幼馴染にフラれたので旅に出ることにした   作:イグアナ

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とりあえず書きたいところまで書けたのだ。
第一部 完 とか言っても良いかも


27話

「そん、な──……」

 

 ラズは自分が負けるなんて思ってもいなかった。

 

 いつものようにシバリのムクホークを倒して、『一緒に村に戻って』と命令するつもりだった。

 

 しかし目の前の光景は、確かにラズの敗北を語っていた。

 

「よくやったなムクホーク!!!!!!」

「ホ、ホォォォォ…………」

「そんなに傷だらけになって……。ほら、モーモーミルクだぞ。たらふくお飲み」

「ゴッゴボッ!? ゴボボッ!? 」

「流石だぞ! ミルクの飲み方をばっちりわかっているんだな!」

「ホァァァァァァァァァァァ!!!!?!!?!!」

 

 傷だらけなのに何故かきずぐすりではなくモーモーミルクを口からぶち込まれているムクホークは置いておいて、とにかく、シバリはラズに勝利したのだ。

 

(……間違いなく、勝っていたはずなのに……!)

 

 そんな風に考えているラズの心境とは裏腹に、彼女の表情はどこか明るいものだった。

 

(……もう強さとかどうでも良いと思ってた。仮にシバリをここで6タテしていたとしても、私はシバリを村に連れ帰るつもりだったわ)

 

(……でも、私は負けた。()()()負けてしまった。ということは──)

 

 ラズは少し期待を込めた視線をシバリに向け、その視線に気づいたシバリは首を傾げた。

 

「……ほら、あんたの勝ちよ。なんでも言いなさい」

「お、そうだったな。それじゃ──」

 

 ラズはどこか、シバリはまだ村にいた頃と()()()()を持ってくれているものと思い込んでいた。

 

 あんなにこっ酷く振ったというのに、自分のことを想って動いてくれたのだから。

 

 そこの2人よりも、自分を優先してくれたのだから。

 

 だからこそ、ラズは──

 

 

「──()()()()()()()

「──……え?」

 

 

 ──シバリの言葉に、動揺を隠せなくなった。

 

 ここで初めて彼女は、シバリが自分への恋情を失っていることを自覚させられたのだ。

 

「シ、シバリ……? な、なんでもいいのよ……? ほら、いつも言っていたことがあるでしょう?」

「あー、()()かぁ……」

 

 シバリは当時のことを思い返し、苦笑いを浮かべた。

 

「冷静に考えるとさ、アレ、やばかったよな?」

「へ……?」

「毎日のように『負けたら俺と付き合ってくれ』ってバトル挑んでさ。好きでもないヤツにそんなことされたらたまったもんじゃないよな」

「そ、そんな……そんな、こと……」

 

 今のラズにとって、あの毎日は宝物のようなものだった。

 

 だからこそ、シバリにあの日々を否定されるというのは、何よりも彼女の心に傷をつけることになる。

 

()()()()。もう()()()()()しないから」

「あ、うぁ…………」

 

 シバリの言葉に、ラズの足元がおぼつかなくなる。

 

 もうあの日々は永遠に戻らないと、理解してしまったから。

 

「……そうだ。お願い、思いついた」

「……ぇ?」

 

 ラズは何故か、その願いを聞きたくないと思った。それを聞いたら、全てが終わってしまう気がして。

 

 シバリの気持ちはもう無いのだと、確信できてしまう気がして。

 

「──ま、待って、今、それは──」

 

 ラズの言葉は届くことはなく、シバリはあっけらかんとその願いを口にした。

 

()()()()()、ポケモンバトルしようぜ!」

「──……ぁ」

 

 今ここで、完璧なまでに。

 

 シバリはラズへの因果を断ち切った。

 

 

「……正直、一言くらい言ってやるつもりだったけど……」

「とんでもないトドメ……シバリさんが刺しましたね……」

 

 膝から崩れ落ちたラズを見て、トウコとメイは同情するような視線を彼女に向けた。

 

