ソニアさんとの一件から数日後、俺はダンデさんにリーグ本部に呼ばれていた。
なんでも渡したいものがあるらしいのだが……。
「……なんですか、これ?」
「"なりきりダイマックスバンド ユウリバージョン"だ」
「えっ!? 前にお土産屋で見たときは売り切れてたのに……」
「ユウリは最近チャンピオンになったばかりだから生産が追い付いてないらしくてな。品薄状態ではあるみたいなんだが、そこはまあ、リーグ委員長としての権限をちょっと使わせてもらった」
「……いいんですか?」
「もちろん。オレからのガラルお土産というやつだ」
「ありがとうございます!」
早速ダンデさんから受け取ったオモチャを装着し、ボタンを押してみる。
『いくよエースバーン! キョダイマックス!』
『キョダイカキュウ!』
『カレー最高!』
『良いバトルだったね!』
「……何か1個私欲混じってません?」
「どうしても入れたいと言って聞かなくてな……」
それなら仕方ないか。……仕方ないか?
「しかし、ソニアが研究のためにガラルに留めてほしいと言った時はヒヤッとしたが、無事研究が終わったようで安心した。特に引き留めるようなことも言われなかったんだろう?」
「…………………………はい」
「なんだ今の間は!? そして何故目を逸らす!?」
焦った様子でダンデさんが近づいてきて、俺の両肩をガッと掴んで揺さぶってくる。
「だ、大丈夫なんだよな!? ソニアとは何もなかったんだよな!?」
「何も……なかった、です」
「信じていいのか!? 答えてくれシバリ君!!!!!!!」
「…………はい」
「何故顔を赤らめるんだシバリくぅぅぅぅぅん!!!!!」
そのまましばらく肩を揺さぶられていたが、本当のことは言わずに口を閉ざし続けた。
しばらくそんな状況が続いていたが、やがてダンデさんは諦めたように溜め息をつくと、俺から手を離して胃の辺りを押さえ始めた。
「……し、信じるからな? 何も起こってないって、信じるからな……?」
少し顔を青くしたダンデさんの言葉に、俺はただ頷くことしか出来なかった。
「……じゃ、じゃあ、オレからの話は以上だ。あとは次のヤツに任せよう」
「……? 次の……?」
「あれ? 本人から聞いてなかったのか?」
ダンデさんは首を傾げたまま口を開く。
「
「…………へ?」
サ、サイトウさんが……ここに、来る?
「サイトウからは『シバリさんにはわたしからお伝えしておきます』って聞いてたんだが、連絡漏れか?」
「すみません急用を思い出したので帰ります」
やばいやばいやばい! サイトウさんが俺に連絡しなかったのは絶対に意図的だ。
サイトウさんが来る前にここを立ち去らなければ──!
「お、そうか? だったらそれはオレじゃなくて──」
ダンデさんの言葉を最後まで聞かずに、俺は部屋の扉を開く。そして──。
「……こんにちはシバリさん。このあと時間、空いてますよね?」
「……はは」
扉の先にはニッコリと笑っているサイトウさんが居た。
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きっかけは、ホップと待ち合わせしているときのことだった。
俺は30分ほど早めに集合時間に着き、ムクホークと駄弁りながらホップを待っていたのだが──。
「失礼。少しよろしいでしょうか?」
「はい?」
「ホ?」
そこで話しかけてきたのが彼女、サイトウだった。
「突然すみません。わたしはサイトウと申します」
「ど、どうも……。俺はシバリです」
「シバリさん、良いお名前ですね。実は先ほどから、シバリさんのムクホークを遠目から見させていただいていたのですが──」
チラリと横目でムクホークを見て、サイトウさんはコクリと頷いた。
「近くで見てより一層確信しました。そのムクホーク、とても鍛えられていますね」
「ポゥ!!」
「調子乗んなお前。……あ、すみません」
「いえいえ、やはり仲もよろしいのですね。……それで、ものは相談なのですが、私とポケモンバトルしていただけないでしょうか?」
「……へ?」
ポケモンバトル? なんでいきなり……?
