あれから数分ほど店の外で待っているのだが、まだナツメさんは中から出てこない。
アインさんとの話が盛り上がってるのかな?
どんな話をしているのかと少し気になり始めたタイミングで、俺の携帯が震え出した。
お、電話か。……シロナさんから?
もしかしてまた新しい文献でも見つけたんだろうか。なんて思いながら、俺は通話ボタンに手を伸ばした。
「はい、シバリです」
『こんにちはシバリくん。元気?』
「そりゃもう。今日も観光中ですよ」
『ならよかったわ。ところで、少しお願いがあるんだけど聞いてもらえないかしら?』
「お願い……?」
なんと。それはちょっと予想外だな。
まさかシロナさんから何かをお願いされる日が来るとは思わなかった。
『実はカントーにシバリくんと会ってみたいって人が居て、私の方に仲介をお願いする連絡が来たのよ。それで、シバリくんが嫌じゃなければ──』
「お引き受けします」
『まだ誰が会いたがってるかも言っていないのだけれど!?』
「へ? シロナさんからの紹介なら大丈夫に決まってるじゃないですか」
『……その信頼は一体どこから来てるのよ……』
電話口の向こうでシロナさんは溜め息をつくと、少し呆れたような声音で話し始める。
『……と、とりあえず、話を受けてもらえるということで進めても良いのね?』
「はい、問題ないです」
『ありがとう、なら先方にも伝えておくわね。向こうはいつでも良いらしいから、シバリくんの空いてる日がわかったら私に連絡してくれるかしら?』
「わかりました。……ところで、相手の人って……?」
『ふふっ。名前を聞いたら驚くと思うわよ?』
「え?」
『
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「マジか……」
シロナさんとの電話が終わり、俺は首を傾げていた。
オーキド博士。俺ですら名前を知っているようなビッグネームだ。どうしてそんな凄い人が俺と会いたがってるんだろうか。
てか、そんな凄い人と繋がりのあるシロナさんって一体……?
……まあ、シロナさんなら別に繋がりがあってもおかしくないか。だってシロナさんだし。
なんて考えていると、店からナツメさんが出てきた。どうやらアインさんとの会話が終わったらしい。
なんだかとてもニコニコしている。……ニコニコしてる、けど……。
なんだろう、目が笑ってない気がするし、どこか圧を感じる。
「シバリくん、ちょっと良いかしら?」
「は、はい?」
「エリカとはどういう関係なの?」
「へ?」
何で今エリカさんの名前が……? いや、ジムリーダー同士だし、知り合いではあるんだろうけど……。
いや、今そんなこと気にしても仕方ないか。とりあえずナツメさんの質問に答えよう。
エリカさんとの関係か……。ひと言で表すなら──。
「お茶会友達、ですかね?」
「……お茶、会?」
拍子抜けした様子のナツメさんに対し、俺はコクリと頷いた。
「なんというか、お茶とか茶菓子の好みが合うんですよね。この前一緒に出かけたときも茶葉や茶菓子が売ってるところを見に行ったくらいですし」
「え、あ……えっと……そ、
「それだけ……と、言いますと?」
「ほ、ほら、お見合いとか、したわけでしょう? そのあと交流も続いているみたいだし、だったらもっと、こう……」
「……ああ、なるほど。そういうことですか」
さてはアインさん、俺がお見合いに巻き込まれたことを面白おかしくナツメさんに伝えたな?
