幼馴染にフラれたので旅に出ることにした   作:イグアナ

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ルリさんの閑話どっかで挟むべきかなーとも思いつつ、とりあえず本編


39話

 今日はユウリがチャンピオンとしての業務があるらしいので、1人でガラルを散策している。

 

 荒事じゃないなら付き添っても邪魔なだけだしね。

 

 そんなわけで、今日はブラッシータウンなる場所に来てみたわけなのだが……。

 

「ぐっ……! お、重い……! こ、こんなの、オレ一人に任せる量じゃないと思うぞ……!?」

 

 なんかめちゃくちゃ頑張って物を運んでいる少年を見つけてしまった。いや、俺もそんなに年齢変わらんだろうけど。

 

 て、手伝うべきかな……? いやでも、重い物運んでるときにいきなり知らん人に話しかけられるってのもアレだろうし……。

 

「う、うわぁ!?」

「ちょっ……!」

 

 少年がバランスを崩すのが見えて、思わず駆け寄って背中を支えてしまった。

 

「おっとと……。た、助かったぞ! ありがとう!」

「……見てられないし、運ぶの手伝うよ」

「へ?」

 

 

───────────────────────

 

 

 彼の名前はホップと言うらしい。ソニアという人の助手をやっていて、その人からとんでもない量の買い出しをお願いされたそうだ。

 

 今はホップの荷物を半分受け取り、ソニアさんという人が待っているポケモン研究所へと向かっている。

 

「シバリさんが手伝ってくれて正直助かった……感謝してるぞ!」

「さん付けなんていいって。ホップと俺、そんなに歳離れてるわけじゃないだろ?」

「わかった! じゃあこれからはシバリって呼ばせてもらうな!」

 

 そう言ってニッコリ笑うホップに、俺はどこか既視感を覚えた。

 

「……なんか見覚えあるんだよなぁ」

「見覚え?」

「そう。ホップの顔、どっかで見たような……」

「でもオレ達初対面だよな? シバリと会ったことなんてないぞ?」

「そのはずなんだけど……」

 

 ガラルに来てからどこかの人混みで見かけたか……? いや、なんというか、そういうのじゃない気がするんだけど……。

 

「……あ、わかった」

「ほんとか!? 実はオレ達過去に出会ってたとか、そういう──」

「ダンデさんに似てるんだ」

「なんだよアニキかよーー!!!」

「……アニキ?」

 

 アニキ? ブラザー? ……えっ? お兄さん?

 

「……もしかして、ホップのお兄さんって……」

「多分シバリの思ってる通り、ダンデだぞ!!」

「嘘だろ!?」

 

 世間せっっっま。こんな簡単に知り合いの親族に出会えて良いのかガラルよ……。

 

「……ちなみにさ」

「なんだ?」

「ユウリとか、知り合いだったりする?」

「ユウリなら家がお隣さんだぞ!!」

「世間せっっっっっま!!!!!!」

 

 おかしいだろ。俺ガラルの知り合い2人しか居ないんだぞ。いや、フェイさん入れたら3人だけど……。

 

「もしかしてシバリは2人と知り合いなのか?」

「まあ……そんな感じ」

「そっか! ならオレ達、きっと仲良くなれるぞ!」

「え?」

「だってアニキとユウリの知り合いなら、良い人に決まってるからな!」

 

 当然だとでも言うように話すホップを見て、俺は思わず笑みが溢れた。

 

「……確かに、ホップを見てるとそんな気がしてくるな」

「だよな!」

 

 なんかホップを見てるとこっちまで元気になるような感じがする。

 

 色々とダンデさんに似てるけど、ダンデさんとは違う方向で他人を笑顔に出来る素質があるみたいだな。

 

「……ところでシバリ」

「?」

「その、オマエは気にならないのか? なんでチャンピオンの弟が博士の助手なんてやってるのかって」

「……あー」

 

 言われてみれば、チャンピオンの弟だというなら、兄の背中を見て同じチャンピオンを志すというのがよくある話なのかもしれない。

 

「……でも、ホップはダンデさんと違う道を自分で選んだんだろ?」

「そう、だけど……」

「ならそれでいいじゃん。兄を追いかけることも、兄とは別の道に行くことも、どっちも普通だし、何もおかしいことじゃない。なら、ホップが選ばなかった方の道を聞く理由はないよ」

「……シバリ」

「俺はむしろ今の道を選んだ理由を聞きたいかな。助手ってことは将来博士を目指すんだろ? なんで博士になろうと思ったんだ?」

「……ははっ!」

「へ?」

 

