千冬と束の下に『一夏撃墜』の方が入った時から少し時は遡る。
「氷河雷龍拳!!」
超力変身によって白虎蒼龍皇となった蒼龍皇が放った氷河雷龍拳によって福音と射線上に居た亡国機業の無人機は一瞬で凍り付き、更にピカチュウの10万ボルトをも凌駕する電撃も喰らう事になり、無人機は全てシールドエネルギーがエンプティとなり、福音もシールドエネルギーが残り二割程度となって一夏達との戦闘継続は困難な状況となっていた。
「これで終いだな……終わりだ福音!もう眠れ!」
一夏は白虎登龍剣を構えると福音を止めるべく最後の一撃を放とうとしたのだが、此処で予想外の事態が起きた。
何と福音は周囲の無人機を突如襲い始め、腕を無人機に突き刺すとシールドエネルギーを吸収して自身を回復して来たのだ……更に其れだけでなくエネルギーを吸収されて抜け殻となった無人機を一夏に向けて投げつけて来たのだ。
「シールドエネルギーを吸収するってのは予想外だったが、こんなモンで俺を如何にか出来るかと思ってんのか?」
だが一夏は慌てる事無く、その無人機を一刀で斬り裂いたのだが……斬り裂いた其の瞬間に無人機は大爆発を起こし、其れを至近距離で受けた蒼龍皇はシールドエネルギーを大きく減らす事になった。
亡国機業の無人機のには近接戦闘で撃破されたら自爆する機構が搭載されていたのだ――完全に近接戦闘がメインとなる一夏に確実にダメージを与える為のモノと言えるだろう。
「ふぅ、あぶねぇあぶねぇ……ギリギリで月光に変身してよかったぜ。」
だが此処で一夏は超力変身で月光蒼龍皇に変身し、自身をエネルギーシールドで覆って自爆のダメージを無効にしたのだ――そして一夏は此処で勝負を決めるとばかりに更なる超力変身で鳳凰蒼龍皇に変身すると、闘気を鳳凰登龍剣に集中して福音に斬りかかる。
福音の機動力すら凌駕する蒼龍皇の連続イグニッションブーストはあっと言う間に福音に肉薄し、渾身の登龍剣を喰らわすだけ……だったのだが、其の瞬間に一筋のビームが走り、一夏の右腕を貫き、そして切断してしまったのだ。
「え?」
『La……!!』
此の攻撃は破壊された無人機の中でまだ動く事が出来た機体が最後っ屁的に放ったモノだったのだが、それが結果として一夏に対して極大のダメージを与える結果になったのだった。
「一夏ーー!!」
右腕を斬り落とされ、そしてカウンターで福音の銀の鐘を喰らった事で機体が解除された一夏は海に真っ逆さまだったのだが、海にダイブする直前ヴィシュヌが一夏をキャッチし、そのまま花月荘へと帰還して行った。
尚、福音は其処から先には進まずに、その場に留まるのだった。
夏と銀河と無限の成層圏 Episode32
『敗北からの反抗~Rebellion nach der Niederlage~』
「山田君、一夏は?」
「止血は済みました。ですが斬り落とされた右腕は……」
時は戻り現在の花月荘。
運び込まれた一夏は右腕の止血は済んだモノの、なんとか回収した右腕を縫合する手段はなく、最悪の場合一夏は右腕を失う事になるだろう……しかしこの人の存在を忘れてはならない。
「イッ君が右腕を失うとか有り得ない!
