「ふふ、結局何もわからずじまいだったわ……」
そろそろ日も落ちて来たので解散を申し出たところ、ナツメさんが遠い目をしながらそんなことを呟いた。
「そ、そんなに見えないものなんですか?」
「ていうかセルフメガシンカって何よ。手持ち全員が脱走してることすら見えなかったのに、帰ってきたポケモンが自前の力でメガシンカしてるなんて意味がわからないわよ……」
「……あれ?」
うーん、こっちの声が聞こえてないっぽい。多分自分の世界に入っちゃってるかもなこれ。
「あの、ナツメさーん?」
「キルネアによると暗示も効かないようだし、超能力全般に対して先天的な耐性を持っているのかしら。それとも何かの拍子でタガが外れて、後天的に今の体質に切り替わったとか……?」
「もしもーし?」
目の前で手をブンブン振ってみるが、それでも気づいてもらえなかった。
……うーん、仕方ないか。
「ナツメさん」
「ひゃう!?」
耳元で名前を呼んでみると、ナツメさんはビクッと驚いてその場から飛び退いた。
「なっ、なななななっ、何!?」
「す、すみません。その、さっきから呼びかけても全然気づいてもらえなかったので……」
「あ、あ〜…………。それは、その……ごめんなさい」
『不覚だわ……』なんて呟いて、ナツメさんは俯いた。
「ほんと、今日はダメダメね。折角無理言って同行させてもらったのに、何一つ成果を得られていないわけだし……」
「結果的に貴方の旅をただ邪魔するだけになってしまったわ。本来なら周囲からの視線なんて気にせず、観光を楽しめたはずなのに……」
「……? いや、楽しかったですよ?」
「へ?」
何を言ってるんだろうか。邪魔とかそんなことあるわけないのに。
「で、でも、たくさん視線を向けられたし、窮屈だったんじゃ……」
「視線慣れてるんですよね。何故か知り合いに有名人が多くて……」
イッシュのときとか凄かったからな。トウコとメイがゴリゴリに視線集めてたから、あそこで鍛えられた節はある。
「……それとも、ナツメさんは楽しくなかったですか?」
「そっ、そんなことないわ! 想定外のことばかりで、何かもかも、新鮮で──!」
「……そうですか」
良かった。ナツメさんも楽しんでくれたのなら、これからする提案がしやすいな。
「なら、またこうやって一緒に観光してくれませんか?」
「……え?」
「いやぁ、実は観光者目線で行きたいところは大体回れたんですけど、やっぱり現地の人しか知らないスポットとかあるじゃないですか」
「それは……そうだけど……」
少し悩んだような表情をして、ナツメさんはゆっくりと口を開く。
「……その、いいの?」
「何がですか?」
「えっと、私なんかで……」
「ナツメさんがいいんです」
「─────ッ!」
「それに、俺のことを予知してくれるんでしょう? たった一日で諦めて良いんですか?」
「……ふふ。そう……そんなこと、言っちゃうのね」
ナツメさんはどこか不敵な笑みを浮かべて、目を細めた。
「二人のエスパーに
「へ?」
「くすっ……なんでもないわ」
意味深な発言を残して、ナツメさんは去っていった。
……あ、しまった。連絡先交換してないじゃん。キルネアさんならナツメさんの連絡先知ってるかな?
なんて思いながら携帯を取り出すと、勝手にナツメさんの連絡先が登録されていた。
……なんだろ。超能力者って勝手に他人の携帯に連絡先登録するのがブームだったりするのかな。*1
ま、いっか。とりあえず今日は俺もポケモンセンターに──。
「すみません! ちょっと良いですか!?」
「はい?」
またもや知らん人に話しかけられた。あの、こういうのカントーに来てまだ2日目なのに3回目なんですけど。
話しかけてきたのは、俺より少し年上の男性だった。なんだろ、年上のお兄さんって感じだ。少なくとも成人はしているだろう。
「突然申し訳ありません。私はここヤマブキシティにあるハピナス製薬で働く者です」
「ハピナス、製薬……?」
「はい。アインと申します」
製薬ってことはお薬屋さんってことか? なんでそんな人物が俺に……?
