夏休みに於いて外せないイベントは何かと問われれば、まず最初に上がるのは夏祭りだろう――威勢のいい神輿に、祭り特有の屋台グルメに花火と、其れこそ夏の風物詩を詰め込んだイベントであると言えよう。
つまり夏祭りは夏休みのイベントとして鉄板の一位な訳だが、常に次点の第二位に甘んじている海水浴とプールもまた定番の鉄板イベントと言っても過言ではないだろう――むしろ海水浴とプールを無くして夏を語るなと言っても間違いではない。
と言う訳で本日一夏達は電を乗り継いで……なんて事はせずに、一夏が所有している完全AI制御の自動運転のワゴン車で大型の娯楽施設に入っているプールへとやってきた。
全自動運転はまだ実験段階であり製品化には至っていないのだが。
「お~!賑わってんねぇ!!」
「最高のプール日和ですね。」
プールに到着した一夏達は早速水着に着替えて海を楽しむ事にした。
着替えはあっと言う間に終わり、全員が水着で砂浜に現れたのだが……一夏はトランクスタイプの水着だが、肌にフィットするタイプの水着だったので鍛え抜かれた『究極の細マッチョ』が強調されており、ヴィシュヌは白のビキニだったので褐色肌と白い水着のコントラストが強烈な印象を与え、円夏とラウラはまさかのスクール水着だった――似合ってはいたが、なんか色々と残念だったのは言うまでもないだろう。
鈴と乱は色違いのセパレートタイプを選択し、ロランはパレオ付きの黒いビキニで最後は箒なのだが……
「生憎とこれ以外にサイズがなかった。」
「逆にサイズが無くてよかった。」
箒が来ていたのはいぶし銀の紐タイプのビキニだった。
必要最低限の布面積しかない紐ビキニは逆に箒の魅力を際立たせていた――とは言え、箒に邪な視線を向けている野郎共にはラウラとロランがブロリー張りの岩盤クラッシュをブチかまして黙らせたのだったが。
夏と銀河と無限の成層圏 Episode42
『夏は海かプールは絶対!~Strand oder Pool sind ein Muss.~』
このプールは流れるプールや波のプールと言った特殊なプールが複数存在していて其れだけでも充分に楽しむ事が出来るのだが、一番の目玉は高さ100mのタワーウォータースライダーだろう。
パイプ型の滑り台を水と一緒に流れていくウォータースライダーとしては間違いなく国内……を通り越して世界最大であり、途中でパイプ型滑り台がタワーの外に露出して景色を楽しむ事が出来るようになって居るという拘りっぷりだ。
一夏達も先ずは此のタワー型ウォータースライダーにやって来た……スタート地点まではエレベーターも用意されていたのだが、一夏とヴィシュヌは『此れもトレーニング』と言って階段で最上階まで上り詰めて来ていた。
それでエレベーター組よりも先に最上階までやって来たのだから冗談抜きで人間辞めていると言っても罰は当たるまい。
「一夏、ヴィシュヌ……アンタ達本当に人間なの?」
「逆に聞くが鈴、俺達が人間じゃなかったら千冬姉や束さんはなんなんだよ?」
「千冬さんと束姐さんは規格外の超人。ぶっちゃけて言えば超サイヤ人。千冬さんに至っては身勝手の極意会得してる可能性。」
「あ~~……そりゃ否定出来ねぇんだが、其れを踏まえると天羽組のアニキ達はもう人間じゃねぇな。特に小林のアニキと和中のアニキ……後は青山のアニキもだな。
この人達は負ける未来が想像できません!!」
「あ~~……そりゃ想像出来ねぇわ。」
それはさておき、円夏を筆頭に次々とウォータースライダーに突入し、一夏とヴィシュヌの番になったのだが……
「カップルの方ですか?でしたらまずは彼女さんがエントリーして、彼氏さんは彼女さんを後ろから抱きしめてから滑って下さい。」
「……だってよヴィシュヌ。」
「では、お願いします一夏。」
此処でまさかのカップル特別ルールが言い渡され、ヴィシュヌが先にエントリーし、その後ろから一夏がエントリーしてヴィシュヌの腰をガッチリとホールドすると触れるだけのキスをしてからウォータースライダー開始!
