夏と銀河と無限の成層圏   作:吉良/飛鳥

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なんで、イベントごとに何か起きるんだろうな?By一夏      此れも一種の主人公補正であるのかもしれませんねByヴィシュヌ


Episode30『臨海学校2日目弐~Rasendes Silber~』

 

臨海学校二日目に突如として発生したトラブル。

専用機持ち達は全員が千冬の部屋に集められている事を考えても一筋縄では行かない事態が発生したのは間違いないと言えるだろう――千冬の表情が引き締まって現役時代と同等の闘気を纏っているのだから其れ位は容易に想像が出来た。

 

 

「千冬姉、堅い。いや、顔じゃなくて、顔怖い。

 深呼吸して。そう、そんな感じ。」

 

 

とは言っても指揮官がバリバリ固まった状態ではどうにもならないので、一夏はFFⅩの主人公のティーダがブリッツボールの大会前に緊張しているワッカの緊張を解す時に言ったアドリブセリフをオマージュして千冬に言っていた。

此れにより千冬は通常モードに戻ったのだが、逆に言えば今回の一件は千冬が現役モードになるレベルのトンデモナイ事態なのだと言えるだろう。

 

 

「ふぅ……よし、落ち着いた。

 諸君、今から数時間前にアメリカとイスラエルが共同で開発した宇宙開発用の最新IS、機体名『銀の福音』が突如軍のコントロール下を離れて暴走状態となった。

 そして先刻日本政府にアメリカからその一件が伝えられた……そして銀の福音が向かった先は日本で、しかも何の因果か其の進路上には現在臨海学校でお世話になっている花月荘が存在している。

 本来ならば自衛隊のIS部隊が対応すべき案件なのだが、自衛隊が対応した場合、アメリカとイスラエルは日本に借りを作る事になる故、何処の国家にも属さない我々IS学園が対応する事になった。」

 

「異議あり!

 先ずは自分達で対応しろよアメリカとイスラエル!」

 

「いや、公になる前に対処しようとはしたらしいが……アメリカもイスラエルも自国のIS部隊が壊滅状態になってしまったらしい。」

 

「マジかよ……其処で俺達の出番って事か。

 って納得出来る訳ねぇだろ!軍のIS部隊を壊滅させた暴走ISを秋姐入れても僅か八人で無力化しろとかムリゲーにも程があんだろ流石に!寧ろ俺等に対処させないで束さんに外部ハッキング頼んだ方が確実だろうが!!」

 

「ごっめーん、其れ既にやったけど無理だった。

 ハッキングして外部から停止しようとしたけど外部からのアクセスを一切受け付けなくなってる……プロテクトが掛かってるなら解除できるけど、アクセス其の物が不可能なんじゃ手の出しようがないよ流石の私でもね。」

 

「つまり私達でなんとかしなくてはならない事に変わりはないという訳か……というか何時の間に来たんですか姉さん。」

 

「たった今 」

 

 

だが其れも当然と言えば当然の事だった……アメリカとイスラエルが共同開発したISが暴走し、夫々の国のIS部隊を壊滅状態に陥らせた上でこの花月荘に向かっており、一年生の専用機持ち達がその対処に当たる事になったのだから。

更に束でも外部からのアクセスを一切受け付けてない事からハッキングしての強制停止は不可能であり、一夏達が対処する以外の選択肢は無くなっていたのである。

 

 

「俺達がやるしかないって事か……ったく、最低でも一学期の通信簿オール5にして貰わねぇと割に合わないぜ――しゃーない、腹括るか!!」

 

 

自分達がやる以外に選択肢は無いと理解した一夏は自分の頬を両手で張ると気合を入れ、福音を止める事を決意し、其れ以外のメンバーも覚悟を決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏と銀河と無限の成層圏 Episode30

『臨海学校2日目弐~Rasendes Silber~』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暴走した銀の福音の鎮圧に向かうのは織斑兄妹、ヴィシュヌ、鈴と乱、ロラン、ラウラ、そしてオータムの八人だ。

アメリカやイスラエルのIS部隊と比べれば圧倒的に数が少ないが、全員が専用機持ちであり操縦者の腕前も考えると質で上回るのは間違いないと言っても言い過ぎではないだろう――それでも、一夏的には軍の部隊が壊滅させられた事は無視出来なかった訳だが。

 

 

「おい千冬、福音とやらのスペックは分かってんのか?