それで、俺がナツメさんのジムリーダー仲間であるエリカさんに手を出したんじゃないかって、勘違いしたのかもしれない。
エリカさんのことを心配していたのであれば、さっき圧を感じたのも納得だ。それなら俺は、ナツメさんが思うようなことは一切していないと説明すれば良いというわけだ。
「安心してください! エリカさんとはただのお友達ですから! 手を出すつもりなんて毛頭ないですよ!」
「やめてあげて!?」
珍しくナツメさんが声を張り上げた。こんなナツメさん初めて見た……。
「……わ、わかったわ。何もないのはわかったから、その……」
「?」
「……今の言葉、エリカの前では絶対言わないであげてね……?」
「は、はぁ……」
『今のは流石に同情したわ……』と呟くナツメさんに対し、俺は言葉の意味がわからず首を傾げたのだった。
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「ここのケーキも美味しいですね!」
「……ええ、オススメなの」
ナツメはシバリにヤマブキシティをしばらく案内したあと、自分がオススメする喫茶店へと彼を連れて来たのだが、彼女はどこか疲れを感じさせる表情をしていた。
(今日も全然予知出来なかったわね……。相変わらず先が見えない人だわ……)
常に全力でエスパーとしてのパワーを発揮させていたはずなのに、ナツメはシバリの未来を見ることが叶わずにいた。
疲れ切っているというのに何の成果も得られておらず、少しくらい気が滅入ってもおかしくない状況ではあるものの、ナツメはまだ諦めていなかった。
折角シバリがチャンスをくれたからというのもあるが、シバリを見ているとどこか面白くて、退屈しないのだ。
見ていたいと思わせる何かがある。そんな風にナツメは感じていたのだが──。
(あ、また予知ね……)
ケーキを食べているシバリを見ていると、新たな予知が脳裏をよぎった。
それは、彼女が自分のケーキをシバリに『あ〜ん』して、彼の顔が真っ赤になるというものだった。
(こ、これは流石に実現するんじゃないかしら!? だって
遂に予知が成功するときが来たのかもしれないと、ナツメは口元が緩むのを何とか抑えつつも、自分のケーキを一口大に切り分け、シバリの方に顔を向けた。
「シ、シバリくん、こっちのも一口どうかしら?」
「え、いいんですか?」
「いいわよ。ほ、ほら、あ〜ん?」
若干声が震えており、顔も少し赤くなっているものの、ほとんど違和感なくナツメはシバリに向けて『あ〜ん』を差し出すことに成功した。
あとは照れるシバリの様子を見るのみ、だったのだが──。
「ありがとうございます。では──はむっ」
「……はへ?」
無反応。特に何でもないかのようにシバリはナツメからの『あ〜ん』を乗り越えた。
(う、嘘……? これでも何も感じないっていうの……?)
実際のところは間接キスを気にするほど恋愛に対する精神年齢が高くないというか、そもそもイッシュでメイやトウコと何度も『あ〜ん』しているので、慣れきっているというのが背景としてあるのだが、そんなこととは露知らず、ナツメは少し不満気な表情をシバリに向けた。
(そ、そもそも女の子に『あ〜ん』されたなら、少しくらい気にしてくれたって良いんじゃないかしら……? 私だけ気にしてるなんて、ちょっと、悔しい……)
より一層ナツメの表情に不満が露わになっている一方、シバリはそんな表情を向けられている理由もわからず、内心あたふたしていた。
(な、なんでそんなムッとした表情を……!? な、何を間違えた!? もしかして何か、見落としてるのか……!?)
シバリは脳をフル回転させ、今の状況を出来るだけ冷静にまとめ始める。
(ナツメさんが不満そうになったのは、俺に『あ〜ん』をした後からだ。つまり『あ〜ん』にヒントがあるはず。何だ、一体何が──!)
ここまで考えて、シバリはひとつの天啓を得た。
(……
シバリはかつて、メイやトウコと似たような店を訪れたときのことを思い出した。
(こういうお店では、各自別々のメニューを注文し、友達同士で分け合うのが
(つまりナツメさんからの『あ〜ん』は、『私のケーキを一口あげるから、そっちのケーキも一口頂戴』という意味だったんだ!)
(それなのに俺は自分のケーキは独占したままで……。 ナツメさんからすれば『じゃあそっちのケーキも頂戴』なんて言いづらいだろうし、俺が意を汲まなきゃならない場面だった……!)
(つまり、俺が今から取るべき行動は──!)
シバリは流れるように自分のケーキを一口大に切り分けると、ナツメの方に差し出した。
「すみませんでした! ナツメさんも一口どうぞ!」
「はぇ!?」
想定していない発言に、ナツメの口から変な声が飛び出た。
「ちょっ、ちょちょっ……! 何を……!?」
「俺、こういう場所に自分から来ることあんまり無くて……気づくのに時間がかかってしまいました」
「何の話!?」
ナツメからすれば意味のわからない発言なのだが、シバリからすればナツメが遠慮しているように見えている。
故にシバリは、更に押しを強めることにした。
「ナツメさんにも食べてもらいたいんです! ほら、こっちも美味しいですから! ご遠慮なさらず! さぁ!」
「ほ、ほんとに何を言って……!? ……も、もぉ〜〜っ!!」
諦めたようにナツメはシバリから差し出されたケーキを口に含み、シバリは満面の笑みで彼女に問いかけた。
「どうですか? こっちも美味しいですよね?」
「……そう、ね……」
顔を真っ赤にして目を逸らしつつ、ナツメは消え入るような声でそう答えたのだった。
やっぱりクソボケじゃないか。
まだ出てない地方で好きなところ(参考にするかも:パート2)
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ジョウト地方
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カロス地方
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アローラ地方
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パルデア地方