それはそう。(辛辣)
「なんで、ここに……? ジム巡りは?」
「事情があってやめたのよ。……それより、付いてきて。名前は知らないけど、後ろの2人って有名人でしょ? ここじゃ目立つから」
「お、おう……」
言うことはもっともなんだが……やめた? ジム巡りを?
とりあえず今は、歩き始めたラズに付いていくことにした。
「……シバリさん。あの人、もしかして……」
「……前に話した幼馴染だよ。まさか会いに来るとは思わなかったけど」
「……シバリ、気をつけなさい」
「ん? 気をつけるって?」
「……なんか、ヤな予感がする。絶対何か企んでるわよ、アレ」
「企むって……」
確かに普段と様子がちょっと違うけど。企んでるっていうよりかは……。
心なしか、初めて会ったときと同じ雰囲気を感じるかもしれない。
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「……ここなら良いでしょ。人目はないし、
「ラズ……?」
立ち止まったラズに、俺は問いかける。
「なんで俺に会いに来たんだ? ジム巡りをやめたのも気になるけど……」
「……ねぇシバリ。私、今からとっても卑怯なことを言うわね」
「へ?」
俺の質問に答えることはなく、ラズは俺の目を見て口を開いた。
「今から私とポケモンバトルしなさい。ルールはいつもと同じ、
「……は?」
「村に居た時はいつもそっちから仕掛けてきてたんだもの。一回くらい、私から仕掛けても文句は無いでしょう?」
「いや、あの……待ってくれ。ちょっと急すぎて付いていけない」
い、意味がわからない……。なんでいきなりそんな勝負を……?
ラズの真意を汲み取ろうとしていると、後ろから袖を引っ張られた。
「シバリ、ダメ。あれは……受けちゃダメ」
「部外者は黙ってなさい。私は今シバリと話してるの」
「こ、こっちからしたら遊んでたところに入ってきた貴女こそ部外者ですよぉ!?」
「知らないわよそんなの。シバリは貴女達と遊ぶより私を優先した。これが答えでしょ?」
「……ラズ。その言い方はちょっと……」
「事実でしょう? ……それで、どうなの? ポケモンバトル、受けてくれる?」
「……シバリさん」
メイが不安げな表情でこちらを見上げてくる。黙ってはいるが、トウコも同じような感じだ。
正直、ラズの狙いは分からない。俺に勝って何かさせたいことがあるのか、それともまた、別の狙いがあるのか。
でもきっと、ここで勝負を受けないと取り返しの付かないことになる気がする。
なにより──あの顔のラズは、放っておけない。
「……わかった。やろう」
「シバリ!?」
「シバリさん!?」
「あはっ……。そうよね、シバリはそういう人間よね」
ラズはどこか狂気じみたように笑うと、モンスターボールに手をかけた。
「じゃあやるわよ。もう一度確認するけど、負けた方がなんでも言うことを聞く。これでいいわね?」
「……ああ。それでラズが満足するなら、やろう」
「言質は取ったわ。なら行くわよ……」
「出なさい、カクレオン」
「いくぞシャンデラ!」
初手の対面。
「ドドゲザンを警戒していたら絶対出さないポケモン……。……やっぱり、シバリには出し負けるわね」
「……何回も、見てるからな」
表情、動き、雰囲気。それを見れば、ラズの初手のポケモンは
「いくぞシャンデラ。久々にラズと──」
「──シャン」
「……シャンデラ?」
「シャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
シャンデラが雄叫びのようなものをあげながら、自身に灯す炎を更に燃え上がらせた。
「ちょ、シャンデラ!? や、やる気があるのは嬉しいんだけどさ! これから始まるから! 落ち着けって! なっ!?」
「シャン! シャアァァァァァァァァ!!」
「ほ、ほんとにどうしたんだよ!?」
俺が慌てる姿を見て、ラズは察したように口を開く。
「……やっぱり。そうなの」
「やっぱり、って?」
「
「……何の話だ?」
「いいのよ。掘り返すのもつまらない話だから」
そう言って、ラズはシャンデラを見据える。
「貴方がそのとき一番近くに居た。一番近くでシバリのことを見ていた。……なんとなく想像はつくわ。怒るのは当然よね」
「……でも、ごめんなさい。それでも私は──
──私のエゴのために、貴方を挫くわ」
「……………ッ!!!!!」
心なしか、シャンデラの視線が厳しくなったような気がする。
いつもと様子が違うのは気になるけど……でも、大丈夫だ。シャンデラはきっと、俺の言う通りに動いてくれる。
「審判もいないし、お互いのタイミングで始めましょうか」
「いつものやつだな。それじゃ──」
「カクレオン! "かげうち"!」
「シャンデラ! "ほのおのうず"!」
先に攻撃が出たのはカクレオンだった。シャンデラには"かげうち"が当たってしまうが、それで倒されるようなシャンデラではない。
そして"かげうち"を耐えたシャンデラは、
「……いつ見てもそれ、ズルいわよね」
「そっちが言えることかよ」
シャンデラの周りに"ほのおのうず"が持続する。
これによりシャンデラは、常に"もらいび"の状態になり、周りを覆う"ほのおのうず"は、生半可な攻撃を弾く。
少なくとも、カクレオンの"かげうち"程度なら容易く弾くだろう。
「シャンデラ、もう一回"ほのおのうず"だ!」
「シャン!」
そこから更に"もらいび"で1.5倍の威力になった"ほのおのうず"で上書きし、更にシャンデラの防御の壁が厚くなった。
この状態のシャンデラにダメージを通すのは、ラズのエレキブルですら困難となる。
これがシャンデラの"エンドレスもらいびモード"。
まともな攻撃手段を持たない相手からすれば、実質シャンデラは常に"まもる"を使っているような状態になると言っても過言ではない。
「……こうなると骨が折れるのよね。カクレオン、削れるだけ削るわよ」
「グエッ!」
「まずは第一関門……。いくぞ、シャンデラ」
「シャン!」
・シャンデラ
エンドレスもらいびモード
"ほのおのうず"を自分に使用し、"もらいび"と防御を両立する。
ほのおのうずの維持がめちゃくちゃ難しかったらしく、今では無意識でやれるが、当時はもうとんでもなかった。
一応ほのおのうずも永続するわけではないため、定期的に掛け直すことが必要。そこら辺はシャンデラが隙を見て自動でやっている。
暖色系についてはシバリからすると冗談で言っていたし、やらなくて良いとはシャンデラにも伝えていたのだが、それでも頑張った理由は、ひとえにシバリの楽しい思い出を増やすため。彼が後ろを振り返ったりしないようにするため。
シャンデラの脳裏には、本を処分したときのシバリの顔が未だにこびりついている。
もうシバリには悲しまないで欲しいと感じており、シャンデラはただ、シバリが笑顔ならそれで良いと思っている。
だからこそ、のうのうと目の前に現れたラズに怒りを抑えられなかった。
・カクレオン
グエー(鳴き声)
お前なんて鳴くんだよ……