幼馴染にフラれたので旅に出ることにした   作:イグアナ

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そろそろヒカリにもスポットをね……。


84話

「テコ入れをします」

「はい?」

 

 シロナさんと色々あった翌朝、ヒカリがよくわからないことを宣言した。

 

 ちなみにシロナさんはこの場に居ない。今日はまとめたい資料があるそうだ。

 

「えっと……何をするって?」

「テコ入れ」

「……何に対して?」

「私とシバリさんの関係に」

「……要る?」

「絶対要る!」

 

 ヒカリは力強くそう言うと、わなわなと震えながら言葉を続ける。

 

「だってシバリさんシンオウ地方に1週間しか滞在しなかったのに他の地方には大抵数ヶ月は滞在してるしなんか周りに女の人たくさん増えてる気がするしようやくまた来てくれたと思ったら過去に飛ばされてまたすぐお別れになっちゃったし兎にも角にも交流が全然出来てなくて──」

「わかった、わかったから。ステイ、ステイな?」

 

 これ以上続けさせると謎にダークサイドに堕ちそうな気がしたので止めた。

 

 しかし、なるほどな。確かにヒカリとはシンオウ地方を出て以来会えていなかったし、一緒に居た期間もそんなに長くはなかった。

 

 一応連絡こそ取り合ってはいたけど、一緒に遊んだりは出来ていなかったし、今回は良い機会なのかもしれない。

 

「……よし、わかった。ヒカリのテコ入れに付き合うよ」

「流石シバリさん! そうこなくっちゃ!」

 

 そう言ってヒカリは喜ぶと、モンスターボールを取り出した。

 

「それじゃあまずは久々のポケモンバトルで親睦を深め──!」

「ごめんそれは無理」

「えっ」

 

 俺の言葉にヒカリは一瞬固まると、カタカタと震えだした。

 

「わ、私とポケモンバトル、したくない……? そ、その、私、シバリさんに、何かしちゃった……?」

「待って。違うから本当に待って」

 

 再びダークサイドに堕ちようとしていたヒカリをなだめながら、俺はモンスターボールを取り出した。

 

「ほら、これ見てくれよ」

「……これって、空っぽのモンスターボール?」

「ああ。アイツらの脱走の跡だ」

「…………脱走?」

「そう、脱走」

 

 まるで意味がわからないと言った表情をしているヒカリに、俺は説明を続ける。

 

「過去に居るときに脱走禁止令を出してたんだけど、その間フラストレーションが溜まりまくったみたいでさ、気がついたらいつの間にか居なくなってて──」

「ごめんシバリさん。ちょっと意味がわからない」

「そんなこと言われても……」

 

 事実なんだもんコレ。起きたことを正直に言ってるだけなんだが。

 

「……と、とりあえず、今はシバリさんの手持ちが全員脱走してるから、バトルは出来ないってこと?」

「そうだな。……いや、正確には一匹だけ残っては居るんだが……」

「っ! それって──!」

「ゴローニャ」

「バトルはやめよっか」

 

 『ゴロォ!?』という声がボールの中から聞こえた気がした。

 

「ゴロォ!?」

 

 かと思ったらボールから顔だけ出して不満を表明してきた。なんだお前。

 

「ポケモンってそんなこと出来るんだ……」

 

 ヒカリが呆れ半分、感心半分といった様子でそんなことを言うが、出来ちゃダメだと思う。

 

「というか、何でゴローニャだけ残ってるの?」

「それなんだが──」

 

 顔を出したゴローニャを無理矢理ボールに戻しながら、俺は話を続ける。

 

「ボールの中で"だいばくはつ"出来るようになったから、それで満足なんじゃないかなと」

「……何て?」

「だから、ボールの中で"だいばくはつ"出来るようになったから──」

「私にもわかるように言ってほしいな!?」

「わかるように言ったつもりだが!?」

 

 だってこれ以外の言い方が無いんだよ。ゴローニャもボールから腕を出してサムズアップしてるから合ってるっぽいし。

 

 てかボールに戻れお前。今無理矢理戻したばっかだろ。

 

「まあどうせコソ練するときはまた脱走するんだろうけど、今はそういうわけでもないらしい」

「……シバリさんのポケモンってどうなってるの……?」

「俺が聞きたいくらいなんだよな……」

 

 俺の言葉にヒカリは考え込むように俯くと、何か思いついたのか、ポンと手を叩いた。

 

「そうだ! なら見に行こうよ!」

「え?」

「シバリさんのポケモン達が、脱走中にどんなことをしてるのか見に行くの!」

「なる、ほど……?」

 

 確かに脱走中のあいつらがどんなことにしているのかは知らない。ゴローニャは何となく想像出来るけど、他の奴らはまるで想像出来ないな。

 

 盗み見するようで少しアレだが、もしかしたらあいつらへの理解度が上がるかもしれない。

 

 そう考えると少し……いや、かなりアリだな。

 

「……そうだな。気になるし、ちょっと見に行ってみるか」

「うん!」

 

─────────────────────────

 

 

 とある地方の某製薬会社。その客室に二人の元チャンピオンが座っていた。

 

 その元チャンピオンの対面には製薬会社の営業マンが座っており、二人に向けて何やら熱く語っていた。

 

