アドマイヤグルーヴと、相性度65%のトレーナー   作:君のネクパイになりたい

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[改訂版]バレンタイン? 単なる企業の経営戦略の一環でしょう。興味ないです。下らない。(fromクラシック期のアルヴさん)

 

 

 

「それで、折り入って相談したいとは、一体どうしたんだ」

 

 

 

 斜向かいに座る後輩……アドマイヤグルーヴにハーブティーを供しながら、エアグルーヴが問いかける。

 夕方の自主トレーニングの終わり際、珍しく神妙な顔をしたアルヴに相談を持ちかけられたので、寮の自室に招いて持て成し中……というのが現状である。

 お互い部屋着に着替えているからか、制服やジャージ姿の時とは違う、ほんのり砕けた雰囲気があった。

 

 

 

「…………」

「黙っていては、流石の私も見当がつかんぞ。それとも、話し難い事か……?」

「いえ……。大した事では……」

 

 

 

 俯き加減に、「いただきます」とティーカップを傾けるアルヴ。

 エアグルーヴ自身もそうだが、ただ座っているだけでも背筋がピンと伸びている。所作からは気品が感じられるし、その佇まいはある種の芸術品に近い。

 今はまだ幼さを残す顔立ちも、数年としない内に、誰もが振り返る美しさへと花開くだろう。

 

 ……なぜ、こんな親バカのような評価をしているのか。

 自分でも理由がよく分からないエアグルーヴだったが、純然たる事実であるし、特に間違っている訳でもない。

 だから何も問題はないのだ。

 うむそうしよう。

 

 

 

「エアグルーヴさんは……」

「ん?」

 

 

 

 一人で勝手に納得し、可愛い後輩の言葉を待っていると、彼女はおもむろに口を開いた。

 いよいよか……と、エアグルーヴは自分のハーブティーで唇を湿らせ。

 

 

 

「男性に、バレンタインチョコを渡した事は、ありますか」

「ブフォアッ!?」

 

 

 

 盛大に吹き出した。

 辛うじてアルヴから顔を背けられたのは、不幸中の幸いか。

 その分、だいぶ鼻が痛いけれども。

 

 

 

「エ、エアグルーヴさん? 大丈夫ですか」

「ゴホ、ゴホ……ッ。だ、大丈夫だ、問題ない……。それより、どうしたんだ急に」

 

 

 

 確かに、暦の上では二月も中旬に入った。そういう時期だ。

 むしろ、話題に上げるのなら遅いような気もする。

 もちろんエアグルーヴも、自分のトレーナーにチョコを渡すつもりでいた。もう渡すのが定番というか、渡さないと落ち着かないというか。

 

 

 

「なるほど……。つまり、クリスマスの礼をしたいという訳か」

「貰ってばかりなのは、嫌なので」

 

 

 

 ともあれ、ポツポツとアルヴが語る内容をまとめると、以下のようになった。

 去年のクリスマスに、“彼”からちょっとしたプレゼントを貰った。

 その時は驚いてしまって、逃げるように去ってしまい、以降も特に話題には上がらなかった。

 しかし、返礼もせずに居るのはアルヴの性に合わないので、この機に贈り物をして、差し引きをゼロにしたい……と。

 

 話を聞き、その心情は理解した。

 理解はしたのだが、けれど、エアグルーヴは厳しい表情を浮かべる。

 

 

 

「まずは忠告だ。単なる返礼のつもりでバレンタインに物を贈るのは、止めておけ」

「……なぜでしょう」

「逆に考えてみろ。バレンタインに、お前はチョコを用意した。そして、それをアイツに渡す」

「…………」

 

 

 

 言われて、アルヴは目を閉じる。

 恐らく、脳裏にその光景を思い描いているのだろう。やはり根は素直だ。

 

 

 

「だが、ヤツは普段と全く変わらぬ様子で受け取って、感謝をされて終わり。……どう思った?」

「…………」

 

 

 

