幼馴染にフラれたので旅に出ることにした   作:イグアナ

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許されるか不安になりつつ投稿。
このキャラこんな風に描写して良いんだろうかと少し不安。


カントー編
87話


「よし、到着!」

 

 俺は今、カントー地方の大都会と言われるヤマブキシティに足を踏み入れていた。

 

 シルフカンパニーとかいうでっかい企業もあるらしいし、色々と見て回りたいところだが……。

 

「とはいえ、もう夕方だしなぁ……」

 

 すっかり日も暮れていて、これから見回ろうとするのはあまり得策ではなさそうだ。

 

 あそこのベンチで少し休んでから今日の宿でも探そうかな。

 

 まあ、宿とは言ってもポケモンセンターを頼ることになるんだろうけどね。ありがとうポケセン。フォーエバーポケセン。

 

「ふぅ、疲れた……」

 

 ベンチに座ると力が抜け、深く座り込んでしまった。

 

 飛行機や船、それに電車。便利な移動方法がたくさんあるけど、長旅ってなるとただ乗ってるだけでも疲れが溜まっちゃうんだよな。

 

 今日は早目に寝て、身体を休めておこうかな。

 

「すまないが、隣に座っても良いだろうか」

「へ?」

 

 顔を上げると、黒いスーツ姿の強面のおじさんが俺の前に立っていた。

 

「……ど、どうぞ……」

「感謝する。これは感謝料だ、少年」

 

 そう言うと、おじさんはペットボトルのお茶を俺に手渡し、そのまま隣に座ってきた。

 

「あ、ありがとうございます……」

「なぜ君が礼を言う? わたしは少年が休んでいるところを邪魔したようなものだろうに」

「……でも、近くに他のベンチないですし。こういうのは皆で使うものですから。邪魔なんてことはないですよ」

「ほう、その若さでそんなことが言えるとは素晴らしい。君に道を示した者は、さぞや立派な人物なのだろうな」

 

 そりゃシロナさんだからな。立派なんて言葉じゃ足らないくらい凄い人だぞ。

 

 なんて、内心鼻高々になっていると、おじさんは少し影のある表情になって口を開いた。

 

「……少年。少しばかり、わたしの話を聞いてはくれないだろうか」

「へ? 話を聞くくらいなら大丈夫ですけど……」

「感謝する。これから話すのは、ただ一人の、情けない大人の話だ」

 

 自虐するようにそう言って、おじさんは話し始める。

 

「大っぴらに言えるようなことではないが、わたしはかつて悪の組織の頭領として活動していた」

「悪の組織……?」

「"ロケット団"……。自意識過剰かもしれんが、名前くらいは聞いたことがあるだろう?」

「は、はい。有名ですからね。……ん?」

 

 ……あれ? この人今なんて言った?

 

 ロケット団の頭領って言った? ……ボスってこと?

 

 信じられないというような表情を向けると、おじさんはまるで予想通りと言った感じの様子を見せた。

 

「……ふ、信じられぬのも無理はない。話半分くらいのつもりで聞いてくれたまえ」

「は、はぁ……」

「とにかくわたしは、悪の頭領として数多くの悪事に手を染めてきた。なんせわたしの掲げたキャッチコピーは、"世界中のポケモンを悪巧みに使いまくって金儲けするロケット団"だったものでな」

「あまりにもド直球すぎません?」

 

 ガチの悪い人じゃん。……えっ、これ俺大丈夫?

 

 『聞かれてしまったからには逃がすわけにはいかないな』とか言われて、内密に存在消されるやつだったりしない?