 分かってるならスペックデータを寄越せよ。全く未知の相手と戦うよりはドレ位の奴なのか分かってる方がまだ作戦の立てようもあるってモンだからよ。」

 

「無論分かっているぞオータム。

 と言うかブリュンヒルデと束の雷名を使ってアメリカとイスラエルから強制的に提出させた……稼働実験前のカタログスペックではあるが、これは国家機密レベルの情報だから他言はするなよ?他言にした場合は最低でも三年間はCIAからの監視が付くと思え。」

 

「束さんがこっち側に居る時点で其の監視は意味をなさない可能性。」

 

「FBI、CIA、KGBにハッキングして機密情報引き出してますが何か?」

 

「何してるんですか姉さん!?」

 

「ついでに日本政府にもハッキングしてたんだけど、ハッキングした先に『お待ちしてました束博士』って名前のファイルがあったのは驚いたなぁ流石に。

 中には『直接会談の機会が欲しい』って文書だったんだけど、束さんのハッキングを予測してたサナエ首相には感心しちゃうね。」

 

 

束が味方で居る時点で色々大丈夫ではあろうが、千冬から開示された銀の福音のスペックは一夏達も驚くべきモノだった。

銀の福音は単体での宇宙活動が可能であるだけでなく、最高速度は音速を越えており、宇宙デブリや彗星を破壊出来る広域殲滅武装『銀の鈴』を搭載しているというハイスペック機だったのだ。

 

 

「超音速ってだけでも厄介なのに広域攻撃まで可能ってのは厄介極まりねぇな……さてと、如何したもんか?

 蒼龍皇でイグニッションブースト使えば同じくらいの速度で動く事は出来るが、常にイグニッションブースト使ってたら蒼龍皇も俺もぶっ壊れちまうぜ流石によ。

 出来れば初撃で落とすまでは行かずともせめてシールドエネルギーの半分くらいは減らしたい所だ。」

 

「スペック上はイグニッションなしならば私の紅椿が最高速度だが……今の私では其れを使う事は出来ない。恐らくは出せて最大速度の60%程度の速度だろう。」

 

「リミッターが掛かっていると束博士も仰っていましたからね……さて、如何したモノでしょうか?」

 

「此れほどの速度で動かれては私のAICで強制停止させるのも難しいぞ?」

 

「強制停止……それだ!」

 

 

そんな相手に対してどう対処するかの作戦は中々いい案が出ない状態だったのだが、ラウラが呟いた一言で一夏が何かを思いついた様だった。

 

 

「秋姐、アラクネの『巣』って最大何個展開する事が出来たっけか?」

 

「最大で百だがよ、仮にアラクネの巣で捕えてもこいつには簡単にぶち破られちまうんじゃねぇかと思うぜ旦那?」

 

「だとしても巣に捕えられたら僅かな間でも動きは完全に止めざるを得ないだろ?そこをラウラのAICで捕える、二重の網で銀の福音の動きを封じた上で攻撃する。

 仮に大量の巣が察知されたとしても、福音は其れを回避する為にスピードを落とさざるを得ないから其処をAICで捕える事が出来るからな。」

 

「成程な……流石は旦那だ、この銀髪チビの呟きから攻略法を見付けちまうとはよ。」

 

「つー訳で束さん、福音の飛行ルートを詳細に割り出してくれ。

 そのルートに秋姐が先回りして大量の蜘蛛の巣を張って銀の福音を絡めとる……絡めとる事が出来なくても動きを制限する事は出来るからな。」

 

「ふっふっふ、既に其れは終わってるよイッ君!

 福音は此方にまっすぐ向かって来てると思わせながら、左右に大きく蛇行するフェイントを交えてるんだけど、この旅館に被害が及ばない海上1kmの場所での戦闘となると此処だね、旅館から1.5㎞離れた人気の海上釣りスポット!

 此れまでの軌道を見るに、福音が此処を通過する確率は安定の99.99%のフォーナインだよ!!」

 

「姉さんの保証付きのフォーナインならば安心出来ますね……時に福音は有人機なのですか?それとも無人機なのですか?」

 

「アメリカとイスラエルが送って来たデータだと無人機って事になってるけど、束さんにそんな小細工は通じない!

 福音は有人機だよ――恐らくってか、ほぼ確実に無人機として対処させる事であわよくばパイロットをイッ君達に殺させて、其れを理由にイッ君を表舞台から引き摺り下ろして自分達の手の内に収めようって魂胆だろうけどさ。

 つっても此れはアメリかとイスラエルの総意じゃなくて一部の女尊男卑の馬鹿共がこっちに送るデータを改竄したんだろうけど……まぁ、コイツ等は束さんが直々に滅してあげるとしよう。」

 

 

其処から一夏が作戦を組み上げ、序に束が福音を『無人機』とデータを改竄した連中に対して事実上の死刑宣告を下していた……束が滅するといった以上、其れは絶体なのである。

 

 

「私の弟達に、生徒達に殺しをさせようとは良い度胸だ……ではなく、基本的な作戦は決まったようなので各自機体のチェックを行った後に即時出撃するように。

 学園にも教師部隊の出撃を要請してあるし山田君も現場に出るから安心して任務に当たってくれ。

 そして私から諸君に下す命令はただ一つ!全員生きて帰れ、以上だ!!」

 

「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」

 

 

作戦会議が終わった後は各自機体のチェックを行い、束は束で各機体のパイロットとの同調率を調べて同調率に合わせた機体の最適化を行い、全ての機体の装甲を『PS装甲』に換装し、PS装甲用の外部バッテリーも搭載していた。

 

そして全ての準備が整い――

 

 

「織斑一夏。蒼龍皇、行きます!」

 

「ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー。ドゥルガー・シン、出ます!」

 

「織斑円夏。黒騎士、目標を駆逐する!!」

 