「実は私、お恥ずかしながらまだまだ修行中の身でして、たくさんのトレーナーと戦って経験を積みたいと考えているんです」
「なるほど。つまり……」
「はい。修行に付き合っていただきたい、ということです」
修行……か。正直俺で相手が務まるのかはわからないけど、そういうことなら……。
「……わかりました。バトルしましょう」
「本当ですか? ご配慮、痛み入ります」
「いえいえ。ただ、俺もこのあと予定があるので、6vs6ではなく3vs3、それと1試合のみという条件なら受けられますが、大丈夫ですかね?」
「とんでもないです。バトルしていただけるだけでもありがたいというものです」
そんな流れで、俺はサイトウさんとポケモンバトルをすることになり──
──結果として、サイトウさんを一匹目で3タテした。
「……そんな」
バトルが終わった瞬間、サイトウさんは呆然とした表情で膝から崩れ落ちた。
「かくとうタイプ使いの私が、
まさかここまで一方的な試合になるとは思っていなかった。いや、確かにこいつのパワーはとんでもないし、タフではあるんだが……。
「……屈辱です。こんな有利な対面で、私が、一匹も……」
「あ、あの……」
「あのムクホークを引きずり出すことさえ出来ないなんて……ふふ、ふふふふふふふ……」
「サイトウ……さん?」
「認めません!!!!!」
「うぉっ!?」
突然サイトウさんは立ち上がると、俺に向かってビシッと指差してきた。
「かくとうタイプ使いとして、こんな結果認められません!! 貴方の
「え」
「さあいきますよ! 私はもう準備出来たので、シバリさんがケッキングの傷を治したら第2ラウンド開始です!」
「いや、あの、俺予定あるんですけど……」
「予定とかそういうの、もう全部壊しましょう!!」
「何言ってんですか!?」
やばい。熱が入ると周りが見えなくなるタイプなのかもしれない。
バトルする前までは『勝ちたい! そう思ったときに心の隙が生まれます……無心で勝負に挑みます!』とか言ってたじゃん。
今バリバリ隙生まれてるじゃん。 あの冷静そうなサイトウさんどこ行ったの?
「……ムクホーク。この状況、逃げられそう?」
「ホウ」
ムクホークが任せろと言わんばかりにサムズアップしてきた。お前それどうやってんの?
「ホップには集合場所変えるように連絡しとくか……」
「何をブツブツ言っているのですか!? さあ早く! 第2ラウンドを──」
「戻れ! ケッキング!」
「あぁっ! そんな!?」
ケッキングを戻すと同時にムクホークに飛び乗り、俺はサイトウさんから逃げるように飛び去った。
「逃げるだなんて卑怯ですよ! !」
「戦った後なんだから許してもらえませんかね!?」
そうして俺は抗議してくるサイトウさんから逃げおおせたのだが──。
「探しましたよシバリさん。バトルしませんか?」
「しません」
徘徊してるサイトウさんに見つかったり、
『明日バトルしませんか? なんならこれからでも byサイトウ』
「……なんで連絡先漏れてんだよ……」
何故か連絡先が漏れてメールが届いていたり、
「……負けたか。ケッキング、残念だったな」
「シバリさん。今、手を抜きましたね……?」
「……スゥー」
わざと負けて解放されようとしたことがバレたりなどして、ずっと付きまとわれている状態が続いていた。
ホップやユウリなど、誰かと居る時は割り入ってこないので、そこら辺は分別があるらしいのだが、その分別を俺への気遣いに使ってくれればどれだけ良かったことか……。
しかも1回バトルを引き受けると一日中バトルさせられるし、少しでも手を抜くとバレてしまうので、流石に俺も逃げ回ることを余儀なくされていた。
なので、極力サイトウさんとは会いたくないというのが本音だったのだが──。
「何故逃げるんですか? 私はこんなにもシバリさんとのポケモンバトルを望んでいるというのに」
「あだだだだだだだだだだ!!! わかりました! 逃げない! 逃げないから! 腕極めながら歩くの止めてくだいだだだだだだだだだ!?!!?」
「そんなに喜んでいただけるとは、わたしも嬉しいというものです」
「喜んでないだだだだだだだだだ!?!!!!?!!」
「ふふ、2ヶ月も放置されたんです。今日は朝まで付き合ってもらいますからね?」
腕を極められたままそんな死刑宣告をされて、俺はサイトウさんに連行されていく。
今日もまた、空への逃走防止のために屋内スタジアムでバトルに付き合わされたのだった。
・シバリ
流石に朝までは無理すぎて、サイトウの目を盗んで途中で逃げた。
・サイトウ
元々ルリと同じくナレ堕ちする予定の一人だった。
ケッキングに3タテされたことで執着し始め、今も3vs3の条件で挑んでいるらしい。
・ダンデ
何も、なかったんだよな……?
・ケッキング
シバリの手持ちとしてケッキングを出す予定は元々無かったが、書き始めた当初からケッキングの名前が感想欄に出ていて、三次創作にも出していただいたので、どうせなら私もケッキングでなんか考えるかと思って、今に至る。
・ユウリ
カレーだけは譲れなかった
書くかはわかりませんが、番外編とか閑話があったら嬉しい?
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いらない:そんなことより本編を書け
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いる:ルリの閑話とか
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いる:本編IF(永住ルート)とか
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いる:ヒスイに飛ばされるようなIFとか