【取扱注意】その英雄、勘違いにつき。   作:化け猫 いろは

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第十二話 奈落の戴冠式

戴冠式。

それは、王がその頭上に王冠を戴き、神と民からその支配の正当性を祝福される、最も荘厳で、最も華やかな儀式である。

だが、歴史を紐解けば、全ての戴冠式が祝福に満ちていたわけではない。

ある者は、血塗られた玉座の上で、見えざる亡霊の囁きに怯えながら冠を戴いた。

ある者は、民衆の熱狂という名の嵐に担ぎ上げられ、自らの意思とは無関係に、ただ道化の王冠を被せられた。

 

そして今、この神々に見捨てられた奈落の底で、銀河史上最も滑稽で、最も理不尽な戴冠式が、静かに、しかし熱狂的に執り行われようとしていた。

新たな王は、もちろんその事実に気づいていない。

彼はただ、早く家に帰ってふかふかのベッドで眠りたいと、そう願っているだけなのだから。

 

────────────────────────────────────────────

 

【タルタロス不時着から約五週間後】

 

惑星タルタロスには、奇妙な、そしてどこまでも歪んだ秩序が生まれていた。

かつて、絶望と暴力だけが支配していたこの星は今、一つの絶対的な意志の下に、完璧な静寂と統率を保っている。

その意志の名は、カイ・シラヌイ。

彼を唯一神と崇める、数万の元囚人たち。彼らはもはや罪人ではない。神に選ばれし、新たなる民──「タルタロス神聖国家」の敬虔なる信者である。

 

「──艦長。前方宙域に、目標の惑星を視認しました」

「……これが、あの『タルタロス』か」

 

ヴェガ統合軍、第七艦隊所属、重巡洋艦「アルテミス」のブリッジ。

救助艦隊の司令官を務めるマルクス・アウレリオ准将は、メインスクリーンに映し出された、濃霧と不気味な水晶の森に覆われた惑星を、苦虫を噛み潰したような顔で睨みつけていた。

彼は、絵に描いたようなヴェガの軍人だった。規律を重んじ、常識を愛し、そして何よりも予測不能な事態を嫌う。

故に、今回の任務は、彼の軍人人生において、最も不可解で、最も忌まわしいものであった。

 

数週間前、首都に届けられた、あの狂気の沙汰としか思えない報告書。

そして、上層部から下された、極秘裏の、そして矛盾に満ちた命令。

 

『第十三独立遊撃部隊、及びタルタロスに在留する全市民(元囚人)を、可及的速やかに救助せよ』

『ただし、カイ・シラヌイ少尉、及びその直属の部下との接触は、必要最低限に留めること』

『いかなる状況においても、決して彼らを刺激するな。彼らは、英雄であると同時に、予測不能の──怪物であると心得よ』

 

怪物。

あの、民衆が熱狂する『ヴァルハラの英雄』が?

マルクスには、到底理解できなかった。だが、命令は絶対だ。

彼の胸には、未知の獣の檻に、丸腰で入っていく狩人のような、重い緊張感がのしかかっていた。

 

「……惑星からの応答は、まだないのか?」

「はっ。数時間前から定時連絡を試みていますが、一切の応答がありません。ただ……」

通信士は、そこで言葉を濁した。

「……ただ、惑星全土から、極めて微弱な、しかし周期的な信号を断続的に受信しております。音楽、のようですが……解析不能です」

 

「音楽だと?」

マルクスは、眉をひそめた。

その、不気味な報告が、彼の不安をさらに掻き立てた、その時だった。

 

「──高エネルギー反応! 惑星上空より、多数の小型艇が急速接近!」

レーダー士の絶叫が、ブリッジの緊張を切り裂いた。

誰もが、弾かれたように顔を上げる。

メインスクリーンに、濃霧を突き破って現れた、無数の光点が映し出されていた。

その数、およそ三百。

どれも、囚人たちがありあわせのジャンクパーツで組み上げたような、旧式で、粗雑な偵察艇だった。

だが、その動きは、マルクスの常識を、根底から覆すものだった。

 

「……な、なんだ、あの動きは……?」

 

三百隻の偵察艇は、まるで一つの生き物であるかのように、完璧に統率の取れた陣形を組んで、こちらへと向かってくる。

一糸乱れぬ、完璧な編隊飛行。それは、ヴェガ軍の誇る、最新鋭の戦闘機部隊ですら、再現不可能なほどの、神がかり的な機動だった。

あれが、数週間前まで互いに殺し合っていたはずの、囚人たちの集団だと?

