今日は俺、トウコ、メイの3人で遊ぶ約束をしている。
先に集合場所に着いたので、2人を待っていたのだが──。
「シバリ君。お姉さんは怒っています」
待っている間にフウロさんから電話がかかってきたので出てみると、何やら彼女はお怒りのようだ。
どうしよう。まったく心当たりがない。
「あ、あの……俺なんかしましたか……?」
「……シバリ君ってさ、SNSとか見る?」
「いや、見ないですね……」
「そっか。私は見るんだけどさ、そこで見つけちゃったんだよね」
「見つけた……? 何をです?」
それがそう尋ねると、フウロさんは低い声で答えてくる。
「……シバリくんが、トウコちゃんと楽しそ〜に遊園地で遊んでる写真だよ?」
「……ん?」
いや、確かに遊びはしたけども……。それとこれに何の関係が……?
てかトウコってSNSとかやってたっけ? 有名人だし、盗撮とかされたんかな?
「……あの、それが何か……?」
「ズルいよーーーー!!!!!!!!!」
「うるさっ!?」
鼓膜にさよならバイバイするところだった。何故か『俺は
「私だってシバリ君と遊園地行きたい! 行きたい行きたーい!!!」
「フウロさんはほら、遊園地みたいな人混みとかはまだ厳しいでしょうし……」
「そんなのシバリ君が居れば大丈夫だよー!! というか──」
『──いつの間にトウコちゃんと知り合ったの?』
「ヒッ」
あの、待って。怖い怖い怖い。フウロさん怖いって。
あれかな、フウロさんもしかしてトウコのガチファンとかだったりするのかな……。男の影があるのは許せない……的な。
なら友達以上の関係じゃないって伝えれば誤解が解けるか……?
「……し、心配しなくてもそういう仲じゃないですよ。トウコはただの友達なんで」
「……ほんとかなぁ〜?」
「ほんとですよ! そもそもそういう目で見たらトウコに失礼──」
「シバリお待たせ〜!」
「──おわっ!?」
なんか急に後ろからトウコがおっかぶさってきた。
い、いつの間に……? てかなんか普段とキャラ違くない?
「ま、待ってシバリ君! 今トウコちゃんの信じられないくらい甘ったるい声が聞こえた気がしたんだけど!?」
「え、いやっ、俺もこんなトウコ知らな──」
「ほ〜ら、早く行きましょ? メイも向こうで待ってるんだし。……ね?」
「さっきから何だそのキャラ…!? あ、人待たせちゃってるのでそろそろ切りますね!」
「ちょ……!? メイちゃんって聞こえた気がするんだけど!? シ、シバリ君!? シバリく──」
フウロさんには悪いが、電話を無理矢理切らせてもらった。
俺が電話を切ったのを見て、トウコは俺の背中から離れていく。
「……よし。じゃあメイんとこ行くわよ」
「急に戻ったな……。……あの、さっきの何?」
「……こういうのはね、引いたら負けなのよ」
「?」
負け? 何の話してるの……?
「にしても、『ただの友達』ねぇ……。トウコさんとしては、もう少し踏み込んだ仲を求めてるんだけど?」
そう言って、からかうようにこちらを見てくるトウコに、俺は意図を察して謝罪することにした。
「ごめんな。『親友』とかの方が良かったか? 」
「あはっ。ばーか」
「酷くない?」
とはいえ楽しそうにケラケラ笑っているトウコを見ると、俺の回答はあながち間違ってはいなかったようだ。
「……ところで」
「どした?」
「仲の良い女の子がすごーく疎外感のありそうな目でこっちを見ていたとしたら、あんたはどうする?」
「へ?」
トウコが視線を逸しながらそう言うので、俺もその視線の先を追うと、メイが少し離れたところから寂しそうにこちらを覗いていた。
「……構い倒すしかない……か?」
「ええ、そうしましょ」
『腕が鳴るわね』とか言いながら、トウコはメイの方向へと歩いていった。
……うん。やっぱトウコも大概メイのこと大好きだよな。
──────────────────────────
「ら、ラズ……!? どこに行くんだ!? 昨日帰ってきたばかりじゃないか!!」
「ごめん。でも行かなきゃいけないから」
再び家を出ていこうとするラズを見て、彼女の父親は引き止めようとしていたが、ラズは聞く耳を持たなかった。
「行くって……どこに!?」
「
「シバリ君が……?」
ラズの言葉を聞いて、父親は彼女の肩を掴んだ。
「なら尚更行かせるわけにはいかない。ラズ、あのあとシバリ君がどんなに苦しんだのかわかるかい? ……彼がどれだけ君のために頑張ってくれたのか、わかっているのかい!?」
「……わかってるわよ」
「ならどうして…!? 彼は今、ようやく立ち直って旅に出たんだ! 俺だって自分の娘には幸せになってほしいとは思うけど、それでも……これだけは、駄目だろう!?」
「そうね。お父さんの言葉はいつも正しいわ。私のためにも、シバリのためにも。私は行くべきじゃない」