「──というわけで、お二人には是非とも弊社"ハピナス製薬"と手を組み、胃痛薬の公式宣伝大使になっていただきたく……」

「……ちなみにだが」

「はい、なんでしょう?」

「オレ達を使ってどんな風に宣伝するつもりなんだ? まずはそれを聞きたい」

「……なるほど。確かに広告の方向性についてお伝えしてからお願いするのが筋ですね。これは失礼いたしました」

 

 この場に呼ばれた元チャンピオンの一人であるダンデの言葉に営業マンは頷くと、1枚の紙を取り出した。

 

「このような形で宣伝を出そうと考えております」 

 

 その紙には中央に2人分くらいのスペースが空いており、周りにはたくさんの宣伝文句が書かれていた。

 

『この胃痛薬のおかげで変われました!』

『これが無いと生きていけません!』

『なんなら薬と添い寝してます』

『他とは比べ物にならないほど効きます!』

『もう二度と、手放せません……!』

 

「「辞退します」」

「そんな!?」

 

 驚く様子の営業マンを前に、ダンデは立ち上がって抗議を始める。

 

「オレは元とはいえチャンピオンだ! まだまだ人様の前に出る仕事を請け負うことだって多い! そんな人間がこんな発言をしていると認めるような広告を出せば、要らぬ心配をかけるじゃないか!」

 

 ダンデの言葉に、この場に呼ばれたもう一人の元チャンピオンであるダイゴは頷きながら立ち上がった。

 

「ボクも、彼ほどではないけどまだまだ隠居は出来ない身でね。世間にそんな姿を見せるわけにはいかないんだ」

「でもお二人とも爆買いしているのは事実じゃないですか」

「それは……」

「そうなんだけども……」

 

 急に勢いを無くした二人はスッと座り直した。なんだこの二人。

 

「……せめてこの、まるでオレ達二人が実際に使っているような雰囲気を出すのはやめないか?」

「そうだね。それに、薬の宣伝大使と言うのならもっと適した人が居るんじゃないかい? ボクらはそういうタイプじゃないと思うんだけど……」

「……それでは意味がないのです」

 

 首を傾げる二人に、営業マンは語りかける。

 

「見たことはありませんか? 有名人が商品と共に写ってはいるものの、『あっ、これ言わされてるだけで実際のトコは使ってないんだろうなー』というようなポスターを」

「「……」」

「……その表情を見るに、ご理解いただけたようですね」

 

 つまりだ。この営業マンは、宣伝に適していそうな他の誰かよりも、実際の利用者であるダンデとダイゴに宣伝大使を任せることに意味があると、そう言っているのだ。

 

「だ、だが……」

「ボクらにも、色々と事情が……」

「ええ、そこも理解しております。宣伝大使としてのギャランティからしても、お二人にとってはそこまで魅力に感じないでしょうし、私の提案を引き受けるメリットは薄いと、そうお考えでしょう」

 

 『ですが』と営業マンは続け、あるものを取り出した。

 

「……こちら、既存のものと比べて効力10倍、更に24時間効果が切れないスーパーウルトラ胃痛薬です」

「何!?」

「しかも耐性が付きづらく、一度の服用数が増えづらくなっております」

「そ、そんなものが……」

「こちらは最近開発に成功し、価格もかなり安めに設定することが出来ました。あとは機を見て販売するだけ……だったのですが」

 

 営業マンは顔を俯かせ、残念そうな声音で話を続ける。

 

「上からの命令で、発売中止となってしまいました」

「そんな!?」

「……まさか」

「ダイゴ様はお気づきになったようですね。そう、顧客満足度と売上は必ずしも比例するわけではない、ということです」

「……どういうことなんだ?」

 

 わかっていない様子のダンデに、ダイゴが代わりに説明を始めた。

 

「簡単なことだよ。この上位互換の胃痛薬があれば、ボクらは胃痛薬にかかるコストを減らすことが出来る」

「? 良いことじゃないか」

「でも、逆に考えればハピナス製薬の売上が減るってことになる。かつて似たような原因で廃業したメーカーもあるし、こればっかりはハピナス製薬の人達を責められるようなことじゃない」

「……なるほど、むしろ売上が下がってしまう可能性があるわけか」

 

 残念そうにするダンデを見て、営業マンはニヤリと笑みを浮かべた。

 

「……しかしですね。もし宣伝大使をお引き受けいただけるのであれば、このスーパーウルトラ胃痛薬を、お二人だけの()()()()()()()として、特別に購入出来るよう融通させていただきます」

「「ッ!?」」

 

 とんでもない食いつきだった。この二人、目がガチである。

 

「これさえあれば、大事な場面で急に効力が切れてしまうようなことや、いつ胃が痛くなるのかと怯える日々とはオサラバです」

 

「毎朝1錠。これだけでお二人の平穏は約束されます」

 

「さあ、いかがなされますかお二人とも。チャンスは今日この場限り、二度とはありません」

 

「……お引き受け、いただけますか?」

 

 選択を迫られ、二人のとった決断は──。




ヒカリにスポットを当てたつもりだったんですけどね(言い訳)
じ、次回こそはね?

え、幼シロナの日記?
内容は決まってますが、今のところ出す予定は無くってェ……。

ちなみにシロナさんと同い年くらいの時代に飛ばされた場合のIF番外編も裏で書いてたりしてますが、完成の目処はまだ立ってないので、表に出るかは未定です(震え声)

まだ出てない地方で好きなところ(参考にするかも)

  • カントー地方
  • ジョウト地方
  • カロス地方
  • アローラ地方
  • パルデア地方
  • ヒスイ地方
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