幼馴染にフラれたので旅に出ることにした   作:イグアナ

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休みの日だからって調子に乗って筆が乗るわね


25話

「なんですか、これ……」

 

 目の前で繰り広げられているバトルを見て、メイの口から戸惑いの言葉が漏れた。

 

「……メイ。シバリが強いってのはあんたから聞いてたけど、こ(・)れ(・)相(・)手(・)に残り1体まで食らいついたの?」

「ち、違います。前に戦ったときはこ(・)ん(・)な(・)に(・)強(・)く(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)で(・)す(・)!」

 

 メイはそう断言出来るほど、今のシバリは前と戦った時に比べて格別だと感じていた。

 

「……前はシバリが手加減してたってこと?」

「それも違うと思います。そんな感じ、全然なくて……」

 

 メイの言う通り、シバリは彼女とのポケモンバトルの際に手加減していたわけではない。

 

 シバリは、ラズほどトレーナーの才があるわけではない。

 

 シバリの手持ちのポケモンは、ラズの手持ちのポケモンほどの強さを持っていない。

 

 では、どうしてシバリはラズと対等に戦えるのか。

 

 答えは単純、知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)か(・)ら(・)だ(・)。

 

「ギャラドス、"かみく──”」

「ジュカイン! 左に"かみくだく"を避けてエナジーボール!!」

 

 たとえば、数学の問題があったとして。天才と凡人では、当然天才の方が早く解き終わるだろう。

 

 だが、凡人が予めその問題を答えを知っているとしたら?

 

 問題文を見た時点で、『あー、アレね』と答えを書けるレベルで、答えを暗記しているとしたら?

 

 それなら当然──

 

 ──凡人は天才の、一歩先を行く。

 

「ちっ! 相変わらずの読みね! ギャラドス、"こお──"」

「"こおりのキバ"を上に飛んで避けて"ギガドレイン"!」

 

 シバリのラズとの戦い方。

 

 それはラズの表情やしぐさ、場面の状況から、ラズの考えを9(・)割(・)以(・)上(・)の(・)精(・)度(・)で(・)推(・)測(・)し(・)て(・)先(・)手(・)を(・)取(・)る(・)。

 

 圧倒的なまでの、対ラズに限定された人読みだ。

 

 ……だが、そんなことが本当に可能なのだろうか。そんなもの、無茶だというのが一般論だ。

 

 はっきり言って無(・)茶(・)だ。人の考えを常に読み続けることなど、普通に考えれば出来るわけがない。

 

 しかし、彼は今までポケモン達に無茶を強いてきたのだ。

 

 な(・)ら(・)ば(・)彼(・)自(・)身(・)も(・)、無(・)茶(・)を(・)し(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)道(・)理(・)が(・)立(・)た(・)な(・)い(・)。この話はただ、それだけのことだった。

 

「……ギャラドス。戦闘不能だな」

「ふふ……お互い残り2体。……これよ! 私が求めてたポケモンバトルは!!」

 

 渇望していた対等なバトルが出来たことに、ラズは高揚感を感じていた。

 

 だがしかし、まだ終わりではない。お互いあと2体、残っている。

 

「いくわよ。エ(・)レ(・)キ(・)ブ(・)ル(・)」

「ブルゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

 ラズのエレキブル。ワイルドボルトを打たせた時点で素早さが6段階上昇する規格外のポケモンだ。

 

「……ジュカイン、削れるだけ削ってくれ。あとはムクホークでどうにかする」

「ジュカッ!」

 

 

─────────────────────────

 

 

 ジュカインは数分前にエレキブルの前に倒れ、今はムクホークが場に立って戦っている。

 

 素早さ6段階上昇のエレキブルと戦う方法。それは、ムクホークで常に"でんこうせっか"を維持し、エレキブルのスピードに付いていくこと。

 

 隙を見てちまちまとダメージを与え、そして、明らかなチャンスが見えたら──

 