「篠ノ之箒。紅椿、出るぞ!」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ。シュバルツェ・レーゲン、目標を狙い撃つ!」

 

「ロランツィーネ・ローランディフィルネィ。オーランディ・ブルーム、舞台に降り立とうじゃないか!」

 

「凰鈴音。甲龍、出るわよ!」

 

「凰乱音。甲龍・紫煙、目標をブッ飛ばす!!」

 

「オータム。アラクネ、出るぜ!」

 

 

一夏達は出撃し、福音との戦いが幕を上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

同刻:IS学園生徒会室

 

 

「それじゃあ、後はよろしくね虚ちゃん。此の状況、黙って見過ごす事は出来ないわ。」

 

「平和を謳歌していた後輩達だけを死地に向かわせるとあっては先輩としてアイツ等に顔向け出来んからな……アタシも刀奈と共に出る。」

 

「お嬢様、夏姫さん……こうなってしまっては私が何を言ったとて聞きはしないでしょう?」

 

 

更識のネットワークと学園に入って来た報告によって銀の福音の一件を知った楯無は夏姫と共に学園から出撃しようとしていた。

学園長である轡木十蔵からの出撃命令は下されていないので、此れは完全に楯無と夏姫の独断であり、普通ならば大問題なのだが、楯無は学園内にて生徒会長として、また更識の長として学園長に次ぐ権力を有しているのである程度の独断専行は許されているので特に問題ではなかったりする。

 

 

「ですがお嬢様と夏姫さんが出る必要があるのでしょうか?織斑君達でも戦力は充分だと思いますが……」

 

「虚ちゃんの言う事も分かるのだけれど、今回の一件『亡霊』が関わっている可能性が高いのよ……そうであるのならば見過ごす事は出来ないわ。」

 

「亡国機業が……!!」

 

「狙いは恐らくと言うか確実に織斑君……殺害か、それとも身柄の確保かは分からないけれど、後者ならヴィシュヌちゃんの事も狙っているかもね。」

 

 

そして楯無が出撃を決めたのは今回の一件に亡国機業が関わっている可能性が高かったからだ。

IS学園と亡国機業が対立状態にある現状を考えれば、このタイミングで起こった此の一件は偶然ではなく亡国機業が一枚噛んでいると考えるのは当然と言えるだろう。

 

 

「亡霊が生者に干渉するのは見過ごせん……福音の暴走だけでなく亡国が何かしらの増援を送ってきて来るのならば少々厄介だが、逆にチャンスになるかもな。

 増援を捕らえる事が出来れば亡国の思惑を更に知る事が出来るかもしれないからな。」

 

「だけど其れはあくまでも副次的な産物……本命は一夏君達の安全の確保――IS学園の生徒を守れずして何が学園最強って話よ!!」

 

「成程……そう言う事であれば存分に其の力を奮ってくださいませお嬢様。

 お嬢様が本気を出した事による被害が出たとしても、それに対しての処分は全て此の布仏虚が引き受けます……其れが従者としての使命でもありますから。」

 

「……何時も面倒事を押し付けちゃってゴメンね虚ちゃん。」

 

「此れもまた従者冥利に尽きるとも言えるのでお気になさらずに……ですが、必ず生きて帰ってきてください――従者から仕事を奪うのは主として最もあってはならない事ですので。」

 

「大丈夫よ虚ちゃん……暴走した福音が天羽組の小林さん以上でない限りは私と夏姫が後れを取る事はないわ。」

 

「逆に言えば暴走したIS以上の小林は本当に人間なのか疑いたくなるな……」

 

「おほほ……小林さんは嘗てアサシン組織であるCode:ELのアサシンだったのだからある意味で此れ位は出来るわよ……最強と言われていた屍龍さんに至っては生身の拳で車のフロントガラスやボンネットをぶち破る事が出来るわね♪」

 

「普通に人間辞めてるって事か……まぁ、其れは其れとしてそろそろ行くぞ刀奈!」

 

「えぇ、行きましょうか夏姫!更識楯無。ミステリアス・レイディ、出るわ!!」

 

「蓮杖夏姫。ライオンハート、発進する!!」

 

 

こうしてIS学園からも学園のトップ2として認識されている刀奈と夏姫が銀の福音を鎮圧する為に出撃し、虚はその後処理を行う事になったのだが、事後報告の形で刀奈と夏姫の出撃を学園長に報告したところ、返ってきた答えは『良くぞその判断をしてくれました』っと予想に反しての高評価だった。

或いは学園長は楯無と夏姫が出撃する事を予測してたのかもしれない。

 

ともあれ、IS学園の生徒の中ではトップ2の実力者である楯無と夏姫が参戦した以上、福音戦での負けはないと言えるだろう――だが、今回の一件はそう簡単なモノではなく、何よりも問題だったのはアメリカとイスラエルから送られて来た福音のカタログスペックだった。

宇宙開発用として開発されたモノであり、武装もデブリの破砕を目的としていたのだが、最大の問題だったのは、福音が無人機であるという悪意ある互除法だった――そして、この後情報が、福音との戦闘に於いて最悪の結末を齎す事になるとは、この時は誰も思っていなかっただろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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