ありえない。

 

やて、偵察艇の一団は、「アルテミス」を中心とした救助艦隊の、目と鼻の先で、ピタリ、と動きを止めた。

そして、まるで閲兵式に臨む兵士のように、寸分の狂いもなく、完璧な歓迎の陣形へと、その姿を変えた。

マルクスと、彼の部下たちは、息を呑んで、そのあまりにも異様な光景を見つめていた。

 

「……彼らは、もはや囚人ではない」

誰かが、震える声で呟いた。

その言葉は、ブリッジにいる全員の、偽らざる心の声だった。

そして、彼らが目の当たりにする本当の悪夢は、まだ始まったばかりだった。

 

────────────────────────────────────────────

 

救助艦隊のシャトルが、惑星タルタロスの、不時着した旗艦「ネメシス」の傍らに、静かに着陸した。

シャトルのハッチが開かれ、マルクス・アウレリオ准将が、数名の護衛と共に、その忌まわしき大地に、第一歩を踏み出す。

 

彼を待ち受けていたのは、彼の想像を、そして人類の常識を、遥かに超えた、悪夢のような現実だった。

 

静寂。

そして、完璧なまでの、秩序。

 

数万の、元囚人たち。

彼らは、シャトルの着陸地点からネメシスへと続く道の両脇に、まるで石像のように、微動だにせず、整然と並んでいた。

その誰もが、かつての囚人服ではなく、統一された、黒を基調とする質素な衣服を身に纏っている。

その顔には、何の感情も浮かんでいない。ただ、虚ろな、しかし狂信的なまでの熱を宿した瞳で、マルクスたち一行を、じっと見つめている。

 

その、あまりにも異様な光景に、マルクスは背筋に氷のような悪寒が走るのを感じた。

彼らが、あの報告書にあった、「神の民」か。

だが、これは、民ではない。

これは、軍隊だ。

それも、ヴェガのどの精鋭部隊よりも、統率の取れた、恐るべき軍隊。

 

マルクスの視線が、彼らが掲げる、奇妙な旗へと注がれた。

黒地に、青白い水晶と、赤い瞳が描かれた、統一規格の手製の旗。

あれが、彼らのシンボルか。

水晶は、この星を。そして、瞳は──。

 

マルクスの思考が、そこに行き着いた、その時だった。

整列した囚人たちの中から、二人の男が、ゆっくりと前に進み出てきた。

一人は、歴戦の猛者であることを窺わせる、巨漢の男。

もう一人は、天才的な頭脳を思わせる、鋭い目つきの若者。

ギデオンと、ビットだった。

 

「──ようこそ、お客人」

ギデオンの声は、低く、そして重かった。

「我らが神の御名において、貴殿らの来訪を、歓迎する」

 

その、あまりにも尊大な、まるで一国の王が語りかけるかのような口調。

マルクスは、屈辱に奥歯をギリッと噛み締めた。だが、上層部からの命令を思い出し、かろうじて冷静さを保つ。

 

「……私は、ヴェガ統合軍のマルクス・アウレリオ准将だ。第十三独立遊撃部隊の救助、及び、貴官らの処遇を決定するために派遣された」

「処遇、だと?」

ギデオンは、鼻で笑った。

「我々の処遇は、すでに神がお決めになられた。我々は、神の民として、この地で新たな生を歩む。ヴェガの、指図を受けるつもりはない」

 

その、あまりにも傲慢な、独立宣言とも取れる言葉。

マルクスの額に、青筋が浮かぶ。

だが、彼が何かを言い返すよりも早く、ビットが、冷たく、そして分析的な声で続けた。

 

