(まだ、見つからないなぁ……)
ユウリがリーグからの依頼を受けて一週間程が経過したが、その成果は芳しくなかった。
この一週間、ユウリは怪しい人物を見かけなかったどころか、リーグスタッフからも特に目撃情報が出ていなかった。
食料の買い出しやお風呂などでワイルドエリアを出ることもあるものの、基本的にはワイルドエリア内で寝食を過ごしていたため、ユウリのメンタルは徐々に限界に近づいていた。
(もうやだ……。お家帰って、ふかふかのお布団で寝たい……)
せめてまともに眠れていれば全然違ったのだろうが、不審者が行動するのは基本的に夜中のケースが多いため、夜だけワイルドエリアから離れるというわけにもいかなかった。
そのため、恐怖でまともに眠れていない彼女は、今すぐ依頼を投げ捨ててここから逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
(……あ、空が暗くなってきた……)
もうすぐ夜がやってくる。
不安で、孤独で、怖くて、安眠とは程遠い、そんな夜が──
──来るはずだった。
「ここら辺でいいか! よーしシャンデラ! キャンプファイアーだ!」
「シャア!?」
(……人の声?)
日中ならともかく、こんな時間に人の声がすることはユウリの経験上ほとんどなかった。
(……もしかして、フェイさんの言ってた……?)
可能性はある。少なくともこの一週間、常駐している人を除き、ユウリはこの時間にワイルドエリアで誰かを見かけたことはなかったのだから。
不審者が近くに居るかもしれない。そう思うと、ユウリはいつの間にか不安で身体が震えていた。
早く解決してほしいと思っているのに、不審者に出会いたくないという、どこか矛盾したような思いが彼女の心を駆け巡る。
(ちょっと覗いて、不審者だったら、フェイさんにすぐ連絡すれば大丈夫。……大丈夫、大丈夫。私はチャンピオンなんだから、これくらい、1人で──!)
意を決して、ユウリは声のした方へゆっくりと近づいた。そこには──
「おー! 流石シャンデラ!! ガラルキャンプファイアーの姿なんていつの間に!?」
「シャーン!!」
「お前の土壇場の底力にはいつも驚かせられるな……。エンドレスもらいびモードでも十分キャンプファイアーだと思ってたけど、こりゃ凄いわ」
「ホウホウ」
「ちなみにムクホークにはダイマックスバンドなしでダイマックスしてもらいたいんだけど、いけそう?」
「ホァ!?!!!!!??」
──不審者ではなく……いや、変な奴ではあるのだが、兎に角、そこに居たのは不審者ではなかった。
(……なんだか、楽しそう……)
自分とは違い、ポケモン達と楽しそうにしている少年を見て、ユウリは何となく目が吸い寄せられ──
──彼らの背後に迫るゲンガーに気がついた。
「っ! 危な──!!」
「──ムクホーク」
「ホー!!」
ユウリが声をあげようとした瞬間、少年は背後を見るまでもなくムクホークに指示を出し、
「何かと思ったらゲンガーかよ……。怖ぁ……」
「ホー……」
ユウリからすれば怖いのはゲンガーの方だったと思うのだが、それよりも今、気にしなければならないことがある。
先ほどユウリは声を出してしまった。となると当然──
「そんで……えっと。……こ、こんばんは?」
「こ、こんばんは……」
──少年に気づかれてしまうというのも、当然の話だ。
─────────────────────────
「なるほど……不審者かぁ」
「そうなの。シバリくんは怪しい人を見てたりしない?」
「ん〜……見てないかなぁ……。……てかカレー美味っ」
「ほんと? えへへ、嬉しい」
数分後。歳が近いこともありすぐに打ち解けた2人は、食卓を共にしていた。
「キャンプって初めてやったけど、こうやって外で食べるご飯って美味しいんだなぁ」
「そうだよね! カレーなんて特にその代表格と言っても過言じゃなくって!」
「うん。確かにカレーは美味い」
「毎日3食カレーでもいいくらいだよね!!」
「そこまでは言ってない」
「もうカレーしか考えられないよね!」
「アカンこの子カレー信者だわ」
苦笑いしながらも、シバリは楽しそうに話すユウリを見て少し安堵していた。
(最初に見たとき酷い顔してたからな……。笑ってるところが見れてちょっと安心した)
とはいえ、このままにしておくのもシバリとしては目覚めが悪い。
どうにか訳を探れないかと、シバリは会話をシフトさせることにした。
「……ところで、不審者を探すっていうのにユウリ1人なのか? その、大人の人とか……」
「……そんなこと言ってられないよ。だって私はチャンピオンだから、1人で何とかしないと……」
「チャンピオン、か……」
ユウリの言葉に、シバリは考え込んだ。
(トウコといい、ユウリといい、子どもに色々負わせすぎなんじゃないか……?)
