「……まだ、いらっしゃいませんわね……」
シバリがタマムシジムを訪れる少し前、エリカはジムの中でお見合いの相手を待っていた。
(約束の時間はとうに過ぎているのに……。何故、お母様や皆さんはこのようなことを……)
母親には『貴女みたいな子はさっさと相手を決めないとズルズル行ってしまうタイプなのよ』と言われ、ジムトレーナー達には『エリカおねえさまは男っ気が無さすぎて心配です』と言われ、仕方なくお見合いの場に臨んではいるのだが、エリカは乗り気にはなれなかった。
まだそんなことを考えるような年ではない。というのがひとつ。
そして、もうひとつの大きな理由が──
『わたくし、くさタイプのポケモンが大のお気に入りでして』
『そうなんですね。
『……あの、そちらのお茶や茶菓子は遠慮せずお召し上がりいただいても……』
『ああ、すみません……。子供の頃に食べてとても苦かった記憶がありまして、その頃からこういった茶菓子などは苦手なんですよ。
『エリカさん! 今日はとても良いレストランを予約してあるんです! ささっ、
『……はい』
話を聞いてもらえずに自分の話ばかりされたり、
誰も彼も、エリカを理解してくれようとはしなかった。
だから彼女は、今日のお見合いを最後にしようと決めていた。
これきりにしてやろうと、そう思っていたのに──。
(ふふ、結局最後までこんな感じだなんて……)
もう知らないと言わんばかりに、エリカはジム内の草むらで横になった。
彼女からすれば、ちょっとしたストライキのつもりだった。
普段のお見合いのときは我慢していた眠気を受け入れ、彼女はゆっくりと目を閉じる。
(わたくしが寝ている姿を見て、お怒りになるのならそれで結構。それで早く終わるなら、むしろわたくしは──)
お見合いなんてもうこりごりだと思いながら、彼女は夢の世界に落ちる。そして──
「あ、あのー……?」
「……あら?」
いつの間にか寝てしまっていた。ちょっとした反抗のつもりだったが、本当に寝てしまうとは彼女自身も思っていなかった。
「いけない、寝てしまったわね……」
エリカは重い目を擦りながら、ゆっくりと上体を起こす。
目の前に居るのは、外見こそ事前に聞いていた情報と一致するものの、とてもお見合いに来たとは思えない服装をしている男の子だった。
「ごめんなさい。日差しが暖かくて、待っている間にウトウトしてしまいまして……」
「ご存知とは思いますが、わたくしはエリカ。このタマムシシティのジムリーダーです」
彼女の言葉に、男の子は特に気にする様子もなく口を開く。
「えっと、俺はシバリです」
「シバリ……さん?」
エリカからすると聞いた覚えのない名だった。
この時点で彼女は、目の前の人物が何かの手違いで入ってきてしまった人物なのではないかと、薄々察してはいながらも──。
「あの、実は俺──」
「折角いらしてくださったのですから、ひとまずお茶などいかがですか?」
「えっ」
折角用意したのだし、最後に目の前の男の子にお茶くらい付き合ってもらおうなどと、そんな酔狂なことを思ったのだった。
────────────────────────
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます……」
う、うーん……人違いだと伝えるタイミングを逃してしまった……。
よし、このお茶をいただいたらすぐに話そう。そうしよう。
そう思って、俺はエリカさんから渡されたお茶を口に運び──。
「──うまっ」
え、なにこれ美味しい。お茶ってこんなに美味しく淹れられるものなのか。
こんなに美味しいお茶なら、カンナギタウンでよく食べさせてもらっていた茶菓子が抜群に合いそうだ。
今だけ過去に戻りたい。あの頃に戻って、あの茶菓子を取ってこれれば完璧なバランスになるというのに……!
「ふふ、珍しいお方ですのね。よければこちらの茶菓子もご一緒にどうぞ」
「わっ、いいんですか? ありがとうござ──」
言いかけて、目の前に出された茶菓子を見て俺は驚愕した。
「……どうかいたしましたか?」
「そ、その茶菓子って、もしかして……カンナギの?」
「まぁ! ご存知でしたの!? わたくしもとても気に入っていて、定期的にお取り寄せしていますの!」
「と、取り寄せ……。なるほど、そんな手が……!」
いつの間に通販なんて始めたんだカンナギタウン。まさか俺が未来に帰った後カンナギタウンで革命でも起きたのか……?
