あれから数週間ほどシンオウ地方に滞在した。
手持ちのフラストレーションも解消出来たみたいなので、そろそろ次の地方に行こうというところなのだが……。
「早くない……? シンオウ地方出ていくの、早くない……?」
「そ、そんなことないと思うけど……」
カタカタと震えながらそんなことを言ってくるヒカリからは、どこかユウリに似た面影を感じられた。
「今他の女の子のこと想像した?」
「いいえ」
表情を変えないまま圧を強めて来るのはやめてほしい。どこでそんな技を覚えたんだ。
「まあまあヒカリちゃん。シバリくんにはまた来てもらえば良いじゃない」
「でもぉ……」
「大丈夫、シバリくんはちゃんと約束を守ってくれるわよ」
ふと、仲裁してくれたシロナさんに目が移る。
過去から帰ってきたあの日以降、シロナさんがあんな風になることはなかった。
なんなら次の日からは何事もなかったかのようにいつものシロナさんに戻っていて、むしろこっちが動揺してしまったほどだった。
やっぱりアレは夢だったのかもしれない。そうだよな、シロナさんが俺に対してあんな風に甘えてくるわけないんだから。
「だって
「ヴェ!? ……あっ、はい。そ、そうですね……」
「?」
俺の反応を見て、イタズラが成功した子供のように笑みを浮かべるシロナさんの様子に、俺がただ現実逃避をしていたという事実を押し付けられた気がする。
「……そういえば、行き先は決まっているのかしら?」
「次はカントーに行こうかと思ってます」
「シバリさんシバリさん! わざわざカントーに行かなくても通販でニビあられはたくさん買えるよ!!」
「何でニビあられ目当てだと思われてんの?」
いや、美味しいけどさアレ。
でもホウエンでマツブサさんとアオギリさんにめちゃくちゃ食わされたから、しばらくはいいかな……。*1
「じゃ、じゃあ! 他には何を!?」
「他に? ……あー、そういえば前に話した幼馴染がカントー付近に居るらしくてさ。久しぶりに会いに行くのも良いかもな*2」
俺の発言に、ヒカリはピシッと固まった。
「……どうした?」
「──な」
「……な?」
「なんで去り際にそういうこと言うのーーーーーー!!!!!!」
「うぉっ」
びっくりした。まじで。耳キーンってした。
「せめて安心して見送らせてよぉ!! なんでそんな、そんなっ……!」
「そんなダメなこと言ったか俺!?」
「大問題だよぉ!!」
わなわなと震えるヒカリをなだめながら、シロナさんに助けを求める視線を向けてみると、シロナさんは心なしか不満気な表情で俺のことを見つめていた。
が、俺と目が合った瞬間はっとしたような表情になり、すぐにヒカリのところに駆け寄った。
「ヒカリちゃん落ち着いて。シバリくんなんだし、いつものことじゃない」
「……それは、そうですけど……」
「それで納得するんだ」
間違いなく良い意味での発言ではない気がする。
でもヒカリは落ち着きを取り戻したし、流石シロナさんだと言わざるを得ない。
─────────────────────────
「行っちゃいましたね」
「……ええ」
シバリを見送った後、少し寂しそうにしているヒカリの横で、シロナは頭を抱えていた。
(失態だわ……シバリくんにあの表情を見られちゃうなんて……)
シバリの発言に思うことがあったとはいえ、不満をわかりやすく表に出してしまうのは、シロナからすればやってはならないことだった。
(もっと自分を律さないと……。あのときも一瞬素が出そうになったし……)
彼女が思い出すのは、シバリが助手になると宣言してくれたあの夜のことだった。
本当ならすぐにでも頷いて、そのまま助手になってほしかった。
だが、ある信念を理由に彼女はその申し出を断った。
その信念はかつて日記にも綴られており、今でも彼女の行動指針として強く心に刻まれている。
……もっとも、彼女はそれを表に出すつもりはない。このことは墓場まで持っていくつもりなのだから。
それこそ、
「……よし、切り替え終わり」
「へ?」
「なんでもないわ。ところでヒカリちゃん、スポンサー契約したいって言ってる企業があるんだけど、どうかしら?」
「うへぇ……。もうお仕事の話ですかぁ……」
ヒカリはぐたりと項垂れ、そのままシロナの方に顔だけ向けて問いかけた。
