銀の福音の土壇場での二次移行で窮地に陥ったヴィシュヌだったが、其処に二次移行した白龍皇を纏った一夏が割って入った事で戦闘は仕切り直しとなっていた。
黄金の刀を向ける一夏と、ムエタイ特有のガードを高めに取った構えのヴィシュヌに対し、福音は特に構える事はせずに一夏とヴィシュヌの出方を伺っていると言った感じだ。
何方も先に動いた分だけ相手に情報を与える事になるから不利にと考えて動かなかった結果、膠着状態になってしまったのだが――
「会長さん、一発頼むわ。」
「あは、御指名に預かり恐悦至極だわ一夏君♪」
此処で一夏は盤外戦力となっている楯無に『一発頼む』と言って来た。
二次移行した福音にとって脅威となるのは一夏とヴィシュヌだけだったので、其れ以外は戦力外と認識していたのだが其れが此処に来て刺さった――完全に意識の外の存在だった楯無が膠着状態を利用して限界までナノマシンを生成した上で、最恐最大級のクリアパッションを福音に見舞ったのだ。
『La……!!』
其れをもギリギリで回避した福音の性能は凄まじいのだが、回避した先は夏姫の『ライオンハート』のBT兵装による多角的攻撃が待っており、更にはオータムも新たに無数の巣を張っており、ラウラもAICで捕えられるその時を待っている。
状況は福音にとっては最悪と言えるだろう。
更に、其の隙を突いて一夏とヴィシュヌが一機に肉薄して剣術と空手、ムエタイの複合近接戦闘を仕掛けて来たのだから堪ったモノではない。
「福音って事だから期待したんだが所詮は此の程度か……さっきの戦いは余計な横槍さえ無かったら俺の余裕勝ちだったろうな。」
「性能は確かに最高クラスかもしれませんが、パイロットの意識が失われているのが原因なのかもしれませんが、其れにしたって動きが単調過ぎるので見切るのに其れほどの難はありませんからね。」
一夏とヴィシュヌの苛烈な攻撃を前に福音は防戦一方となっていた――であっても撃墜されていないあたりに福音の二次移行後の頑丈さが分かると言うものであるのかもしれないが。
「来いよ福音、お前の全てを受け切ってやるから全力の出し惜しみなしで来な……尤も、俺もヴィシュヌもお前の全力を受け止める位は余裕のよっちゃんイカッて所だけどな!」
「そして其の上で貴女を止めます……!!」
『La……』
こうして此の戦いも佳境に入って行ったのだった。
夏と銀河と無限の成層圏 Episode34
『決着!銀の福音!!~End of Silver~』
一夏とヴィシュヌが福音と戦っている戦場には、矢張りと言うかなんというかまたしても無粋な横槍――亡国機業の無人機が無数に現れてくれた。
先の戦闘でほぼ全滅したにも関わらず、此処に先の戦闘以上の無人機を投入してくるあたり亡国機業の財力と技術力は馬鹿に出来ないモノがあり、そんじょそこらの相手なら圧倒出来るだろうが、流石に相手が悪過ぎる。
一年生の専用機持ちだけならば付け入る隙があったかも知れないが、此の場には専用機持ちだけでなく、元亡国機業の実働部隊で最強と称されたオータム、歴代の更識家当主で最強と言われている楯無、そんな楯無の恋人で楯無と比肩する実力を持つ夏姫がいる状況では、高性能な無人機は少しレベルが高い動く的でしかない。
「動きは止めたぜ会長さんよぉ!!」
「はい、ドカン♪」
「吹き飛べ!!」
更にオータムが糸で絡めとれば最早逃れる術はなく、楯無のクリアパッションと夏姫のストライクフリーダムガンダムもビックリなフルバーストをブチかまして無人機を粉砕!玉砕!!大喝采!!!