「失礼ですが、お名前は……?」
「シ、シバリです」
「そうか、貴方が……。面白い人物が居ると聞いて暇潰しのつもりでやってきましたが、想像以上でした! まさか、私が営業したときは眉ひとつ動かさなかったナツメさんに、あのような表情をさせる人がいたとは!」
「は、はぁ……」
「貴方とお話すれば何かのインスピレーションが湧くかもしれません! どうか私に少しばかりお付き合いいただけないでしょうか!?」
「え、えっと……」
朝ならまだしも、もう夜になるしなぁ……。お腹も空いたし、この人には悪いけど別日にズラしてもら──。
「ちなみにお付き合いいただけるならヤマブキシティで人気のとんでもなく美味しい定食屋をご馳走しましょう」
「是非お付き合いさせてください」
別にご飯に釣られたわけじゃない。旅費は出来るだけ節約しないといけないからね。
とんでもなく美味しい定食屋とかいうワードに惹かれたわけでもない。ないったらない。
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「……スポンサーの契約が取れない?」
「はい。誠意を込めて営業しているのですが、結果が出ず……」
定食屋にて、俺はご飯を食べながらアインさんの話を聞いていた。
美味すぎてたまに話が飛びそうになる。ゆっくり出来る時にまた1人で来ようかな。
「スポンサーになってくださった暁には、特別にこちらのスーパーウルトラ胃痛薬を融通するという破格の特典も付けているのですが……」
「うわぁ」
デザインが明らかに胡散臭い。俺でも断ってしまいそうなレベルだった。
てか胃痛薬必要ない人からすれば全部魅力的じゃなくないかコレ。
「でも、何か思い当たる節とかないんですか? そこまでスポンサーを断られ続けるとなると、何か原因があるような──」
「──ここだけの話、ですがね……」
「……えっ、ほんとですか?」
小声で話してくれたのは、ハピナス製薬の起業にロケット団が関わっているという事実だった。
悪事に手を染める前に離反したものの、やはりある程度の著名人にはそういった話は伝わっているようで──。
「それで警戒されて、スポンサーになってもらえないと」
「はい。そういうことです」
そう言って、彼は大きく溜め息をついた。
「幸い一般の方々にはあまり知られていないので、今のところ売上には問題ないのですが、やはり今以上に売上を出したいとなると、広告は必須でして……」
「……難しい話ですね」
「そもそもスーパーウルトラ胃痛薬がこんなあほくさパッケージじゃなければ話を受けてもらえた可能性はあったんですよ」
「なんてこと言うんですか」
俺もそれは思ったけども。でも、そんなことを言うわりにはアインさんの表情は──。
「……なんというか、酷評するわりには満更でもなさそうな表情してますね」
「……そうですか? ふふ、このデザインを通した人のことを考えていたからかな」
「デザインを、通した人……?」
「はい、最終的に社長がOKを出したんです。『胡散臭いけど、一周回ってオリジナリティがあるかもね!』と」
『どんな理論だよ』と、アインさんは楽しげに呟いた。
「……きっと、良い社長さんなんでしょうね」
「勿論です、私の恩人ですから」
「恩人……?」
「はい、身寄りのない私を拾ってくれたんです。社長が居なければ、今の私はありませんから」
そっか。その社長さんに喜んでもらいたいその一心で、この人は頑張れるのか。
なんというか、それって──。
「フェイさんみたいだな*2」
「──はい?」
しまった。思わず口に出てしまった。
ローズ委員長を慕って活動していたフェイさんと、目の前のアインさんがどこか重なって、ついそんな風につぶやいてしまった。
「す、すみません。俺の知り合いとアインさんの境遇が少し似てて、つい──」
「フェイって……あのフェイかい?
「……へ?」
────────────────────────
「はっはっはっはっ! そっかそっかそうなのか! 君もフェイと知り合いだったのか!」
「……こんなこと、あるんですね……」
なんとアインさんもフェイさんと知り合いだったらしい。
ガラルに訪れたときに偶然出会い、お互いの境遇から意気投合して、すぐに仲良くなったらしい。
「驚いたよ。二人で世話になった人に恩返ししていこうって、フェイとはお互いに励まし合っていたんだ」
「……でもローズ委員長が逮捕されてから、彼は荒れてしまった。明らかに暴走していたことは目に見えていたけど、私からの言葉は一切聞いてくれなくて、段々疎遠になっていったんだ」
「……そうなんですね」
確かに、ユウリを誘拐したときのフェイさんはとても荒れた様子だった。
少なくとも、落ち着いて話を出来る状態ではなかった。
「だからせめて、私の正体は明かさずに匿名の団体として彼に研究資金を援助していたんだ。極端な話、資金獲得のために銀行強盗とかしてもおかしくないくらいには荒れていたからね」
「匿名の団体として……?」
「ああ、資金は社長にお願いした。表向きは、"ガラル粒子の研究が将来ウチの事業に役立つかもしれない"って理由でね。だからフェイには、資金援助の代わりに研究の成果をこちらに提供するよう要求したんだ」
そうして、特に名声などに興味がなかったフェイさんはこの要求を快諾。資金援助を受けるかわりに、ハピナス製薬に研究成果を渡すという関係になったとのことだった。
「社長も私の意図はわかっていたと思う。……でも、私がやったのはただの結果の先送りだ。資金獲得のために悪事に手を染めなくなっただけで、いずれフェイは別の形で悪を成してしまうと、そう思っていた」
「でも、君が彼を終わらせてくれたんだな。感謝する。彼の友人として、心から礼を言わせてほしい」
「そ、そんな……」
深々と頭を下げてくるアインさんに慌てふためいていると、彼はゆっくりと顔を上げた。
「ただ──」
「──風の噂で彼がオモチャに脳を焼かれた気狂いになったという話も聞いていてね。もし事情を知っていれば詳しく聞いても良いだろうか」
「知りません」
知らないったら知らない。俺にだってわからないんだからアレ。
やめてください! そんな人を疑うような視線を向けてくるのはやめてください!
・シバリ
知らぬうちにエスパーの脳を焼いた人
えっ、玩具に脳を焼かれた狂人? 知らない人ですね……。
・ナツメ
ま、まだ大丈夫。大丈夫なはず……。
・アイン
社長に拾われた恩を返そうと頑張ってる人。
フェイとは友人関係だったそうな。
ところで玩具に脳を焼かれた狂人って何?
・フェイ
玩具に脳を焼かれた狂人。
かつてユウリを誘拐した人。
ローズ委員長の理想の世界のために1人暴走したが、ゴローニャに6タテされて終了。
シバリからもらったなりきりダイマックスバンド(ダンデver:収録ボイス4種)を肌身離さず装着している。
まだ出てない地方で好きなところ(参考にするかも:パート2)
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ジョウト地方
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カロス地方
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アローラ地方
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パルデア地方