「なら……!」
「──ごめんね。ドーブル、"さいみんじゅつ"」
「ラ、ズ────……?」
潜んでいたドーブルにポケモンですら昏倒する技をかけられ、ラズの父親は呆気なくその場に倒れた。
「……わかってるわ。こんなの許されることじゃない。虫の良い話だわ」
彼女は村の外へと歩き出す。
「でも……やっぱり私は、シバリが居ないとダメみたい」
液晶の割れた携帯を持ちながら。
「
傲慢にも自ら手放した
「……貴方を感じられない世界なんて、息苦しいにも程があるわ」
「私以外の誰かが貴方の隣に居るのがこんなに苦しいなんて、思いもしなかった」
「……ごめんなさい。たとえ貴方が望まないとしても、私は──」
「──私は必ず、貴方をこの村に連れ戻す」
そうして。とある地方から1人の少女がイッシュへと旅立った。
────────────────────────
「
「ふふっ。やっぱあんた、たっかい店で食べてるときよりも今のほうが活き活きしてるわね」
「
「あら、じゃあもらおうかしら。──うん、甘くて美味しいわね」
メイがクレープをトウコに差し出して食べさせると、今度は俺の方にクレープを向けてきた。
「
「俺? じゃあ一口もらおうかな」
「はぁ!? ちょ、あんたっ、待っ──」
「──ん、美味い。自分からこういうのあんまり買わないけど、たまには良いもんだな。……って、トウコ?」
「……えっち。変態」
「なんで!?」
クレープ食っただけで変態扱いされてしまった。解せないんだけど。
しかもそれ見てメイはニコニコしてるし。なんなんだマジで。
「──ごくん。では私も食べましょうかね!」
「メ、メイ!? あんたまさか──」
「はむっ……。……あ、なんだか甘くて幸せな味がします……」
「メイぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!!!?!!?」
なんか見たこともないくらいトウコが取り乱してる。
「……シバリさん、もう一口どうですか?」
「え? ああ、うん。良いなら貰うけど」
「どうぞどうぞ! 私ちょっと買いすぎちゃったので!」
「そういうことなら──」
「ちょお……!?」
何やらトウコがこちらに手を伸ばしていたが、気にせずもう一口クレープをもらった。
「……うん。やっぱ美味いな」
「えへへ。とっても甘くて幸せな味、しませんか……?」
「幸せの味ってのはよくわからんけど……まあ、美味いな」
「あ、あっ、ああっ……」
横でトウコがカタカタ震えていたが、メイはそんなことも気にせず彼女に声をかけた。
「じゃあトウコさんも! もう一口いっちゃいましょう!」
「────…………へ? えええぇぇぇぇぇ!?」
急に顔を赤くしてトウコが後ずさった。
く、クレープ食べるだけだぞ……?
「あ、要りませんか? それなら私が──」
「〜〜〜〜っ! た、食べる! 食べるわよ!! あんた、もうっ……! 変な気の回し方してぇ……!」
「私、3人で幸せになるのも悪くないかなって思うんです。……それで、どうですかトウコさん?」
満面の笑みを浮かべながらメイが聞くと、トウコは顔を赤くしたまま、モゴモゴとぼやくように口を開いた。
「……味なんて、わかんないわよ……」
「? さっき甘くて美味しいって言ってたような──」
「黙りなさい」
「アッハイ」
圧が凄かったのでとりあえず謝罪した。なんだったんだ今のは……。
「さーて! 腹ごしらえもしたことですし、次行きましょうか!」
「次はどこ行くんだ?」
「また観覧車でもチャレンジする? 3人で乗ればきっと──」
「────見つけた」
聞き覚えのある声に、俺はバッと振り向いた。
ここにいるはずがない。だって彼女は今、ジム巡りをしているはずで──
「……………会いたかったわ。シバリ」
「………………ラズ?」
・ラズ
来ちゃった☆ 来んなよ(辛辣)
村を出たのは数日前なので、即日でシバリを見つけたわけではない。
・シバリ
【実績解放】
トウコとの間接キス(無自覚)
メイとの間接キス(無自覚)
・トウコ
【実績解放】
シバリとの間接キス(めちゃくちゃ意識してる)
・メイ
【実績解放】
シバリとの間接キス(ゴリゴリに自覚してるしなんなら黒幕)
・フウロ
やっぱりトウコちゃん堕ちてない?
これだとメイちゃんも怪しくない?
……籠、用意しておこうかな。
・ラズのお父さん
めちゃくちゃに常識人。シバリの様子に心を痛めていた。
あの日のことを知る数少ない1人。
村の人に本当のことを言おうとしたが、シバリが『最後くらいカッコつけさせてください』と土下座するくらいの勢いで懇願してきたので、複雑に思いながら黙っている。
・ドーブル
お前ナチュラルにさいみんじゅつも使ってんじゃねぇよカス。