「ささ、茶菓子は他にもまだまだありますの! 是非お召し上がりになって!」
やけにご機嫌そうな様子で、エリカさんは次々と色んな茶菓子を出してくる。
い、良いのか……? こんな天国みたいな状況が許されていいのか……?
美味しいお茶、美味しい茶菓子……。なんだコレ、とんでもない無限ループだ。
ぐっ、抜け出せない……。俺、この無限ループから抜け出せな──。
「……ん?」
離れたところにある葉の陰に、チラリと視線を向ける。
なんだろう。あそこから何かとても懐かしい気配がする。
「……あの、どうかなさいましたか?」
「いえ、ちょっとあの辺りが気になって……」
「あちらですか……?」
エリカさんがそちらを向くと、はっとした表情になって立ち上がった。
「ご、ごめんなさい! わたくしったら、クサイハナとラフレシアをボールから出しっぱなしに──!」
「クサイハナとラフレシアですって!?」
思わず立ち上がってしまった。その名前を聞いてしまったからには、こちらも無視するわけにはいかない。
「近づいても良いですか!?」
「ごめんなさい! すぐボールに仕舞います……わ?」
エリカさんが口を空けたまま止まってしまった。
「……今、何と?」
「触っても良いですか!?」
「要求がグレードアップしてますわ!?」
「聞こえてるじゃないですか」
俺がそう言うと、エリカさんは自信なさげに口を開いた。
「……その、気になりませんの?」
「何がです?」
「クサイハナとラフレシアといえば、強烈な悪臭を振りまくことで有名ですわ。……その、以前とても嫌がられてしまったことがありまして……」
なるほど。つまり『
「それなら大丈夫です。住んでたところの近くにある森にクサイハナが居たので、そいつと関わってたら鼻が慣れちゃったんですよ」
「……え?」
「もうラフレシアになってますけどね。今でも森で元気にやってると思います」
出会いたての頃はマジで鼻が曲がるかと思うくらい臭かった。
でも俺達を見て楽しそうだと思って近づいてきてくれたポケモンを、臭いという理由だけで無視したくなかった。
だからあの臭いに慣れるためにも、鼻が慣れるまでしばらく近くに居てもらうことにして──。
「……ふふっ」
「……エリカさん?」
「いえ……なんでもありませんの。ただ、シバリさんに寄り添ってもらえて、そのラフレシアも嬉しかったと思いますわ」
「……そうですかね?」
嬉しかった割には、俺達と一緒にいたことでアイツが身につけた戦術は鬼畜だったんですけどね。
おのれラフレシア。あの初見殺しマンめ……!
「そういうことでしたら問題ありませんわ。普段わたくし以外とはあまり関わらない子たちですから、よければたくさん遊んであげてくださいね」
「勿論です!」
ひゃっほう行くぞクサイハナとラフレシア! 久々にあの香りが嗅げると思うと楽しみだ!
・シバリ
クサイハナとラフレシアへの耐性あり
なんなら慣れすぎて『これ結構良い臭いでは……?』というところまで来てる
お鼻壊れちゃったァ……
・エリカ
こんな人いるんだぁ(脳焼き中)
・近くの森のラフレシア
久々の没ポケ。シバリの手持ち候補だった。
ラフレシアの図鑑説明には特に臭いへの言及はなかったはずですが、まあ多分臭いだろってことでここはひとつお許しを。
折角なのでどこかで出したいなーと思ってたので、ようやく日の目を浴びた形になる。
例のキマワリとは親友。
特異性の初見殺し性能はとんでもない……らしい。
備考:シバリの手持ちを無傷で6タテしたことがある
まだ出てない地方で好きなところ(参考にするかも:パート2)
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ジョウト地方
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カロス地方
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アローラ地方
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パルデア地方