福音との再戦は先刻と同様にオータムが巣を張り、ラウラがAICで動きを止めるというのが基本になっていたのだが、福音は先程の戦闘から其の展開を読んでおり、作戦の主軸であるオータムとラウラを最排除目標として攻撃して来た。
其の攻撃は苛烈なモノであり、元亡国機業の実働部隊最強と謳われたオータムと、現役軍人にしてドイツ軍トップクラスの精鋭を集めた『黒兎隊』の隊長であるラウラには十分対処出来るモノであった。
「夏姫、私達無視されてない?」
「さっきの戦いでは福音に攻撃してないから敵と認識されてないんじゃないかと思う……アタシ達にとっては嬉しい誤算って所だけどね。」
此処で更なる鬼札となったのが楯無と夏姫の存在だ。
先程の戦闘に於いて楯無と夏姫は亡国機業の無人機の対応に専念していたので福音には攻撃しておらず、結果として福音から敵と認識されていなかったのである。
楯無と夏姫はすぐさま福音との戦闘に参戦すると、楯無はランスによる苛烈な攻撃を行い、時にはナノマシンを使ったトリックプレイで福音を惑わし、更には小規模の水蒸気爆発も使って福音をチクチクと削って行く。
夏姫は夏姫でBT兵装を展開すると福音の射程外からの多角的攻撃を行って福音に攻撃の隙を与えない。
このまま行けば福音をゴリ押しする事も出来るだろう。
『La……Laaaaaaaaa!!!』
だが此処で福音は一際大きな咆哮をすると、次の瞬間に『銀の鐘』をフルパワーで放って来た――宇宙デブリを完全破壊する為に作られた銀の鐘は、ISバトルの世界では確実に禁止レベルの代物であり、其れがフルパワーで放たれたとなれば全滅も覚悟しなければならないが……
「どうやら、タイミングよく私のドゥルガー・シンも進化したようです。」
此処でヴィシュヌのドゥルガー・シンが光ったと思ったら、その光はヴィシュヌを覆い、そして光が収まった時、ドゥルガー・シンは全く別の機体へと生まれ変わっていた。
肘から下と膝から下の最低限の部分しか装甲に覆われていないのはドゥルガー・シンとは同じだが、腕部の装甲には新たに鋭い爪が追加され、脚部装甲にも蹴りの威力を増幅させるビームブレードが搭載され、頭部には龍の角を思わせるアンテナが追加されていたのだった。
「月龍妃……其れが新たな貴女の名ですが……では、早速その力を使わせて頂きます!」
『存分に使え……その為に私は存在しているのだからな。』
此処でドゥルガー・シンは二次移行して『月龍妃』となり、他を圧倒するスピードと近接戦闘能力を持って福音に攻撃を開始するのだった。
夏と銀河と無限の成層圏 Episode33
『進化!復活!!最終局面~Evolution und Auferstehung~』
一方で一夏は見知らぬ場所で蒼い龍と対峙していたのだが、一夏はその龍が『蒼龍皇』である事を理解していた――此処はISの意識が作り出した精神世界であり、意識を失った一夏はその精神世界にやって来ていたのだ。
「それがお前の本当の姿か……こうして会うのは初めてだから、はじめましてッて言った方が良いのか?」
『こうして会うのは初めてだが其れは不要だろう。
私達は何時でも共に戦って来たのだ……今更他人行儀な挨拶をする事もあるまい。』
「だな……んで、此処が精神世界だとして、なんだって俺はこんな所にいるんだ?