 だが、当の本人(シバリ)は何故ラズがそうなったのかを理解できていない。

 

 だからこそ、心配して彼女に駆け寄ろうとして──

 

 ──後ろから、肩を掴まれて止められた。

 

「駄目よ。今の貴方が行っても傷つけるだけだもの」

「おわっ!? ……えっと? ど、どちら様……ですか?」

 

 シバリの後ろに居たのは、かつてラズの破滅を視た張本人──

 

「──タロットジムのジムリーダー、キルネアよ。名前でわかってくれたら嬉しいのだけれど」

「タロットって……うちの地方の? ……ていうか、いつの間に?」

「隠れて見てたのよ。見事な戦いだったわ」

 

 言いながら、キルネアはシバリの前に移動した。まるでラズの方へは行かせないと言うかのように。

 

「……さて、単刀直入に言うわ。彼女のことは私に任せてほしいの」

「ラズのことを……? いや、でも……!」

「貴方は旅を続けるべきよ。それに、今の彼女には貴方の存在は毒にしかならない。貴方は今まで近くで物事を解決していたようだけれど、離れることで解決する問題もあるのよ?」

「……でも!」

「ふぅ……仕方ないわね。あんまり使いたくはないのだけれど……」

 

 キルネアは諦めたように溜め息をつくと、シバリとしっかりと目を合わせた。

 

()()()()()()()()()()()()()()

「あ……え?」

 

(た、確かにジムリーダーの言うことなら大丈夫か……? それに、大人に任せておいたほうが安心かも──)

 

 ここまで考えて、シバリは首を振って自分の考えを切り捨てた。

 

「いやいや! やっぱそんな状態のラズ、放っておけないですって!」

「──へっ!?」

「え?」

 

 キルネアが急に素っ頓狂な声をあげた。思ってもない反応に、シバリも疑問の声をあげる。

 

「あ〜……。そ、そう。そうなのね。貴方、効かないのね。そ、そっか、効かないんだ……。ふ〜ん……」

「……えっと、キルネアさん?」

 

 様子のおかしくなったキルネアにシバリが声を掛けると、キルネアは慌てて咳払いをして平静を保った。

 

「……なるほど。それだけの強靭な心があるのなら、彼女を打破したことも納得だわ」

「あの、キルネアさん?」

「でもね。──この場には、()()2()()()()のよ?」

「何──をっ!?」

 

 シバリの後ろから、トウコとメイが彼の腕をがっしりと掴んだ。

 

 そのまま、シバリは街の方へと連れられていく。

 

「大丈夫よシバリ。その人に任せれば安心だわ」

「そうですよシバリさん! きっと大丈夫です!」

「ちょっ……!? なんか2人とも目虚ろじゃない!? どうなって──!」

「安心して、ちょっとした暗示よ。少し経てば元に戻るわ」

「暗示って──!」

「シバリくん」

 

 キルネアは彼の名を呼び、しっかり目を見て、暗示をかけずに言葉を紡いだ。

 

「私のこと、信用できないのはわかるわ。でも、ジムリーダーとして──()()()()()、彼女の不利益になるようなことはしないと誓うわ」

 

 その言葉にシバリは一瞬考えて、キルネアの表情を見て、決めた。

 

「……わかり、ました。ラズのこと、お任せします」

「ありがとう。一応たまには連絡もさせるつもりではいるから、電話には出て上げて頂戴ね?」

「へ? いやでも俺、ラズの連絡先なんて──」

「……その2人から解放されたら、携帯の連絡先を確認することをオススメするわ」

「え?」

 

 このあと、街に戻ったシバリは携帯を確認したのだが、登録した覚えのない『ラズ』という連絡先が登録されていたのだった。

 

 

 ──が、この場での話は、まだ終わりではない。

 

 

「……さて、シバリくんからも許可は得られたようだし、貴女のことは私に任せてもらうわよ」

「……あんた、何でここに……?」

()()()からよ。ここで貴女が──ラズちゃんが負けるところも……ね?」

「……そう」

 