開始直後の急降下からの一回転、高速カーブから外のパイプラインに移り、急降下や急上昇を繰り返し、上下が激しく入れ替わるスパイラル急降下を繰り返した後に高速コーナーを連続して、最後のスパイラル急降下の後にバックストレートをもってして一夏とヴィシュヌはプールに突入したのだが、一夏とヴィシュヌはスパイラル急降下の回転を維持したままバックストレートに突入し、其処からバック中でプールから飛び上がり、一夏の両肩にヴィシュヌが着地し、其処からヴィシュヌがバック宙し、一夏の右手の平に着地するという神業を見せてギャラリーを大いに沸かせたのだった。
――――――
ウォータースライダーを楽しんだ後は各々プールで泳ぐ事にし、一夏は大プールで泳いでいたのだが……
「一夏、見て下さい雪です!」
「コイツは……人工雪か?」
ヴィシュヌに声をかけられて見てみれば、プール施設内には人口の雪が舞い、サンタクロースのコスプレをした職員が波の出るプールで波乗りをしながら現れて子供達にプレゼントを配っていた。
「人工とは言え、夏に雪とは不思議な感じだ……サンタが水着を着てるってのも違和感しかないぞ?」
「南半球は今は冬だからクリスマスは真夏だ……だから南半球の国はサマークリスマスを祝うんだよ――だからと言ってバリバリ真夏の8月にサマークリスマスイベントってのは何か違うんじゃないかと思うけどな。」
「その気持ちは分からなくもありませんが、今はプールを楽しみましょう。」
其れを見ながら一夏達は夏休みイベントである『夏の水上レース』に参加していた。
プールに浮かべただけの足場で構成されたコースをドレだけ早くゴールするだけなのだが、一組5人で妨害もアリとなれば難易度は相当高くなるだろう。
だが、其れはあくまでも一般人に限ればだ。
IS学園でもトップクラスの実力を持つ一夏達には此の程度ならば普通にクリア出来るレベルであり、二人ずつ参加したレースの全てでワンツーフィニッシュを決めていた。
「こんなもん……こうしたら楽勝じゃあ!!」
「此処でまさかのお姫様抱っこですが……ですが悪い気はしませんね。」
そして一夏は開始直後にヴィシュヌをお姫様抱っこするとそのままコースを爆走し、二位に一分以上の差をつけて優勝したのだった。
――――――
午前中をプールで楽しんだ一夏達は昼食を済ませた後、今度は施設内の水族館にやって来た。
尚、本日の昼食は一夏が『味噌カルビ丼特盛と焼き餃子(6個)』、ヴィシュヌが『冷しタヌキうどんと唐揚げ(4個)』、円夏が『ロコモコ丼とサーモンとアボカドのポキ』、箒が『冷しきつねうどんと天ぷら』、鈴が『焼きそばと焼売』、乱が『担々麺と春巻き』、ラウラが『とんこつラーメンとミニチャーシュー丼』、ロランが『カツ丼とイカチヂミ』だった。
「おぉ、イキナリでっかいお出迎えだぞ兄さん!」
「ジンベイザメの剥製に、マッコウクジラとセミクジラの骨格標本か……迫力あるなぁ?……そしてこんなでっかい生き物が沢山いる海って改めて広いよなぁマジで。」
「ですねぇ……」
その水族館ではまずは天井から吊るされたジンベイザメの剥製とマッコウクジラとセミクジラの骨格標本がお出迎えしてくれた。
そんな大迫力のお出迎えの後は円柱型の中型水槽に色々な魚が展示されているコーナーが現れた――此の水槽で展示されているのはカタクチイワシやアジと言った食卓でもお馴染みの魚だけでなく、コブダイやロブスターなんかも展示され、水槽には魚の豆知識的なモノも張り付けられていて其れを読むだけでも楽しめるモノだった。
次に現れたのは通路一杯の長い水槽で、其処には多数の海草が生えており、ハコフグやタツノオトシゴ、クマノミなどの魚の他、色とりどりなウミウシも展示されていた。
続いてはクラゲの展示コーナー。
このコーナーは光源は水槽の光だけになっており、其れがクラゲの持つ自然の光沢を際立たせていた。
その先に現れたのは深海生物コーナーだ。
大抵の水族館の深海生物コーナーは剥製や写真の展示に留まっているのだが、この水族館では水圧やら何やらまでも深海の状況を再現した水槽を開発し、生きたままの深海生物を飼育していた。
「長かったですね、リュウグウノツカイ。」
「ありゃ少なく見積もっても15mは下らないだろうな。」
深海コーナーの次は大きめの生き物のコーナーとなっており、タカアシガニやロウニンアジなんかが展示されていた。
その先のエスカレーターを上った先に現れたのは、この水族館の大水槽!
イワシやエイ、小型のサメにウツボやタコと多種多様な海洋生物が展示されており、夏休み限定のイベントとして飼育員さんによるエサやりが公開されていた。
大水槽の次にはサメの水槽や南洋の海の生物が展示されているコーナーで、期間限定でチンアナゴも展示されていた。
「チンアナゴってアナゴなのか?コイツ等食えるのか兄さん?」
「食べて食べられない事は無いだろうが、どうやって食うんだよ?」
「こう、そうめんみたいにつるつると。」
「やめい、流石にかわいそうすぎるわ。」
そのコーナーを抜けると、入り口付近に戻って来てたが、其処からショースタジアムに行けるようになって居た。
ちょうどイルカのショーが近かったので一夏達はショースタジアムに入って最前列を確保して、ほどなくしてショーが始まったのだが、夏休みの特別企画としてポケモンとコラボしたショー内容になっているらしく、ポケモントレーナーに扮した調教師がアザラシやアシカを使ってロケット団と戦うという内容だった。
アシカがアザラシの背に乗ってなみのりを再現したり、ドルフィンキックでアイアンテールを再現したりと内容も見事だった……ただ、最前列に座った事で一夏達は見事にずぶ濡れになってしまったが。
「これが本当の水も滴る良い男!」
「そして水も滴る良い女です!」
「そんな俺達は!」
「最強カップル間違いなしですね♪」
其れすら傍から見ればいちゃついているようにしか見えない反応をしている一夏とヴィシュヌはナチュラルなカップルと言えるだろう……其れを見た非モテと思われる連中が『爆発しろ!』とかほざいていたが、一夏とヴィシュヌは爆発したとてその爆発すら愛に変える事が出来るから問題ないだろう。
アクアショーの後は淡水魚コーナーで青い鮎や斑点のないニジマスなんかを見てからお土産コーナーで土産を選び、隣接するボーリング場で遊び倒した挙句にカラオケのオールナイトを行い、夏休みをこの上なく楽しんだのだった。
To Be Continued