 急にホップが笑い出した。どしたの君。

 

「ありがとう! この道を選んだことに後悔はしてないけど、なんだか背中を押された気分だぞ!」

「お、おう……?」

「やっぱりオマエはいい奴だ! オレ、シバリともっと仲良くなりたいぞ!」

「おっ、それならしばらくガラルに居るからさ。時間の合うときは遊ばないか?」

「もちろん! 後で連絡先交換だな!」

 

 そうして2人で笑い合いながら、俺達はポケモン研究所へと歩いていく。

 

 ようやく同性の友達が出来て、内心盛り上がっている俺がいたのだった。

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

「着いたぞー!」

「ここがポケモン研究所、か……」

 

 俺の住んでた地方にも勿論ポケモン研究所はあったけど、小さい頃に図鑑貰いに行ったきりだし、もう覚えてないなぁ。

 

「ソニアー! 流石に1人で持てる量じゃないぞコレ!」

「なーに言ってんの! ちゃんと帰ってこれてるじゃな……い?」

 

 ソニアと呼ばれた女性が、俺の顔を見て言葉が止まった。

 

「……ホップ、どちら様?」

「シバリだぞ! 困ってるオレを見て運ぶのを手伝ってくれたんだ!」

「シバリ? ……シバリ!?」

 

 いきなり駆け寄ってきたソニアさんが、ガッと俺の両肩を掴んだ。

 

「き、ききき、君! 君ってそのっ、ダンデくんが言ってた、あのシバリくん!?」

「どのシバリくんですか!?」

「ほ、ほら! ()()シロナさんの助手候補っていう──!」

「勝手に言われてるだけですよそれ!?」

「でもそのシバリくんなのね! それだけわかればオッケー!」

「えっ」

 

 ソニアさんは俺の手を掴むと、ホップに向かって声をかけた。

 

「ごめんちょっとシバリくん借りるわね! 買ってきたものは整理しといて!」

「ちょっ……!? この量を1人で整理しろってのは流石に横暴だぞ!?」

「ほんとにごめん! 今度新しい本買ってあげるから!!」

「流石だぞ! オレの扱い方がばっちりわかっているんだな!!」

「言ってる場合か?」

「てことで、シバリくんはこっち来て!」

「おぅっ……!?」

 

 強い力で引っ張られ、机のある方へと連れて行かれた。

 

「ちょっとそこで座って待ってて!」

「あっ、はい……」

 

 勢いのまま椅子に座らされ、ソニアさんはそのままパタパタと走り去っていったかと思ったら、またすぐに何かを手にして戻ってきた。

 

「紹介が遅れてごめんなさい、わたしはソニア。実は今調べてるものについて、シバリくんの意見を聞かせてもらいたいの」

「えっ」

 

 いや、あの、えっ。ちょっと待ってほしい。俺ほんとに何も知らないんだけど……。

 

「えっと、俺、知識とかそういうの、全然、無くて……」

「良いのよ。あのシロナさんが欲しがる人材ってことは、()()()()()を評価してるわけじゃないってわかってるから」

「え、えぇ……?」

 

 胃が痛い……。しかもこれ、もし変なこと言ったらシロナさんの顔に泥を塗るってことになりかねないよな……?

 

 た、頼む! なんかこう、いい感じにシロナさんから聞いたことがあって、俺でもそれっぽく答えられる感じの──!

 

「イッシュの豊穣を司る三神って知ってる?」

「いいえ」

 

 終わった。もう無理だよこんなの。

 

「なら説明するね? まずは"トルネロス"。風を操るポケモンで、民家を吹き飛ばすほどの風を起こすんだって」

「えっ」

「次に"ボルトロス"。雷を操るポケモンで、時には雷で山火事なんかも起こしていたらしいんだよね」

「……あの、なんか物騒すぎません?」

「そう。だからこそ3体目の"ランドロス"……土に栄養などを与えて豊穣を促すポケモンに、この2体のポケモンはよく懲らしめられてたんだとか」

「……それ、最後のランドロスだけで良くないですか? 豊穣に関係あるのって、ランドロスしか居ないんじゃ……」

「いい着眼点! でも、そうとも言えなくて……」

 

 本を広げながら、ソニアさんは続ける。

 

「たとえばトルネロスの巻き起こす風は、大気を撹拌して季節を巡らせる効果があると書かれてて」

 