「スコールよぉ、此の程度でオレ達を如何にかできる訳ねぇだろ……旦那を一回墜とした事で二匹目のドジョウを狙ったのか?……言ったところで聞こえてねぇだろうけどよ。
てか此れだけの無人機を速攻全滅とかマジでハンパねぇな会長さんよ?」
「更識の長ならこれ位は普通よオータム……だけど此れで終わりではないみたいね?」
「……増援か……だが、そんなモンは大した脅威じゃねぇ!!」
更に増援が来るも、烏合の衆ではIS学園の精鋭と教師部隊の敵ではなく、無人機は次々と落とされて行った。
「私に力を貸してくれ紅椿!!」
加えて此処で箒が『皆の役に立ちたい』との思いから紅椿のリミッターを解除させ、シールドエネルギー回復能力『絢爛舞踏』を覚醒するに至った――のだが、箒は『そうじゃない』と言って、『絢爛武闘』に変更してしまったのだが。
それは兎も角としてシールドエネルギーの回復能力はISバトルに於いては禁止級の最強能力なのだが、戦場に於いてはこれ以上ない支援となった。
負ける事は無いとは言え、無数の無人機との戦闘でシールドエネルギーが減少していたのは間違いないのだから。
「此れは最高の支援だね箒!」
「だが、これを使ったら代償として私はしばらく動く事が出来なくなるようだ……だから、決めてこいロラン。
私を惚れさせたいのならば、其れに値する活躍をして来い。」
「ふふ、是非もない……私の雄姿をその目に焼き付けたまえよ。」
シールドエネルギーが回復し、更に箒からエールを貰ったロランは正に獅子奮迅の活躍を見せ、無人機を多数撃破してみせた……愛の力は無限大とは良く言ったモノである。
こうして無人機の集団は次々と落とされ疑似ISコアも回収されて行った。
そして一夏&ヴィシュヌvs福音の戦いも大詰めを迎えていた。
広域殲滅型とも言える福音に対して一夏とヴィシュヌは徹底的に張り付いてのインファイトを行い、福音に『銀の鐘』を撃たせる隙を与えず、体術の間合いを外せば一夏の剣術が飛んで来て、剣よりも近い間合いに入り込めばヴィシュヌのムエタイが待っているという状況なのだ。
ならば遠距離の間合いと思って距離を離そうとしても二人ともイグニッションブーストで間合いを詰めて来るので其れも出来ない……スピードでの攪乱も此れでは効果が薄いだろう。
「これで終わりにします!」
此処でヴィシュヌが福音に対して連続コンビネーションパンチ→連続アッパー→飛び膝蹴り→ジャンピング踵落としの連続技……格闘ゲーム『KOF』のジョー東の超必殺技である『爆裂ハリケーンタイガーかかと』をブチかまして福音のシールドエネルギーを大幅に減らし――
「トドメだ……此れで大人しくなっとけぇ!!」
其処に一夏が登龍剣での柄打ちを喰らわせ、更に袈裟斬り→斬り上げのコンボを決めた後に登龍剣にエネルギーを収束して刀身を巨大なエネルギーブレードにするとそれを一気に振り下ろして福音を一刀両断!
