「ありがとう! すっごく参考になったわ!」
「そ、そうですか……」
「ドン詰まりしてた研究も新しいアプローチを思いついたし、なんだかホッとしちゃった!」
「……? い、いえ、お役に立てたなら何よりです……。はは……」
小一時間ほど質問責めを受けたシバリは、心底疲れた様子で机に突っ伏した。
(やりましたよシロナさん……。なんとか貴女の顔に泥を塗らずに済んだみたいです……)
シバリからすれば途中からヤケクソみたいなものだったが、何とかソニアの求めていた回答は出来たらしく、内心ホッとしていた。
一方でソニアはというと、突っ伏しているシバリを見て何やら考え事をしていた。
(この子……なんというか、情報と情報の結び付け方が上手いわね。それに、一見子供みたいな突拍子の無いことを言ってるように見えるときも、その発想に至る根拠がハッキリしてるから、ちゃんと現実味がある意見になってる)
(わたし達みたいな、思考が凝り固まった大人には出来ない発想力が彼にはある。……なるほど、シロナさんが欲しがるわけね……)
ソニアは一人納得して頷くと、椅子から立ち上がった。
「よーし! またやることたくさん出来ちゃったし、頑張らなきゃ! シバリくん、ほんとにありがとね!!」
「は、はい……」
ソニアが去った後も、しばらく彼は突っ伏し続けていたのであった。
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「シバリ、お疲れ様なんだぞ! ほらお茶!」
「お、おう……ホップか……。ありがとう……」
ソニアさんが去ってから少しして、ホップが突っ伏してる俺にお茶を持ってきてくれた。
あ、美味い……。疲れてるからなのか知らんけど、今まで飲んだお茶の中で一番美味いかもしれない……。
「あ〜……生き返る……」
「なんというか……災難だったな?」
「そうだな。なんか凄い勢いで休む暇も無かった……」
苦笑いしながら対面に座ったホップが、『ほんとにお疲れ様なんだぞ……』って言いながら肩を叩いてくれた。
「……でも、ソニアは最近夜遅くまで研究してるみたいだし、許してあげてくれないか?」
「いや、別に許さないとまでは思ってないから……」
「そっか! 安心したぞ!!」
うーん。しかし、夜遅くまでか。
なんというか、さっき感じた違和感の事といい、ちょっと気になるな。
「……なあホップ、ソニアさんについて色々教えてくれないか?」
「もちろんOKだぞ! でも何でソニアのことを……あっ、もしかして好きになっちゃったとかなのか!? ダメだぞシバリ! きっと研究の協力とか言ってたくさん雑用振られちゃうんだぞ!!」
「違ぇよ! 確かに綺麗な人だとは思うけども!!」
「そうなんだぞ……見た目だけはいいんだぞ……。でも人使い荒いし、お部屋も全然片付いてないんだぞ……」
「……く、苦労してるな……」
今度は俺がホップの肩を叩く番になった。
「……で、ソニアの話だよな? とりあえず、見てのとおりソニアは博士だ! 少し前までは博士の助手……あっ、マグノリア博士って人の助手だったんだけど、最近ついに認められて博士になったらしいんだぞ!!」
「へぇ」
つまりソニアさんは博士になりたてってわけか。でもって、ホップはそんなソニアさんの助手と。
「『ガラルの歴史』って本も書いてるんだ! ほらこれ!おもしろく書かれてて大人気なんだぞ!!」
そう言って、ホップはサイン入りの本を見せてくれた。
なるほど。立派に活動していて、実績もあるみたいだ。
「さっきも言った通り最近は結構夜更かししているみたいなんだけど、マグノリア博士に認められて博士になったこともあって、はりきってるんだと思うぞ!!」
「……ちなみにその、マグノリア博士って方はどんな人なんだ?」
「とっっっても凄い人だぞ!! なんてったって、あの"ダイマックス"を発見した人なんだからな!」