 眉間に若干のシワ。かと思ったら、どんどん深くなっていく。

 これは……彼女の脳内で、よっぽどのやらかしをしているらしい。

 

 

 

「なぜだか、腹が立ちます」

(……良かったな。脈アリだぞ)

 

 

 

 顔には出さないまま、エアグルーヴは“彼”へもたらされた吉報を喜ぶ。

 あのアルヴが。周囲に誰も寄せ付けず、トレーニングも勉強も一人でこなしていた、あのアルヴが、変わったものである。

 いや、社会通念や条例的には全くもって宜しくないというか、むしろ忌避すべき事態なのだろうが、彼女の性格からして、そんなことを言っていては、せっかくの青春時代を競技者として終えてしまう。

 それも決して悪いこととは言わない。ストイックな姿勢は美徳である。

 

 ……でも。

 エアグルーヴとしては、普通の女の子らしい、学生としての思い出も作ってほしいと、思ってしまうのだ。

 それはきっと、尊いものだから。

 

 だからと言って“彼”とアルヴがそういう関係になるのを許したわけではないが。

 第一、年が少し離れすぎて……いやいや、だが“彼”以上に寄り添い続けられる男が今後現れるだろうか? という問題も……。

 

 

 

(いやいやいや、私は何を考えているんだ)

 

 

 

 いつの間にか脇道に逸れていた思考を引っ張り戻すため、エアグルーヴはコホンと咳払い。

 困惑している様子のアルヴへと向き直る。

 

 

 

「要するに、その日の贈り物が特別な物だと、お前自身も無意識に思っているんだ、アルヴ」

「……でも、私、そんなつもりは……」

 

 

 

 芽生え始めた感情を理解できず、伏し目がちに、ほんのりと頬を染めるアルヴ。

 はぁーうちの子可愛いペロペロした──なんだ今の思考のノイズは。

 とんでもなく気色悪い事を考えてしまったような……いや気のせいだろう。

 ちょっとばかり後輩が可愛すぎるだけ。

 ただそれだけの話だ。

 ああ抱きしめたい。

 

 

 

「もし勘違いされるのが嫌ならば、チョコは贈らない方が無難だろうな。いっそ菓子から離れて、実用品を贈ってもいいだろう。とにかく、後悔のないようにな」

「…………はい」

 

 

 

 心の中は支離滅裂、しかし表面上は理知的な振る舞いで、あくまでアドバイスに留めるエアグルーヴ。

 それを素直に受け取ったアルヴは、温くなったハーブティーの表面に映る自分を見つめ、思考を巡らせるのだった。

 

 

 

 翌日。バレンタインまで残り二日。

 尊敬する先輩からアドバイスを受けたものの、アルヴはまだ、どうするのかを決めかねていた。

 

 

 

(どうしよう。プレゼント。お礼。バレンタイン。チョコ。実用品……)

 

 

 

 カフェテリアでの食事中も、それを終えて教室に戻る間も、なんなら授業中にも考え込んでしまい、指名された問題の回答を間違えたりもした。

 そして放課後。自主トレーニング終えて寮に帰っている今でさえ、考えている。

 ここ数日、ずうっと“彼”の事を……バレンタインの事を、考えている。

 

 一体、どうしてしまったんだろう、私は。

 こんなにも悩み続けるだなんて。

 

 

 

「……あ」

 

 

 

 ふと、視界に見覚えのある後ろ姿が見えた。

 長い栗毛に、赤いリボンと白いヴェール。スティルインラブだ。

 

 

 

(……あの子はきっと、絶対に、チョコを贈るんでしょうね)

 

 

 

 もし贈らないとなったら、逆に心配になりそうだった。

 そのくらい、スティルと“彼女”にはその光景が似合う。

 チョコを贈り、受け取って、二人とも蕩けるような笑顔を浮かべる、幸せな光景が。

 そう。“彼女達”になら。

 

 

 

「背に腹はかえられない、か……」

 

 

 

 思い立ったが吉日。兵は拙速を尊ぶ。早起きは三文の徳。

 ……最後はちょっと違うけれど、とにかく行動は早い方が良い。

 アルヴは駆け足に、小さな背中へと歩み寄る。

 

 そして、十分後。

 

 

 

「あの……アルヴさん……」

「……なにかしら」

「遊びにいらして下さったのは嬉しいのですが……何か、お話したい事があるのでは……?」

「…………え、っと……」

 

 

 

 スティルの自室を訪れたアルヴは、しかし、なかなか話を切り出せずに居た。

 妙に緊張するのだ。

 初めて、バレンタインという行事に参加するから?