有り得ないならどうするか?如何にかできる人間連れてくるだけなのが束さんクオリティ!って事で、裏社会では有名な闇医者、腕の一本や二本は余裕でくっつける事が出来るだけじゃなく、極悪人から生きて内臓摘出を出来るスーパーダークドクター氷室ちゃんを連れて来たよ!!」
「拉致の間違いではないかな束博士?」
一が撃墜の報を聞いた束はマッハでニンジンロケットで氷室の闇病院に向かい、氷室を拉致って来ていた……裏社会では其の名を知らない者はいないと言われている闇医者の氷室のオペの腕前は正にゴッドハンドであり、時にはそのオペの腕前を持ってして拷問ソムリエの拷問に一役買う事もあるレベルなのである。
つまりは氷室にとっては切断された腕を完璧に繋ぎ直す事なんぞは朝飯前の昼飯であり、あっと言う間に一夏の右腕を縫合してみせた。
「筋肉、骨、神経ほぼ100%繋げた。皮膚に関しては縫合の痕は残るだろうが然程問題にはならないだろう。」
「さっすが氷室ちゃん、良い仕事してますねぇ?」
だが腕の縫合は成功しても一夏の意識はまだ戻らず、福音に対しての対応は一時凍結となったのだった――だが其の裏で千冬は専用機持ち達に対して待機を命じていなかった。
――――――
時同じくして今回の作戦に参加したヴィシュヌ達が集まっている広間にはお通夜のような空気が漂っていた……完全に優位な状況で進んでいた戦場でまさかの攻撃で最強の一夏が堕とされる事になったのだから其れも致し方ないだろう。
そんな中でもヴィシュヌの落ち込み具合は一入だ……恋人である一夏が堕とされたのだから其れも致し方ないと言えるだろうが。
「いつまでも落ち込んでんじゃねえぞガキ共ぉ!!!」
だが此処でやって来たのはオータムだった。
オータムとしても自身の腕を買ってくれた雇い主であり、一人の男としても認めている一夏が最悪の偶然が重なったとは言え堕とされ、更に腕まで切断されたというのは胸中穏やかではないだろうが、其れを押し殺してヴィシュヌ達に渇を入れに来たのだ。
「落ち込むなですってぇ?
んな事出来る訳ないでしょうが!ヴィシュヌにとって一夏は恋人で、アタシ乱と箒にとっては幼馴染、円夏とラウラにとっては兄なのよ?……ロランに関してはどう定義すべきか悩むけど、そんな一夏が堕とされて平然とできる筈ないでしょうが!!」
「彼は箒に関しての貴重なアドバイザーと言ったところだし、私自身も彼の事は友人と思っているからショックはあるさ……君達と比べればいくらかショックは小さいかも知れないけれどね。」
「旦那が堕とされた事にショックを受けるなとは言ってねぇ!いつまで落ち込んでんだって言ってんだオレは!
オレにとってもお前等にとっても程度の違いはあれ旦那は大事な奴なのは間違いねぇ……その大事な奴が堕とされて、ショック受けて落ち込んだままでいるモンでもねぇだろ!
リベンジすんぞ、福音に!!」
「「「「「「「!!!」」」」」」」」
更にオータムは福音へのリベンジ戦を言って来た。
其れを聞いたヴィシュヌは折った膝に埋めていた顔を上げた……一夏を墜とした相手にリベンジするという思いはあったのだろう。
ヴィシュヌを含めた全員の目に闘気が戻ったのを見たオータムは口元に笑みを浮かべると、先刻の戦いの後、福音は其の場から動かずに佇んでおり、しかし外部からの攻撃には対処し、攻撃者に対しては排除行動を行っていた……序の情報として、沈黙状態にある福音ならば回収出来るかもしれないと考えたアメリカとイスラエルが軍のIS部隊のISを応急修理して現場に向かわせたのだが、モノの見事に全滅する結果となり、その救助に自衛隊が派遣される事になり、アメリカとイスラエルは日本に対して大きな貸しを作る結果となってしまったのだった。
「アメリカとイスラエルは自業自得ですが、福音は何故此の場から動いていないのでしょうか?」
「其れは分からねぇが、オレ達を倒しきれなかったからかもな……福音は暴走してから、此処に来るまで妨害する相手は全部排除して来たが、此処だけは自分の力で落としたんじゃなく、一夏が堕とされた事でオレ達が退く結果となったから、この海域は自分の力で抜いてない……だからこそオレ達ともう一度真正面から遣り合いたいと思ってるのかもな。