つか、現実世界の俺ってどうなってんの?亡国の無人機に右腕斬り落とされた所までは覚えてんだけど。」
『その後に福音の攻撃を受けてお前と私は撃墜されてしまった。
だが、私は束博士のメンテナンスで回復し、お前の右腕も氷室ドクターによって繋がれたから特に問題は無いだろう。』
「切断された腕を普通に繋ぎ直すとか流石だぜ氷室先生。」
一夏も蒼龍皇も決して小さくないダメージを受けたが一夏は氷室に治療され、蒼龍皇も束がメンテナンスを行いほぼ全快の状態となっていた。
「そんで、なんで俺はこんな所にいるんだ?」
『私がお前を呼んだからだ。
此処はISのコア人格が持つ精神世界だ。』
「コア人格の精神世界ね……何故俺を呼んだんだ蒼龍皇?」
『一夏よ、予想外の事があったとは言え我等は先の戦闘では間違いなく敗北した。
私もお前も無敵ではないのだから負ける事はあるだろうが、だからと言って負けたままでいる事は出来ぬだろう?』
「そりゃそうだ。
一度負けたから、『はいそうですか』って終わる心算は微塵もないぜ俺は……やられたならきっちり借りを返さないと気が済まねぇ性質なんだ俺は。
そんでもってタダ借りを返すだけじゃねぇ……どうせやるなら倍返し――を超えた10倍返しだ。」
『そう言うと思っていた。
ならばそこに突き刺さっている剣を抜け。その剣を抜く事が出来ればお前は新たな力を得る事が出来る……よもや束博士が設定した二次移行への発動条件がこんなところで発動するとは思わなかったがな。』
先刻の戦闘は事実上一夏の負けだが、一夏も蒼龍皇も負けて終わらせる事が出来るモノではない――初顔合わせの相手にはデータ不足で負けてしまう事もあるかもしれないが、福音との戦闘はある程度の事前情報があったので、墜とされたのは完全に予想外の結果だったのだ。
「俺が目指してんのは千冬姉を超えた世界最強のその先だ……其れは間違いなく簡単な道じゃないが、其れでもついて来てくれるか蒼龍皇。」
『是非もなし!』
そしてi一夏が地面に突き刺さった剣を抜くと蒼龍皇の身体に罅が入り、次の瞬間に蒼色の鱗がはじけ飛び、そして一夏の前には蒼龍皇とは異なる容姿のドラゴンが降臨していた。
目が覚めるような蒼い身体は、眩いばかりの純白となっており、その目は翡翠の輝きを放っている。
頭部のブレードアンテナは頭頂部に一本だったのが左右に二本になり、額のパーツからもブレードアンテナが展開され側頭部まで延び、背部にはウィングユニットが追加され、左腕には登龍剣を収納した楯鞘が搭載されていた。
「流石に目は青くなかったか……其処は自重したか作者。」
HGIMGNの龍王丸のツインアイはメタルブルーで塗装しましたけどねぇ。
「リアルでは自重しねぇのな……って、ちょっと電波受信しちまったが、其れがお前の新たな姿か蒼龍皇……いや、白龍皇!」
『如何にも……これが私の新たな姿だ……さぁ、目を覚ませ一夏!!』
「だな!」
そして一夏の意識は急激に上昇し……
「旅館の天井だ。」
無事に旅館で目を覚ました。
切断された右腕は見事に縫合されており、縫合痕は残っているが動かすには問題は無く、其れ以外の部分も普通に動かす事が出来る事を確認した一夏はISスーツに着替えると千冬が居るであろう教員部屋に向かって行った。
そして――
「たのもー!千冬姉いるかぁ!!」
「「「!!!」」」
教員部屋の扉を全力で開けて入室すると、一夏が来るとは思っていなかった千冬と真耶、束までもが驚いた様子だった――束も、如何に治療が成功したとは言え一夏が此れだけ早く目を覚ますとは思っていなかったのだ。
「一夏、目を覚ましたのか……其れだけでなくこうして動けているとは、此れもお前の予想の範疇か束?」
「いんや予想の範囲外……私の予想だとイッ君は福音を圧倒して倒す筈だったんだけどそうはならなかった……まぁ、流石の束さんでも完全な未来予知なんて無理な訳だからこんな展開もあったのかもしれないけどね。
だからこそ楽しみでもある……束さんの予想の外にある展開を作り上げた君達が……。」
この一夏の復活は束が考えていた未来にはそもそも存在してなかったモノであり、更に言えば蒼龍皇の進化は束の予想を超えていたモノだったのだ。
「束さん、福音は?」
「現在ヴィーちゃん達交戦中!