 それとも、まだティアラ路線でのわだかまりが残っているのだろうか。

 

 ……とりあえず、不確定な自分の事より、スティル達の事情を確認してみよう。

 別に、逃げた訳じゃない。

 違う方向から攻めただけ。

 これもまた戦術。

 

 

 

「……スティルさん」

「なんでしょう?」

「貴方は、貴方のトレーナーにチョコを贈るの?」

「……? はい、もちろん」

 

 

 

 さも当然と、スティルは頷き返した。

 他に選択肢があるのですか? とでも言いたげな顔。

 強い。

 なんとなく、そんな単語が脳裏に浮かんだ。

 

 

 

「もしかして、アルヴさんも贈りたいのですか? ご自身の、“トレーナーさん”に」

「っ、別に、そういう訳じゃ……」

「……そう、なんですか」

 

 

 

 流石に、この流れではスティルも察し、あえて話題を振ってみるのだが、アルヴは反射的に否定してしまった。

 まぁ実際、渡すかどうかは決まっておらず、渡さない可能性だって無きにしもあらずんば……。

 だったらなんでここにおんねん、というツッコミは可哀想なので止めてあげて欲しい。慣れてないのだ、色々と。

 

 

 

「ちなみに、だけど。参考までに、聞くのだけれど。……どんなチョコを贈るのかしら」

 

 

 

 否定したけれど、やはり好奇心が抑え切れないアルヴ。

 スティルは一瞬だけ目を丸くし、クスリと微笑んでそれに答えた。

 

 

 

「大した物は……。ですが、手作りの物を用意しようとは考えています」

「手作り……」

「あの方はきっと、どんな物でも喜んでくださる。でも、だからこそ。どんな風に喜んで頂けるのかを想像して、同時に少し、不安にも思いながら……想いを込めて、作るつもりです」

 

 

 

 自分で口にした光景を想像しているのだろう。

 瞼を閉じ、うっすらと微笑みを浮かべるスティルの姿は、いじらしい乙女の見本。

 思わず見惚れて、甘酸っぱさに胸が切なくなるような……不思議な感覚だった。

 

 

 

(“あの人”は、どんなチョコが好きなんだろう)

 

 

 

 アルヴ自身はチョコをほとんど食べない。

 何故ならあの食べ物は、芳醇な香りと蕩ける甘さで、人を堕落させるために存在するからだ。

 ほんの一口……と思っていたら、いつのまにか全部食べていたり、小分けの物を一個か二個……なんて考えてたら、袋や箱が空っぽになっていたり。

 アルヴでも失敗のエピソードに事欠かない始末なのである。

 

 だから、自分では絶対に選ばない。

 他人から強く勧められて、ようやく選択肢に入れる。

 そんな食べ物、なのに。

 

 

 

(……でも)

 

 

 

 “彼”の顔を思い浮かべて。

 アルヴが渡したチョコを食べて、笑顔になる瞬間を想像するだけで。

 どうしてこんなにも、口の中が甘く感じるのだろう。

 どうしてこんなにも、ソワソワするのだろう。

 

 

 

(……私、は)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(最近、アルヴの様子がおかしい)

 

 

 

 常に上の空というか、何か考え事をしているように見える。

 相談に乗った方がいいか? と尋ねても、「プライベートな事だから」とシャットアウトされた。

 極めつけはこの二日ほど、トレーニングを早めに切り上げ、そそくさと寮へ帰ってしまうのだ。

 