 

「気持ちはわかるが、あまり不安そうな顔をする必要はない。悪の道はとうに辞している」

「えっ?」

「幾度となく君のような若者に野望を潰され、わたしの悲願が叶うことはなかった。……今思えば、悪巧みなどするものではないな」

 

 どこか昔を思い出すかのような表情でそう言って、おじさんは話を続ける。

 

「前回の失敗を機に、ロケット団の解散を通達した。『わたしが戻ることは二度とない』という言葉と共にな」

 

「しかし、部下の中にはわたしが戻ることを信じ、未だにロケット団として活動を続けている者が居る」

 

「今日、そのうちの一人と会ってきた。だが、いくら話し合っても彼はわたしの帰りを待つとの一点張り」

 

「情けない話だ。昔はどんな命令でも断らなかった部下達に、今のわたしは頼みごとひとつ聞いてもらうことすら出来んのだ」

 

「わたしのことなど忘れろと、あれほど言ったというのに」

 

 そこまで言って、おじさんはこちらに顔を向けた。

 

「……急にこんなことを話してすまない。とにかく今は、誰にでも良いから吐き出したい気分だったのだ」

「いえ……」

 

 なんというか、思った以上に軽い気分で聞くような話じゃなかった。

 

 きっとこの人は苦しんでいるんだろう。もしかしたらこうやって苦しむことこそが、今まで犯した悪事の贖罪になるのかもしれない。

 

 でも──。

 

「……あの、ひとつだけ良いですか?」

「勿論。突然こんな話を聞いてもらったのだ。文句のひとつやふたつ、受け止めよう」

「文句……というわけではないんですが……」

 

 言葉選びを間違えないように、落ち着いて伝えたいことを口に出す。

 

「"忘れてほしい"というのは、違うと思います」

「……どういうことだ?」

「貴方が解散を命じてもなお活動を続ける人達は、きっと貴方のことを忘れることなんて出来ません。だって、記憶に強く残る貴方の背中を、ずっと追いかけ続けてるんですから」

 

 『だから』と、俺は続ける。

 

「やるべきなのは、忘れてもらうことではなく、今の自分を知ってもらうことではないでしょうか」

「……今の、わたしを?」

「はい。理解してもらえるまで、何度も、根気強く。それが一番確実な道なんじゃないかと、俺は思います」

「……そう、か」

 

 おじさんはそう呟くと、顔を押さえて俯いてしまった。

 

 ……もしかして言葉選びミスったか……? なんなら、めちゃくちゃ失礼なことを言ってしまったのでは……。

 

「え、えっと……す、すみません。別にその、説教とかそういうことがしたかったわけでは──」

「──は」

「……へ?」

 

「──ははははは!」

 

 黙り込んだと思ったら急に笑い出した。

 

 えっと、怒ってはいない……のかな?

 

「やはり、君は素晴らしい若者だ。わたしが悪の頭領を続けていたなら、是が非でも手元に置いていただろうと思うほどには」

「……それ、褒めてます?」

「最大級の賛美だと捉えてもらって構わん」

 

 心なしか出会った時よりもすっきりした表情になったおじさんは、ベンチから立ち上がった。

 

「今日、ここで君と出会えたことに感謝する。……そう遠くないうちに、また会おう」

 

 そう告げて歩き出したおじさんの背中を何も言えずに見送っていると、思い出したかのようにこちらへ振り返ってきた。

 

「おっと、忘れるところだった。少年、名はなんという?」

「えっ? シ、シバリです」

「良い名だ。わたしの名はサカキ。覚えなくとも構わん」

 

 それだけ言って、おじさんはどこかへと去っていった。

 

 そう遠くないうちにまた会うことになる。俺もまた、そんな風に感じていた。




・シバリ
カントーについて一息ついてたら、急に知らんおっさんからトンデモカミングアウトされてびっくり

・サカキ
歴代悪の組織で一番有名な組織のボス
悪人としてではなく、改心した人物として描写するのは解釈違いの人も多そうだと思っているので、今のうちに謝罪させていただきます(土下座)

まだ出てない地方で好きなところ(参考にするかも:パート2)

  • ジョウト地方
  • カロス地方
  • アローラ地方
  • パルデア地方
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