そんでもって戦闘中にヴィーちゃんの専用機が二次移行して『月龍妃』になりましたとさ!!」
「過不足ない説明をどうも。
そうか、ヴィシュヌが二次移行したか……ほぼ同じタイミングで二次移行した訳が……テメェの嫁が頑張ってるところに突撃しないって選択肢は無いよな白龍皇!」
『逆に聞くが其れ以外の選択肢があるのか?』
「無い……行くぜ白龍皇!!」
『応!!』
此処で白龍皇を起動すると、一夏は戦闘海域へと向かうのだった。
「……我が弟ながら何処までもまっすぐ過ぎる。
山田君、教師部隊を引き連れて援護に向かってくれ。汎用ラファールでは大した戦力にはならないかもしれないが、其れでも福音の動きをある程度制限する事は出来るだろうからな。」
「了解です先輩。」
更に千冬は真耶に教師部隊を引き連れて現場に向かうように指示し、真耶も其れを受託。
福音戦はいよいよ最終局面に入って来たと言ったところだろう。
――――――
で、件の福音戦はと言うと……
『Laaaaaaa!!』
「其の攻撃は見切りました……タイガァァァ……レェェイド!!!」
ヴィシュヌが月龍妃の圧倒的なスピードと近接戦闘能力を持ってして福音を圧倒し、『銀の鐘』によるカウンターも見切ってハイキック→回しハイキック×2→飛び足刀蹴りのコンボを喰らわせ、トドメとばかりに踵落としをぶち込んで福音を海面に叩き落としていた。
普通ならば此れでゲームエンドだろうが……
「そう簡単には終わりませんか流石に。」
『Laaaaaaaa!!!』
浮上して来た福音は眩い光を放つと二次移行して来た。
装甲は洗練されてよりスマートになったが、背部のウィングユニットは大型化し銀の鐘の威力が上昇しているのが見て取れるだけでなく、両腕部にもビームバルカンが搭載されている……最早、宇宙開発用ISの性能を超えた存在となっていた。
更に機動力も月龍妃とほぼ互角となっており、ヴィシュヌと福音は何方が自分の間合いを取れるかの戦いになっていた――其の戦いのレベルは高く、IS学園のトップ2である楯無と夏姫が介入できないレベルとなっていた。
間合いが離れれば福音が鬼の弾幕を展開し、間合いを潰せばヴィシュヌのムエタイ殺法が炸裂し……
「此れは如何です!?」
「ヴィシュヌちゃん、首相撲から其れを使うの!?」
「イグニッションブーストを使っての上空からの垂直落下式DDT……ISバトルだったら間違いなく一撃KOだろうな。」
此処でヴィシュヌは福音を首相撲に取ると連続の膝蹴りを叩き込んでから、ブレーンバスターの要領で持ち上げ、其処からイグニッションブーストを発動して地面に急降下して垂直落下式DDT一閃!
普通ならば此れでシールドエネルギーがエンプティになってもおかしくないが、宇宙開発用のISとして開発された福音のシールドエネルギーは競技用ISの倍以上であり、二次移行した今では更に多くなっているので一撃KOをするには至らなかった――とは言え手痛いダメージを与える事は出来たのだが。
「矢張り頑丈ですね……ですが押し切らせて頂きます!」
『La……!』
このまま一気に押し切ろうと、ヴィシュヌは福音に飛び膝蹴りを放ち、其処から近接戦闘に持ち込もうとしたのだが……此処で福音がカウンターとなる腕部のビームバルカンを近距離で放って来た。
弾丸よりも速いビームを近距離で放たれたら回避する術は存在せず、ヴィシュヌは其れを真面に喰らい吹き飛ばされてしまった――絶対防御がある事でヴィシュヌへの直接的なダメージは皆無だが、絶対防御が発動した事でシールドエネルギーは大きく減ってしまっていた。
そんなヴィシュヌに対し、福音はフルパワーの銀の鐘を発動。
それを見た楯無は水のヴェールを展開するも、銀の鐘は其れを容易く突破し、ヴィシュヌは絶体絶命の状況に。
「俺の嫁に何してやがんだテメェ!!!」
だがそんな絶体絶命の状況に於いて、突如として走った一筋の光が福音を吹き飛ばし、銀の鐘の発射を強制的に中断させたのだった。
「悪い、待たせたな。」
「遅刻ですよ、一夏。」
其れを行ったのは一夏。
白龍皇に進化した相棒と友に戦場に駆けつけヴィシュヌのピンチを救ったのだった。
「ヒーローは遅れて現れるってな……大分ダメージ受けちまってるみたいだけど、まだいけるか?」
「それを聞きますか?貴方と一緒ならば私に限界は存在しませんよ。」
「嬉しい事言ってくれるねぇ?なら、此処で終わらせるぞ福音との戦いを……!!」
「終わらせましょう。福音の為にも、福音のパイロットの為にも。」
こうして福音との戦いは最終局面に突入するのだった――
To Be Continued