「ムクホーク! すてみタックル!!」

「ホー!!!」

「ブルッ!?!!」

 

 すかさず無反動技でダメージを与える。

 

 このエレキブルは確かに凄まじい速度とパワーがあるが、防御方面への特異性は一切ない。

 

 ならばムクホークの攻撃は、当(・)た(・)れ(・)ば(・)し(・)っ(・)か(・)り(・)入(・)る(・)。

 

 とはいえ──

 

「消耗がちょっと激しいか……」

 

 素早さ6段階上昇から繰り出される技は、掠るだけでも小さくないダメージを受けてしまう。

 

 速(・)さ(・)は(・)重(・)さ(・)。素早さの上昇というのは、実質的に物理攻撃の強化も意味している。 

 

 それに加えて、俺の方だっていつまでも集中力が続くわけではない。

 

 9割以上の精度で推測するには当然、頭の中で常に情報を処理し続けなければならない。

 

 集中力が落ちて一手でも間違えれば、ムクホークは即座にエレキブルの手に落ちるだろう。

 

 だが──

 

「今だムクホーク!!」

「ホォォォォォ!!!!!」

 

 逆に言えば、一(・)手(・)も(・)間(・)違(・)え(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)勝(・)て(・)る(・)ということ。

 

「ブルッ……!?」

 

 これで3度目の"すてみタックル"が直撃し、エレキブルは戦闘不能になった。

 

「……最低条件は、なんとかクリアか……」

 

 次に繋げるためには、ムクホークの消耗を一定ラインまで抑えなければならない。

 

 今回はどうやら、そのラインは越えられたようだ。

 

「……ふふ、やっぱりこうでなくちゃ。ポケモンバトルっていうのは、最後の1体まで愉しむものよね! 行くわよ、メ(・)タ(・)モ(・)ン(・)!」

「「メタモン!?」」

 

 ラズの最後の一匹を見て、トウコとメイは驚いていた。

 

 そりゃそうだろうな。ただのメタモンならラズのドーブルの方が上位互換だ。

 

 だが、このメタモンも普通ではない。ただ目の前のポケモンに変身するなど、そんな甘いことはしてくれない。

 

 特性の"かわりもの"で、メタモンの姿が変わっていく。

 

「──え」

「あれって……」

 

 メタモンの姿が徐々に鮮明になっていく。あの日俺を倒した姿が、再び俺の前に現れる。

 

「行くわよメタモン──いえ、エ(・)レ(・)キ(・)ブ(・)ル(・)」

「ブルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」

 

 ラズの切り札。それは、彼女の持つメタモンの特異性により実現した、2(・)体(・)目(・)の(・)エ(・)レ(・)キ(・)ブ(・)ル(・)。

 

「ねえシバリ。こう思ったことはない?

 

──エ(・)ー(・)ス(・)が(・)複(・)数(・)、居(・)た(・)ら(・)い(・)い(・)の(・)に(・)って」

 

「……思っても普通は実現出来ないんだよ」

 

 ここから勝つには、ムクホークが負傷した状態で、万全のエレキブルを突破しなければならない。

 

 ──俺はこの2体目のエレキブルを、今まで越えられたことがない。




・シバリ
対ラズへの圧倒的な人読み
最低限ラズのポケモンと渡り合えるフィジカルのポケモンを用意して、先手を取り続けることでなんとか食らいつくとかいうわけわからんことしてる。

トレーナーが一番無茶してたら、そりゃ手持ちのポケモンも無茶振りされたとてそこまで文句言えんよねっていう。アホかな?

・メタモン
正確にはバトル中に場に出たポケモンの中から好きなポケモンを選んで変身出来るというもの。
もしムクホークのHPがドドゲザンのふいうち圏内であれば、その時点で負けが確定する。シバリの言った『最低条件』というのはこれのこと。
上記のような条件でなければ、基本的にはエレキブルに変身する。使い勝手の良さから殿性能がずば抜けており、シバリはこのメタモンを倒せたことがない。
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