「……もっとも、神は、この星からの『脱出』をお望みのようだ。我々は、その御心に従うまで。貴官らが、神の御心の邪魔をしないというのであれば、我々も、無用な争いは望まない」

 

その言葉は、歓迎の言葉などではなかった。

ただの、最後通牒。

マルクスは、理解した。

彼らは、もはやヴェガの囚人ではない。

カイ・シラヌイを唯一神と崇める、一つの独立した「国家」として、自分たちと対等、いや、それ以上の立場から、交渉しているのだ、と。

彼は、震える声で、本国に、たった一文だけの、緊急報告を送った。

 

『──彼らは、もはや囚人ではない。交渉の相手は、一つの「国家」であると、認識されたし』

 

その報告が、首都の『神々の観覧席』に、どれほどの混乱と恐怖をもたらしたか。

それは、また別の物語である。

 

やがて、ネメシスの巨大なハッチが、ギシリ、と重い音を立てて開かれた。

その、闇の向こうから、二つの影が、ゆっくりと姿を現す。

神と、聖女の、帰還。

 

マルクスは、息を呑んだ。

カイ・シラヌイは、完璧なまでに穏やかな笑みを浮かべていた。その後ろには、人形のように無表情な、しかし人間離れした美貌を持つ、レナ・ユキシロが影のように付き従っている。

その姿は、マルクスの目には、まさしく、神とその使いのように映った。

そして、彼らが姿を現した、その瞬間。

それまで石像のように静まり返っていた、数万の元囚人たちが、まるで申し合わせたかのように、一斉に、その場に、ひれ伏した。

 

地鳴りのような、荘厳な祈りの声が、タルタロスの灰色の空に響き渡る。

「「「「「──我らが神に、栄光あれッ!!」」」」」

マルクスは、その、あまりにも異様で、あまりにも狂気的な光景を前に、ただ、呆然と立ち尽くすことしか、できなかった。

 

────────────────────────────────────────────

 

その頃、我らが神、カイ・シラヌイは。

彼の内心は、数万の信者からの熱狂的な崇拝とは、全く無関係な、極めて個人的で、極めて俗な喜びによって、完全に満ちされていた。

 

(やった……! やった! やったぞ、シロォォォォォ!)

彼の脳内で、人生最大級の歓喜のファンファーレが鳴り響いていた。

 

(救助艦隊が、ついに来た! しかも、あの忌々しい『Z-ドライブ制御ユニット』も、あっさりと手に入った! これで、これでやっと、この地獄のクソ惑星から、おさらばできるんだ!)

 

そう、数時間前。

救助艦隊との交渉(という名の一方的な恫喝)の末、カイは、いとも容易く、ネメシスが失った心臓部、Z-ドライブ制御ユニットの同型パーツを手に入れていた。

バルツァーとビットが、救助艦隊のメカニックを半ば脅すような形で、新品のユニットを「献上」させたのである。

もはや、この惑星に、彼を縛るものは何もない。

 

(フハハハハ! 見えたぞ、俺の輝かしい未来が! 首都に帰還し、このありえない功績を盾に、今度こそ、完璧な後方勤務を勝ち取る! 窓から見える青い惑星! 書類にスタンプを押すだけの毎日! ああ、俺のユートピアが、すぐそこに!)

 

『……そのユートピア、君を待ち受けてるのが地獄の釜の蓋だった、なんてオチはないといいね』

脳内で、シロがいつものように軽薄な声で水を差す。

 

「(黙れ、この不吉AIが! 今回ばかりは、俺の完璧な計画が、完璧に成就するのだ! 邪魔する者は、神であろうと許さん! ……まあ、俺が神なんだけどな!)」

 

──この男、ついに自分でも自分のことを神と認め始めたらしい。

実に、末期的である。

 

そんな、彼の輝かしい未来予想図に、最後の祝福を与えるかのように。

救助艦隊の司令官、あのマルクス准将が、数名の部下を引き連れて、神妙な顔つきで、カイの前へと進み出てきた。

その手には、ヴェガ軍総司令部の紋章が刻まれた、一つの、荘厳なデータファイルが、恭しく掲げられている。

 

(おお、来たか! 特別褒賞だな! 間違いない! この俺の、神がかりの功績に対する、当然の報酬というわけだ! 中身は何かな? 莫大な報奨金か? それとも、首都の一等地に建つ、俺様専用の豪邸か? いや、まさか、退役して悠々自適の年金生活を許可してくれる、とか!?)