或いは、この件に亡国機業が関わってるなら、IS学園をぶっ潰す為に福音はあの場所に留まらされてるって所だろうぜ……まぁ、そんな事は如何でも良い事だ――此処まで聞いてどうするガキども?」
「それを聞きますかオータム……私は行きます!!」
「私も行くぞ。
どこで付いたか知らぬが、此処で逃げては『サムライガール』の名も廃れるというモノ……姫武者と呼べと言いたいところだが、サムライガールの方が外国人には分かり易いかもしれんな。」
「ダチの仇討たないとか有り得ない!」
「一夏が堕とされたと聞いて黙ってる奴いる?日和ってる奴いる?居ないわよねぇ!!」
「ならば福音を墜とす!これは決定事項だ!!」
「兄上の仇を討つ……絶対にな!!」
「ふむ、貧乳四天王もやる気のようだね?」
「「「「誰が貧乳か!!」」」」
「おっと、此れは失礼をした、レディに対しては配慮を欠く発言だった事を謝罪しよう。
では、一夏シスターズならばどうだろう?あながち間違ってはいないだろう?」
「間違っちゃいねぇが、妹が揃いも揃ってお転婆で、姉は世界最強の武闘派とか、旦那は苦労してるなプライベートでも色々と……其れを普通になんとかしちゃってるところもオレは好きだけどよ。
ぶっちゃけて言うと、この仕事してると色々とたまって来るから発散する相手が欲しいんだが、その辺のモヤシじゃ満足出来ねぇから出来れば旦那となんだよなぁ……ヴィシュヌ、オレはダメか?」
「いえ、寧ろOKです。
というかもっと早く言ってほしかったです……私だけでは一夏を受け止め切れる事は出来ませんから……一晩中求められて其れに応えてしまった私も大概だとは思いますけれど。」
「わお、旦那は絶倫かよ……最高だぜ。」
「おい、ヴィシュヌとオータムはなんの話をしているんだ?」
「何ってナニよねぇ?」
「ナニだわねぇ……」
ヴィシュヌとオータムの会話に若干の突っ込みどころはあるモノの、オータムとヴィシュヌ達のやる気と闘気は満ち満ちており、閣員専用機の補給を済ませると福音を討つべく出撃して行ったのだった。
「あの、良いんですか先輩?」
「私が言ったところで止まる連中ではないだろう山田君。
だからこそ私はあいつらに待機命令を下さなかったんだ……国家代表クラスの腕前を持つ専用機持ち達と、元亡国機業のエージェントで実働部隊最強と言われていたオータムが一緒のチームなのだから余程の事はない限り大丈夫だろうさ。
何よりも本気で如何しようもなくなった其の時は束が何とかするからな。」
「束さんが出来ない事は……卵乗せチキンラーメンをCMと同じに作れない事位だからね~~……どうやってもCM通りにならないのは何故なのか。」
其れを見送った千冬に真耶は『良いのか?』と尋ねるも、千冬は『大丈夫だ』と応え、最悪の場合には束が何とかするとまで言い切った上に、此の場には束が居るので真耶も其れ以上は言えなかった……実際に束が本気を出せば此の世の大概の事は何とかなってしまうのだから。
だが、そんな束でも出撃して行ったヴィシュヌの専用機である『ドゥルガー・シン』が起動前に僅かに光っていた事には気付いていなかった――
――――――
福音に堕とされ、意識を失った一夏だったが……
「晴天だが海は波が荒れて流氷が見えるって、完全に冬の海だよなぁ此れは……夢を見てるのか、それとも福音の攻撃を喰らって俺は死んじまったのかどっちだろうねぇ?」
目を覚ますと、其処は波が荒れ、流氷が漂う冬の海辺だった……
『その何方でもない……此処はお前の精神世界だ一夏。』
「え?」
そして其処に現れたのは蒼い身体の巨大なドラゴン――碧色の眼と鋭い爪牙が蒼い身体に次いで特徴的だった。
「お前は・……もしかして蒼龍皇、なのか?」
『その通りだ……漸く会えたな一夏。』
そのドラゴンの正体は蒼龍皇――精神世界にて、一夏は初めて己の専用機の意識と対峙したのだった……
To Be Continued