 数ヶ月前なら、そんな時もあるか……で済ませるだろうけど、今なら分かる。

 絶対におかしい。

 

 

 

「という訳で、君は何か知らないか?」

「え、ええと……それは……」

 

 

 

 たまたま廊下で出会ったスティルに、挨拶ついでに尋ねてみる“彼”だが、返事は芳しくなかった。

 

 

 

「申し訳ありません。あいにく、心当たりがなくて」

「そうか……。いや、ありがとう。悪かったね、呼び止めて。それじゃまた」

「あ……ま、待ってください!」

 

 

 

 正直、ダメ元で聞いただけなので、落胆もしていない。

 別れを告げて背を向けるが、スティルは“彼”の服の裾をつまみ引き止める。

 

 

 

「もしや、これからお出かけ、なのですか?」

「ああ、そうなんだ。注文してた蹄鉄を受け取りに行って、ついでに色々と買い物を済ませようかと」

 

 

 

 肩に提げた大きめのショルダーバッグで、そう判断したのだろう。

 蹄鉄と、トレーナー室の細々した日用品に、スポーツドリンクの粉末や補食……。

 いつの間にか減っていた物を、この際一度に補充しようという算段だ。

 なお、スティルも帰り際だったようで、同じくバッグを肩に掛けていた。

 

 

 

「き、今日は……その……今日でなくては、いけないのですか?」

「え? いや、そういう訳でもないけど」

「なるほど……。つかぬ事をお伺いしますが、今日は、アルヴさんとお会いになりましたか?」

「会って……ない。というか、会わないんじゃないかな。トレーニングも全休だし」

 

 

 

 何やら焦った様子のスティルが、立て続けに質問してくる。

 蹄鉄の受け取りはいつでも良いし、減っている物も、早めに補充しようとしていただけ。別に焦る必要はない。

 アルヴと会えないのは少々寂しくもあるけれど、お互い、個人の時間は尊重しよう、という方針なので、あるとすれば自主トレのLANE報告くらいか。

 

 

 

「でしたら、今日は学園に……トレーナー室に居た方が……ええと、い……良い事がありそうな、気がします! ら、ラッキースポットです!」

「……何それ?」

「………………なん、でしょう」

 

 

 

 何を思ってか、スティルは唐突に、どこぞでフンギャロという鳴き声が聞こえてきそうな事を言い出す。

 彼女自身、らしくない行動をしている自覚はあるようで、恥ずかしげに顔を伏せていた。

 だというのに、裾を掴む手の力はそのまま。逃がすつもりはないようだ。

 ……何か、隠している。けど聞かれたくない、言いたくない……という感じか。

 

 

 

「わかった。君がそう言うなら、後回しにしてみる」

「……良いのですかっ?」

「理由はよく分からないけど、理由もなくこんな事をする子じゃないだろう。信じてみるよ」

「っ……!」

 

 

 

 仕方ないので、外出の予定はキャンセルし、トレーナー室に戻る事とする。

 スティルの表情がパァっと明るく、ついで、はにかむようにして俯く。

 目論見が成功して、ひっそり喜んでいる……とか? 可愛いものだ。

 

 

 

「じゃ、トレーナー室に戻るから。また明日、スティルさん」

「は、はい。……また、明日……」

 

 

 

 今度こそスティルと別れ、自分のトレーナー室へ。

 そこそこの距離を無駄に歩かされたが、まぁ、諦めよう。

 それより問題は、急に空いた時間をどうするかである。

 

 

 

「ううん……新しいスポーツ医学の論文でも──っと?」

「──あっ」

 

 

 

 考えつつドアを開けようとしたら、わずかに早く内側から開いた。

 現れたのはもちろん、部屋の鍵を持っているアルヴだ。

 

 

 

「アルヴ、来てたのか」

「は、はい……ちょっと、用が……」

「何か急用だった? 連絡もなしに来るなんて、珍しいよな」

「……トレーナーさんこそ、外出するはずでは……?」

「ちょっと、キャンセルする必要が出た、ような気がして。で、何か用事?」

 