 

カイの脳内で、欲望という名の皮算用が、凄まじい速度で回転する。

彼は、完璧な英雄の仮面の下で、下品な涎が垂れそうになるのを、必死に堪えていた。

 

マルクスは、カイの前に進み出ると、深々と、そしてどこか恐れるように、頭を下げた。

 

「カイ・シラヌイ……少尉。この度の、貴官の功績、ヴェガ統合軍総司令部、及びヴェガ市民を代表し、心からの感謝と、賞賛の意を表する」

その、あまりにも堅苦しい口上に、カイは内心で(いいから、とっとと中身をよこせ)と悪態をつきながらも、外面では、あくまでも謙虚に、そして穏やかに微笑んだ。

 

「……身に余る光栄です、准将。私はただ、やるべきことを、やったまでですので」

 

その、もはや彼の代名詞となった、完璧な決め台詞。

それを聞いた、周囲の信者たちから、再び「おお……!」という、感動のどよめきが起こる。

マルクスは、そんな彼らの狂信的な熱気に、一瞬だけ顔を引きつらせながらも、恭しく、そのデータファイルを、カイへと差し出した。

 

「……こちらが、総司令部からの、貴官への、新たな辞令です」

 

辞令。

その言葉に、カイの心臓が、期待に、高らかに鳴り響いた。

彼は、ゆっくりと、しかし内心の喜びを隠しきれない、わずかに震える手で、そのファイルを受け取った。

 

そして、その内容に、目を通した、瞬間。

 

時間が、止まった。

カイの脳内で鳴り響いていた、歓喜のファンファーレが、レコードの針が飛んだかのように、無残な不協和音を立てて、途切れた。

彼の顔から、完璧な英雄の笑みが、まるで仮面が剥がれ落ちるかのように、消え失せた。

 

彼の唇が、わなわなと震え、そこに記された文字を、信じられないといった様子で、か細く、しかしその場にいた全員に聞こえる声で、読み上げた。

 

「……辞令……?」

「第十三独立遊撃部隊司令官、カイ・シラヌイ少尉を、中尉に昇任の上……『アリズン宙域総督』に、任命する……?」

「惑星タルタロスにて帰順した、全市民を率い……同宙域の、平定、及び、開拓任務に、従事せよ……?」

 

アリズン宙域。

銀河で最も治安が悪く、最も無法な、宇宙海賊と、あらゆる非合法組織の巣窟。

ヴェガが、建国以来、その支配を諦め続けてきた、本物の地獄。

そこに、総督として、赴任しろ、と。

しかも、この、数万の、自分を神と崇める、狂信者たちを引き連れて。

 

それは、栄転などではない。

それは、もはや左遷ですらない。

それは、完璧なまでの──「島流し」だった。

 

(………………は?)

 

カイの口から、間の抜けた、しかし魂そのものが抜け落ちたかのような、空虚な声が漏れた。

彼の脳裏に、シロの、あの不吉な言葉が、悪魔の予言のように、鮮明に蘇ってきた。

 

『──君を待ち受けてるのが、地獄の釜の蓋だった、なんてオチはないといいね』

 

ああ、その通りだった。

俺を待ち受けていたのは、ユートピアなどではなかった。

ただ、より広く、より深く、そして、もはや絶対に抜け出すことのできない、本物の地獄の、入り口だったのだ。

 

その絶対的な真理が、彼の小心な魂を、そして繊細な(と本人が信じている)肉体を、無慈悲に殴りつけた。

(ぐぅううう……っ! い、胃が……! 俺の繊細な胃が、この理不尽な辞令を全力で拒絶している……! 捻れる! 物理的に捻じ切れる感覚がする!)