 キルネアの言葉に、ラズは俯いた。

 

「忠告も聞かずに先へ進んだ私を笑いにでも来たの? それなら良かったわね。私はもう、このザマよ」

「卑屈ね……そして違うわよ。前にも言ったでしょう? 私は才能のあるトレーナーが潰れていくのは惜しいと思っているのよ」

「……どういうこと?」

「これから()()()()()()()()()()()。人として成長して、彼の隣──は無理でも、関係を続けられるような人間にしてあげる」

「……そんなの、私は──」

()()()()()()()

「……っ!」

 

 怒気を含んだ声に、ラズの身体がビクッと震えた。

 

「あれだけの献身を受けて、あれだけの酷いことをして、これだけの底に落ちて……。それでもまだ、貴女は動けないって言うの?」

「……で、でも」

「変わるなら今しかないわ。ここまで言ってダメなら……もう貴女はここで終わりよ。シバリくんには悪いけど、好きにしたらいいわ」

「私、は──」

 

 震えた声になり、ラズはポツポツと話し始める。

 

「……もう一度、アイツと話したい。話せるようになりたい。アイツを、苦しめない人間になりたい。アイツを……喜ばせられる人間になりたい……!」

「……よく言ったわね。そこまで言えるなら上出来よ」

 

 そう言うと、キルネアはラズに手を差し出した。ラズはその手を取り、ゆっくりとその場を立ち上がる。

 

「……話は決まりね。行きましょ?」 

「行くって……どこに? そもそも、性根を叩き直すって、何を──」

「──決まっているでしょう? ポケモントレーナーなら、ポケモンバトルをするのが手っ取り早いわ。もう『自分より強い人が好き』だなんて、世迷い言は言わないでしょう?」

 

 言いながら、キルネアは許可証をラズに見せた。

 

「今から行く場所にとあるポケモントレーナーが居るわ。その人と戦って、戦い続けて……。人として、トレーナーとして、大事な物を学びなさい」

「ポケモンバトルって……でも、私……」

「えぇ、生半可なトレーナーでは相手にもならないでしょうね。でも、あの人は違うわ」

 

 知ってる? とキルネアはラズに尋ねる。

 

「ジョウトとカントーの境目。その白銀の頂に座す、赤き伝説のお話」




・シバリ
流石だぞ! ラズに効く言葉をばっちりわかっているんだな!

・メイ&トウコ
実は暗示解けた後もしばらく腕組んでた。
かーっ! 見んねヒカリ! 卑しか女ばい!

・ラズ
これから赤い人にボコられ続けて性根を叩き直してもらいます。
その禊を越えられるか否かは、彼女の頑張り次第。

・キルネア
実は軽い暗示も出来ちゃいます。言ってなかったが、年齢はシロナさんくらいを想定してる。

ちなみにアイゼンに勝った時にも暗示をかけ、キルネアがチャンピオンにならないようにするための工作をさせた。

シバリくんには暗示が効かなくてちょっと素が出た。

・赤い人
作者が勝手に最強で居て欲しいと思っているため、ゴリゴリに格の高いトレーナーとして描写している。

やっぱ原点にして頂点よ。ラズのことボコボコにしてやってください。

・フウロ
今回の勝利の立役者。
シバリが彼女と別れ際に会話をするまでが、キルネアの言う『まだ間に合う』のタイムリミットだった。(食いしばりフラグ)



■ひっそり没案供養

・ポケモン名
フーディン

・特異性
テレポートで敵を自分の攻撃の目の前にワープさせて必中させる

・没理由
あまりにもクソゲー。
ワープさせられるならそもそも近づけないじゃんってなった。

書くかはわかりませんが、番外編とか閑話があったら嬉しい?

  • いらない:そんなことより本編を書け
  • いる:ルリの閑話とか
  • いる:本編IF(永住ルート)とか
  • いる:ヒスイに飛ばされるようなIFとか
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