「ちなみにどこですか?」
「ハピナス製薬ですって」
「……あー、その会社知ってます。確かカントーにある製薬会社ですよね」
「そうね。今急成長中の企業ではあるんだけど……」
「……何か気になることでもあるんですか?」
ヒカリが持った疑問の通り、シロナにはハピナス製薬に対して気になる点があった。
それは彼女がチャンピオンの座に君臨していた頃。その権力をちょっと使って
「……眉唾ではあるんだけど、起業にロケット団が関わっていたって噂を聞いたことがあるのよね」
「ロケット団!?」
かつてカントーを中心に活動していた悪の組織。今となっては解散しているようだが、やはりネームバリューとしては他の髄を許さないほど、その組織の名前は広く知れ渡っていた。
「あくまで噂よ? でも、普通に調べても出てこない情報だから、ただの陰謀論とも思えなくて……」
「うーん、シロナさんが言うと本当にそうなのかもって思えてくるから怖いですね……」
「……人前での発言にはより一層気をつけることにするわ」
兎にも角にも、2人がハピナス製薬の話を受けることはなかったのだった。
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「……で、どうだった?」
「シンオウの新旧チャンピオンに話を持ちかけてみましたが、断られてしまいました」
「世知辛いなぁ……」
ハピナス製薬の社長室にて、またしても社長と営業マンことアインは進捗について話をしていた。
「もしかしてあの話、うっすら広まってるのかなぁ……?」
「……ああ、ウチの起業にロケット団が関与してるって話ですか?」
「それそれ。一般のお客さんにたくさん買ってもらえてる以上、そんな酷い広まり方をしているとは思わないんだけどね」
「仮にロケット団が関与してようが、自分が楽になれるなら買うというのが人間では?」
「君マジで外での発言には気をつけてね」
そう軽く注意して、社長は大きく溜め息をついた。
「でも、
「ええ、困ったことに」
彼らの属するハピナス製薬は、起業にロケット団が関わっている。それは事実だ。
しかし、それはハピナス製薬が悪い企業であるとイコールで繋がる話ではない。
「悪事に手を染める前にロケット団から企業ごと離反したから、クリーンではあるんだけどねぇ……」
「ふふ。あの方への直談判、今でも思い出しますよ」
直談判とは、とある理由でロケット団を離反することを決意し、それを組織のボスに伝えに行ったときのことである。
生きて帰れないかもしれない。そんな恐怖に震えながらも、二人はボスに直接交渉する道を選んだのだ。そして──
『──ふふ、面白い』
『興が乗った。離反を許可する』
命がけの交渉は、何の被害も生み出さずに成立した。
売上金の上納や、研究成果の横流しなど、そう言った条件は一切なしで、ハピナス製薬は本当の意味でロケット団との繋がりを断つことに成功したのだった。
「あの時ほど肝が冷えたことはないよ。……折角離反出来たんだ。あの噂を拭えるくらい、クリーンな企業を目指して頑張らなくてはならないね」
「……そう、ですね」
言いながら、アインは自分の前に置かれていた紅茶が入っているカップを手に取ると、それを一口も飲むことはなく、そのまま流しに捨てたのだった。
・シバリ
新天地行くぜ!
ラズとは会えたらいいなーくらいの気持ち
・ヒカリ
あっあっあっ。旅立つの早いよぉ……。
・シロナ
日記を読めばわかるらしい(2回目)
・カントー地方
大筋は決まってるけど、細かいところは全然決まってないので、自転車操業になる予感しかしてない
まだ出てない地方で好きなところ(参考にするかも:パート2)
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ジョウト地方
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カロス地方
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アローラ地方
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パルデア地方