(そりゃ、チャンピオンって凄いことだと思うし、そんな人ならなんでも出来るかもって気持ちはわからんでもないけどさ……。でも──)
目の前でわかりやすいくらいに作り物の笑顔を浮かべる少女を見て、シバリは決心した。
「今までもこうしてきたんだもん。だから、今回も──」
「……それさ、俺にも手伝わせてくれないか?」
「え? でも……」
「解決するなら人手が多い方が良いし、俺もなんか気になるからさ」
「あ……えっと……でも、私──」
「それにさ、俺ってガラルの人間じゃないんだ。どうせ余所者相手なんだし、少しは力抜いても良いんじゃないか? ……チャンピオンだからって、ずっと力入れてたら疲れちゃうだろ?」
「……あ」
シバリの言葉に、ユウリは言葉もなく俯いた。
(……ちょ、ちょっと強引すぎたか……!? でもわかりやすいくらいに目の下にクマ出来てるし、このまま放っておくわけにも──!)
「ふふっ……」
「っ!?」
「……それじゃあ、お願いしちゃおうかな。シバリくん」
「お、おう! 任せてくれ!」
少なくとも作り物ではなさそうな笑顔を見て、シバリは内心ホッとした。
(よ、よかったーー!! なんとかなった! よし、あとはどうにかユウリを休ませる方法を……!)
シバリが方針を考え込んでいる中、ユウリは彼の方に視線を向けていた。
(……今まで、『チャンピオンなら大丈夫』とか、『チャンピオンなら心配ない』ってことばかり言われてきたけど……
……心配してくれたの、シバリくんが初めてだな)
どこか自分が1人ではないと感じられ、ユウリの表情が少し柔らかくなった。
……が、次のシバリの言葉に、再びユウリの表情が重くなった。
「……よし、じゃあそろそろ食事は終わりにするか。明日から一緒に頑張ろうぜ」
「……あ」
食事が終わればまた1人になってしまう。明日の朝までユウリはまた1人、暗い夜を過ごさなければならなくなる。
それが嫌で、ユウリはなんとかしてシバリを引き留めようと口を開いた。
「……あ、あの、シバリくん。も、もうちょっとだけ──」
「──じゃあ見張りは俺がやるから、ユウリはテントの中で寝ててくれよ」
「──へ?」
予想もしてなかった言葉に、ユウリは呆然とした。
「み……見張り?」
「おう。だって夜こそちゃんと見てなきゃダメだしさ」
「そ、そんなの悪いよ! それなら私が──!」
「──ユウリ」
シバリはユウリの両肩を掴み、強く力説した。
「俺さ、夜がめちゃくちゃ好きなんだ」
「──へ?」
「もうマジで好きなんだ。夜が来たら小躍りするレベルで。なんなら一生夜でいい。太陽とか要らん。ソルロック? 星に帰れ。ルナトーン様万歳」
「……そ、そっか……」
若干引かれ気味ではあったものの、シバリはユウリを説得することに成功した。
やはりパッション。パッションこそが世界を救うのだと、シバリは1人確信したのだった。
・シバリ
ソルロック好きの皆様に張り倒されてしまえ。
・ユウリ
チャンピオンになってから心配されたことがなかったので割と嬉しい。
・シャンデラ
ガラルキャンプファイヤーの姿を会得。
見た目だけで言えばエンドレスもらいびモードより派手らしい。
・ムクホーク
セルフダイマックス、期待してるゾ!
■ひっそり没案供養
・ポケモン名
カビゴン
・特異性
指10本と足の指6本で"ゆびをふる"を使って技を16種同時に出す
・没理由
あまりにもギャンブラーすぎる
書くかはわかりませんが、番外編とか閑話があったら嬉しい?
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いらない:そんなことより本編を書け
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いる:ルリの閑話とか
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いる:本編IF(永住ルート)とか
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いる:ヒスイに飛ばされるようなIFとか