「へ? コンテストアイドルが公開告白?」
「そうよ。今SNSで話題になってるの」
「……で、それの相手がかのシバリ君だって?」
「その通りよ」
「…………」
シロナからの電話を受け、ダイゴは天を仰いだ。
(ふ、普通そうなるか!? ハルカちゃんのことは保証したけれど、まさかコンテストアイドルを堕とすだなんて想像出来るわけがないだろう!?)
しかし、自分が引率を引き受けなかったからこそ起きたこととも言える。
ダイゴは少し罪悪感を覚え、シロナに協力を申し出ることにした。
「わかった。少し約束とは違うけど、協力しよう。取り急ぎは彼と一緒に居るハルカちゃんに連絡を取って、なんとしてもコンテストアイドルを食い止める。これでどうだい?」
「……気乗りはしないけれど、わかったわ」
一旦シロナとの電話を切ったダイゴは、すぐにハルカへと電話をかける。
「はい、ハルカです。急にどうしたんですか?」
「あー……いや、その、コンテストアイドルがシバリ君に告白した件で話があってね」
「……あぁ、その件ですか」
「なんか急に声低くなってないかい?」
何やら不穏な空気を感じたダイゴだったが、ひとまず用件を伝えることを優先することにした。
「コンテストアイドルの子には悪いんだけど、それを看過するわけにはいかなくてね。巻き込んでしまって申し訳ないんだけど、協力してくれないかな」
「……そう、ですよね」
「……ん?」
「ちゃんとあたしが見ててあげないと、ですよね」
「………………んん?」
何か様子がおかしい。ダイゴの直感がそう訴えている。
まさかと思いつつ、ダイゴはハルカにひとつ質問をしてみることにした。
「ち、ちなみになんだけど」
「はい?」
「ハルカちゃんはシバリ君のこと、どう思ってるんだい?」
「…………………………………………」
ハルカは答えない。だが、その沈黙の長さが答えを雄弁に語っているような気がした。
「あ、あぁ、うん。言いたくないならいいんだ」
ここで切り上げれば、まだ事象は確定しない。
なので聞かなかったことにしてしまえば良いと、ダイゴは考えたのだが──。
「……よく、わからないんですけど」
「……ん?」
「シバリくんが他の女の子と一緒に居るのは、なんというか、その………………嫌、です」
「………………スゥ───────────ッ」
ハルカとの電話を終えたのち、ダイゴは通販で胃痛薬を10ダースほどポチった。
─────────────────────────
「あーっ! 緊張したーっ!!」
控え室に戻った俺は、誰も見ていないのを良いことに羽根を伸ばしていた。
「でも怒られるとは思わなかったなぁ……。許可取ったのに……」
曰く『デカすぎる』とのことだった。まあ想像以上にデカくなるからねアレ。
俺の説明不足も原因だろうし、文句は言えないけど。
でも審査自体は普通にやってくれるらしい。もし失格になってたらお笑い草だったし、そこは良かったかな。
なんて考えていると、部屋の扉がノックされた。
「シバリくん。入っても大丈夫かな?」
「あ、どうぞ」
入ってきたのはルチアさんだった。……なんだか少し、顔が赤いような……?
「……なんかありました?」
「ちょっと……ね。……って、あーーっ!! また敬語に戻ってる!!」
「あ゙っ……」
やっべ忘れてた。あのあとすぐにコンテストが始まったから、頭から抜けちゃってたな……。
「……ごめん、コンテストに緊張して忘れてた」
「もー……今回だけだよ?」
どうやら許してくれるらしい。今後は気をつけないとな……。
「それにしても、シバリくんとシャンデラ、凄かったよ!! わたし見入っちゃったもん!!」
「そ、そうか……? 良かった……」
「うんうん! わたしね、今日のシバリくんを見て確信したの! シバリくんと一緒なら、このコンテストライブの世界をもっと先のステージに持っていけるって!!」
「……へ? いや、あの、俺は──」
言葉を挟む暇も無く、ルチアは俺の方に手を伸ばしてくる。
「だから、これから一緒にホウエン地方を盛り上げていこうね!!」
伸ばされた手は、言うまでもなく握手を求めているのだろう。
その手を握って自分の言葉に頷いてくれると、ルチアは思っているのかもしれない。
でも俺はその手を握れない。だってまだ、旅は続いているのだから。
「……その、ごめん」
「えっ……?」
「前にも言ったけどさ、俺って旅の途中なんだ。仮にやるとしても、今すぐっていうのは難しい」
「……コンテスト、面白くなかった?」
「いや、緊張はしたけど凄く楽しかった。機会があればまたやりたいとは思ってる」
「そ、それなら……!」
「でも……まだ色々見て回りたいんだ。この世界にはまだ、知らないことがたくさんあるからさ。……だから、ごめん」
「……そっか」
ルチアは差し出してきた手を下げた。
彼女の期待に応えられなかったのは申し訳ないと思ってる。でも、俺はまだ旅を続けたい。
コンテストはまたいつか、ホウエンに戻ってきたときに──。
「……ねえシバリくん、運命って信じる?」
「え?」
い、いきなりなんだ……? 運命……?
「わたしはね、あると思うんだ。シバリくんと初めて出会ったあの日、『あぁ、これが運命なんだ』って、そう思ったの」
「は、はぁ……」
言いながら、ルチアは俺との距離を詰めてくる。
「……ね、シバリくんの中では、どう?」
「どうって……?」
「シバリくんにとってのわたしは、数いる女の子の中の1人でしかないのかな?」
「そんな、ことは……」
「えへ。嬉しい」
「ちょっ……!?」
そう言って、ルチアは俺をギュッと抱きしめてきた。
「……今までこんなことなかったのに、誰かにここまで執着するなんて、なかったのに……」
「ル、チア……?」
「ねぇ、ずっと一緒に居てくれないかな……?」
「んなっ……!?」
ルチアからあのときのソニアさんのような面影を感じて、思わず後ろに引いてしまった俺は、そのまま体勢を崩して尻もちをついてしまった。
そんな俺を見てルチアは少し笑うと、彼女も姿勢を下げて、俺の首元に腕を回して再び抱き締めてくる。
「あ、あのっ……!?」
「だーめ。逃がしてあげない」
「なんで、こんなこと……」
「……言わないと、わからない?」
「えっ、と……。ごめん、俺は、その、ルチアの気持ちには、応えられ──」
「いいの。それはわかってるから」
俺の言葉を遮るようにそう言うと、ルチアは俺と目を合わせてニコリと笑った。
「だから、今からわたししか見えなくなるようにしてあげるね?」
「……はい?」
「そしたらわたしたち、相思相愛でずっと一緒だよ?」
ギュッと、密着させるように抱き締める力を強めてくる。
「あは……実はね、この部屋に入ってきたとき、鍵閉めちゃったんだよね……」
「……ねぇ、シバリくん」
「これから二人だけのコンテストライブ、しちゃお?」
・シバリ
コンテストライブのお誘いだぞ。良かったね!
・ダイゴ
時すでにお寿司。
・ルチア
運命ならしゃーない。……しゃーないか?
・ハルカ
おや……?
番外編・閑話の置き場
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別作品に分ける(あらすじにURL記載)
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1話の手前に章分けして配置
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最新話の後ろに章分けして配置
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最新話として投稿(前書きで注意喚起)