 

 

 以前から、トレーナー室に用がある時は事前連絡があった。

 どんな些細な事でも、アルヴは生真面目に一報を入れてくれて、今となってはそれがありがたい。

 しかし、今日に限っては連絡無し。……なんだか、妙に驚いてもいるようだ。

 

 

 

「もう、終わりました。失礼します」

「え。ちょっと……あ……」

 

 

 

 呼び止める暇もなく、アルヴは足早に廊下の奥へ消えてしまった。

 伸ばした手は虚しく中を掴み、手持ち無沙汰を誤魔化すように、後頭部を掻きむしる。

 拒絶されたみたいで、少し悲しかった。

 

 

 

(良いことがあるはずじゃ…………んん?)

 

 

 

 心の中でボヤいていると、トレーナー室の変化に気付いた。

 何も無かったはずの机の上に、青い包みがあるのだ。

 

 

 

「なんだ、これ」

 

 

 

 ソファにバッグを置いてから、それを手に取ってみる。

 手触りの良い、青の包装紙で包まれた、平べったい、やや小さめの箱。

 飾り気のないそれを開けてみると、なんと中には、可愛らしいブラウニーが詰まっていた。

 3x3の切れ込みに合わせて、カカオパウダーやホワイトシュガーで子犬が描かれているのだ。

 これを可愛らしいと言わずになんと言えば良いのか。

 

 そして、付属のメッセージカードには、「早めにお召し上がりください」と事務的な一言が。

 差出人の名前は、ない。けれど筆跡で分かる。これはアルヴの文字だ。

 

 

 

「まさか……アルヴが? 嘘だろ?」

 

 

 

 分かっている。分かっていた。今日はバレンタインデーだと。

 意識的に頭から排除していた、恋人共や恋愛脳共ご用達のイベントなのだ。

 トレセン学園で働くと決まった時、「これで俺も勝ち組か?」と夢想したのも束の間。ひと月で現実を知り、アルヴの担当になってもそれは変わらなかった。

 だから、信じがたい。これは、夢か……?

 

 

 

(……とりあえず、写真撮っとこう。うん)

 

 

 

 一旦、箱を机の上に戻して、携帯のカメラを起動。

 角度と距離を変えつつ、軽く30枚ほど撮ってから、まずは一切れ。

 

 

 

「……美味い」

 

 

 

 カカオパウダーのかかったそれは、甘さとほろ苦さのバランスが良く、ナッツの歯触りも心地良い逸品だった。

 思わずもう一切れ、と手を伸ばしてしまうほど。

 

 

 

(本当にアルヴが? 勘違いだったら? いやでも他に可能性なんて……だけど……んんん……?)

 

 

 

 口の中を甘さで満たしつつ、答えの分かりきった問題を、それでも考える。

 喜びと、くすぐったさと、ほんの少しの疑心暗鬼。

 混ざり合う感情の翻弄されながらの、その時間は。とても、とても、幸せなひとときだった。

 

 

 

 だから、まだ気付かない。

 いつの間にかバッグに忍ばされた、もう一つの包みに。

 赤い包装紙が、煌びやかな飾り紐で閉じられたそれの中には、甘いチョコレートが隠されている。

 アルヴのそれとは違う、とても甘い……。コーヒーと合わせると丁度良いくらいに甘い、チョコレートが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の知らない、貴方を知る。

 私を知らない、貴方を知る。

 

 そして私は、違った部分に目を凝らし、同じ所から目を逸らす。

 そうしないと、求めてしまうから。

 そうしないと、耐えられないから。

 

 尊さは千々に損なわれ、別たれてしまったものは元に戻らない。

 もう二度と、重なり合う事はない。

 

 この世界(うんめい)は残酷だ。

 摂理を捻じ曲げたものに、微笑んではくれない。

 ……私の気持ちは、決して報われてはいけない。

 

 

 

「だって、私は貴方を……」

 

 

 

 裏  っ   だ

  切        ら。

     たの  か

 

 

 

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