実際には両断してはいないのだが、此の一撃で福音のシールドエネルギーはゼロになり、其れによって機体が強制解除されパイロットの姿があらわになった。
「こんな美人さんを俺達に殺させる心算だったのかよ……ったく、本当に政治の世界ってのは腹黒くて汚くて嫌になるぜ。」
「マッタクもってその通りですが、逆に言えばこれでサナエ総理はアメリカとイスラエルに対して強力なカードを手に入れたとも言えると思いますが。」
「それはそうかもな……サナエ首相は日本を頂点としたアジア中心の世界機構を目指してるのかもな。」
落下した福音のパイロット『ナターシャ・ファイルス』を一夏が受け止め、無人機は楯無達が処理したので此の場での戦闘は閉幕となり、一夏達は旅館へと戻るのであった。
――――――
旅館に帰還後、ナターシャは医務室送りとなり、一夏達も軽い健康検査を受けたのだが特に問題もなかったので其の後は自由時間だ。
そして一夏は夜の浜辺にやって来ていた……
「夜の海水浴ってのも乙なモノか?」
「む……一夏か。」
其処で一夏は夜の海で泳ぐ箒と出会った。
一泳ぎした箒の身体は海水に濡れ、其れを月灯りが照らして幻想的な雰囲気を纏わせていた。
「少しばかり泳ぎたくなったからここに来たのだが、お前は何故此処にいる?」
「何となく夜風に当たりたくなったって所だが、まさか此処で箒に会うとは思ってなかった。
色々あったから明日にと思ってたんだが、逆にいいタイミングだったか……箒、誕生日おめでとう。」
一夏としては箒に会うとは思っていなかったので完全に予想外の事だったのだが、此処で会えたのはいいタイミングだったっと考えて、箒に誕生日プレゼントを渡したのだった。
「私の誕生日、覚えていてくれたのだな?」
「幼馴染の他場日くらい覚えてるっての。
其れにお前が引っ越しちまう前は毎年誕生日プレゼント送ってただろ?」
「あぁ、覚えているし全部持っているよ。
お前の手作りのフェルトの財布、可愛いクマのぬいぐるみ、リボンと色々貰ったからな……流石に引っ越したからは新しい住所も伝えていなかったから途絶えてしまった訳で都合10年ぶりか。
此れは、小物入れとリボン、か?」
「小物入れは俺の手作りだ……プレゼントを如何しようかと悩んでたところでヴィシュヌにアドバイスを貰ってな。
其れとリボンは、そのリボンは大分くたびれてるからな……長く使ってくれるのは嬉しいが、女の子がそんな寂れたリボンで髪を縛ってちゃいけねぇよ。
女の子はエレガントに、ってな。」
「確かに、その通りかもしれないな……ありがとう一夏、嬉しいよ。」
「喜んでもらえたなら何よりだぜ。」
一夏からのプレゼントに満足したらしく、箒は満面の笑顔を浮かべて一夏にお礼を言うのだった。
――――――
それから少し浜辺を歩き、岩場までやって来た一夏は――
「え、人魚?」
「人間です。」
「っと、ヴィシュヌだったか……一瞬マジで人魚に見えたわ。」
「褐色肌の人魚など居ないと思いますが……」
「逆に言うと南国の人魚は何で過食肌じゃねぇんだ?」
「謎ですね。」
「謎だな。」
岩場で海水浴をしていたヴィシュヌとエンカウントしていた……
「でも、生きていてくれて良かったです一夏……貴方が福音に堕とされた時は気が気ではなかったです……そして意識不明――最悪の場合は死んでしまうのではないかとも思いました。
でも、生きているんですよね?」
「生きてるよ。こうして心臓も動いてる。」
其処で不安を苦にしたヴィシュヌの頭を抱えると、一夏はヴィシュヌの頭を己の左胸に押し当てて心臓の音を聞かせる……トクン、トクン……一定のリズムで刻まれる心音はヴィシュヌの精神を安定させるには十分だった。
「えぇ、生きていますね間違いなく……なら、私にも其れを感じさせてください。」
「ヴィシュヌ!?」
精神の安定を取り戻したヴィシュヌは、逆に一夏分不足症になってしまったのか、一夏を押し倒すと其のままマウントポジションを取って、そして水着を脱ぎ捨てた。
「今宵は私に貴方を刻み込んでください一夏……貴方の愛を私に下さい。」
「是非もないな……愛してるよヴィシュヌ。」
「私もです一夏。」
こうして一夏とヴィシュヌは月灯りの下で激しく求めあい、深く愛し合ったのだった――そして翌日には少し疲れ気味の一夏とやたらと肌がつやつやしているヴィシュヌの姿があったとかなんとか。
To Be Continued