日本における夏の風物詩と言えば、其れこそ上げればきりがないのだが、絶対的に外せないモノがある――そう、夏祭りだ!
一夏達が暮らしている地域でも夏祭りが行われ、篠ノ之神社では神楽舞の舞台が急ピッチで製造されているので夏祭りに限らず祭りって言うモノは裏方の存在無くして存在出来るモノではないと言えるだろう。
「そう言えば今日は地区の夏祭りだったな。」
「夏祭りですか……面白そうですがどうしますか一夏?」
「子供神輿が来た時には祭り代として渋沢さんを提灯に入れてやるさ。
つっても祭りの本番は花火が始まる夜だから、それまではISEXVSやろうか?夏限定のイベントやらクエストやらも開催されてるし、無謀にも俺達にクラブ戦を吹っかけてきた連中もいるみたいだからな。」
「ISEXVSですか……最強クラブの座を守りに行きましょう。」
だが祭りの本番は夜と言う事で、夕方まではISEXVSで遊ぶ事にした。
ISEXVS内で一夏こと『ヤイバ』がクラブ長を務めているISクラブ『蒼天の災兎』は現在サーバーランクのみならず、ワールドランクでもトップに輝いている最強クラブだ。
国家代表が所属するクラブもあるが、蒼天の災兎は国家代表レベルの一夏、更識の長の楯無、日本の代表候補筆頭の円夏と鈴、タイの代表候補であるヴィシュヌ、台湾の代表候補である乱、オランダの代表候補であるロラン、ドイツの国家代表のラウラ、ブラジルの代表候補のグリフィン、代表候補生ですらないが実力は折り紙付きの箒、この手のゲームはお手の物な弾、そして最近クラブに加入した見た目はほんわか実力はガッチガチの元日本の代表候補生だった真耶と、現実であれば国を墜とせるほどの戦力が集っていた。
一夏とヴィシュヌは家に戻るとISEXVSにログインし、クラブメンバーに集合をかけ、其の直後にクラブ戦を仕掛けて来たクラブとのクラブバトルを行い、完膚なきまでに叩きのめしていた。
クラブメンバーのレベルが高かった事は言うまでもないが、箒は自身の右腕が機械義手になったのを機にアバターと機体をカスタマイズし、アバターは右腕が機械的なデザインになり、機体はギミックアーム機構を取り入れていた。
此れにより箒は機械義手のギミックで腕を伸ばして相手の遠距離型を捕まえて近くに持って来て、其処から強引に近接戦闘に持ち込む事で敵ガンナーを撃破して行ったのだった。
「と言う訳で無事に勝てました。」
「そして今回のMVPは間違いなく貴女ですよ、コキア。」
「そうか?……そう言って貰えるのは嬉しいな。」
クラブ戦を制した蒼天の災兎のメンバーは、続けて夏限定居弁へと参加して行った……高難易度のクエストであり、シングルでのクエスト受注は出来ないので実質夏限定のクラブ参加が絶対条件のソロプレイヤーお断りの内容ではあった。
それらの制限を飲み込んだ末に蒼天の災兎はイベントに参加登録を行い……そしてイベントが始まるとバトルで圧倒的に相手を上回て勝利に勝利を重ねて見事に優勝したのだった。
夏と銀河と無限の成層圏 Episode41
『夏と言えば夏祭り~Let's enjoy the summer festival~』
『ISSEXVS』で遊び倒しているうちにいつの間にか夕方になっていたので、一夏とヴィシュヌ及び蒼天の災兎のメンバーはログアウトし、一夏の家に入り浸っている蒼天の災兎のメンバーもまたゲームから戻って来ていた……織斑兄妹にヴィシュヌ、箒、鈴と乱、ロラン、ラウラと中々壮観なメンバーである。
「もう夕方か……そろそろ良い時間になるし、祭りに行く準備するか。」