「マジか」
そりゃ凄い。つまりダイマックス研究の第一人者ってわけだ。ダイマックスを用いてのジムチャレンジで地方興しをしているガラルを語る上では、避けては通れない人物なのかもしれない。
「でも、ソニアだってマグノリア博士と同じくらい凄いんだぞ! 研究に対する熱意とか、研究へのアプローチとか、この本みたいな新しい発信方法へのアイデアとか、他のところだってマグノリア博士に引けを取らないんだ! きっとこれからたくさんのことを発見したり、色々なものを発明したりすると思うぞ! ……人使いは荒いけど……」
「割とそこは根に持ってるのな……」
うーん。でもこれだけじゃなんとも言えないなぁ。
やっぱり、本人と話してみるのが一番か。
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「てことで、お話しするために来ていただきました」
「なんていうか……シバリくん、案外アグレッシブなのね」
ホップが居るところで話すのもアレなので、後日ソニアさんを喫茶店に呼び出して話を聞いてみることにした。
「研究の時間奪っちゃってすみません。手短に済ませますので……」
「いいわよ気にしなくて。シバリくんのおかげでまた研究が進みだしたんだし、何かしらお礼しなきゃと思ってたところだから」
「そう言ってもらえると助かります」
会話も程々に、俺はソニアさんに切り出してみた。
「実はホップから、最近ソニアさんが夜更かしして研究してるって話を聞いたんです」
「あー……そうね。最近はちょっと研究に没頭しちゃって……」
「……なんなら、今は俺でもわかるくらいちょっと顔色悪いですよ?」
「え……ほんと?」
ホップにも心配かけちゃったかしら。なんて言って少し笑うソニアさんだったが、なんというか、
「ソニアさん、1個聞いていいですか?」
「へ? う、うん。いいけど……」
「俺と初めて話したとき、研究への新しいアプローチ方法が見つかったって喜んでましたよね?」
「? そうね。そのおかげで今色々と新しい取り組みをしてるけど……」
「じゃあ、その、なんで『ホッとした』なんて言ったんです?」
「……へ?」
俺の言葉に、ソニアさんの表情が変わった。
「いや、その。ソニアさんがそのとき言ってたんですよ。『新しいアプローチを思いついたし、なんだかホッとしちゃった』って。普通はなんというか、喜ぶものなのかなと……」
「……あー……」
思い出したのか、それとも覚えてはいないが
「ほ、ほら、研究が息詰まってて、このままじゃどうしようもないな〜って思ってたから、それでホッとしちゃって……」
「……」
「……なんて、嘘は通らないよね……。……シバリくん、案外変なところ覚えてるのね」
「なんか言葉にトゲを感じるんですけど……」
「女性の秘密を探ろうとした男の子へのバツです」
「それは……すみません」
「……なんて、冗談よ」
ソニアさんは観念したように語り始めた。
「最近わたしはおばあさま……マグノリア博士から認められて博士になったばかりなんだけど……」
「ああ、その話ならホップから──ん? おばあさま?」
「あ、ホップが言ってなかったの? 私はマグノリア博士の孫なのよ」
「孫ォ!?」
一体なんなんだガラルは。ホップがダンデさんの弟だったり、ソニアさんがマグノリア博士の孫だったり。何? 俺の知り合う人は親族にヤバい人しか居ないの?
「そうなの! おばあさまはダイマックス研究の第一人者で、いっぱい本も出してて、すっっっごい人なんだから!」
「……ホップも言ってました。凄い人だって」
「そう! ほんとにすごーい人なの! ……でも」
ソニアさんは自信なさげに俯いた。
「わたしね、おばあさまみたいに凄い人じゃないの」
「へ?」
ソニアさんだって、十分凄い人なんじゃ……?