「そしてボルトロスの雷もまた、大地を貫くほど強い雷で、土壌を鍛える役割を持っていたって書かれてる」

 

「つまり、ランドロスだけではなく、この2体もまた、豊穣には無くてはならない存在ってことなの!」

 

「……なるほど」

 

 そう言われれば少し納得。いや、だからって民家吹き飛ばしたり山火事起こすのはどうかと思うけど。

 

「……それで、本題はここからで……」

「は、はい……」

「文献にね、えーっと……要約すると、『最後に春の風が訪れて、季節がまた一巡する』って感じのことが書かれてるんだけど、この春の風ってなんなのかさっぱりわからなくて……」

「春の風……? 風ってことなら、普通に考えればトルネロスの風って思えますけど……」

「民家を吹き飛ばすほどの大きな風が"春の風"なら、文献書いた人相当頭イカれてると思わない?」

「……確かに」

 

 家がぶっ壊される風景を見て春を感じた人が居たらちょっとヤバイかもしれない。そんな感性を持つ人間は間違いなく文献を書くべきではない。

 

「なんとなく春っぽいのは土壌を豊かにしてるランドロスなんだけど、"風"ではないし、ボルトロスも全然結び付かないし……。なんか、気になって仕方ないのよね……。単純に何の意味もない一節って可能性もあるんだけど……」

「春の風、か……」

 

 う〜ん? なんか春ってワード、どっかで聞き覚えがあるような……?

 

 そうそう、最近シロナさんとヒスイの話してるときだったかな。確か──

 

「『畑の神がいる、春の神がいる、ヒスイの空を飛びまわり、命を芽吹かせる』……だっけ? ん? 畑の神ってランドロスと似てるような──」

シバリくん!!!!!!!!!!!

「ひょおっ!?」

 

 ソニアさんが机をバンと叩き、目を輝かせながら立ち上がった。

 

「その話! 出どころはどこ!?」

「え、えと……シロナさんがヒスイ……えっと、過去のシンオウ地方について話してる時に……」

「シロナさん……。だったら、裏を取る価値はあるわね」

「えっと……?」

「もしかしたら()神じゃなくて、()神なのかも!」

「4……? あ、春の神って部分ですか? でも、これにはトルネロスとボルトロスのことなんてどこにも──」

「ランドロスは、風と雷を取り込んで大地に豊穣をもたらすエネルギーに変換しているという話があるの! それにさっきも言った通り、豊穣にはこの2体の存在が欠かせない。つまり、畑の神……ランドロスの存在が仄めかされている時点で、他2体も存在しているってことになるわけ!」

「な、なるほど……?」

 

 トルネロスとボルトロスが居なきゃ、そもそも豊穣の神としてランドロスは存在出来ないってことなのか?

 

 それなら確かに、ランドロスが畑の神として語られているってことは、他2体も存在してるっていうことになるのかも。

 

「ねぇ! 他にも聞いていいかな!? 実はまだまだ詰まってるところがたくさんあって──!」

「は、はは……」

 

 拝啓、シロナさん。

 

 貴女の顔に泥を塗らないよう頑張りますので、どうか応援していてください。




・シバリ
『畑の神がいる、春の神がいる、ヒスイの空を飛びまわり、命を芽吹かせる』はレジェンズのコギトさんの台詞から引用。

あの人はなんか文献残してそう。プレートをまな板に使ってたけど。

あとプレートをまな板に使ってたけど。プレートじゃねぇか!!

いやプレートですよそれ。

・ホップ
自分で選んだ道とはいえ、周りの人から「チャンピオン目指さなくて良かったの?」みたいなことを結構言われてて、ちょっと気にしてた。

でもシロナ塾とダンデ塾を受講してしまったシバリ君の前にはその悩みは秒で消えてしまったとさ。

・ソニア
博士スイッチ押しちゃったァ……。
以前も誰かの考古学者スイッチ押してたような……?

・ユウリ
今日は普通にチャンピオンとして頑張り中。
シバリにも付き添ってもらいたかったが、旅が目的と聞いているので断念。良い子だネ!!

・フェイ
自分のあげたバンドがほぼほぼ不要の長物になってしまったことをまだ知らない

書くかはわかりませんが、番外編とか閑話があったら嬉しい?

  • いらない:そんなことより本編を書け
  • いる:ルリの閑話とか
  • いる:本編IF(永住ルート)とか
  • いる:ヒスイに飛ばされるようなIFとか
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