「それなんですが一夏、浴衣を着てみたいのですが……」
「だろうと思って用意してるぜヴィシュヌ。
会社の被服部に頼んで色んな浴衣を送って貰ったから各々好きなモノを選んで使ってくれ。ちゃんと下駄も用意してあるからな。」
「流石は兄さん、抜かりがないな。」
「何事も抜かりなく出来なきゃ社長なんぞやってられねぇんだよ円夏。」
夏祭りには定番と言える浴衣を一夏は用意しており、ヴィシュヌ達は浴衣を選んでいった――その結果、ヴィシュヌは淡い青色に金魚があしらわれたスタンダートな浴衣を、円夏は黒地にガンダムがプリントされた浴衣を 箒は藍色の生地に笹の葉と天の川がデザインされた浴衣を、ラウラはポケモン柄の浴衣を、ロランは黒地に花火があしらわれた浴衣を、鈴は水色に朝顔の浴衣を、乱は海辺がデザインされた浴衣をチョイスしていた。
一夏も一夏で浅葱色の甚平に着替えていて、其れが良く似合っていた。
でもって下駄は歯のないサンダルタイプだったので全員が無理なく履く事が出来ていた。
そして出掛けようとしたところで地域の子供神輿がやって来たので、一夏は女の子が持っていた提灯に渋沢さんを一枚入れてやった。
まさかの渋沢さんに驚いた女の子だったが、笑顔で『ありがとうございます』と言うと、続いて子供達が盛大にお神輿を『ワッショイワッショイ!』してくれた。
其れを見た一夏は『暑い中お疲れさん』と言って子供達に冷蔵庫からスイカを持って来て振る舞っていた……その際に、台の上に置いたスイカに超神速で包丁を走らせて切り分ける神業を披露して子供達から驚かれていたが、これもまた一夏クオリティだろう。
改めて街に出ると出店で賑わっており、神輿も街中を回っていたのだが……
「あれってグリ先輩じゃね?」
「確かに彼女ですね?」
神輿を担ぐ担ぎ手の中にグリフィンの姿があった。
胸にサラシを巻いて法被を着て頭には豆絞りの鉢巻をしたその姿は神輿を担ぐ他の若い衆に負けず劣らずの威勢の良さがあり、誰よりもパワーを感じさせるものだった。
実は、神輿の担ぎ手の若い衆が祭り当日に熱中症でダウンしてしまい、如何したモノかと悩んでいたところに偶然グリフィンが出くわし、『私で良ければお神輿担ごうか?自分で言うのもなんだけど、パワーとスタミナには自信あるよ?』と祭りの実行委員会に言い、実行委員会も時間がないのでグリフィンの申し出を有り難く受け取ってお願いしたのだった。
「……屋台は肉系から回るぞ。神輿担ぎ終わったグリ先輩はまず間違いなく肉系屋台を潰す勢いで食いまくるだろうからな。」
「否定出来ませんね。」
さて、祭りの醍醐味と言えばやはり屋台巡りだろう。
屋台グルメは言うまでもないが、輪投げや射的のようなゲーム系も充実しており、ラウラは射的に挑戦したのだが、現役のドイツ軍の軍人で黒兎隊の隊長を務めているラウラには射的の的を落とすのは朝飯前であり、全ての的を正確に落として、最終的には射的屋のオヤジが泣きを入れる事態になったのであった。
其処からは屋台巡りを堪能した。
夏祭りの定番であるかき氷、フランクフルト、チョコバナナ、ジャンボ串焼きなんかを堪能していた――ゲーム系では円夏とラウラがスーパーボール掬いで無双し、ハンマーゴングでは一夏とヴィシュヌが無双して見事賞品をゲットしていた。
其の後、イベントで肉屋が主催した『ジャンボステーキ早食い&大食い大会』が開催されたのだが、これはもうグリフィンの独壇場だった。
500gのサーロインステーキを十分間に何枚食べられるかというルールなのだが、グリフィンは巨大なステーキを二つに切ると250gを一口で食べ、たった二口で500gのステーキを平らげると次々と巨大ステーキを異次元のスピードで平らげて行く。