「おばあさまからはたくさんのことを教えてもらったり、研究を手伝わせてもらったり、そうやって色々学ばせてもらってから、わたしはおばあさまから想いを託されたの」
「次はわたしがホップに託す番。こっちから誘ったんだし、ホップには色々教えてあげたり、博士として大事なところを見せてあげなきゃって思ってるんだけど──」
「──胸を張れる実績はまだ少ないし、勉強だっておばあさまみたいに上手く教えられてないと思う。……ホップは優秀だから、勉強もわかってくれてるんだけど……」
「だから、わたしはホップに恥じない博士にならなきゃいけなくて、そのためにも、研究で詰まってるわけにはいかなくて……」
「……シバリくんの言う通りだよ。あのときわたし、ホッとしたんだ。研究の途中で詰まってるような情けないわたしから脱却して、またホップに恥じない博士でいられるって。実績を増やして、ホップの前で胸を張れる大人になれるって、そう思ったの」
「……ソニアさん」
ソニアさんはハッとした顔になると、こちらを見て張り付けたような笑みを浮かべた。
「ご、ごめんね急にこんなお話して……! ……情けないとこ、見せちゃったよね……」
「……いえ、ホップのために頑張ってたのはとても立派だと思いますけど……」
なるほどね……。……この人、わかってないんだ。
「……えっと、そんなに根詰めなくても大丈夫だと思いますよ?」
「いやいや、わたしはこれくらいやらないと──」
「ホップが言ってましたよ。ソニアさんはマグノリア博士と同じくらい凄いって」
「えぇ!? わたしそんなに過大評価されてたの!?」
「いや、実際凄いと思いますけど……」
「そんなことないよ! だってわたし、ホップに胸を張れることなんて、何も……」
またも自信なさげにしているソニアさんに、俺はホップから聞いたことをそのまま伝えることにした。
「研究に対する熱意、研究へのアプローチ、"ガラルの歴史"みたいなユニークな情報発信のアイデア、他のところだってマグノリア博士に引けを取らないって、そう言ってました」
「……ホップが、そんなことを?」
「はい。……それに、ソニアさんは実績が欲しいから博士になったわけじゃないんでしょう? なら、そんなに難しく考えなくて良いと思いますよ。 ホップだってそういうところを見るようなやつじゃないですし」
「……そう、なのかな……?」
「そうですよ! なんてったってホップが信じるソニアさんですからね! 初対面でシロナさんが信じる俺を信じたんですから、ホップが信じるソニアさんのことだって当然信じてもらいますからね!」
「……ふふっ。なにそれ、意味わかんない」
流石ホップパワーと言うべきか、ソニアさんの表情に笑みが浮かび始めた。
「……ありがと。なんか、ちょっと自分に自信が無くなってたみたい」
「自信持っていきましょう! それに、ソニアさんなら楽しんで研究してるだけで実績なんて後からついてきますって!」
「も〜、簡単に言ってくれるんだから。……でも、そうね」
ソニアさんは憑き物が落ちたような表情で、ニコリと笑った。
「せっかくの研究なんだもの、楽しまなきゃ損よね!」
ウィンクしながらそう言ったソニアさんを見て、もう無理はしないだろうと、なんとなく確信できた。
「──じゃあ今後も頼りにさせてもらうから、よろしくね!」
「えっ」
……えっ。
……胃痛薬、買っとこうかな……。
・シバリ
お前(ソニア)を信じる俺(ホップ)を信じろ的な謎理論でゴリ押し
ホップパワーすげぇやって思ってる
・ホップ
最近ソニアの顔色悪くてちょっと心配してたので、夜更かししなくなって安心。
あとなんか最近ソニアからの当たりが少し柔らかくなった気がする。
・ソニア
自分が託す側になってちょっと自信を失ってた。
マグノリア博士が偉大すぎたからね、仕方ないね……。
とりまシバリは今後も研究に巻き込むつもり満々。
あわよくばホップとシバリのダブル助手とか実現しないかなとか思ってる。
・シロナ
自分以外の研究者にシバリが協力している事実は"まだ"知らない。
書くかはわかりませんが、番外編とか閑話があったら嬉しい?
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いらない:そんなことより本編を書け
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いる:ルリの閑話とか
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いる:本編IF(永住ルート)とか
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いる:ヒスイに飛ばされるようなIFとか