彼の完璧な仮面の下で、冷や汗が滝のように流れ、その腹部がストレス性胃痙攣によって壮絶な悲鳴を上げ始めた。だが、その肉体的な苦痛すら、これから始まる本当の地獄の、ほんの序曲に過ぎなかった。

 

カイが、その場で、真っ白な灰となって崩れ落ちそうになった、その時。

彼の背後で、この世の終わりを告げる、無慈悲なファンファーレが、高らかに鳴り響いた。

それは、彼の、新たなる、そして最も忠実なる信者たちの、熱狂的な歓声だった。

 

数万の信者の熱狂的な歓声に、カイは条件反射のように顔を上げ、穏やかな笑みで応える。ゆっくりと手を振り、その慈悲深い視線を民の一人一人へと注ぐ。その姿は、まさしく救国の英雄、いや、降臨した神そのものであった。

だが、その完璧な外面とは裏腹に、彼の肉体は、とっくに限界を超えていた。

(……だが、ここで倒れるわけにはいかん……! 神は、腹痛など起こさない……!)

彼の完璧な仮面の下で、冷や汗が滝のように流れ、その腹部がストレス性胃痙攣によって壮絶な悲鳴を上げていることなど、もちろん誰一人として知る由もない。

 

そして、彼の肉体的な苦痛に追い打ちをかけるように、信者たちの熱狂は、さらなる段階へと昇華していく。

 

最初に声を上げたのは、ギデオンだった。

彼は、天を仰ぎ、その巨体を打ち震わせながら、雷鳴のような大声を張り上げた。

「聞いたか、同胞たちよ! 我らが神は、我々を見捨てなかった! この、罪深き我らを、新たなる地へと、導いてくださるのだ!」

 

(や、やめろ!)

 

その言葉を引き継ぐように、ビットが、その理知的な声に、ありったけの狂信を込めて絶叫した。

「アリズン宙域! 我らが神の御業を、新たな星で、銀河全土に見せつける時が来たのだ! これぞ、我らが神聖国家の、輝かしき第一歩!」

 

(やめてくれぇっ!)

 

そして、その二人の使徒の声に呼応するように。

数万の信者たちの、地鳴りのような、惑星そのものを揺るがすかのような、シュプレヒコールが、爆発した。

 

「「「「「我らが神の、新天地行きだッ! カイ・シラヌイ総督に、栄光あれェェェェェッ!!」」」」」

 

(いやぁぁぁああああああああああああぁァァァ!!!!!!!!!)

 

その、あまりにも熱狂的で、あまりにも場違いな、祝福の嵐の中で。

我らが神、カイ・シラヌイは、辞令を握りしめたまま、ただ、呆然と、天を仰いでいた。

その完璧な仮面の下で、彼の魂が、もはや言葉にならない絶叫を上げ、一筋の、熱い涙を静かに流していたことなど、もちろん、誰一人として、知る由もなかった。

 

彼の、奈落の底での、戴冠式。 それは、銀河史上、最も盛大で、最も残酷な、一つの喜劇の、終わりを告げる鐘の音。

そして、これから始まる、本当の地獄の、始まりを告げる、無慈悲なファンファーレだった。





あとがき、あるいは蛇足


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カイ:「……おかしい。絶対におかしい。この宇宙の脚本家は、俺に何か恨みでもあるのか?」

シロ:「どうしたの、急に。ついに現実逃避が二次元を超えて四次元に?」

カイ:「考えてもみろ! 俺は完璧な『何もしないで勝つ計画』を実行したはずだ! なのに、どうして結末が『数万の狂信者を引き連れて、銀河の果てで国作り』になるんだ!? 辻褄が合わなすぎる!」

シロ:「それは君が主役だからだよ。退屈なスローライフ物語より、勘違いで神に祭り上げられる悲喜劇の方が、観客(わたし)は楽しめるからね。視聴率は絶好調だよ、英雄殿」

カイ:「俺の人生をエンタメとして消費するなァッ!」
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