すようなことをしていた大人達にバチギレ。

つまりシロナさんが悪い。

・トウコ
元気な熱血少女という自己を潰されていた女の子。
待遇が改善されて毎日が楽しくなった。

ちなみに目つきヤバイの気にしてるのはポケマスで言及されてるらしい。

フウロに悪いなと思いつつ、自分の気持ちは抑えられない様子。
ちなみに半日以内に堕ちたので最速。RTAかな?
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