最終的にはグリフィンが十分間で八枚を完食する二位にダブルスコアをつける成績で圧倒していた……にもかかわらず、直後にグリフィンはジャンボ串焼き屋で特大カルビ串を3本買っていたので肉に関しては無限の消化能力を有しているのかもしれない――其れこそ束でもグリフィンの消化器官の構造を解析するのは不可能と言っても過言ではあるまい。
――――――
屋台グルメを一通り堪能した一夏達が次にやって来たのは祭りの屋台の中でも最大のパンデモニウムとも言うべきくじ屋だった。
1~3等に如何にも子供が欲しがりそうな商品を掲げつつ、実際には4位以下しか当たらない事で有名なくじ屋だが、今宵一夏はそのくじ屋の闇を暴きに来ていた。
「300万だ。1回300円だから、此れで1万回引けるよな?」
一夏は100万の札束を3つ店主に叩き付けると、有無を言わさずにくじを引いて行く……ヴィシュヌ達も其れを手伝って行くが、引いたくじはドレもかしこも4等以下の外ればかり。
一等がSwitch2、二等がMG百式メカニカルコアメッキ、三等がホログラムレアのブラック・マジシャン・ガールと言うのは完全に客寄せのための嘘である事は最早疑いようもなかった。
「此れは最早詐欺と言っても過言じゃないよなオイ?」
「ぐぬ……オイ、お前達コイツの口を封じろ!ガキどもは蹴散らせ!!」
完全に黒となったくじ屋の店主は雇っていた半グレの用心棒に声をかけるが、反応はない――何かと思ってると……
「若しかして、アンタが呼んでたのってコイツ等だったりする?」
「弱過ぎて拍子抜けだじょ。」
突如としてくじ屋の店主の前にボッコボコにされて完全KOされた半グレの用心棒だった人間が積み上げられた……祭りに屋台出店しているメロンパン屋の瓜生とカリンが半グレの連中をフルボッコにしたのだ。
「さぁ、外道は捕まえたぜ一夏君!思い切りブチかましてくれ!」
「アンタは……屍龍か――なら遠慮なく行かせて貰う!!
ギャラクティカファントム!スピード×体重×握力=破壊力!!男の一発だ、こらぁ!!」
其れを行ったのは元殺し屋のメロンパン屋の瓜生龍臣とカリンだった。
残った外道は瓜生が羽交い絞めにし、其処に一夏が渾身の拳を叩き込み、その勢いを利用して瓜生がドラゴンスープレックスをブチかまして完全KOと相成ったのだった。
当然ながらこのくじ屋は祭り出禁となり、大本である半グレ組織は後日天羽組によって壊滅されたのだった。
――――――
祭りを堪能した一夏達は、新たに買った屋台グルメを手に祭り会場から少し離れた高台にやって来ていた――祭りの会場からは離れてしまったが、祭りのフィナーレを堪能するには最高の場所だった。
――ドーン!!
夏祭りのフィナーレを飾るのはド派手な花火だ。
祭り会場でみても良いのだが、此の高台からならば視界を隔てるモノは何もないし、祭りの喧騒も聞こえてこないので純粋に花火を堪能するには最高過ぎる場所なのだ。
「綺麗ですね……形も花や土星と多岐にわたりますし、まさかのピカチュウに驚きました。」
「花火職人の腕はハンパないな。」
その穴場で一行は花火を堪能し、夏祭りは終わったのだが、テンションが上がっている一夏達は此れで終わらず、祭り衣装のままに焼肉屋に突撃して食べ放題を堪能し、其処からボーリングのナイターを行い、其の後はカラオケフリータイムでオールナイトを行い、翌日もそのテンションのままに凄し……夜の7時には全員がスイッチが切れたかのように眠りにつくのだった。
To Be Continued